IS〈インフィニット・ストラトス〉~白天黒鎧~   作:孤独の空

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プロローグ

 IS学園。世界各国のIS操縦適正を持つ者を集め、育成することを目的とした特殊国立高等学校。IS育成に特化した教育施設ではあるが、高等学校の側面も併せ持つため、国数理社英の授業も展開されており、昼休みや部活動などの平均的な学校生活も謳歌できる。

 時間は昼休み。食堂が賑わい、体育館とグラウンドに学生が溢れ返り、人の移動がもっとも激しくなる時間帯。

「やぁ、初めまして皆さん。優神咲真(ゆうがみさくま)と申します」

 いつも通り平和的な活動をしていたIS学園に、一体の未確認機体が、一人の青年が降り立ったことで、注目を集め、騒動を起こした。

「白、赤、赤黒、青、橙、黒。これは嬉しい。勢ぞろいだ」

 薄い黄色を基調とした丸いフォルムの、胸部と甲部にクリスタルを埋め込まれた、天使を模したISを纏う彼は、眼下に集まった六人を端から数える。

「ちょっとあんたぁ! 何が目的なのよ!」

 赤黒の機体「甲龍(シェンロン)」の搭乗者「凰鈴音(ファン・リンイン)」は、ISに身を包みながら何も暴動や破壊を起こさず、要求もしてこない彼に痺れを切らして声を荒げた。

「誰も傷つける気がないなら、大人しく投降してくれないかな」

 対して、橙色の機体「ラファール・リヴァイヴ・カスタムII」のパイロット「シャルロット・デュノア」は、戦闘が起こらないのならそれに越したことはないと、自首を呼び掛ける。

「そうだな。順番として、中国人の質問から答えるとするなら、君たちと一戦交えたい」

 中国人と罵られて、思わず鈴は龍砲を放とうとしたが、一夏に宥められて中断する。

「それって、別の方法でも実現できるんじゃないかな。こういう強引な手段じゃなく、もっと合法的な手段で」

「それは叶わない」

 別の平和的解決を打診した彼女の意見を、咲真はきっぱりと断った。

「正直に言うと、僕はとても面倒くさがりだ。ISに乗れるように試験を突破して、この学園に入れるように手続きして、それから初めて、君たちと会うことになる。そんな長い

時間を待つなんて、とてもじゃないが我慢できないね」

 彼が求めるのは、実戦。生と死の間を幾度も往復するような命と命のやり取り。心臓を握りつぶすような緊張感の連続。

 模擬選などと言う遊びでは心が満たされない。

「僕……?」

 白の機体「白式」のパイロット「織斑一夏(おりむらいちか)」は、咲真が自分と同じ境遇であることに気付いた。

「お前、もしかして男なのか……?」

「何を言ってるんだ。声を聞いただけでは分からないのか。一夏、お前、異性の集団に放り込まれ過ぎてついに男女の区別がつかなくなったか」

 赤の機体「紅椿」の操縦者「篠ノ之 箒」を筆頭に次々と驚きの声が上がる中、シャルロットだけが疑義を呈した。

「いや、もしかしたら男装してるだけなのかも」

「でもそれでもよっぽど様になってるぞ」

「……一夏、それどういう意味?」

「おい」

 黒の機体「シュヴァルツェア・レーゲン」を駆る「ラウラ・ボーデヴィッヒ」は、静かに砲身の引き金に指をかけた。

「どうやらこれ以上の話合いは無用のようだぞ」

 彼女の言葉をきっかけに全員に緊張が戻る。

「よし、これは良い展開だ。お前ら、手は抜くなよ」

「この人数に勝てると思って?」

 青の機体「ブルー・ティアーズ」を操る「セシリア・オルコット」は、同名のビット機関ブルー・ティアーズを、咲真の死角へと待機させ、いつでも先手を撃てるよう準備を済ませていた。

「それを試すための稼働実験だ。実戦に勝る経験はないからな」

 彼の背面で折りたたまれていた翼が大きく広がったのが、開戦の合図。

「そうだ、忘れてた。僕の専用機『白天』だ。名前だけでも覚えておいてくれ」

 咲真は、シュヴァルツェア・レーゲンの、前方からの砲撃、レールカノンの二門からの砲弾と、死角から襲ってくるブルー・ティアーズのレーザー砲撃を、

「なんだと!?」

「そんな?!」

 その場から動かずに受け切った。ビットから放たれたレーザーは彼の周囲で球状となって待機状態に入り、二撃の実弾に至っては起爆すらせずに完全に止められた。

「ほら、返してやるよ」

 零落白夜を展開した一夏と双天牙月を構えた鈴。二人が斬りかかったことに対して、咲真は手中の収めた砲弾を甲龍へ、レーザーを白式へぶつける。

「一夏! 鈴!」

「君は、駄目だ。彼と接触させるわけにはいかない」

 遮るように、救助に入ろうとした箒の眼前へと高速移動を果たす咲真。

 彼女が刀剣武装「雨月」へ手をかけようとしたのを見て反撃に出ようとするが、

「残念だったな。これでお前は動けない」

「あぁ、慣性停止結界か」

 ラウラの奥の手に捕まる。

「分かっているなら話は早いな。無駄な抵抗は止めて身柄を差し出せ」

「なぁ、知ってるか。敗北っていうのは勝者がいて初めて成り立つものだ」

「何を言って――」

 白天の手の甲にあるクリスタルが白く発行したかと思うと、慣性停止結界を打ち破って紅椿もろともシュヴァルツェア・レーゲンを吹っ飛ばした。

「みんな! 大丈――」

「人の心配より自分の身だろ」

 近接距離への咲真の侵入を許してしまったシャルロットは、拡張領域から最適な武装を取り出そうとするが、

「(あれ、動けない――)」

「遅いよ」

 動けない理由が分からないまま頭を掴まれ、そのまま地面へと叩きつけられ、駄目押しと言わんばかりに踏みつけられる。

「こんのぉ! 離しなさい!」

「それは駄目だろ。セシリア」

 ビットの射撃機能を封印し、スカート状のスラスターとして運用する「ストライク・ガンナー」。本来は強襲用の高機動パッケーシなのだが、怒りに我を忘れて突貫をしてしまったことで捕まってしまう。

「お前はどう足掻いても遠距離の後方支援だ。いつでも冷静に、いつでも平静にを貫け。只でさえ近接兵装がナイフ一本しかないんだから、我欲の特攻は自殺行為と思え」

 次の瞬間、ブルー・ティアーズの装甲がことごとく潰れ、シャルロットと同じ結末を迎えた。

「お?」

 咲真の両手両足を、四本のワイヤーが捕えた。

「今だ。やれ」

「これはこれは、死に底ないが」

 ラウラのワイヤーブレードで拘束され、動きを封じられた咲真へ、

「行くぞ! 一夏!」

「あぁ!」

 第二形態「雪羅」へと形態移行を果たした白式と、絢爛舞踏を発動し、無尽蔵に近い圧倒的エネルギーを得た紅椿の二機が、同時に全武装を以て斬り込む。

「ちょっと、わたしも忘れないでよ」

 二人を補助するように、鈴も高破壊力の「崩山」の銃口を咲真へと向ける。

「あぁ、これは、一騎の犠牲は免れないかな」

 またも、白天の胸部のクリスタルが輝きだした。

 しかし、白式も紅椿も、もう止まれないし、止まらない。この機を逃したら次のチャンスは巡ってこないかも知れないからだ。

 対する咲真も、二機の最大出力を正面から受けて無事では済まないことを自覚している。

「極晶暴臨・絶界」

 視界を真っ白に塗り潰すほどの閃光が煌いた後に映し出された光景は、

「良いよ。これは予想外だ」

 校舎ギリギリにまで広がった巨大なクレーターと、押し潰されるようにボロボロになった専用機持ち六人の機体。

 そして、ISが剥がれるも、まるで勝者のように中心地に佇む咲真。

「引き分けだな。これを勝利と冠するほど僕は自惚れていない」

 ほどなくして、「織斑千冬」を筆頭にして警備隊が到着。

「こちらの要求以外の動きはするなよ。勝手に指一本でも動かしてみろ」

「大丈夫。現時点での僕の要求は満たされた。もう逆らう気も抵抗する気もないよ」

 代表候補生を相手取って最終的に下してみせた危険人物の印象と打って変わって、その後彼は非常に従順に身柄を拘束された。

「あ、そうだ。織斑先生」

「貴様に先生と呼ばれる筋合いはない」

「今のうちに僕の部屋を用意しておいてね。二人部屋でも、一人部屋でも構わないからさ」

「……そいつを早く連れて行け」

 不気味な言葉を発する咲真に、彼女はそれ以上の会話を続けなかった。

 

     ◇

 

 数日後、一夏が在籍するクラスは驚愕と不安の声で溢れ返ることになった。

 なぜなら、

「顔見知りの人は久しぶり。お初にお目にかかる人は初めまして。優神咲真です」

 白昼堂々に暴れたテロリストが、

「以後、お見知りおきを」

 何食わぬ顔で入学してきたから。




初めまして。作者はISの原作は銀の白銀まで、アニメは一期までしか目をとうしてないです。なので、「この機体にはこういう武装が新たに加わった」とか、それ以降の作品の設定は反映されていません。なので、多分生徒会長も登場しないことと思われます。それでも宜しいという方々は、どうかよろしくお願いします。
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