白黒メソッド   作:ひよこ・ザ・リッパー

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3話

冷たくなる身体、不思議と苦しくはなかった…

私は多くのことを望み過ぎたのかもしれない

人間になって浮かれて、幸せだと感じていた日々…

そのせいで白葉を…

 

『おい、聞いたか、博士の実験』

 

…走馬灯?ああ、私もいよいよなのね…

昔の記憶が流れる、そこには白衣の研究者が二人

 

『心を作る実験だろ?天才はいき過ぎれば馬鹿だな』

 

二人は笑い、その映像は消え

次の映像は幼い、私と…博士……

覚えている…これは私が…幼い頃の…

 

『先生はどうして心を調べているの?』

 

『うーん?それはねー人も動物も、吸血鬼も心を通わせれば、仲良くなれるんじゃないかなってねー』

 

気の抜けるような棒読み、そう、先生はいつもやる気がないようで、本心は情熱を燃やしていて…

 

『じゃあ!先生は仲良くなる実験してるんだね!』

 

『うんうん、そうだよーすごいでしょー』

 

『すごーい!』

 

あの頃は無垢だった…

でもあの頃から崩れ始めたんだ…数年間幸せだったのに

映像が切り替わり二人の研究者達が話している

 

『くそっ!上が結果を求めてきやがる!人体錬成なんてそう上手くいくはずが…!こんな予算で結果なんて』

 

『何か媒体があれば…データさえ取れれば後はいくらでも………待てよ?』

 

…そこで研究者達に先生の研究の手伝いだと言われ、私は人形と融合した

そのデータでいくつもの人形が生まれ、やがて兵器と運用されることが決まった

心を持つ人形はこうして生まれたんだ

人体錬成ではなく、人体融合、私は混ざられた

 

『すまない…私が目を離したばっかりに…せめて全てのお前の姉妹が守ってくれるように…』

 

人形が私に従うようにすべてのデータを書き換え

コア・ドールとして生まれた私、しかしそんなことをすれば先生だって無事じゃすまない

 

『博士、残念だよ』

 

大きな研究場施設に大きな化物がいた

あれは先生だったもの…いくつもの人体融合のなれの果て…

そんなことも知らず、私は戦闘データ採取として先生を…っ

 

『あ…りが…と…ご、め…』

 

『先生…?』

 

あの時、先生の声が聞こえた、状況を理解し泣き叫ぶ私に研究者達は笑っていた、姉妹を使った戦闘データがよほど嬉しかったのか、そんなのわからなかった

けれど初めて人間が憎いと思った

私と他の姉妹達で研究場を破壊した

その心にあったのは憎しみと人間への復讐だった

私と同じ仲間を見つけ、そして…戦って…彼にあったんだ

 

『理樹…』

 

初めは暇つぶしのつもりで近づいて飽きたら殺すつもりだった、でも彼は先生に似ていて優しかった

ずっと叫んでいてくれた、私を理解してくれた人…

幸せだった…いつも幸せを感じた時…私からは全て消えてしまう…

姉妹達が私に従わなくなって、理樹を襲った

全ての姉妹達と戦っている様は、ほかの人からすれば理樹を襲ってるようにしか見えなかった

 

『捕捉…狙撃します』

 

『待て!』

 

姉妹達を抑えることなんて出来なかった、理樹に襲いかかり絶体絶命のはずだった

どこからか撃たれた弾丸は私を貫き、姉妹達も止まった

あれでよかったんだ…そう思って死んだ筈なのに

…また生まれ変わって理樹達家族に会って、白葉もいて美冬もいてリィムもいて…幸せだった…幸せを感じるといつもそうだった…

私は幸せになってはいけない…白葉だけはせめて幸せに…

 

───

 

あれからどれくらいの時間が経っただろうか

数日かもしれないし数時間かもしれない

私は飛空艇の一室にいた

 

「黒葉…」

 

私の中に黒葉がいない…黒葉はあの時…

 

「黒葉、無事、だよね…」

 

問いかけてもどうしようもない、魔法も使えない私は何も出来ず…

そう思うとまた泣いてしまいそうになる

いつもそうだ、幸せな時間は続かない…私にいつも力がないから…

すると扉がノックされ二人のA.R.K.騎士が入ってきた

ガルアスにあの時ぶつかった青年だ

 

「気分はどうかね?」

 

「………」

 

警戒、軽蔑、そういう感情がぐちゃぐちゃになりガルアスを睨む

 

「私の黒葉を返して」

 

「すまないがそれは出来ない」

 

「どうして…!」

 

「私の事を恨んでくれても構わない、だが、我々も巫女様の力が必要なのです」

 

「……い…やです…」

 

「そうですか…また日を改めて」

 

ガルアスは出て行ってしまうが一人の青年は残っている

早く出ていってという眼差しで見るが青年は苦笑していた

 

「少し話しいいか?」

 

「いや…」

 

「ふーむ……そうだ!ケーキとかどうだ?飴もあるぞ」

 

「子供扱いしないで…」

 

「ええっと…」

 

困ったように苦笑していると、白葉はバツの悪そうな顔をし少し悩む

 

「妹ならよろこんで機嫌直してくれるけど、やっぱり普通の女の子はわかんないな」

 

「妹さん…いるんですか?」

 

それは何気なく、雛姫達を思い出したから、聞いてしまった

 

「あ、えっと、いたんだけどな…」

 

「ご、ごめんなさい、私…」

 

「いや、気にしなくていいぞ、それよりほら、いちごショートとチョコショートどっちがいい?」

 

箱からケーキを取り出し並べる、少し形が独特だが手作りだろうか?

 

「…もしかして手作りですか?」

 

「趣味でね、いろいろ作ってるんだ、見た目はあれだけど美味しいぞ」

 

少し控えめな微笑み、この感じ…

 

「あー…ふふ、なんだか似てる…」

 

思い出してしまった…彼等を…前に出会った兄妹を

 

「うん?誰に?」

 

「貴方みたい一人、お菓子作りが上手くて妹がいるお兄さんがいたの」

 

後月さん…真桜ちゃん…元気かなぁ…

いつもあの二人には邪魔されてたけど、また、会えるかな…

 

「黒葉…」

 

また彼女を思ってしまう…

暗くなった白葉を心配し青年はショートケーキを一口食べさせた

ケーキはほどよく甘く、口いっぱいに幸せが広がる

どうして、わからない不思議な感じだ…

 

「ほら、元気な味だろ?」

 

ニッコリと笑う青年は無垢だった

白葉はその笑顔に少し傷ついた心が癒され、控えめに笑顔で笑う

 

「ああ、やっぱり似てる…サヤ…」

 

「サヤ?」

 

「妹の名前だよ、笑った顔が似ててさ、ごめんな、重ねちゃ悪いよな」

 

「い、いえ…」

 

この青年は少し不思議だ、私を利用しようとするなら力づくでやればいいのに…

そこで白葉は気になった、私が必要な事とはなんなのかと

 

「あの、話してくれませんか?どうして私が必要なのか、聖王の巫女って一体…」

 

「あー…そうだな、それを話すにはまず、俺達がどんな組織なのか知ってもらいたい」

 

こほんと咳払いした青年はゆっくりと口を開いた

 

「俺達A.R.K.は虐げられる能力者や非戦闘能力者を保護してる組織なんだ、この船、飛空艇ワールドアウトを使って」

 

「…でも私は保護目的じゃありませんよね」

 

保護目的なら仰々しく聖王の巫女など呼ばないし事情だって説明してくれるはずだ

 

「…君は、神様なんだ」

 

「え…」

 

唐突な事で理解が追いつかない、どういう事なのだろうか

 

「壊れかけの命に魂が寄り、この世界に来た」

 

「ちょっと待ってください、そ、そんなのありえませんよ!」

 

「無理に信じてくれとは言わない、でも、君の魔法はどうしてそんなに特別なんだ?死んだ者をどうして蘇らせることができたんだ」

 

「…」

 

そんな、ありえない…私はコアドールの時の記憶もあるのに…でも私は蘇った…

…はっきりと自信を持って言えるのだろうか…私は人間だって…

 

「私は、わかりません…」

 

「ああ、俺だって艦長の説明なんて信じられなかった、けど君は、その…あの子に宿って命を繋ぎ止めた…」

 

「…だとしても私は貴方達に何かを協力するなんて、無理です、何を協力するかもわからないし、私、強くないし…」

 

「…君は、本来の力に戻れば死者さえも復活させることが出来るんだ」

 

死者を…

 

「この世界は理不尽で死んでいった人達が大勢いる、誰も死なない世界を作って、平和な世界を造る、それが艦長の目的…」

 

「…貴方も死者を…?」

 

「……ああ」

 

「サヤさんを?」

 

「…ああ」

 

「なんで…」

 

「俺は、三年前の怪異の事件で家族を失った、助けを呼ぶつもりだった、死にかけた妹を置き去りにして行ったんだ、サヤは何かを伝えようとしたのに…!せめて最期の言葉を聞きたい、その為なら俺はどんなことだってやる、だからA.R.K.にいる」

 

三年前の怪異…

きっと私たちが起こした騒動だ

私の、せい…

 

「……」

 

「このA.R.K.にいる人たち殆どは大切な人達を失っている人達だ、君の力で死者を、誰も死なない世界を造ってほしい」

 

誰も死なない……

私が黒葉を失ったように…そんな思いをほかの誰かにさせない…

平和…を造れれば、理樹さん、喜んでくれるかな…もう、危険なことも巻き込まれず…済むなら

 

「…少し考えさせてください……」

 

「検討してくれるのか!」

 

「まだ手伝うって決めたわけじゃないですよ?」

 

「ああ!それでもいい!ありがとう!ありがとう!」

 

泣いている?

青年は笑顔で少し泣いていた

…彼はどこまで自身を追い詰めたのだろう…考えるだけだと言ったのにここまで喜ぶなんて…

 

「えっと、これからよろしくお願いします、聖王の巫女様」

 

「や、やめてください、白葉でいいですよ」

 

「白葉か、俺はカイア、呼び捨てで呼んでくれ」

 

「カイア…」

 

「おう!っと、そうだった、困らないように艦内の案内を頼まれたんだった、白葉がよかったらさ、行かないか?他のみんなにも会わせたいんだ」

 

「い、いいんでしょうか…?」

 

威嚇射撃とはいえ、飛空艇に攻撃した私が歩き回っても…

 

「いいさ、みんなも白葉がどんな人か気になってるみたいだし、変な奴が多いけどみんないい人達だよ」

 

「そ、それじゃ…お願いします…」

 

「ああ」

 

二人はさっそく館内を歩き回るべく扉を出た

 

「うわっ!?」

 

扉が開くと一人の男性と一人の女性が倒れるように部屋に転ぶ

 

「え?え?」

 

「ルヴェンス、時雨さん…何を…」

 

「う、うむ、ルヴェンス殿が盗聴していたのでな、某は注意をと思いまして…」

 

黒髪長髪のマントと口元を隠したマフラーが特徴的な少女だ、アホ毛が表情と連動しているかのように浮き沈みしている

 

「あ、きったねぇ!俺っちのせいにする!?時雨っちだって聴いてただろ!?」

 

金髪サングラスで喋ると三枚目、黙ってれば二枚目の青年

 

「…二人とも、子供じゃないんだからさ、情緒ってものを…」

 

軽いため息をしカイアは白葉に向いた

 

「この金髪ヤンキーっぽいのがルヴェンス」

 

「初めましって!A.R.K.スェーミのルヴェンス・ハルベルト、イケメン過ぎて惚れるなよ〜」

 

「結構変な奴だから、適当に付き合ってれば満足するから程々に、そして次にこの忍びっぽい人が」

 

「A.R.K. ヴォースィミ、迅影 時雨、退魔師の卵、よろしく」

 

アホ毛がハートの形に変わる

 

「上のが本体だな」

 

「スェーミ?」

 

「あっと、A.R.K.の識別ナンバーさ、システム起動時とか俺っちの声でこの数字を言うと起動したり、敬意を払う相手に言ったり、まあ、今は自己紹介みたいなもんだな、なっはっはっ」

 

「まったく…ルヴェンス殿は適当…」

 

「ルヴェンスさん、時雨さんですね、覚えました、よろしくお願いしますね」

 

「うむ」

 

「おうさ」

 

「二人とも、もういいか?案内して回らないといけないから」

 

「そうだったな、聞いてたから知ってるぜ」

 

「おい」

 

なっはっはっと笑うルヴェンスと苦笑する時雨は白葉に軽く手を振り、ルヴェンス達は行ってしまう

 

「まったく、あいつらときたら…」

 

「カイアも識別ナンバーを持ってるんですか?」

 

「あー…俺は特務配属だからないんだよな」

 

「でもでも、特務ってことはすごいんじゃないですか?」

 

「名前負けだよ、雑用だらけさ、買い出しだろ、炊事洗濯したりと飛空艇の整備手伝いとか、いいような下っ端さ」

 

カイアは苦笑しておかしそうに笑う

 

「さ、行こうか、居住区からなら食堂だな」

 

二人は歩き出した

途中、何人かの人と会い挨拶をしたがみんな気のいい人達だった

食堂に着くと美味しそうな匂いがした

 

「お、いたいた、おーい!アルスー!」

 

厨房の奥から一人の執事服を着た青年が出てきた

 

「カイア坊ちゃん、それに聖王の巫女様、ご機嫌麗しく存じ上げます」

 

綺麗なお辞儀をした青年

な、なんなのだろう、なんだかすごく丁寧な人だ

 

「こいつはアルス」

 

「A.R.K.に仕えさせてもらっている執事、A.R.K.ディトゥリィ、アルス・マイアネンスです、雑務炊事洗濯その他諸々、暗殺から護衛、マスターのためであるなら如何なる指示をも引き受けます」

 

「戦闘も雑用もこなすパーフェクト執事だ、頼りになるから頼っていいと思うぞ」

 

「よろしくお願いしますね、アルスさん」

 

「あと一人いたんだけど…エフィルは?」

 

「彼女なら──」

 

するとカイア達の背後の扉が開きその目の前には三つのダンボール箱を抱えたメイド服の少女が入ってきた

 

「ア、アルスさーん…これってどこに…きゃあ!?」

 

少女は何もないところで転びダンボール箱が舞う

その瞬間、アルスが片手で空中に舞うダンボール箱を整え、床に下ろし、少女を受け止めた

 

「エフィル!?大丈夫か?」

 

「は、はい、ありがとうございます…アルスさんもありがとうございますー」

 

「えっと、この人は?」

 

「ああ、A.R.K.のメイドで名前はエフィル、まぁ、アルスほど作業はこなせてはないけど…」

 

「A.R.K. ヂェーヴィチ、エフィル・メリフィリアです、お初にお目にかかります、白葉お嬢様! 」

 

「執事の私共々よろしくお願いします」

 

なんだか不思議な人達…でもいい人達だよね

そして、次に私が案内されたのは格納庫、辺りはパワーアーマーや人が乗れそうな中型機械兵器が見える

 

「巫っ女様ー!」

 

見とれているとオレンジ色髪の少女と緑色髪の少女が来た

この二人は見覚えがある

 

「貴方達はあの時の」

 

「え?知り合いなのか?」

 

「はい、この前買い物に行った時に!でもその時は片割れさんがいたんだっけ」

 

「悩んでたとこ助けてもらうたんだよねー」

 

「…そうか、俺はお前らが外出したことを知らないんだが?」

 

「ぎくっ!」

 

あ、それ言う人いるんだ…

 

「音々(ネネ)が抜け出そうって」

 

「あ!琴々(ココ)人を売ったな!」

 

「まったくお前らときたら…後で親方に報告だな」

 

「それだけは勘弁してぇ!」

 

「うんうん」

 

うるさいと言わんばかりの深いため息をしカイアは白葉に向き直る

 

「うるさくて悪いな、キンキン響くだろ」

 

「カイア兄のアホー!」

 

「あ、あはは…」

 

な、なんだか賑やかな子だなぁ

 

「こっちのうるさいのが音々、ほら自己紹介」

 

「ぐぬぅ〜覚えてろぉ、カイア兄」

 

「何か言ったか?」

 

「A.R.K.トゥリー鳴海 音々でっす!巫女様よろしくお願いしまーす!」

 

握手を求められているのか手を差し延べてきた

 

「うん、よろしくね、音々ちゃん」

 

白葉は握手を交わす

 

「A.R.K.ドゥヴァ…鳴海 琴々、巫女さんは猫、好きですか?」

 

「猫?う、うん、好きだけど…きゃあ!?」

 

いきなり琴々は抱きついてきた、ハグだろうか

な、なんだろう、この二人、少し変わってる

 

「仲間仲間」

 

「変わってるだろ?まあ、いい奴らだから仲良くしてやってくれ」

 

苦笑混じりで笑うカイア

 

「お前ら!そこで揃って何をしてやがる!」

 

そこへ大柄の髭ズラの男性が歩いてきた、一応制服らしき物は纏っているのだろうがマントのように羽織っている

 

「ひぃ…」

 

怖い、ここに来て感じた恐怖、脚が震える

 

「ん?嬢ちゃんどうしたんだ?」

 

「っ…!」

 

逃げなきゃ、そう頭では理解してるのだが身体が動かない

 

「親方、怖がってるんだって」

 

「む、そうなのか」

 

大柄の男は手を白葉に伸ばし始めた、思わず瞳を閉じてしまう

すると何をされるかと思いきや少し力強く頭を撫でられる

 

「安心せい、嬢ちゃんみたいな子はいい子だからな、取って喰ったりはせんわ!」

 

「あ、あぅあぅあぅ」

 

ぐりぐりと撫でられてはいるが心なしか暖かさはある、がしかし力強い

 

「親方!もげる!もげちゃうよ!」

 

「おっと、悪かったな嬢ちゃん、痛くはなかったか?」

 

見た目は怖いおじ様だけど…すごく安心するのはなんでだろ…

 

「は、はい…」

 

「一応紹介しとくとこの飛空艇の整備士なんだ、みんな親方って呼んでることが多いかな」

 

「おう!紹介ついでだ!酒持ってこーい!」

 

「子供と杯を返してどうすんのさ!」

 

「お、おう…」

 

少ししょぼくれている、本気だったようだ

 

「俺はA.R.K.整備士、ディノン・エルディガーラーンだ」

 

「おじ様…識別ナンバー忘れてる」

 

「だからあれは坊主に譲ると言っただろう、年寄りを最前線に出しても役に立たんだろに」

 

「よく言うよ、この船一番の強さのくせにしてさ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「ああ、俺と音々琴々と行っても勝てるなんて無理だろうな…一応A.R.K.デェーシチだよ」

 

「ほら親方は行った行った!巫女様に格納庫を案内してあげるんだから」

 

「なんでい、冷てぇなぁ…」

 

しょぼくれている…意外に可愛いところがあるのかもしれないと白葉は思った

親方は行ってしまう、いきなり右手を音々、左手を琴々に掴まれた

 

「さぁ!巫女様!こっちです!」

 

「かもーん」

 

二人に連れられて入ったのは薄暗い格納庫

琴々は一つの設置された端末を操作し明かりをつけた

 

「こ、これは…」

 

そこには人型の機械兵器

先程見たボロボロの機械達より立派で、今にも動き出しそう

 

「これは、襲ってきた政府をばったばった薙ぎ払って、政府の機械兵器のデータを元に造った、コーシカ」

 

音々と琴々がフードを被ると猫耳みたいに見える

コーシカ…確か猫って意味だったような…

 

「猫…?」

 

「本当はAGSって正式名称あんるんだけどね」

 

「だって可愛くないもん」

 

「ね、ねぇ、まさかこれって、二人が乗って戦ってるの?」

 

「うん、右側のが音々のだよ」

 

赤の機体を指さす音々

 

「あっちのが黒いのが私の…」

 

黒の機体を指さす

しかし白葉は浮かない顔をしていた

彼女達も戦っている…

 

「巫女様?どうかしたの?暗い顔して」

 

「音々ちゃんみたいな子も戦ってるんだね、辛くないのかなって…」

 

「巫女さん優しい…」

 

「音々達はあんまり出撃することはないんだけど、敵意を向ける人達は全力で迎え撃ってるよ」

 

「アンリさんがいた時はほとんど出撃しなかったよね、あの頃と比べて人も少なくなっちゃったし…」

 

「アンリ、さん…?」

 

「その人はこのA.R.K.を立ち上げた創設者、A.R.K.の艦長だ」

 

そこへガルアスと冬華が来た

 

「音々、琴々、ディノンが呼んでいたぞ、急用だそうだ」

 

「なんだろ?」

 

「さあ?じゃ、巫女様、私達行くね!」

 

二人は行ってしまい、白葉は軽く手を降っていた

 

「聖王の巫女様、我々に協力してくれる気になったのですね」

 

「ま、まだ検討するだけです、協力するなんてまだ…」

 

「いいのです、我々の話しを聞いて欲しかった、それでも満足です」

 

「……あの、アンリさんに会いたいんです、その人に会って直接話させてください」

 

「…それ、無理だよ…」

 

呟くように冬華が言う

 

「アンリ様は過去に襲ってきた敵を迎撃する為に力を使い果たし、今は眠っています」

 

「そんな…」

 

「ですが、アンリ様の意思を伝える事ができる人物がいます」

 

「…本当にそれはアンリさんの意思なんですか?」

 

「ええ、彼女の危険察知能力は高く、危険が来れば彼が意思として口伝えしてくれます」

 

「巫女が撃った魔法も初弾は外すって事は聞いていた…予定通り」

 

「うっ…ごめんなさい…」

 

ガルアスは優しそうに笑う

 

「冬華、艦長室へ案内を」

 

「わかった…」

 

「あ、あの、カイアは…?」

 

「カイアはディノンの雑用で行ってしまいましたが、呼び戻しましょうか?」

 

「だ、大丈夫です」

 

お仕事の邪魔しちゃ悪いもんね…

冬華は歩き出し、振り返り白葉を見る、ついて来いって事なのだろう

白葉は慌てて追い掛け、二人は歩き出す

 

「良い子だ、もっとあの時穏便に済ませていたら…あの嬢は…」

 

いや、後悔はよそうと躊躇いを払うガルアス

その頃、白葉達は廊下を歩いていた

 

「…巫女」

 

歩いていた冬華が止まった、どうやら着いたようだ

 

「ありがとうございます冬華さん、案内してくれて」

 

感謝を込めて笑顔で応える白葉

 

「い、いや…別に…」

 

ん?なんだろ、少し赤いけど照れてるのかな?

 

「巫女」

 

「は、はい」

 

「私も何か役に立つ、もし何かあれば、呼んで…」

 

「うん、ありがとう」

 

冬華は満足そうに去っていった

そして、白葉は艦長室に入り、そこには書類を整理する男性の姿があった

 

「やあ、待ってたよ、君が聖王の巫女様なんだよね?」

 

「は、はい、初めまして、私、白葉です!」

 

「僕は藤堂、A.R.K.アジン、本当はしがない医者さ」

 

藤堂さんはどことなく虚弱で、少し弱々しい

 

「お医者様なんですか」

 

「そう、口伝て事が出来なかったら此処にはいられなかったけどね」

 

そう言い、薄いカーテンで遮られているベッドの前に立った

 

「さ、聖王の巫女様こちらへ、アンリ様もお話しをしたがってますよ」

 

白葉は言われるがまま近づいた、カーテンは開け放たれ、そこには桃髪長髪の少女、寝ているように見えるが起きそうな気配はまったく感じられない

すると藤堂はアンリの手を握り、空いた手を差し出した

 

「僕はこうやってアンリ様の意識を伝える事ができる、いきなり口伝えしても僕が彼女の声を伝えてるって信用できないもんね」

 

あはは、などと笑う、白葉は恐る恐る藤堂の手を握った

 

『こうして逢うのは初めてですね?私はアンリです』

 

頭の中に少女の声が響いた、この声がアンリのものなのだろう

 

『まずは貴女に謝らなければならない事が沢山ありますね…数々の無礼、貴女の半身を…本当にごめんなさい…』

 

「わ、私は…」

 

『平和な世界になったら私を討っても構いません、私にはそれだけのされる道理があります…』

 

「…絶対に嫌です、死には悲しい事がいっぱいに広がります…でも許したわけじゃないですから」

 

いつもの白葉とは違いおどおどはしていない

意思は伝えないと届かないから臆してはいけない

 

『…強いんですね、白葉さんは…』

 

「……黒葉ならそう言うかなって…だから教えてください、どうして私がそこまでして必要だったのか、死者を復活させる事が正しいのか」

 

『わかりました、第一に白葉さんがどうしても必要だったのは時の神クロノスを宿す為』

 

「クロノス…?」

 

『白葉さんには時の神の力があるんです、その特異な魔法が特徴です』

 

「ま、待って、クロノスって、

時間の神様なんだよね?それって人の生死を変えられる神様なんかじゃ…」

 

『死んだ者の時間を戻し、生者として生きるように時間を止めれば、誰も死なない世界が生まれる、死というリミットを解除させることが可能なんです』

 

「……非人道的です…」

 

『…わかっています、ですがこの先、また報われない人が死に、幾多の悲しみが増えます、A.R.K.の皆も失った人達を望んでいます…』

 

「………」

 

そこで脳裏を横切ったのは笑顔のカイアの顔

彼は…サヤさんの声がどうしても聞きたいはず…

 

『それともう一つ…彼…影月理樹、何やら不思議な力を感じると埋葬機関の人が察知しています、予知してみたんですが…遠くない未来、彼は死にます』

 

「──!!?」

 

理樹さんが……そんなの嫌だ

嫌だ!これ以上大切な人を失いたくない…

 

『あのワイヤーの男……なるほど貴女と交戦して、貴女の周りの人を調べてるようですね…』

 

「わ、たしの…せい……また…」

 

止めなきゃ!

そう思った時気づいた、黒葉がいないのに勝てるわけがない、行ってもただの犬死だ

 

『未来はいつも残酷……私も未来が見えたとしても変えるだけの力がなかった、沢山の…沢山の家族を敵から守れず失って…だから貴女には私と同じ思いをしてほしくない』

 

「アンリさん…」

 

アンリさんはこの感情を幾つも味わって来たのだろう、私なんか到底耐えられない

 

「理樹さんは…私が守りたい、でも私には力が無い」

 

『貴女が望めば未来をも変えられる、貴女は聖王の巫女なんですから』

 

「………」

 

『恐れなくても大丈夫ですよ、誰も悲しまない世界を貴女が創るんです』

 

「誰も悲しまない世界を…」

 

黒葉ならこんな時どうするのだろう……

もし、私が全て断れば、何も救えない…

だったら…

 

「私、神様になります」

 

『ありがとう…共に世界を平和にしていきましょうね』

 

私がやらなきゃ…私が幸せになれなかったぶん、みんなが幸せになればきっと、私も幸せになれるよね…

きっと……きっと…

理樹さんを守らなきゃ…

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