比企谷くんには友達がいない。のか?   作:バリャス

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もっと八幡を卑屈にした方がいいのは分かってますが、うまくいかないもんですねぇ。ってことで四話です。


四話 自意識過剰な比企谷くん

「おはよー」っと、そこらかしらで朝の挨拶が飛び交う中、俺は誰に挨拶をすることはなく、静かに自分の席へと移動し腰を落ち着かせる。

 

俺が鞄から荷物を出していると、俺の席の横を綿貫が通り過ぎていった。

 

ほぅ、今日もやってるな。最近の朝はいつもこの光景から始まる。

 

綿貫はクラスの女子の近くまで行くと、そわそわし始める。なんか昔の俺を見ているようで心が痛くなってくるな。

 

一通りそわそわした後、綿貫はこちらに引き返してきた。どうやら今日も駄目らしい。

 

綿貫「おはよう」

 

俺の席の近くで立ち止まり、先ほどクラスの女子に言えなかった挨拶を俺にしてくる。

 

比企谷「うす」

 

俺には挨拶できるのになぜ他の奴にはできないのか。

 

湯神「なんだ今のは!」

 

後ろの席に座っていた湯神が突然大きな声を上げる。湯神の方を見ると湯神は綿貫の方を見ている。

 

どうやら今のセリフは綿貫に向けられたものらしい。

 

なんだ?綿貫がなにかしたのか?

 

綿貫「な、なに?」

 

声をかけられた綿貫もよく分かっていなさそうである。

 

湯神「なんでそこまで行って声を掛けない!最近ヘタレ度が上がってきてるぞ!」

 

ああ、確かに綿貫のヘタレ度は最近上がっているな。というか友達作りたいと言っている割には全然行動に移せていない。

 

綿貫「そ、そんなこと言ったって…」

 

湯神「おい!あんたも友達としてなんか言ってやれよ」

 

なに!?いつの間にか綿貫に友達が!?なんだよやればできるじゃねぇか。

 

俺は二人の会話に耳だけ傾けながら一限目の準備をする。

 

湯神「おいあんた聞いてるのか」

 

よくわからないが、湯神は俺に向かって言っているようだ。綿貫の友達に聞いてたんじゃねぇのかよ…。

 

比企谷「俺?俺はマッカンが最高の飲み…」

 

綿貫「その話はもういいって」

 

綿貫が俺の言葉を全て聴き終える前にツッコミを入れる。確かに3回同じネタはさすがにな。

 

比企谷「あれだな、綿貫の積極性が減ったのは確かだが、なんだかクラスの女子が綿貫を避けてる気もするんだよな」

 

綿貫「や、やっぱりそう思う?私も最近そのことに気づいちゃってさ…」

 

まあなんとなくなんだけどな。

 

湯神「自意識過剰になってるだけだろ、試しに適当な奴に話しかけてみなよ」

 

湯神にそういわれ、綿貫は言われた通りにクラスの女子へ近づいていく。

 

綿貫「おはよう」

 

若干控えめな挨拶だったがしっかりと挨拶をした綿貫。まあ問題はこのあとな訳だが。

 

女子「お、おはよう」

 

綿貫に挨拶をされた女子は挨拶を返しているが、やはりどこかぎこちない。

 

綿貫は挨拶だけすると、こちらに引き返してきた。

 

綿貫「どうだった?」

 

そう聞いてきた綿貫の顔は不安そうな顔をしていた。クラスの女子に嫌われてるかもしれないのだから仕方ない。

 

そんな綿貫に湯神は遠慮なく言葉を吐く。

 

湯神「確かに避けられてたな。あんた何かしたのか?」

 

綿貫「何も!何もしてないよ!」

 

綿貫があらぬ疑いかけられ強く否定する。見てた感じだと綿貫は悪くないと思う。おそらく別に理由があるのだ。

 

そしてその答えはなんとなく分かっている。

 

湯神「何もしていないのに避けられているということは、女子と仲良くなるのはもう諦めた方がいいだろうな」

 

綿貫「そんなぁ」

 

綿貫と湯神が言い争っている?中、俺は席を立って静かにクラスを出た。

 

ちらっと、まだ教室の中にいる綿貫の顔を見る。湯神にクラスの女子から避けられていると宣言され、落ち込んでいるようだった。

 

俺はそのまま廊下を歩いていく。

 

なんで教室をでたのかって?一限目が移動教室に変更になったらしいからだよ!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

綿貫「一限目の移動教室のこと、教えてくれてもよかったんじゃない?」

 

今は一限目が終わり、二限目までの休み時間である。

 

後ろにいる綿貫から一限目の件について文句が出てきていた。ちなみに湯神と綿貫は揃って一限目に遅刻している。

 

比企谷「なんでだよ、俺はお前の保護者じゃないんだよ」

 

綿貫「そうだけど…。ちょっとは比企谷くんと仲良くなったつまりだったんだけどなぁ」

 

比企谷「勝手に仲良くなったつもりになられてもな。こっちからしたらいい迷惑だ」

 

俺が言い終わると、綿貫は少し悲しそうな顔をする。

 

女の子の悲しい顔を見るのはあまり好きじゃないんだ。あんまり俺をいじめるのはよくないと思います。

 

綿貫「そう言われるとちょっと寂しいよ」

 

しかしここでひいてはいけない。俺は綿貫の方を見て言葉をつなぐ。

 

比企谷「前から言いたいと思っていたんだが、俺は一人が好きなんだよ」

 

比企谷「だから俺と関わろうとしないでくれないか?」

 

綿貫は俺の言葉に多少のショックを受けたらしい。顔を下げたまま自分の席(斜め後ろの席)に戻っていく。

 

これでオーケーだ。俺は顔を前に向け直し、次の授業の準備をする。

 

湯神「なんだ喧嘩か?」

 

湯神の声が後ろから聞こえてきた。まあ綿貫に声をかけているのだろう。

 

綿貫「喧嘩…、なのかな…」

 

彼女がクラスの女子に避けられている理由はなんなのか。おそらく彼女が原因ではない。

 

ならばなぜ彼女が避けられているのか。それはきっと…。

 

二限目始業のチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。

 

先生「ほら席に着けー!授業はじめるぞー!」

 

まあこれでそのうち綿貫にも友達ができるだろう。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

放課後になりいつも通り俺は鞄に荷物を入れ席を立つ。

 

綿貫「あ、あの」

 

帰ろうとしている俺に、綿貫は声をかけてきた。しかし俺は答えることなく歩き始める。

 

答えてしまっては今日の休み時間中の出来事の意味が薄れてしまうからな。

 

綿貫「ま、また明日!」

 

後ろから聞こえてくる挨拶に後ろ髪を引かれたが、俺はそのまま歩き去ることにした。

 

それにしても今日あれだけ言ったのにまだ話し掛けてくるとはな。まあそれも友達ができればなくなるだろう。

 

っていうかその積極性を友達作りに使えばすぐ友達できたんじゃ…。

 

いや、余計なことを考えるのはよそう…。なんか疲れたし、早く帰って寝よ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

次の日の朝。俺は少し寝坊したため、教室に着くのが少し遅れてしまった。まあ遅刻はしていないためなんら問題はない。

 

教室に入ると、クラスの女子と仲良く話している綿貫の姿が目に入った。

 

どうやら早速効果があったらしい。だとするならやはり俺の予想は当たっていたようだ。

 

きっと、彼女は俺と友達だと思われていたがゆえにクラスの女子から避けられていたのだ。

 

昨日の休み時間に、クラスの連中がいる中あえて綿貫を突き放すような言葉を選んで正解だったな。

 

俺はぼっち生活に戻れて、綿貫は友達が出来たんだ、これ以上の結果はないだろう。

 

しかしなぜだろうか?どこかスッキリしないような…。まあ気のせいだろ。

 

俺が自分の席に座ろうとすると、後ろから湯神の声が聞こえてきた。

 

湯神「おいあんた」

 

珍しいな、湯神が俺に声をかけてくるなんて。俺は湯神の方を向いて応える。

 

比企谷「なんだ?」

 

湯神「そんなにあの人と仲直りしたいなら謝ればいいだろ」

 

比企谷「は?」

 

俺は湯神が何を言っているのか意味が分からず、つい聞き返してしまう。

 

比企谷「いや、なんのことだよ?」

 

あの人というのは綿貫の事だろうが、しかし俺が綿貫と仲直りしたい?

 

湯神「お前今あの人のこと見てただろ」

 

湯神は指で綿貫を差しながら聞いてくる。

 

比企谷「別に、クラスの女子とあいつが話してるのが珍しかったからな」

 

むしろ初めて見たレベル。「それだけならもういいな」そう言い、俺は湯神の方へ向いていた姿勢前へと戻す。

 

湯神「ならそんな暗い表情しなくてもいいだろ」

 

俺は湯神のその言葉につい反応してしまう。前へ戻した姿勢をまた湯神の方へと移した。

 

比企谷「してねぇよ」

 

湯神はもうすでにイヤホンをしており、俺の言葉を聞く気はないご様子だった。

 

なんか俺だけ恥ずかしい思いをさせられたわ…。

 

綿貫「あの…、ちょっといいかな?」

 

いつのまにか近くまで来ていた綿貫が俺に声をかけてくる。

 

だからなんで話しかけてくるんだ、新しい話して 友達もできたのに。

 

比企谷「いや、せっかく友達できたんだからそいつらとよろしくしてろよ」

 

俺は拒否の言葉で答える。しかし綿貫はそのまま言葉を続けた。

 

綿貫「私はね。別に今すぐにとは言わないけど、いつか比企谷くんとも少しは仲良くなれたらいいなって思ってる」

 

それだけ言うとまた新しくできた友達の所へ戻っていった。

 

友達ができても俺と仲良くなりたいって、あいつも変な奴だな。

 

湯神「ふっ、仲直り出来たみたいだな」

 

さっきはイヤホンをしていたはずなのだが、どうやら聞いていたらしい。

 

比企谷「仲直りも何も喧嘩するほど仲良くなってねぇよ」

 

比企谷「それに俺と話してるのが原因で友達ができてなかったみたいだし、これからも仲良くできそうにはないな」

 

そもそもぼっち万歳だし、仲良くしたいって俺は思ってないし。

 

湯神「あんたも自意識過剰だな」

 

自意識過剰って、実際に綿貫に友達できた事が何よりの証拠だと思うのだが。

 

比企谷「自意識過剰って、目のま…」

 

俺は抗議するために湯神の方を向くと、湯神はイヤホンをしている。

 

比企谷「ってまたかよ!」

 

綿貫「なにが?」

 

またいつの間にか近くまで来ていた綿貫が俺に話しかけてくる。

 

比企谷「マッカ…」

 

綿貫「その話はいいから」

 

は、早い…。こいつ…できる!

 

比企谷「ンがこの世で一番美味しい飲み物だと断言する。異論反論は許さない」

 

綿貫「ごり押し!?」

 

綿貫は少し安心したような表情を見せていた。

 

俺は綿貫と朝話していた女子がこちらを見ているのに気づく。

 

やっちまったか?

 

俺はその女子の表情を確認する。しかしその表情は俺の予想とは裏腹に、その女子も安心したかのような表情をしていた。

 

自意識過剰…か。もしそうだとしたら、結局綿貫が避けられていた理由はなんだったのだろうか?




応援してくださってる方々ありがとうございます!ストーリー構成のへたっぴっぷりは相変わらずですが、いつかもっと面白い作品が作れるよう精進いたします!

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