「「やしなって」」   作:風邪薬力

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実家

 

「こんにちわ、杏ちゃん。いらっしゃい」

今日は私のもうひとつの家でもある比企谷のお家に来た。

結婚してから何度か来ているこの家は私にとってはもう実家も同然だった。

「ただいまーお母さん!」

「おかえり!私の空ちゃん!」

それは中学生に上がった私の娘にとってもそうだ。

玄関から入るや、飛び込みそこにいる女性に飛びつく娘を見て可愛いなぁなんて思いながら、私も挨拶をする。

「ただいまです、お義母さん」

「おかえり、私の娘ちゃん」

そう言って見せてくれた笑顔に最愛の人を重ねて、ああやっぱり。

私はこの家族の笑顔が大好きだ。

 

 

 

「今日は八幡は仕事?」

「そうだよー。私はお休み取れたからママと遊びに来たの!」

空がそう答える。

この子も立派なアイドルなんだからなかなか休みは取れないけど、今日は休みが取れた。

だからまぁ久しぶりに比企谷の家に遊び行こうって話になって。

「わざわざ休みに遊びに来てくれるなんて嬉しい!お母さんは嬉しいぞ」

ソファで座るお義母さんにベタベタに甘えまくる空。可愛い。

お義母さんはなんていうか、小町ちゃんのお母さんって感じ。いつまでも若々しいな。

「お義母さんのお休みに来てごめんなさい。杏もお義母さんに会いたかったし、空も会いたいって言うから」

「うふふ、いいのよ。私も会いたかったわ。初孫ですもの!小町はねまだそうなのよねー…」

「私はつまごー!でもお母さんはおばあちゃんって感じしないよー」

「嬉しいこと言っちゃってー。可愛いぞ!」

「わー!」

娘がわしゃわしゃと頭を撫でられる。

傍目から見たら親子に見えてもしょうがないくらいだもんね。

 

「夜ご飯は食べていく?」

「はい。八幡が仕事終わってから迎えに来ることになってるので」

「はーい。じゃあ腕振るっちゃおうかな」

「お手伝いしますよ」

「私もー!」

「あら、空は料理できるの?」

「あーえっと…で、出来るよ?」

「ママがいたらでしょ。まだ1人でできないじゃない」

「むー!」

ちょんちょん。

「…お母さんお母さん」

「ん?どうしたの?」

「ママに内緒で少しだけ手伝って?1人で作ってみたい…」

「よし、ママをびっくりさせようね!」

「…2人でコソコソして何してんの?」

「「ないしょー!」」

 

 

 

私のお母さんは3人いる。

パパのお母さん。

いつまでも元気で小町お姉ちゃんみたいな人。

そしてね、私知ってるんだー。

お母さんとお父さんの部屋には私のアイドル写真があるの!

ふっふーん。どや。

あんまり2人とはそういう話しないけど、小町お姉ちゃんが教えてくれたんだ。

嬉しいな。

もう1人はママのお母さん。

私が背が低いのはこっちの遺伝のせいなのだ…。

まあ私はママが大好きだから嫌になったことは無いけど。

ちなみに双葉の家には玄関から色んな部屋まで私とママの写真でいっぱいだ。

あそこまであるとちょっと恥ずかしいけど…。でも嬉しい。

そしてママ!

大好き!

可愛い!

超可愛い!

見た目もだけど、そうじゃなくて。

パパといる時とか超可愛いの!

ぎゅーってしたくなる感じ!

してるけどね!どやぁ!

みんな優しいの。

だから私もみんなに伝えるんだ。

私が貰ってる愛情みたいなやつ!

アイドルってね、そういうの伝えられるんだ。

私が貰ってるものをちゃんと表現できるようになるんだ。

だから今はいっぱい貰うの。

いつかいっぱいお返しするために。

だから私は2人に抱きつく。

ぎゅーって。

んー…。

今度は双葉の家に行きたいな。

 

 

 

「あら、空寝ちゃったの?」

こっちに来てからはしゃぎ倒してた空はソファの上で静かになっていた。

「ずっと騒いでましたからね。お義母さんが大好きなんですよ」

この子は八幡が大好きだ。

だから余計にその家族には甘え方が凄い。

普段はまるで昔の私を見てるようだけど、好きな人が居るとこの子は感情のままに甘え倒す。

学校では授業中寝てたり、あまり社交的じゃないらしく先生にちょっと心配されたくらいだ。

「嬉しいわね」

お義母さんはそう言いながら空に近寄っていき優しく頭を撫でる。

「この子は小さい頃の八幡に似てるの。あ、もちろんあの子はこんなに感情を見せてくれる子じゃなかったわよ?」

「あはは。そんな八幡も見てみたいですけどね」

きっと笑っちゃう。大爆笑だ。

「中身がね、似てるの。八幡は酷く臆病な子だったけど、寂しがり屋な子でもあった」

私は八幡の昔話を思い出す。

何もしていないのに嫌われ、見た目がキモイと言われ。

私が思ったのは、八幡はそう言われながらも繋がりを求めてたってことだった。

嫌われいじめられ、それでも八幡は話しかけようとしたり、少しの事に期待してた。

私ならきっとそうしなかったと思う。

だってそんなことになったら全部嫌いになっちゃうから。

八幡は違っていて、寂しかったのかどうなのかは分からないけど、ぼっちだなんて言いながら求めたんだと思う。

「寂しかったのかなぁ。私もお父さんも仕事であまり家にいなかったし。小町のお兄ちゃんでいなきゃいけなかったし、負担かけちゃったんだよね」

申し訳なさそうに話すお義母さんは、昔を思い出しているのか遠い目をする。

「…寂しかったのかもしれませんね。八幡はああ見えて寂しがり屋なところもあるし」

「ずっと抱えてた心配事があってね。あの子の目の事が、申し訳ない気持ちでいっぱいだった」

口を挟んでは行けない気がして、私は黙ってしまっていた。

「私は好きなのよ?可愛げがあるし。我が子だからなのかなぁ…。八幡が小学校でいじめられたって聞いて理由聞いたら気持ち悪いからですって。最悪だわ」

確かに最悪だ。

今聞いたら私はどうするのかな?

…その人の目の前で八幡にぎゅって抱きついてやろ。

「そんなこともあったし家ではフォローしてたんだけど、段々八幡も斜に構えるようになっちゃって。悔しかったなぁ、自分の子供が悲しそうにしてるのは」

私はどう思うのかな。

空が学校から帰ってきてそんなことになったら…。

怖いなぁ。

「あの子がどんどん変わって行っちゃう気がして怖かった。でもね?高校の入学式の日に気付かされたの。ああやっぱりこの子は誰よりも優しい子だって」

犬を助けた。

車に轢かれそうな犬を助けるなんて誰にできる?

走っている車の前に飛び込むなんて怖いし、助けたいって思っても咄嗟に動ける人がどれだけいるんだろう。

「自分の子供だけどね、本当に誇らしかったの。そして思ったの。あんた達が気持ち悪いって言う子は咄嗟に他者を助けることが出来る凄い子なんだぞって。世界中に自慢してやりたかったわ。凄く怖かったけどね」

自分の子が車に轢かれるんだもん。

怖いに決まってるよね。

「高校でも友達出来なくて、八幡大丈夫かなってまた怖くなったけど…そんな気持ちが杏ちゃんのおかげで吹っ飛んだわ」

少し恥ずかしい。

「杏ちゃんに出会って八幡はやっと自分の居場所が出来たのよね。家族が作ってくれる居場所ももちろんいいけど、自分で家族をつくって出来る居場所は何よりも幸せな事」

お義母さんは空を撫でていた手を止めこちらを向き、

 

 

「八幡を見つけてくれてありがとう」

 

 

わたしはないてしまった。

 

ぐずぐずと、なにがかなしいのかうれしいのかわかんないけど。

 

なみだがとまらなくて。

 

よくわからないきもちにながされながらも

 

「ちっ、ちがう、ます…。あんずがっ、みつけたんじゃない」

 

わたしはよくまわらないしたをいっしょうけんめいに

 

「はちまんが、、あんずをっ!」

 

ふわっとあたまをなでるかんしょく。

 

 

「ありがとう、杏」

 

 

私はお母さんに抱きついた。

説明なんて出来なかった。

でも抱きついたお母さんはすごく暖かくて。

撫でられる頭から幸せが込み上げてきて。

 

 

そっか。

ここも私達の居場所なんだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今日から5日間毎日投稿します
まだ何も書いてないけどね!
誤字脱字は許してください…
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