白黒メソッド   作:ひよこ・ザ・リッパー

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1話

かつて人間になった少女の人形がいた…

その少女は錬成され人々の害悪の存在として君臨していた、だけど一人の青年の呼び掛けや触れ合いにより心を開いた

害悪の存在として生きていた彼女は青年の為に生きて死んでしまったが

生きたいと願った瞬間、奇跡に救われ、新たな生命を得た

ゴスロリを身に纏った少女は一つの器に二つの魂を宿し

二人で一つであった

人形の頃を悪を持ち過ちを繰り返させない黒の心、黒葉

人の自愛を持ち善の心を宿した、白葉

彼女は今、青年と再会を果たし、彼の家族と共に暮らしていた

 

「………」

 

黒いゴスロリを着た少女が日傘をさし、学校が見える建物の屋上にいた

構って欲しく彼を待っているのではなく、彼は少し特別で何かとトラブルに巻き込まれてしまう

それは大きいものから小さいものまで

この街には私や吸血鬼を滅する為にいる埋葬機関がいるが、敵対してる以上、こうして私が彼を見張る必要があるのだけれど

 

「おやおやぁ?覗きですかぁ?」

 

ニヤニヤとしながら近づいてくる少女

彼女はリィムといい、彼の近くにいる少女

自由奔放で気分屋、楽しい事が好きで本能に忠実だが

彼女は見透かしているかのようで食えない

 

「あら、好きな殿方を待つのはロマンチックではなくて?」

 

「おお、言いますね、なんか適当にあしらわれてる気がしますが、監視役なら美冬さんがやってくれてますよ?」

 

「………」

 

美冬…

吸血鬼の彼女は彼のボディーガードみたいで何故吸血鬼の彼女が彼を守ってるのかわからないが、私は彼女を彼の恋人だと認識している

彼の近しい存在は、たぶん彼女が一番だから

別にそれは構わない、私は彼も彼女も守ることが生き甲斐とはり、喜びになってるのだから

白葉曰く、特別なんて勿体無い、望んではいけないとのことだ

もっともね…私ならなおさら…

 

「理樹だけじゃないわ、私は雛姫達も守りたいもの」

 

理樹、それが彼の名前

彼には二人の妹がいて、私の存在を不気味がられると思ったのだけれど受け入れてくれて、優しく接してくれた二人も守りたい

 

「健気ですねぇ、それよりも白葉さんはげんきです?なんだか声が聞こえませんが」

 

『あ、あう…』

 

頭の中に少女の声が聞こえる

この声こそが白葉で

片方が表世界に出てる場合、もう片方は意識として一緒にいる

頭に普段は語りかけてくる声は他の人に聞こえないのだが、何故だかリィムには聞こえるらしい、まったくもって不思議である

 

「あ、いましたね、もう無視するなんて悲しいですよ〜」

 

『あ、む、無視をしてた訳じゃないんですよ!ただ、いつ話していいのかなって…』

 

白葉は優しいのだが、少し遠慮し離れているイメージがある、もう少し自信を持ってくれればいいのだけれど

 

「こっちも健気ですねぇ」

 

「当たり前よ、私達は二つで一人なんだから」

 

「なるほど、片方だけだと半人前ってことです?」

 

「なんでそうなるのよ」

 

「そんなことよりもせっかく理樹さんが帰る時間帯なんですし一緒にかえりましょーよ」

 

「理樹だって用事とかあるでしょ、もともと人でもない私が一緒にいたら迷惑じゃな──」

 

「さーさー!ごーごー!」

 

リィムは強引に手を引きビルを飛び降り、理樹のもとへと向かった

 

───

 

「リィム、それに白葉、校門の前で何してるの?もしかして何か用事かな?」

 

「おや?片方引っ込みましたか…」

 

「あ、あはは…」

 

リィムが目を離した隙に黒葉は白葉に変わっていた

彼女は特殊で、表世界に白葉が出ると服装も黒ゴスから白いロリータ服に変わり、髪も黒から銀髪に変わっている

 

「理樹さん、これからご用事は?」

 

「特にないけど…」

 

「なら!喫茶店にごーごー!」

 

またもや強引に理樹の手を引き走り出すリィム

彼女はいつも強引だ、気持ちがいいほどに

 

「え!?ちょっと!?」

 

『はぁ…こうなったら追うしかないわね』

 

白葉は少し嬉しそうに駆け足で走り出し理樹達を追う

曲がり角を曲がった瞬間、誰かにぶつかり、白葉は転んでしまう

 

「あ、あぅ〜」

 

『このお馬鹿…ほら、ぶつかったんだから謝らないと』

 

「大丈夫か?」

 

「す、すみません…ありがとうございます…」

 

差し出した手を受け取り、立ち上がる白葉

目の前には青年と一人の大人の男性が立っていた

二人とも同じ色の制服を着ている、青年は騎士のようで男性は鎧の制服だろう

黒と白、それに特徴的な色、ウィンタースカイ色、灰色と青色のような色だ

 

「ご、ごめんなさい!私、急いでて!」

 

「気にすることない、我々も曲がり角で立ち話をしていたから、不注意はお互い様だ」

 

「でも気をつけてな?」

 

「は、はい、私はこれで!」

 

白葉は一例して理樹達を追う

同じような制服ということは何処かの組織なのだろう

深く関わってはいけないと察して早めに話を切り上げて白葉は走ったのだ

ただ、埋葬機関ではないが不思議と嫌な感じはしなかったし、どこかの自警団かもしれないと黒葉は考えるのをやめた

 

───

 

理樹に合流した白葉は三人で喫茶店に入り

リィムはお構いなしにデザートを注文していた、その姿を見て理樹は苦笑している

 

「ええっと、リィム?」

 

「なんでしょう?理樹さん」

 

「ちなみにお金、持ってるんだよね?」

 

「そんなのあるわけないじゃないですか、理樹さんの奢りですよね〜」

 

「ああ、やっぱり…」

 

「ふふ」

 

理樹も半分は理解していたのだろう、毎回リィムには奢らされっぱなしだから

リィムも懲りもせずだが、理樹も理樹だ、本当に仲が良い証拠なのだろう

しかしふと、なんだかこうやっているだけでも幸せだと感じてしまう、我ながら安い

 

「白葉も遠慮しなくていいんだからね?」

 

「はい、じゃあ、えっと…」

 

ここのメニューは豊富だが、基本的に何がどんなものかわからない

いつもは黒葉に任せているのだが、喋らないということは白葉自身が決めなければならない、でも…

 

「ケーキセットなら紅茶かコーヒー付いてお得ですよ〜」

 

困っている白葉にリィムが助け舟を出してくれた

しかし

 

「紅茶…コーヒー…」

 

「おや?どうかしました?」

 

「ああ、白葉は紅茶やコーヒーは呑み切れないんだ、えっと…」

 

『舌が子供だものね』

 

「黒葉うるさい、私だって飲めるもん!」

 

「え、白葉?」

 

『ならコーヒーにしなさい、砂糖とミルクがあれば貴方でも飲めるでしょ』

 

「ケーキセットのブラックコーヒー一つのお願いします!」

 

「白葉!?」

 

『…やれやれだわ』

 

しばらくしてケーキセットとブラックコーヒーが白葉の前に運ばれてきた

白葉は冷や汗を流し、ブラックコーヒーを見る

どうしてこの子はこういう時だけは、こうも頑固なのかしら

 

「し、白葉、ほらショートケーキ美味しそうだよ?」

 

注意を逸らそうと理樹はフォークでケーキをひとくちだいに切り取り、白葉に食べさせてあげるが

今の彼女にとって甘いショートケーキさえも味がわからないだろう、口端についたクリームでさえ気にならないようだ

カップを両手で持ち、一口飲むと明らかに顔が引き攣っている

 

「オ、オイシイデスヨ…」

 

「とてもそうには見えませんけどね」

 

『やれやれね、よく頑張ったわ』

 

また一口飲もうとした時、いきなり白葉は黒葉に変わった

 

『く、黒葉!?』

 

「本当は紅茶がいいのだけれどね」

 

と呟き、黒葉は優雅にコーヒーを飲む、先程の白葉とは違い、とても美味しそうに飲んでいるのがわかる

 

「なんだか様になってるね黒葉」

 

「褒め言葉として受け取っておくわ、ありがとう理樹」

 

『なんであんな苦いの飲めるかなぁ…』

 

「貴方もいずれ飲めるようになるわ」

 

フォローをし、また一口飲むと理樹がなにやらクスクスと笑っていた

 

「クリーム、ついてるよ」

 

優しそうに苦笑に、ナプキンでクリームを拭き取ってくれる

しかし黒葉にとって不意打ちの優しさや自身の恥ずかしさがあり、みるみる顔が真っ赤になった

 

「…っ!」

 

いきなり黒葉は恥ずかしさのあまり白葉に変わった

 

 

「ひきっ」

 

しかしコーヒーの苦味はまだ口の中に残っていた為、白葉は固まった

 

「ほらほら、理樹さん理樹さん、介抱してあげないと」

 

「あ、うん」

 

理樹はケーキを食べさせてあげ、白葉の口の中の苦味を和らげてあげる

 

「うぅ…黒葉の馬鹿ぁ」

 

「あはは」

 

原因を作った本人も鈍感な為、笑っていた

 

「店員さーん、注文いいですかー!」

 

「リィム、君はまだ食べる気なのか…」

 

「まだまだいけますよー!」

 

「………」

 

リィムだけ置いて帰ろうかと本気で思う理樹であった

幸せな時間は黒葉と白葉を包み、そしてこれからも続くと誰もが思っていた

 

───

 

深夜帯の時間になると黒葉は一人、この街が見渡せるタワーに登っていた

幸せな時間は続く、けれどそれを作るには彼女自身の過去と向き合わなくてはならない

 

「いい夜ね、美冬」

 

そうつぶやく、美冬は夜空を見上げていて向きも返事もしなかったが無関心ではないというのは理解できた

過去は人間たちと敵対し、今は蘇りをしてみせた、それだけでも十分狙われることもあり、こうやって夜は美冬の手伝いをするついでに自身の敵を迎撃しているのだ

 

「いい夜かは知らないが、少し妙に静かな夜じゃないか?」

 

美冬の目的はよく知らないけど、理樹に近づいてくる驚異を排除している

彼が危険なことに巻き込まれるのは嫌なのだろう、それは私もだ

 

「そうね、いつもなら埋葬機関が目についてもいいのだけれど…」

 

「ふむ、嫌な感じだ」

 

それは同意だ、気候も穏やかで雲一つない満月の良い夜なのに、空気がぴりぴりする

 

「白葉、頼み事があるんだが出てくれるか?」

 

黒葉は白葉に変わった

 

「は、はい!なんでしょう?美冬さん」

 

「索敵系の魔法や魔術は使える?この辺り一帯の嫌な感じを調べてもらいたいの」

 

「わかりました」

 

白の杖を取り出し、杖先で地面を軽くノックするかのように叩くと緑色の波紋が素早く街を駆ける

 

「あ、あれ…?」

 

『この感じ…』

 

嫌な感じが近づいてくる、逆探知されるほど白葉の魔法技術は低くないはずなのだが、何者かは確実に探知してこちらに向かってくる

 

「美冬さん!こっちに来ます!」

 

「………」

 

何が来るかもわからないのに美冬はひどく冷静だ、幾多の事態や戦いを経験した彼女だからこそ余裕があるのだろう

 

「真上!?」

 

上を見た瞬間、タワーに何かが落ちてきた

砂煙を払うように大型の槍が振るわれ

落ちてきた場所に立っていたのは一人の盾と槍を持ち装甲鎧を纏った男性とパーカーを着た少女、槍のような剣のような武器を持ち無表情だ

両方共特徴的な制服を着ている、黒と白、ウィンタースカイの色の制服…今日会った組織の人達だろう、その一人の鎧の人が目の前にいるのだから

 

「ほう、吸血鬼か」

 

「………」

 

無表情の少女は白葉を見つめ、それに気づいた美冬は白葉を守るように前に出た

 

「武装してる割にはやり合うつもりじゃないようだな」

 

「無論、吸血鬼の嬢は賢くて助かるな」

 

政党防衛用の為に武装して来た?どちらにしろ嫌な感じは消えていない

 

「我々はA.R.K.、そちらと同じ驚異となる者を討ち、そして同胞を保護している、私はガルアス、彼女は」

 

「冬華…」

 

「貴方達の目的はなんですか、私達は別に何も驚異になんてなってませんよ」

 

「ええ、ご安心を、我々は迎えに来たのです、聖王の巫女様」

 

ガルアスは白葉を見ながら言った

 

「聖王の巫女?」

 

「わ、私は…何がなんだか…」

 

「詳しくはA.R.K.の船でお話できます」

 

『…ふん、馬鹿馬鹿しいわ』

 

「黒葉?」

 

白葉は黒葉に変わった

 

「私達は普通の日常に戻りたいの、それに白葉を貴方達の都合で使わせたりしないわ」

 

『うん、そうだね、理樹さんと一緒にいたいもん、平和に過ごしたいから私だって協力なんてしたくないよ』

 

そっちの世界へ足を踏みいれれば、また悲劇が生まれる、そんな世界にいたからこそ、もう過ちは繰り返したくない、それが彼女の答えだった

 

「残念だったな、同行は出来そうにもない、力づくでくるか?」

 

ガルアスは美冬と数秒睨み合い、そして諦めたかのように瞳を閉じた

 

「………やめておこう、吸血鬼の嬢がいては分が悪い」

 

そう言いA.R.K.の二人は背を向けた

 

「次はいい返事を期待している」

 

それだけを言い残しA.R.K.の二人はタワーから一瞬で消え去った、きっと魔法だろう

訪れた静寂と嫌な感じは消えた

 

「…ごめんなさい美冬、どうやら今回の一件、私が絡んでるようだわ」

「気にする必要はないさ、理樹のついでだ、一緒に守ってやろう」

 

「あら、優しいのね」

 

その好意は素直に受け取っておく、強がって断れば理樹が危険な目に合う可能性があるから

 

───

 

 

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