白黒メソッド   作:ひよこ・ザ・リッパー

5 / 8
5話

私は昔から幸せを望むと失ってしまう

だからこそ周りに幸せになってほしい

理樹にもA.R.K.のみんなにも、誰もが笑顔の世界が作れるなら、私は聖王の巫女として生きる

 

「………」

 

私は白と黒、そしてウィンタースカイ色の制服を着ていた

白葉用にフリルが少なめのロリータ風にアレンジされ、平べったい円上の帽子を被っている

いつもと違う服装だけど、可愛くて気に入っている

なんだか嬉しくてくるくる回って衣装の良さを確認する

 

「似合ってるな」

 

いつの間にかカイアが扉の前に立っていた

気づかなかった…

 

「あ、あ、いや、これはその…」

 

「隠すなって、ホント、女の子って好きだよな」

 

「う、うぅ…馬鹿にしてます…?」

 

「いやいや、サヤもそういう風に喜んでたなって、可愛いよ」

 

「か、かわっ…!」

 

本人は至って真面目に言ったのだろう

 

「まあ、緊張してなくてよかったよ」

 

「そ、それは…」

 

「困った事があったら言ってくれな、兄貴分として頼ってもらった方が俺としても嬉しいし」

 

カイアはA.R.K.の小さい子達の兄役として活躍している

雑務をこなしてる分、頼りになるようだ

 

「………」

 

何故、カイアがこんなに心配してくれているのか

それは今日、この日、聖王の巫女のとして祝福を受け、力を手に入れる

どんな風にやるかわかってなくて怖いのは事実

 

「白葉、手を出して」

 

「こ、こうですか?」

 

カイアは近づき、広げられた掌に数個のアメを乗せる

 

「甘い物食うと落ち着くぞ」

 

笑うカイア

心配してくれての行動だろう、白葉はアメを包み紙から取り出し、アメを食べる

 

「…!」

 

不思議な事にこのアメは食べたことの無い不思議な味のアメだ、甘くてクリーミー…ミルク系のアメだろう

 

「美味しいだろ?そのアメ」

 

「は、はい、なんだか懐かしいような味です…美味しい…」

 

「気に入ってくれてよかった」

 

「それにしてもどうしてアメなんか持ち歩いてるんですか?」

 

「チビ達が機嫌悪い時とか、こういうお菓子がある笑顔になるんだ」

 

「ということはカイア、私を子供扱いしましたね」

 

「違うのか?」

 

平然と言っているということは悪意はないのだけれど、複雑な気分だ

 

「違います!カイアといい理樹さんといい…どうして私を子供みたいに…」

 

「理樹?」

 

「あ、えっと、お世話になってる人です、とても優しくて、私の大切な人…カイアみたくお菓子作りも上手なんですよ」

 

「お、いいな、お菓子作る奴に悪い奴なんていない、お菓子は誰かを笑顔に出来るアイテムだからな」

 

なかなか好感触だったのか、うんうんと頷いていた

 

「なぁ、よかったら白葉のこと話してくれないか?昔のこととかさ」

 

「昔…」

 

白葉の声のトーンが明らかに落ちる

私の昔は…研究所の実験体…コアドールとしての昔しかない

 

「私の過去は、気持ち悪いですよ、きっと嫌いになってしまいます…」

 

「だけど今は理樹って奴のとこにいる、ということはさ、俺も平気だと思うぜ、いや断言する!」

 

「ど、どうして…」

 

「時々苦しそうな白葉を見てさ、何かしてあげたいって思うんだ、けど俺は白葉の事をよく知らない、励ましてやりたいって思った、だからこそ知りたいんだ」

 

彼の真っ直ぐな想い、だからこそ辛い

黙っていたいけれど、嘘をつきたくないのも事実…

私は…

 

「……三年前の浅樹市、その怪異事件の首謀者の一人だとしても…」

 

「え…し、白葉、ちょっとそれはシャレになってないって…嘘だろ?」

 

今ので引き下がってくれれば傷つけることもなかったのにと白葉は後悔した

 

「人形師コアドール、それは私…」

 

「………」

 

「サヤさんの死に直接関わってなくても、私は怪異事件に関わっているから、カイアは、私を裁く権利があります…望むなら私を殺してください……」

 

どうせなら人間として裁かれたい、そう思えた

 

「……それこそシャレになってないって、また妹を失うなんてごめんだ」

 

「でも、私は!」

 

するとカイアは優しく白葉の頭を撫でた

唐突だったけれど、荒れそうになった心を静めてくれる

 

「ごめんな、そんな辛い事を話させて、兄貴分失格だな…」

 

「カイア…どうしてですか…私が憎いでしょう?」

 

「いいや」

 

「嘘です…私は仇なんですよ…」

 

「コアドールは死んだ、それぐらい知ってる、生まれ変わりが白葉だって知らなかったけどさ、最期は人間を守って死んだんだろ、でも俺は死んだって聞いた時嬉しくなかった、いい奴は報われなきゃダメなんだ」

 

「そんな…優しすぎます、おかしいですよ…コアドール、私は優しくなんか…」

 

「コアドールは実験体として人間を媒体とされ生み出された兵器、養子として引き取った医学研究者リエルは無垢な少女と医学の研究をしていた」

 

「それは…」

 

昔の私だ…

 

「でもある日、才があるリエル研究員は他の研究員に疎まれ、生物兵器として変貌させられ、無垢な少女はリエル研究員が実験に使われたのを知らず、リエル研究員の為と偽れ、その研究員達の実験を手伝う事となる、自身を使った兵器として…」

 

「どうしてカイアがそれを…」

 

「教会のクリスって人が教えてくれたんだ、本当はもっと詳しく…無垢な少女としての君とコアドールとして死ぬ君を」

 

「…ごめんなさい」

 

「謝るなって、そこまでされて人間を守って死んだ、報われる事が一生もなかったんだと思ったら苦しくなった、だから俺はコアドールには死んでほしくなかった」

 

「おかしいですよ…どうして許せるんですか…」

 

「簡単だよ」

 

カイアは明るい声で微笑む

 

「俺は白葉の兄ちゃんだからな」

 

そんな理由で…

けれど嬉しかった、話せば嫌われ、また辛い思いをすると思っていたから…

だから、嬉しい…

 

「ごめん、なさい…!」

 

白葉は小さく泣いた

その間もカイアはずっと頭を撫でてやっていた

妹を失った彼だからこそ、許せたのだろう、報われない辛さを知っていたから

 

「白葉は兄貴である俺が守ってやる…」

 

するといきなり扉の方から大きな音がし、人が雪崩込むように入ってきた

 

「ちょ!押したの誰だよ!」

 

などと一番下に倒れているルヴェンスが叫ぶ

 

「不覚…」

 

時雨は失態だと言わんばかりに溜め息を漏らしていた

 

「坊ちゃん達!お嬢様達!お怪我はありませんか!?」

 

そこへパーフェクト執事アルスが心配そうに入ってきた

 

「皆さん申し訳ありません〜!」

 

雪崩を起こしたであろうエフィルが謝る

 

「あ、あはは…」

 

「ドジった」

 

音々と琴々もいた

 

「お前達、なにしてんだよ!

?」

 

「おう、親っさんとガルアスもいるぜ」

 

廊下側に立っていたディノンはバレた途端笑い、ガルアスはバツが悪そうにしていた

 

「わ、私は巫女様がちゃんとしているか気になってだな」

 

「なんでぇ、嬢ちゃんが居心地悪そうにしてたっつったら歓迎パーティーを開こうって言ったのは誰でい」

 

「ディノン、貴様…」

 

隠していたであろうガルアスの秘密ごとがバラされ、ガルアスは冷や汗を流していた

 

「ガルアスが焦ってるの…初めてみた……」

 

ぼそっと呟く冬華

 

「み、皆さん…」

 

「よぉー!巫女ちゃん!どんな過去があろうとも俺達は巫女ちゃんを愛してるぜ!」

 

ぐっと親指を立てハニカムルヴェンス、聞かれてしまったのだろう

 

「盗み聞きしてたのか!?」

 

「ムフフ、カイア兄、くっさい台詞感動したよー」

 

「ぷっ…」

 

「音々!心こもってないな!琴々も笑うんじゃねぇ!」

 

「ふ、ふふふ…」

 

あまりの出来事に白葉は笑ってしまう

 

「うむ、笑顔が一番だな、巫女殿」

 

自分を励ましてくれようとしてたんだろう、白葉はそれがわかり、笑顔で泣いていた

 

───

 

私は飛空艇に設備されている展望ホールに呼ばれた

此処は天井が強化ガラスに覆われ、綺麗な植物が広がっている、温室でここは温かい

道なりに歩き中央は大きく開けており、そこには藤堂がいた

 

「藤堂さん、お待たせしました、あの、此処で何を?」

 

「うん、時聖の儀をね」

 

「時聖?」

 

「巫女様にクロノスの力を宿す儀式だよ」

 

「……」

 

緊張しているのだろう、手汗を感じる

それに時聖の儀……そんなのは聞いたことはない、やっぱり神様の話は本当なの…

 

「緊張しなくても大丈夫だよ、クロノス自体は力を持たないから、けれど君に宿す事で巫女様を覚醒させる事ができるんだ、害はない、巫女様次第だね」

 

「…あの、それで、死者を復活させる事が出来るんですよね?」

 

「いいや、力を定着させるにはしばらく掛かるよ、でもゆくゆくは時さえも操り、死というモノを消せる」

 

「……」

 

「もちろん、彼も守れるよ、巫女様の大切な人もね、受け入れてくれますか?」

 

優しく問いかける声は不思議と魔法のように安心を覚えた

 

「はい」

 

藤堂は微笑み、頷く白葉を見て瞳を閉じた

すると地面に魔法陣が発生し辺りを淡く包んだ

高い魔力を感じる

 

「巫女様…」

 

「はい…」

 

白葉は跪き、祈るように両手を握った

少しずつだが自身に魔力が入り込むのを感じ、次第に次第に何かが浸透してくる

しかしそれはふっと消えた

 

「はい、おしまいです」

 

「え?」

 

あまり事にきょとんとした

想像していたのと全然違う…

 

「ふふ、時聖の儀と言っても、巫女様は元々特別な存在でしたから、半覚醒していたのを覚醒させる後押しをするだけでよかったんですよ」

 

「あ、あの、本当に、ですか?」

 

「実感ありませんか?」

 

「はい…」

 

「なるほど…でしたら」

 

藤堂は歩き出した

 

「着いてきて下さい、巫女様に実感を感じさせてあげますよ」

 

微笑んだ藤堂は再び歩き出し、白葉は慌てて追いかける

連れてこられるがまま来たのは、格納庫の厳重にロックされた部屋

部屋は青く淡く光り輝いていて、膨大な魔力を発していた

 

「巫女様、どうぞこちらへ」

 

藤堂の傍に行くと、目の前にはハルバート型の白い魔法の杖があった

白葉が持っていたのを模したのだろう、中央には青い水晶玉がある

 

「これは…?」

 

「巫女様の杖を模して造り、さしずめ聖王の杖ですかね、持ってみてください」

 

白葉は杖を手に取った、魔力に感応し、杖は軽く感じる

 

「そして祈るのです、守るという祈りを、祈ればクロノスが反応するはずですから」

 

「祈る…」

 

すると爆発的な魔力が白葉を包み込み、熱い何かが身体の内側から溢れる

魔力は形を成し、背に白の機械的装甲が光り輝くクリアブルーの羽が左右に三本ずつ浮き

帽子の周りにはクリアブルーの輪が浮き

腰周りスカートには長方形型の装甲が纏う

 

「こ、これって!?」

 

「聖王礼装です、魔力による武装を生成する、巫女様の特殊能力ですね、まだ力が浸透してませんから完璧じゃないですが、どうです?」

 

「まるで私の身体じゃないみたいです…すごく温かい…」

 

尽きることのない魔力を感じ、それにこれなら本当に時をも操れそうなぐらい

 

「巫女様、その力、どうか大切にしてくださいね、純情な力は破壊さえも招きます、巫女様は優しいお方みたいです、だからこそ守る為に力を使ってほしいんです」

 

「守る力……」

 

白葉は少し力を抜き、形成されていた聖王礼装を解除し藤堂を見た

 

「わかりました、聖王の巫女として、過ちを犯しません、約束します」

 

真っ直ぐな瞳で見る白葉を見て、藤堂は嬉しそうに微笑み、頷いた

 

「感謝します」

 

「あ、あの、それで、ですね藤堂さん」

 

「どうかしましたか?」

 

「時間とかわかりませんか?今何時か気になってて」

 

「ふむ」

 

藤堂は腕時計を見る、時刻はもうそろそろ七時を迎えようとしていた

 

「後十分で七時ですね」

 

「そ、そうなんですか!そろそろ行かないと…!」

 

「おや、何か約束事ですか?」

 

「はい、皆さんが歓迎パーティーを開いてくれるって、それで七時に約束をしてて…」

 

「お〜いいですねぇ、皆さんも粋なことを、だとしたら引き留めるのは悪いですね、早く向かってあげてください」

 

「はい!ありがとうございます藤堂さん!」

 

白葉は嬉しそうに格納庫を後にし、格納庫の扉前には壁に寄りかかるカイアがいた

 

「あ、あれ?カイア?」

 

「よ、迎えに来たぜ、約束の時間二分過ぎてるしな」

 

「え、でもさっき藤堂さんが十分前って…」

 

「あの人また電池切れかけた時計を付けてるのか…本当におっちょこちょいだなあの人…」

 

「えぇ!?い、急がないと!」

 

「大丈夫だって、ちゃんとみんな理由知ってるしさ、急がず行こうか」

 

それは転んでは危ないと察したカイアなりの優しさだったのだろう

 

「は、はい、ありがとうございます」

 

カイアと白葉は歩き出した

 

「そういや、かっこいい杖だな」

 

カイアは白葉が持ってる杖を見て言う

 

「聖王の杖らしいですよ、でもどちらかと言うと可愛いですよ?」

 

「か、可愛い…そ、そうなのか…」

 

苦笑するカイア

可愛い?というカイアの疑問はそっと心にしまうカイア

 

「この力で…サヤさんを、みんなの笑顔を取り戻せます…これで…」

 

「楽しみだな、サヤに会えたら一番に紹介したいな白葉の事」

 

「と、友達になれるでしょうか…?」

 

それは素直に思った感情だ、彼は私に似ていると言った、だから友達になれそうな気がした

 

「なれるさ!サヤも白葉もいい子だし、保証する」

 

気づけば食堂の扉の前まで着き、二人は同時に入った

するとクラッカーが鳴り響いた

 

「ようこそ!A.R.K.へ!あーんどよっろしくね!巫女様!」

 

音々が白葉に近づき、手を引っ張り白葉は前に出た

テーブルにはご馳走と辺りには飾りつけ、そしてA.R.K.の皆の笑顔が広がっていた

 

「皆さん…」

 

「よーし、盛り上げるぞ!」

 

そうカイアが張り切った時だった

飛空艇が揺れ動いた

 

「この揺れは?」

 

『こちらブリッジ、乗組員全員につぐ、本艦はシステムハッキングと思われる問題により三番から五番エンジンが停止、不時着をします』

 

「マジかよ…こっちは浮いてんのにシステムハッキングだと?外からの影響も受けないようにしてんのによ…」

 

焦ったようにルヴェンスが呟く

 

「まさか、内部に敵が?」

 

『A.R.K.騎士はシステムハッキング者を特定する為、艦内を捜索、特務騎士は安全のため聖王の巫女様を展望ホールに、繰り返します』

 

「パーティーの邪魔する奴は、俺っち達に任せな、カイアはしっかりと任せたぜ」

 

そう言い、ルヴェンス達は慌ただしく行ってしまう

 

「俺達も急がないと、行こう、白葉」

 

「は、はい!あの、一つ質問させてください、皆さん落ち着いてましたが、いつもここは襲撃を?」

 

「ああ、政府や化け物達からしたら、A.R.K.は所属不明の意味のわからないサイキック集団らしいからな」

 

そんな…A.R.K.のみんなはこんなにも優しいのに…どうして…

 

「それなら私も戦います、皆さんを守らないと!」

 

「いや、それはだめだ」

 

カイアは首を横に振り、否定した

 

「白葉はA.R.K.の巫女様、政府に見つかるわけにはいかない」

 

「っ…」

 

確かに自分が出て行っても力を示し、さらにA.R.K.が危険視され、世界さえも敵に回してしかねない…けれど…

 

「安心しろって」

 

カイアは優しい声で、白葉の頭を軽く優しく撫でるようにぽんぽんと叩いた

 

「俺達はそんなに弱くないしさ、寧ろ俺達は白葉が危険な目にあってほしくない、だから安心させるためにも行こう」

 

カイアは手を差し出し、白葉はその手を取り二人は走り出した

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。