聖闘士星矢~ギガントマキア前伝~   作:伊鬼名

4 / 8
四話目です。実は別に描いていた話と重なっている部分がありまして、その話のネタが放置されています。どうか流してください。


子獅子座と龍

 聖衣を纏った紫龍は拳を振るってくる蛮を制しながら周囲を探った。周囲は溶岩の流れる灼熱の大地で奇形の岩がところどころ突出している。紫龍は知らなかったがそこは一輝が通った第五獄の灼熱地帯に似ていた。

蛮の聖衣は異様に腕部が厚くなっており、獅子の爪を思わせる。蛮はその腕を振るって紫龍を攻撃する。

 

「蛮、何故お前がこんなことをする」

「知れたこと。女神のためだ」

 蛮は紫龍が攻撃してこないのを見て間合いを取った。

「黄金聖闘士のいない今の聖域では女神を守ることなど出来ないだろう」

「しかし俺たち青銅聖闘士、白銀聖闘士がいる。決して邪悪を見逃す事はない」

 蛮は首を振る。

「黄金聖闘士こそが一番の力だ。もし、俺がお前に勝てばアイアンは獅子座の黄金聖闘士に俺を抜擢すると言ってくれた」

「そんな馬鹿な」

 紫龍は驚きと同時に呆れる。

「聖衣は正義のためだけに使われる。そんな利己的な理由では聖衣に認められる訳がない」

「そこは聖衣を作るときに調整してもらうさ」

「なに」

 彫刻室座の白銀聖闘士はそこまでの力を有しているのか。それが真実だとすれば決して黄金聖衣に間違ったの修復をさせてはならない。

「そんな事はさせん。蛮、仕方がない。お前を倒して先に進もう」

「そうだ。来い!」

 待っていたと言わんばかりに蛮は紫龍に身構える。

「廬山昇竜覇!」

「ライオネット・ブラスター!」

 向かい来る龍に対して蛮の放った拳は灼熱を伴ってぶつかり合った。

「くっ」

「どうやら同じような威力だったらしいな」

 昇竜覇を破られて驚く紫龍に蛮はしてやったりと笑う。

 

 新技を編み出せとアイアンに言われたとき一番楽だったのは蛮だった。

 蛮の師匠はかつての子獅子座の青銅聖闘士という老人で、昔のように体を動かす事はもうできない状態だった。百人以上の聖闘士候補を送るに当たっては確率的にはずれがあるのは仕方がない。聖闘士の絶対数が少ないのだから黄金聖闘士を師に得た紫龍の方が幸運だったと言える。

 そうとは言え蛮の師匠は常人よりは強い力を持ち地元の人間には頼りにされていた。ただし修行は地道なロードワークなどが主で拳を交えての戦いはあまりなく、蛮は地味な毎日にやや嫌気が刺しながらも毎日修行に励んだ。そんな師が見せた子獅子座の聖闘士の技がライオネット・ブラスターである。灼熱を放つような拳。しかし当時の蛮には小宇宙をそこまで感じることは出来ず、同時にただの突きであるという見方しか出来なかった。

蛮は炎の力を一瞬の爆発力に変え、より派手さを増したライオネット・ボンバーを編み出してそちらの修練を主にした為に結局使う事はなかった。邪武に破れて改めて修業するうちに何とか使えるようになってきたもののまだまだ師匠には及ばないと思っていたが。

「我が師から受け継いだ子獅子座の奥義。黄金聖闘士の技に劣る事はない」

 改めて自分の師の偉大さを感じながら蛮は紫龍を見る。紫龍は油断なく構えつつ蛮に問いかける。

「ここまで鍛えながら子獅子座を捨てることが出来ると言うのか」

「所詮は子供だ。真に百獣の王になるのが俺の願い」

 ゆるぎなく言い放つ言葉に紫龍は逆に別に目的があるような気がした。子獅子座の技を、聖衣をこれほど誇りながらあっさりとそれを捨てるということがおかしい。

「何か別に目的があるようだな」

「そんなものはない!」

 蛮は紫龍にこれ以上の言葉を続けさせないようにするために再び拳を振るう。

「ライオネット・ブラスター!」

 襲い来る光炎を盾で防ぎながら紫龍は蛮の言葉の裏を考えていた。

「さすがは龍座の聖衣だな。俺の技をたやすく防ぐか」

「たやすくはないぞ、蛮。お前の技は確かに凄まじい威力を秘めている」

 やや熱を帯びた盾に驚きながら紫龍は応える。蛮は今度は拳を固く握り小宇宙を集中させる。

「ならばこれだ。ライオネット・サン!」

 蛮の拳に光が集まり、小さな太陽のように輝く。

「目潰しか?この俺には通用しないぞ」

「これはこうするんだ!」

 蛮はピッチャーがやるように光の玉を投げてくる。音速で動くことが可能な聖闘士ならば避けられる程度の速さだ。

「一体これは…?」

 一瞬爆発するのかと思った紫龍は飛びのいて様子を見る。光球はそのまま紫龍のいたところに当たる。

「ただの脅しか?」

 何の反応もない光球をいぶかしく思いながら紫龍は蛮を見た。蛮は再び拳に小宇宙を集めている。

「くらえっ。ライオネット・サン!」

 再び投げてきたその球を避けた紫龍に蛮が接近していた。

「何っ」

「ライオネット・サン!」

 

ぐしゃっ

 

蛮は光の球ごと自分の拳を龍座の盾に叩きつけていた。

「これは…」

 砕けるはずのない盾が砕けていた。しかし同時に蛮の拳も砕けている。肉の焼けるにおいから、ライオネット・サンが高熱の塊だと分かった。

「蛮、お前…」

「へっこれで片方潰したぜ」

 間合いを取って笑う蛮は再び拳に光を宿す。

「このライオネット・サンは速さこそ大した事はないが、破壊力と言う意味では俺の全ての技に勝る。お前の盾を砕けるほどにな」

 しかしそれでも自分の拳は犠牲になったのだ。蛮の行動に紫龍はそうまでもしなければならない理由を感じ、またそこまでする蛮に恐れを抱く。

「蛮よ、お前からはお前の言う以上の何かを感じる。真実を教えてくれないか」

「言ったはずだ、紫龍。俺は獅子座の黄金聖闘士になる!」

 揺ぎ無い言葉は強い意志を感じさせる。紫龍は説得するのをやめた。そして今度は暴挙を食い止める為に拳を振るう決意をする。

「ならばもう何も言うまい。だがこの紫龍、たやすくやられはせんぞ」

「それで良い。お前の最大の力で来い。冥王を倒したと言う神聖衣でな」

 蛮は拳から流れる血をそのままに構える。

「行くぞ蛮。廬山龍飛翔!」

 紫龍が龍となって向かってくるのを見て蛮は逃げずに腕を突き出す。

「ライオネット・サン!」

 再度の技に紫龍は驚くもののそのまま攻める。しかし今度は同時に周囲に投げ出されたライオネット・サンが次々と爆発を始めた。

 龍と太陽がぶつかりあい、爆風が起こる。

「くぅっ」

「うおっ」

 爆発によって互いに吹き飛ばされた2人は立ち上がるが、紫龍の方がダメージが大きかったようだ。

「ライオネット・サンは最大の破壊力だといったろう。投げることさえしなければどういう風にも使えるのだ」

 さっきの光球が地面に埋まったままなのを見て変化はないと思っていた紫龍は自分を恥じる。爆風で吹き飛ばされながらも蛮の聖衣に影響はないようだ。

「さあ紫龍。今度はお前の矛を砕く」

 そう予告した蛮はライオネット・サンを続けて投げてくる。時限式か、蛮の意志か、爆発の条件は分からないがここは避けるしかない。何球かを避けた時、蛮は球と同時に紫龍に突っ込んで来た。

 紫龍はそれを避けようとするが、同時に今まで地面に埋まっていた光が再び連続爆発を起こす。溶岩が飛び散り空から降り注ぐ。

「くっ」

 一瞬そちらに気を取られた隙に蛮は紫龍に近づく。蛮も爆発に巻き込まれているはずだがびくともしない。

「エクスカリバー!」

 紫龍は咄嗟に聖剣を放ち蛮の拳に叩きつけようとする。

「ライオネット・サン!」

 さっきまでの集中時間が嘘のように瞬時に生まれた太陽に聖剣がぶつかり爆発を受ける。

「何っ!」

「ライオネット・サン!」

爆発の中蛮は爆発に無理やり体を押し込むように紫龍に向かい、残った片手で太陽を掴んで拳ごと紫龍の聖剣にぶつける。光は間違いなく紫龍の拳を打ち砕いた。

「やったか」

 紫龍の手甲が砕け散るのを見た蛮はそのまま爆風に乗って吹き飛んでいった。

 

 ライオネット・サンは獅子座のアイオリアを見て作り出した技だ。アイオリアの技を見たのではない。太陽の如き輝きを纏った姿を見てその強さに憧れた。同じ獅子なのに黄金聖闘士と青銅聖闘士、力の差ははっきりしている。その黄金の輝きが太陽の輝きだと聞いたときからせめてその輝きに近いものを得たいと修業した結果生まれたのがライオネット・サンだ。ライオネット・ブラスターを濃縮し威力を重視した為に光速拳というところまでは真似できなかったが、これが自分の太陽だと言える会心の技だった。そしてこれは今のように思いも寄らぬところで役に立つことになる。

 

 この戦いにおいては蛮は一番対戦相手の運がないと思った。かつて戦った相手は邪武であり、星矢達5人の誰でもない。誰が当たってもその攻略には苦労することが分かっていた。紫龍と戦うことが決まったときにも蛮はその程度の考えしかなかったが考えるほど相手が悪いと思えた。星矢は皆を引っ張っていく勢いがあるが隙が多い。氷河は新技であるライオネット・ブラスターの対極にある氷の技を使うが聖闘士の炎に苦戦したと言うので勝ち目があるかもしれない。瞬は戦わずに身を守るだけで事がなるだろう。一輝はさすがに勝ち目が薄いので置いておくがもしかすると出てこないかもしれない。しかし紫龍は一番バランスが良い戦士で弱点と言えるほどの弱点もない。星矢のように光速の拳を振るえない蛮にはそこから勝てる道を探り出すのは大変な作業だった。一つづつ問題を解決していくことにしてまず思いつくのが龍座の青銅聖衣だ。最強クラスの固さを誇る聖衣を砕くほどの拳力はない。星矢のような矛盾作戦はさすがに警戒しているだろう。どうしてもうまい作戦を考え付かなかった蛮はアイアンに相談した。

「少しは考えたのか?」

「考えた。だがこれぐらいしか思いつかないんだ」

 自分の拳で龍座の盾を砕くことを告げるとアイアンは眉をひそめる。

「龍座の盾をお前の拳が砕くと言うのは不可能に近い」

「ああ。だから頼む。少しでも勝率を上げる為に子獅子座の聖衣の腕を倍以上の厚さの装甲にしてくれ」

 無理やり押し切ろうという蛮にアイアンはため息をつく。

「それぐらいは簡単だが、簡単に近寄らせてもらえるものでもないだろう」

「分かっている。周りが混乱するような状況に持っていって隙を作るつもりだ」

「例えそこまで持っていっても、あの聖衣の固さは並ではない。お前の拳が砕けるかも知れないぞ」

「構わない。拳が砕けても、あいつを本気にするには必要だろうから」

 そこまで蛮が言うと初めてアイアンは愁眉をといた。

「覚悟があるならば助力に否はない。残った龍の鱗を混ぜて硬さだけなら勝負できる物を作ってやる。だがその後は知らないぞ」

「分かってる。後はただ、ぶつかるだけだ」

 最強の鎧を破壊するための賭けは蛮に吉と出た。ライオネット・サンが爆発することで周囲を混乱させ、爆発した後溶岩が飛び散ることで注意を分散させた。

 

 吹き飛ばされた2人はふらふらと立ち上がりながら自分の相手を探す。爆風に続く爆風に聖衣同士が打ち付けられて起こる打ち身や肌が露出した場所のかすり傷などたいしたことがないように見えて内側にはかなりダメージを受けていた。

「蛮よ、両腕が使えなくなった今、お前はもう戦えないだろう」

「勝利宣言のつもりか?拳が砕けても俺にはまだ腕がある。俺の技は新技だけじゃあない!」

 拳の砕けた両腕を威力を補うように十字に構え、蛮は自分が生み出した必殺技で紫龍に突進する。

「ライオネット・ボンバー!」

 さっきのライオネット・サンが一瞬で生まれたことから今回もそうかと避ける紫龍。蛮の体当たりは背後の岩を砕く。

「紫龍ともあろうものが恐れているのか?俺は青銅聖闘士に過ぎないんだぞ」

「確かに恐れている。お前の技にではない。蛮、お前のその意志が俺を引かせるのだ」

 紫龍は今までの考えを捨てる。目の前の男は何か深い訳があって戦っている。全身全霊で挑まないことこそが紫龍にとっては無礼に思えた。

「はあぁぁぁぁぁ」

 呼吸を切り替えて小宇宙を燃やす。目の前にいるのは友も兄弟でもない。倒すべき強敵であり1人の戦士なのだ。一心に燃やす小宇宙が龍を立ち上らせる。

「紫龍、これで片をつけてやる」

 蛮は勢い良く飛び上がる。高い場所から落ちる勢いを利用して威力を増す狙いだ。落ちてくる蛮に向かって紫龍は最高の一撃を放つ。

「廬山百龍覇!」

 無数の龍が蛮に向かって顎を開く。

「ライオネット・サン・ボンバー!」

 体中をライオネット・サンの変形型で包み更なる威力拡大を狙って紫龍を狙う蛮。

 しかし力は拮抗しており互いに空中で技が留まっている。

「これならどうだ」

 蛮は更に体を回転させる。ドリルのような回転を加えることで少しづつ紫龍に迫り出した。

「はあああぁぁぁぁ」

 紫龍はただ一心に小宇宙を高める。背後に浮かぶ龍が一匹また一匹と増えていき龍座の元である百頭竜ラドンが現れたように輝いていく。紫龍の聖衣は既に神聖衣へと変貌していた。

「うおりゃあぁぁ!」

 太陽を背負った子獅子が百頭竜に襲い掛かる。灼熱の光球と清冽な水竜がぶつかり合った。

 蒸気が吹き上がるような大爆発。蛮と紫龍は同時に吹く飛ばされる。何とか立ち上がった紫龍は蛮に駆け寄る。

「大丈夫か」

 返事をしない蛮の顔には笑顔が広がっていた。

 

 その頃霧の中で星矢たちと別れた那智と沙織は暗い回廊の前にいた。そこにはアイアンが聖衣を纏わずに立っている。

「お待ちしておりました、女神。私は彫刻室座の白銀聖闘士アイアンです」

「初めまして。聖衣の修復を頼みに来ました。それから、星矢たちはどうしました?」

「彼らには別の用があります。那智、お前は準備をしておけ」

「分かった」

 那智も去っていくとアイアンは沙織に回廊に入るように促した。

「この回廊の先には彫刻室座、彫刻具座の聖闘士がこの場所にいなければならなかった訳があります。これを女神にお見せする為にあえて虚言を弄しました。お許しください」

「そこまでの秘密がここに?」

「はい。もし聖域にお帰りになった後教皇や補佐役の方に告げるのは構いません。ですがここにお通しするのは番人と女神だけと当時の彫刻室座の祖になった者が定めました」

 松明を灯して明かりにしていた回廊に次第に光が差し込んでくる。

「これは…」

 回廊の先にあったのは氷の廊下だった。回廊よりも広く作られているがそれよりも沙織が気になったのは側面の氷に封じられている物だ。

「これは聖衣箱ではありませんか」

 沙織の目の前には数え切れないほどの聖衣箱が隙間無く敷き詰められ、その上を氷が覆っていた。

「はい。これはかつて存在した星座の聖衣です。例えばあれは亀座、百合の花座、あれは水晶座です」

「あれは?あれは黄金聖衣ではありませんか?」

 沙織が指す先には黄金の箱があった。

「そうです。かつて黄道12星座が決まる前、黄道にあるプレアデス星団も黄道の星座として数えられました」

 アイアンは全ての聖衣を確認するように指していく。

「これらの聖衣は全てロスト・クロスと呼ばれています。現在のように88星座が制定されるようになってからは増える事はあまり無いでしょうが」

 封印された星座を守護星座としている聖闘士は一生を聖衣なき聖闘士、雑兵として過ごすのかも知れない。

「ここの聖衣で重要な事は決して死んでいないと言うことです。これらは有事があり、また纏うものがいれば十分戦いに使えるでしょう」

 アイアンは最深部にある黒い扉の前に立つ。

「ここから先が女神にのみ許される領域です」

 重い扉を開ける音がしてアイアンは沙織を招き入れた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。