なのに文字数は対して増えていないという…。
5000字くらいを目標にしてたんですが…。
「全く……」
もう人がいなくなってしまった教室に声が響く。何の変哲もない公立高校の教室の片隅からため息がもれた。
思い出すのは先ほどの通信の内容。いきなり自分のデバイスにかけてきたかと思うと、今度の週末、スパーに付き合えという。こちらの予定を聞かず、いきなり要件を言うのはらしいと思う。が、その内容が相手も自分もあったことのない年下の子とのスパーが主となると話が別である。
(夜のトイレにひとりで行けない子供じゃあるまいし…)
もちろんあの戦友がそんな性格をしているとは思えない。こちらの性格を知っているから、年下の子をダシに使い試合をするつもりだったのだろう。
普段は頭を回さないくせにこういう頭の回転は速いのだ。そんな手に乗るのはシャクだったし、何より――
(デートの方が大事)
ひとつ頷き立ち上がる。
と、同時に開けっ放しになっていた窓から風が吹いた。
そして――雪のように白く、長い髪が舞い上がる。
軽く髪を抑えると窓を閉める。
「さてと、行きますか」
カバンと帽子を手に教室を出る。結構始業式だけということもあり、ほかの生徒はほとんど帰宅したか部活に行ってしまったようだ。そんなことを考えていると廊下を曲がったところで、吹奏楽部に所属しているクラスメイトの女子と出くわし、声をかけられた。
「あ、アルペンハイムさん。また明日」
「うん、また明日。頑張ってね」
軽く手を挙げて笑顔で返す。
「うん。がんばるよ!それと―」
そこで相手もにっこり笑うと
「相変わらずきれいだね!うらやましいよ!」
「あはは……。ありがとう」
それには苦笑で答えた。そして今度こそわかれる。
(ん?)
靴を履くために靴箱へ向かっているとちょうど向かいから生徒がやってきた。そのまますれ違うが生徒たちは珍しいものを見る目でこちらを見ていた。
(ま、しょうがないか)
自分の体の特徴を知っているからたいして気にならない。さっきのような視線にもなれたよなぁ、そんなことを考えているといつの間にか靴箱の前だった。いけないいけない。考えすぎていた。軽く頭を振って手を伸ばす。
髪と同じくらい白い手を。
靴を履いて、帽子をかぶり、薄い手袋をする。
笑顔を浮かべながら外へ出て、
(デート、デート)
これからのデートに夢中だった。
バスに揺られてクラナガンの中心部に着いたのは15分ほどたってからのことだった。クラナガン中央公園の時計台の前。ベタだが、そこが待ち合わせ場所だった。
(まだ来てないっと)
歩きながら、時計台の前を見てそう思う。
そして――そのまま時計台の前を通り過ぎる。
そして反対の公園の入り口までたどり着き公園から出たところで――、
「…え?」
「お待ちしておりました、お嬢様」
ちょうど公園へ入ろうとしていた待ち人へ慇懃な動作で一礼した。
「な、なんで…?」
「お嬢様をお待たせするのは私のポリシーに反しますゆえ」
「で、でも時間…」
「ええ、約束の時間まであと一時間ございます」
「なら、なんで…」
「ごめん、待たせちゃった?、ううん今来たところ、というベタな会話をしたかったお嬢様をお迎えするためでございます」
そしてまた一礼する。待ち人はため息をついた。
「ならさせてや」
「ベタな展開は面白くないですし。それに――」
そこまでいって手を握って歩き出す。
「あっ」
「ジークと早くデートしたいしね。それじゃだめ?」
手をひかれながら待ち人――ジークリンデ・エレミアは、
「しゃーないなぁ。今回は許したるよ!」
笑顔で腕に抱きついた。
それから二人はクラナガンの街でデートを楽しんだ。本命のデートは週末であるため、今日はゲーセンで遊んだり、喫茶店で特別ケーキを食べたりしたくらいだ。一通り遊んだ二人は最初の待ち合わせ場所、クラナガン中央公園のベンチに二人で座る。
「ふー。楽しかった」
「そうやねー」
それから二人はお互いの近況を報告しあう。そんなに面白いことはないはずなのに面白く思えるのは特別な人と一緒にいるからだろうか。
「はー、あの炎帝様は相変わらずやなぁ。あのバトルジャンキーなとこを少し引っ込めるだけでモテモテになれそうやけどな。ルックスは問題ないんやし」
「まぁ、ああいう奴だしね。それにバトルジャンキーだけじゃなくていろいろ直さないとだめじゃない?」
「それもそうや」
共通の友人をネタに笑いあう。
そしてジークが声をかけた。
「なぁ、レイ」
「なぁに?」
コテン、と。
ジークの頭が肩に乗る。そしてジークは目を閉じた。
「どうしたの?」
「ウチ、今ものすごく幸せや」
無言で続きを促す。
「ヴィクターだけやなくて、番長、いいんちょ、それにミカさんもよくしてくれるし。弟君と妹ちゃんは可愛いしな」
「ジークによくなついてるしねぇ。妹の方は」
ジークは苦笑を返す恋人の横顔を見る。
すぐ近くにある顔は雪のように白い。自分とは違うが、人とは少し違うものを持って生れた人。少し軽いところもあるけれど、本当は優しく強い人。心も体も魔法も。そんな人と出会い、好きになり、恋人になった。少し前の自分では考えられないこと。こんなに幸せなこともこんなに積極的なことも。これ以上の幸せなどジークは考えられなかった。
満ち足りている。
間違いなく。
ああ、そうだ。だからこそ――
ジークは少し勢いをつけて立ち上がり、そのまま二、三歩進んで――
「ジーク?」
後ろからの声に振り返り、
笑顔と指を突き付けながら――
「待っとれよ!氷帝、シュレイ・アルペンハイム!三皇五帝はウチが全員倒したるからな!」
恋人に言い放った。
驚いた表情を浮かべるシュレイを見ながらジークは思う。一人の女の子として幸せになった。だから次は競技者として。幸せとは少し違うけれど、戦いたい相手がいる。男子とか女子とか関係なく戦いたい。いや、違う。そうじゃなくて――。
(勝ちたい)
そう強く思っていた。
三皇に―
五帝に―
そして――、目の前にいる恋人に。
競技者となってからこんなに強く勝ちたいと思う相手は初めてだった。
「君たちにもよくしてもろてるけど、競技者としてはまだ勝ってない。それはなんか悔しいからな!」
シュレイはその言葉を黙って聞いていた。そして、女の子と間違えられるほどの顔にニヤリとした笑みを浮かべた。ジークはその表情に思わず見とれた。恋人としても競技者としても惹きつけられてしまうほどの強い意志を感じたから。
恋人はベンチから立ち上がり――
「受けて立つよ。鉄腕、ジークリンデ・エレミア」
まっすぐジークを見つめながら宣言した。
やれるもんならやってみろ、と。
いつでも受けて立ってやる、と。
「ま、ほかの三皇や五帝はともかく私に勝てるとは思わないでね?」
「うわ、すごい自信やなぁ。腹立つわ」
「当然でしょ。とくにほかの五帝には負けたくないしね」
「そう言われると余計に勝ちたくなるなぁ。でも安心してええよ?ウチが勝ったら膝枕で手当てしたるから。もちろん、レイだけを。だから負けてもええんちゃう?」
「それはそれでとっても魅力的だけど。私は負けたジークをお姫様だっこで救護室へ運んであげたいからね。ジークの方こそ負けていいよ?」
互いに見つめあう。そして――、
「「プッ、フフフ」」
互いに笑いだした。
ひとしきり笑いあったところで、
「じゃあ、帰ろうか」
「そうやね」
帰るために歩きだす。しっかりと手をつないで。
「そういえばレイ」
「ん?」
シュレイはジークの方へ顔を向ける。
「学ラン姿似合うとらんな」
「自覚はしてる」
オリキャラの性格が安定しない。
ライバルであり恋人でもあるならこういう会話をさせたかった。
ジークは吹っ切れるとこんな感じになりそう。
でもはずかしがり屋なところも残っている設定。