白黒メソッド   作:ひよこ・ザ・リッパー

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4話

なんだか温かい…

それに騒がしいわ…

 

「……っ」

 

「ようやく起きたわね」

 

「っ!?スティア、それに刺守…」

 

茶髪で腰まで伸びた長髪の女性はスティア、人間の中では最強の化け物で戦闘狂

あと、尋常じゃない甘党

 

「処置は施したがあまり無理すると傷口が開くぞ」

 

ピンク髪で肩まで伸ばしている女性は刺守

どちらとも人形の時は敵対していた、けれど理樹のおかけで和解できた、黒葉の数少ない友人

 

「アンタもなんでわざわざこの街まで連れて来たのよ」

 

「えぇーだって理樹さんに見せたら大事ですよ!美冬さんに任せてもよかったんですけど、理樹さんの事で手一杯でしたしねーなんか埋葬機関が急に活発になりましたし」

 

などと語るリィム

黒葉は辺りを見渡すと見覚えがある雰囲気の喫茶店だ、椅子に寝させられたせいか傷のせいか、少し身体が痛い

 

「私、この街に帰ってきたの?」

 

理樹の街とは少し距離が離れている…

 

「ああ、血だらけのお前を何故か荷馬車に乗せて連れてきた、意味がわからんがとりあえず治療したって訳だ、何があった?」

 

リィム…貴方はいつも変な事をやっているけれど、やっぱり訳が分らないわ

 

「…ちょっとヘマしただけよ…」

 

「ふーん、アンタ弱くなったんじゃないの?たかが人間一人にやられたんだって?」

 

「貴方みたいな化け物と一緒にしないでちょうだい……でも、そうかもね…」

 

黒葉は少し悲しそうに笑う

白葉は守れず、自分は生きている、泣けてくるわ

 

「…ほら食べなさいよ」

 

そう言い、いつの間にか注文していた食いかけのパフェを黒葉のテーブルに置いた、彼女なりの気の使い方だろう

 

「うわ、ほぼ入ってないパフェを、しかも溶けかけのドロドロになったアイスのパフェをあげるとか、お前鬼畜か」

 

「不器用ですねぇ…ここは私がかんせいな心意気を見せてあげましょう!マスター!パフェを二つ!理樹さんのつけで!」

 

「寛大な、な」

 

「おっと〜…」

 

可笑しくて少し笑ってしまう、こっちが落ち込んでもお構いなしのコメディを繰り広げ…落ち込んでるこっちが馬鹿みたいじゃない

 

「よし、それじゃ行くわよ!」

 

そしてこの唐突、相変わらずわけがわからないわ

 

「行くって何処によ?」

 

「決まってるじゃない、理樹の街よ、そんなに強いなら私がぶっ飛ばしてやるわ!」

 

「白葉さんも助けないとですしね〜」

 

「リィム…貴方気付いてたの?」

 

白葉がさらわれたとは一言も言ってはない筈なのに

 

「まあ、なんか今の黒葉さんは欠けてるような、そんな感じがしてますからねぇ」

 

驚いた、本当にこの子は何者なのだろうと内心驚く

 

「行くのは構わないが、黒葉お前に託したいモノがある」

 

「私に?」

 

「そう、人間のお前には必要ないと思ってたんだが、今のお前には必要だろう、ついて来い」

 

そう言われ、私は刺守について行った

喫茶店のガレージ、そこからさらに地下の倉庫に入った

 

「埃っぽいわね」

 

「まあ、地下だしな」

 

刺守は電気をつけた

 

「──!!」

 

そこにいたのは三年前にスティア達に破壊されたと思っていた姉妹達、十二体の人形が眠るように保管されていた

 

「シスタードール…」

 

「核となるコアドールが死んで、糸が切れた彼女達は余命を人間のために使った」

 

「それってどういうことなの?」

 

「この喫茶店ガーデンで働いて、教会で聖夜には子供達を喜ばした、核となったお前が復讐心を無くし、理樹に対する感情が感化したと言うべきか、愛は時として科学では証明できない事を起こす、これもその事例だろうな」

 

「………」

 

黒葉は静かに姉妹達に近づき、一人の人形の頬に触れる

温度は感じない、まるで見た目は人間と変わらない女達は眠っているようにしか見えない

 

「それでも、彼女達は罪を犯したのよ、私も含め…」

 

「お前達が殺した人間は研究所の奴等だけだろ」

 

「え…」

 

「お前は吸血鬼の馬鹿共の中ではかなり劣ってたみたいだしな、建物の器物破損はそりゃすごい額だけど、死者はゼロだ」

 

「そんなはずないわ、私達は…」

 

「自惚れるなよ」

 

「あぅ」

 

軽くデコピンされてしまう

 

「私やスティア、教会を敵に回してそう簡単に人が殺せると思うな、ま、お前の場合理樹が強く関わったせいもあるな、暴れようとしたら必ず現れたらしいじゃないか」

 

「………」

 

そう、彼はいつだって現れて私の邪魔をした

だからあんな感情まで生まれてしまったのだ…

 

「それに、血に染まった罪はあいつが持ってったさ…」

 

刺守が見る先には

昔の私の姿、コアドールの人形があった

 

「…後ろ向きに歩くのも構わないけど、そろそろ前向きに歩いたらどうだ、人形師」

 

「前向きに…」

 

罪の後ろめたさに私は…

静かに過ごしたい、それは確かだからこそ、過去も連れて前を向いて行かなければならない

 

「そうね、らしくなかったわ、でもこの悩んだりするのが人間なんでしょ?だったらちょうどいいわ」

 

そう、私は皮肉っぽいほうがちょうどいい

 

「上出来だ、ほら」

 

刺守は指輪を黒葉に投げ渡した

 

「私、そちらの趣味はないのだけれど?」

 

「馬鹿言え、それは私が造った、このシスタードールを魔力によって使役する為の物だ、お前には必要だろう?」

 

「…そうね、そっちのほうが人形師らしいわ、受け取っておくわ」

 

中指に指輪をはめると、姉妹達は粒子となって消えた

この指輪は魔具の一種なのだろう、この指輪から姉妹達を感じる

 

「媒体は魔力形成されたコアドールの核、その為人形が壊されても再生するが魔力を喰われるぞ」

 

「平気よ、その方が彼女達と繋がっているようでいいわ」

 

「よし、ならいくぞ」

 

「ええ」

 

外へ出ると黒いワゴン車が止めてありスティアとリィムがいた、この車で行くのだろう

 

「そういえば刺守さん、店番はどうするんです?鍵開けっ放しでしたけど」

 

「あー…別にいいだろ、どうせ誰も来ないんだし」

 

そういうものなのか…

するとそこへ黒髪の胸のとこまで伸ばしたセミロングの学生服を着た少女が荷物を抱えてやって来た

 

「お、真桜じゃないか」

 

「刺守さん、おや、それにスティアとリィム…黒葉?」

 

黒葉の名前だけ何故か嫌そうに言う

それもそのはず、彼女は神教会という怪異対抗組織の一員

過去にも幾度となくコアドールの邪魔をした、いわば黒葉のライバル的存在

 

「あら、相変わらず成長してなかったから一瞬でわかったわ、ほんと小さいのね」

 

黒葉は真桜の胸を見て鼻で笑う、明らかな挑発である

この二人は今ではよく喧嘩する仲

 

「貴方だって似たようなものでしょうが!」

 

「私は人間になりたてよ?残念だけれど成長も進んでるわ」

 

「…やっぱり貴方は地獄に落とした方がいいようですね」

 

真桜は帯刀していた刀に手を掛ける

 

「出来るのかしら、いつも泣き帰ってたくせに」

 

「…ほう」

 

バチバチと視線で火花を散らす二人

…仲が良い

 

「おーい、お前らそこらへんにしとけー」

 

もちろんこの二人は争うつもりはない、挨拶程度なもので、すぐに構えを解いた

 

「……ですね、それより皆さんなにを?」

 

「ちょっと黒葉の用事をな」

 

「黒葉の?何かあったんですか?」

 

真桜がよく見ると黒葉は包帯を巻かれ怪我しているのがわかった

それに気づいた真桜は真剣な表情へと変わった

 

「…私も行きます」

 

「真桜?どうして貴方が」

 

「大切な友達を傷つけられて怒らない友人はいません、こんな酷い傷…!なんだかすごくムカつきます!」

 

「おやおや〜」

 

これは面白いとリィムがニヤニヤと見ている

 

「あ、あの、真桜?別に私は平気なのだけれど…」

 

義理堅い性格だとは思っていたけれど…

この子、こんなに熱かったかしら…

 

「刺守さん、お願いします!連れてってください!」

 

「しかし、行くのは理樹の街だぞ、埋葬機関と神教会のいざこざはまずいんじゃないのか?」

 

「神教会の制服は着てません、この学生服なら容易にも街に入れますし、それに」

 

真桜はスティアを見る

 

「手綱を引ける人が必要ですよね」

 

「なんで私見ながら言うのよー学生の分際で〜」

 

「そうだな…街中を破壊されたら修理費なんて出すつもりもないし、採用」

 

いざとなれば神教会から匿名で出してもらおうという魂胆、ゲスい

 

「ありがとうございます、刺守さん、これ、ガーデンに置かせてもらいますね」

 

そう言い真桜は買物袋を置きにガーデンに入り、戻ってきた

 

「ホント、神教会って他人の事情に関わりたがるのね」

 

「これは神教会の仕事じゃありません」

 

真桜は車の後方ドアを開けた

 

「私の私情です」

 

そう言い、真桜は車に乗り込んだ

しかし乗り込んだ隣にはリィムが既に乗っていてニヤニヤとしていた

 

「な、なんですか?」

 

「『私の私情です』キリッ」

 

さっきの真桜の言動を身振りで真似し悪戯っぽく笑っていた

 

「ッッッ!?」

 

私はなんて恥ずかしい事を真顔で…

真桜は先ほどの自身を思い出し恥じた

 

「恥ずかしがるなら最初から言わなきゃいいですのに〜」

 

リィムが真桜を弄って遊んでいると刺守達が車に乗り込んだ、運転手は刺守で助手席にスティアが乗っている

 

「それで、行き先は?」

 

「ふふ、決まっている」

 

怪しく笑った刺守は車を走らせた

 

───

 

とある学校の前、そこへ車が一台止まった

怪しそうに横切る生徒の中に、友人と帰る理樹がいた

 

「確保ぉ!」

 

黒いワゴン車から頭にマフラーを巻いたスティアとリィムが飛び出してきた

 

「え?」

 

「な、なんだぁ!?」

 

スティア達は慣れた手つきで理樹を担いだ

 

「なっ!?理樹ぃ!?」

 

「海斗!海斗ぉー!」

 

「待ってろ今助け──」

 

「あ、早朝曲がり角で誰かにぶつかってラブロマンスが始まると思って、ずっと待機してたが結局誰も通らず放課後この時間までスタンバイしている子がー!」

 

やたら長ったらしい台詞を言いリィムは適当な方向を指差した

 

「お?お?」

 

かいとはこんらんした。

かいとはこんらんしている、こうどうができない。

 

「海斗ぉ!?」

 

その隙に理樹を車に連れ込み、車は走り出した

 

「…まったく、やる事が野蛮ですよ」

 

呆れたように言う真桜

 

「うるさいわね、これが手っ取り早いのよ」

 

「その声…真桜にスティア?それに刺守さんも…」

 

「やほー理樹」

 

「お久しぶりです、理樹さん」

 

「また会ったな影月少年」

 

思わぬ面子に理樹は驚いていた、もちろんいきなり連れ去られたのも驚きだが

 

「リィムに…黒葉!」

 

「……」

 

黒葉はバツが悪そうにしていた、怪我をしているのを心配かけてしまうし、家を無断で出て行って三日にもなるのだから

 

「心配したんだよ!今まで何処に…それにその怪我」

 

「ごめんなさい理樹、心配させるつもりはなかったのだけれど…」

 

「ううん、無事ならいいんだ…よかった」

 

「さてな、果たして無事と言える状況か」

 

「刺守さん、それってどういう事なんですか?」

 

「それは…」

 

「おっと、説明はもうちょっと待ってくれ、まだ一人足りてないしな」

 

「足りてないって、誰がよ?」

 

その時だった、いきなり目の前に人影が現れた、刺守はわかってたかのように車を止めた

 

「ん…お前達」

 

人影は美冬だった、さらわれた理樹を追って来たのだろう

 

「乗れ」

 

後方ドアが開き、美冬はなにも躊躇わず車に乗り込み、車は走り出した

 

「何と言うか、まあ、大所帯だな」

 

美冬の開口一番の応えもわかる

 

「ですね、それでこれで揃ったという訳ですよね?説明、お願いできますか黒葉、貴方に何が起きたのか」

 

「……そうね」

 

黒葉は手短にあの日の夜の事を説明した

A.R.K.が白葉を連れ去ったこと、埋葬機関が関与していること、聖王の巫女のこと

 

「なるほどね、よくわかんないけど、とりあえずA.R.K.ってのをぶっ飛ばせばいいのね」

 

「スティアは黙ってようなー」

 

「飛空艇所持に不可視の技術、索敵魔法で引っかかるということは機械的技術が高い組織なのでしょうか…」

 

「驚きですねぇ、この街の真上にそんなものがあったなんて」

 

「真桜、神教会は何かA.R.K.の情報を持ってないのか?」

 

「A.R.K.ですか…確かにその組織があったのを資料で確認していましたが、彼等は迫害を受けている能力者を保護している能力者組織であって決して戦闘組織ではないはずです」

 

「だが現状、黒葉は襲われ白葉を奪われ、保護目的なら黒葉も連れて行くのが妥当だけれど、何か都合が悪かったのか」

 

「そればっかりは本人達に聞くしかありませんよねぇ」

 

「みんな、もしかして乗り込むつもりなの?」

 

「ああ、そうだな」

 

「どうやって?聞く限りじゃ、空にいるんだよね」

 

そこで一同は黙った

確かに空にいるのでは手出しができない

 

「ねぇ、理樹、そう言えばA.R.K.の女の子達とお茶してたわよね?」

 

ふと黒葉が思いだしたかのように訪ねた

 

「う、うん」

 

「その二人、地上へはどうやって来たの?」

 

「地上で停泊している隙を狙って抜け出したって、確か地上で買い物する人がいるらしくて、その間は止まってるらしいよ」

 

やっぱりあの二人は馬鹿だ、貴重な情報を言ってるなんて…

でも逆に言えば、それほど平和に暮らしていたからなのか…

 

「なるほど、いい情報だ影月少年」

 

「問題は不可視とその救出最中地上に居させるだな…」

 

「それは任せてください!」

 

などと意気揚々に言うリィム、余程自信があるのだろう

 

「私には優秀なお弟子さんがいますし、システムトラブルなんてお手の物ですよ、一度入れれば飛べなくさせることなんて余裕です」

 

「それ、うちの職員ですけどね」

 

「……何か、僕にできないかな?」

 

「理樹…」

 

美冬は理樹を見る、できる限り危険な事をさせたくはないのだろう

 

「僕は美冬みたいに力はないし、リィムみたいに役に立つ事を考えられない、でも僕も白葉を助ける為に何かしたい、白葉は僕達の家族なんだから」

 

「ほう、なるほどな、影月少年の意見はわかった」

 

「刺守、理樹を危険な事に巻き込むつもりか?そんなの私は許さないぞ」

 

「美冬の意見ももっとも、安心しろ、私の助手を努めてもらう、私となら前線にも出ないし比較的に安全だ」

 

「……」

 

しかし美冬は不満なのだろう、万が一起こる可能性だって否定はできないのだから

 

「それで、攻め込むのはいつなの?私は今すぐにでもぶっ飛ばしてやるわよ」

 

「相変わらずね」

 

「まあ、脳筋だしな」

「ですねー」

 

「……なによ?」

 

「決行は明日の夜だ、私にも準備があるしな」

 

「わかりました、それまで各自待機ですね」

 

白葉奪還は明日に決まった

黒葉は少し不安だった、取り戻せたとしてこれまでの日常が戻ってくるとは限らない

でも、この道しかない…

 

「ねぇ、黒葉」

 

すると心配そうに理樹が話しかけてきた

 

「家に帰って来てくれるよね?父さんや母さん、雛姫達も心配してたんだ、だから」

 

「…私、帰ってもいいの?」

 

「もちろん、黒葉だって家族なんだ」

 

「……本当に貴方って…」

 

私は理樹の家に帰ることとなった

雛姫達にはこっぴどく怒られたけど、その分、優しくおかえりと言ってくれた、幸せと思うと不幸を呼んでしまうのに幸せと感じてしまう…また私は…

 

───

 

夜になり、眠れない黒葉は夜の散歩に出掛けていた

 

「…」

 

考えてしまうのは、このまま理樹の傍にいていいのかという疑問

人間になれたとしても過ぎた力を持っているから狙われ、迷惑を掛けてしまっている…いっそ、白葉を奪い返したら、理樹の前から消えた方がいいのじゃないのかと思うほど…

 

「黒葉!ちょっと待って!」

 

呼び止める声に振り返ればそこには理樹がいた

まさかつけられたのか

 

「理樹、どうして…」

 

「話そうと思って部屋に行こうとしてたら外に出掛ける黒葉を見かけたからさ、追って来たんだ」

 

「そう…ごめんなさい、すぐ戻るわ…」

 

そう言い理樹の横を過ぎ去ろうとするが右手を掴まれた

 

「理樹?」

 

「少し散歩しない?言ったよね、話がしたいって」

 

「……わかったわ」

 

理樹は手を離し、二人は歩き出した

この街は比較的に人間に優しい街だ、埋葬機関がちゃんと働いているからなのか…皮肉ね…

 

「ねぇ、黒葉、もしかして何か悩んでる?」

 

「えっ」

 

予想外だった、見透かされていたのか

 

「車から会った時からなんだか無理しているように見えたから、よかったら話して?僕でよかったら力になるよ」

 

驚いた、普段は鈍感なのに…どうしてこんな時に…

 

「…私ね、このまま理樹の傍にいていいのかわからないの、化け物の私は人間の貴方に迷惑を掛けてばかり」

 

「黒葉…」

 

いつも強気な彼女が弱音を吐くのは珍しい

今だって泣き出しそうだ

 

「幸せを感じたらいつもそうなの、手にしたと思ったらこぼれ落ちる、このまま終わるならきっと私は貴方の傍にいない方がいい」

 

「だったら僕は悲しいよ、黒葉も白葉もいなくなったら、そんなの想像もしたくないし、絶対させない」

 

そう言い理樹は立ち止まり、黒葉の手を握った

不思議な事に手を握られただけで不安が晴れていく…

何故だろう…すごく不思議…

 

「黒葉は化け物なんかじゃない、今も昔も、幸せだって一人じゃこぼれちゃうから、みんなで掬って支えればいいんだよ」

 

「けれど私は…貴方が思うほど人間じゃない!化け物だからきっと理樹の家族を壊しちゃう!それだけは嫌なの!傷つけたくない、絶対に嫌なのよ!」

 

黒葉は感情的になってしまい、夜だからって関係なく叫ぶ、彼女は恐れているんだ、今の関係が壊れ、失うのを

 

「黒葉…」

 

すると理樹はそっと黒葉を抱き寄せ、子供をあやすように頭を軽く撫でる

それはとても安心感を与えてくれて、不安を取り除いてくれるような気がして…

 

「怖かったんだね…僕ら家族の事を考えて、でもね、感情を吐き出してくれたからわかったよ、君は一人じゃない」

 

「私はっ…!」

 

「大丈夫、家族の僕等にはいくらだって迷惑を掛けていいんだ、化け物だと言い張る黒葉も少し素直じゃなくて厳しい黒葉も、全部包み込むから、だから幸せになっていいんだ」

 

幸せ…それは望んではいけない…けれど彼はなってもいいと言った

それは、とても嬉しくて、そして縛っていた鎖が解かれた気がした

 

「いいの?不幸になるかもしれないのよ」

 

「うん、幸せになれ」

 

ずっと望んでいた、幸せになりたいと

不幸を呼ぶから望んではいけないって…

けれど、幸せになっていい

その言葉は心に響き、次第に嬉しくて泣き出してしまう

 

「うぅっ…!」

 

泣きじゃくる少女を理樹は優しく撫で、気が済むまで泣かせた、今のこの少女には感情を押し殺してほしくなかったから

 

───

 

しばらく経ち、落ち着いた黒葉は照れくさそうに下を向いて無言だった

子供みたいに泣く自身が恥ずかしくて仕方なかったのだ

 

「落ち着いた?」

 

「…ええ」

 

口数は昼間と変わらなく少ないけど、もう安心だと理樹は確信していた

 

「屈辱だわ…」

 

「えぇ〜…」

 

余程涙を見せたのが嫌だったのか黒葉は理樹の顔を見ない

 

「家族を普通、抱きしめるかしら」

 

「妹みたいな黒葉放っておけなくて、やっぱまずかったかな?」

 

「ふーん、妹ね、理樹から見て私は妹なのね」

 

「え、うん、雛姫達と一緒ぐらい大事だよ、大切な妹達だ」

 

「…家族としての幸せはくれるのに、女としての…」

 

黒葉は口ごもり、小さな声になる

 

「え?」

 

「なんでもないわ、鈍感さん」

 

「ど、鈍感って…」

 

黒葉は少し足取り軽く歩き出した

彼女は満足していた、だからこそ白葉にも伝えたかった、彼のもとで幸せになってもいいのだと…

 

 

 

 

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