「「やしなって」」   作:風邪薬力

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番外
俺の宝物


 

 

 

ある日の昼下がり。

今日は俺にとっての最高の日だった。

全休。ああ、なんて甘美な響きだろう。

ここ最近全休なんてものは存在しなかった。いや、そもそも346のプロデューサーにそのような権限があるのだろうか?一度武内さんにも聞いたことがある。

全休?ああ、午前や午後だけでも仕事が無い日ですよね?全休と言うには違う気がしますが、月に二、三日ありますよ?

と返ってきた。

武内さん…貴方洗脳されてますよ…。それは半休です…。

そんなこんなで、もはや俺たちにとっては幻想と化している全休を全力で休むと決めた。そう休むのだ。

 

 

「おはよう、パパ。…てかびっくりしたよ。朝からパパがいるなんて」

「おう、おはよ。だがおはようなんて時間でもないぞ。もうすぐ昼になるだろ。休みだからって怠けてるな」

「む。それはパパに言われたくない。休みだからってソファで横になってるしー。中年太りしちゃうよ?」

「あー、仕事で動いているからだいじょぶだろ。それなりに筋肉も付いてるぞ、ほら」

「わーお。カッチカチ…とまではいかないんだね。うーん、残念感。でも細マッチョなのは娘的にポイント高いよ?」

「おい、叔母さんの真似は止めとけ。ただでさえ可愛いんだからこれ以上可愛い要素が入ると悪い虫が付く」

「えへへー。パパに可愛いって言われるのは嬉しい。ねぇ可愛い?私可愛い?」

「ああ、もう超可愛い。俺の娘と思えんな。心から杏に似て良かったと思うぞ」

「じゃぁ結婚してくれる?」

「…娘とは無理だろ」

「むー。つまんない。娘的に超ポイント低い」

 

さて。今日、杏はきらりと外出している。朝から出るようになるとは月日が経つと人間は成長するらしい。

というのも、今一緒のソファで寛いでいる可愛い娘も、もう中学生だ。この前までオムツを変えていたような気がするが時間が経つのは速いと、社会人になって思う。

あー、四十代が見えてきた。やばい、なんか精神的に来るものがある。

「中学生活はどうだ?いじめられたりしてないか?」

「ん、へーき。パパとママの娘だからね。なんでも完璧だよ?」

「…まぁ俺の目を受け継いでないからな。杏に良く似てるし良かったな」

「うーん、娘的にはパパの目と同じが良かったかも」

「なんでだよ」

「だってパパみたいな目って他に居ないから、二人だけの特別って感じで憧れるんだよ?すっごい残念…」

「まぁ確かに見たことはないが…この目だと友達できないかもしれないぞ?」

「パパとの絆の方が大事。それに目が腐っててもきっと人気者になれると思うし」

「…まぁきっと可愛いだろうな。うちの娘は何しても可愛いからな」

「えへへー」

全く可愛い奴め。

しかしこの娘は見れば見るほどに杏と瓜二つだ。同じようにだらけるし、身長もそんなに変わらない。唯一の違いがあるとすれば口が達者なのと、髪の毛がピョンと跳ねていて、俺と同じくセットしようとしても直らないことか。…そしてついぞ杏は成長することはなかった。杏は永遠なり。

それに関して杏は色々と実害を被っている。

例えば授業参観。当たり前の話だがこれには親が見に行くことになっている。その際俺はどうしても仕事で行けない日があったりするのだが、その時は杏が一人でいくことになる。そうして各子供の親は教室の後ろへ並び、そして親は子供よりもまず杏を見てしまう。

勿論俺も授業参観へ行ったことがある。その時の注目度たるや俺は少し逃げたくなったほどだ。何しろ授業を受けている小学生と、身長が変わらないどころか低かったりする杏がスーツを着ているのだ。

正直色々とギリギリだと思う。しかしそれを直接言ったら、

杏はお母さんだよ?ちゃんとした格好じゃないとダメでしょ。

いや、まぁそうだけど。見た目のアンバランスさはどうしようもないしな。

これ以上は何も言うまい。

そしてこの事について娘に聞いてみたが、

うん?ああ、嬉しいよ?当たり前じゃん。恥ずかしくないよ?だって自慢のママだし。それにうちの親が一番格好良くて、可愛いと思うんだ。

 

このあとめちゃくちゃなでなでした。

 

 

「ねーパパ、今日休みなんでしょ?デート行こうよー」

「ん、いいぞ。そのつもりだったしな」

「やった!パパと心が通じたね!」

「まぁ家族だからな。繋がっているのはあたりまえだ」

「むー。それ以上の関係もとむー」

「だが断る」

娘が懐いてくれるのは嬉しい。世間一般においてはこの年頃の娘に、パパと洗濯物別にしてって言ったじゃん!等と言われてしまうらしいのだが、うちの娘はそんなことはなかった。むしろファザコン。

俺の身内愛、てか小町愛が遺伝しちゃったかな?しょうがないよね。

もう中学生だというのに一緒に風呂入ろうとしてくるし。

その度に杏に睨まれるのだから勘弁してほしい。いや、嬉しいけど。

「はぁ、まぁいいや。それでどうする?レンタルビデオを宅配してもらって、家で見ながらいちゃいちゃする?」

「…人の事言えんがお前も相当だよな。まぁ親の遺伝子を完全に継承したせいだけど」

「だってー外にでたくなーい」

「気持ちはわかるが友達と遊ぶときはどうなんだ?」

「んー、あんまり遊んでないかも。どっちかというときらりちゃんとか、莉嘉ちゃんとかみりあちゃんとかと遊んでる」

「あーなるほど。…あいつらに余計なこと吹き込まれるなよ?」

「そんなこと言ったら可哀想だよー。皆と遊ぶの楽しいよ?」

「…まぁ楽しいならいいが。それでどうする?家でごろごろするより外に出た方が楽しいんじゃないか?」

「別に外に出なくても良いよ?むしろ出たくないまであるし」

「遠慮しなくていいぞ?ごく希にしか休みなんて取れないんだから」

「普段から甘えてるからいいの。むしろ周りの目を気にせずいちゃいちゃ出来る家が一番」

はぁ、全く誰に似たのか。両親二人ですよね、知ってる。

というかファザコン過ぎるぞ娘よ。彼氏出来るか不安になる。

いや、もし彼氏を家につれてきたら二秒で追い出すけども。

認めません。お父さんは絶対に認めませんからね!

…お義父さんもこんな気持ちだったのかなぁ…。

 

「それで、なんのDVDにしたんだ?」

「プリキ◯ア」

「お前…俺の子なんだなぁ…」

「当たり前だよ、何言ってるの?」

「いや、しみじみとな…。実感するなぁと」

 

てかまさかこんなにもこのアニメが続くとは思わなかったな。もう何年目だ?

だがどんどん方向性に迷いが出てきているのは感じる。続きすぎてオールスターじゃなくなったし。全部出してたら二時間なんて自己紹介で終わるぞ。

そして愛娘は俺の膝の上。

二人でマッ缶片手にゆっくりとした時間を過ごす。心が洗われるようだ。

仕事の事を忘れられるなんて最高だな。そして娘と過ごす時間も。

仮にこれが一人の時間だとしたら、ここまで良いものにはならなかったかもしれない。だとしたなら俺はやっぱりボッチを卒業したんだろうな。娘と杏に俺はボッチだ何て言えば二人は悲しむだろうし。

 

時々頭を胸にグリグリとしてくる。わかってる。

つまり撫でろと言いたいのだ。まったく、杏と同じで天使のような子だ。

撫でてやる。

顔は見えないが幸せそうな顔をしてるのだろう。なぜわかるのか?

それはきっと俺も幸せな顔をしているのがわかってしまうからだ。

ああ、本当にこの気持ちはどうしようもない。

どうしようもないが、どうしようとも思わない。ずっと続けば良いと思う。

 

「パパ」

「どした」

「だいすきー」

「ああ」

 

 

やはり俺の人生は間違っていない。

 

 

 

 

 

 

 







後日談を切望されたので書きました。
ここまでしか書けません。
これ以上は無理ですからね?本当ですよ?3000字以内というのが証拠です。
まぁ娘というオリキャラを出しているので受け入れられない方が多いでしょうが、書けるのはこんな話です。暇潰しにはなりますかね。
キャラを知るためにデレマスのキャラブックが欲しいです。ないんでしょうかねー。

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