暑いです。
正に窮鼠猫を噛む状態。
噛んでいるのはピカチュウではなくロコンだが。
バチバチと音を立てながら次第に光が大きくなる。
再びロコンに目を移すが相変わらず噛み付いている。
「あれはー」
ロコンのしっぽがうっすらと青紫の炎に覆われていた。
それも1本1本と。
「ロコン″鬼火″。」
賭けだ。
ロコンは私の声を聞くと口を離し、黒いポケモンの体を蹴り向かい合う形で体制を整えると、6本の美しくまとまっているしっぽをこれでもかと扇の様に広げた。
すると包んでいた炎がポケモンの元へと飛んでゆく。
ゆらゆらと周りを取り囲み、炎の輪となった。
不意をつかれたのか電気の塊が消えた。
「動きを封じたね。でもそれではダメージを与えられないよ。」
それはわかっている。
次に繋げなければならない。
ふっと、一息つくと青紫の炎が赤紫、赤へと変わり大きく燃え始めた。
「''炎の渦"」
私の声に合わせロコンが吠える。
すると、炎が1段と大きくうねり、渦巻く。
そしてすっぽりとポケモンを覆ってしまった。
「鬼火からの炎の渦か。連続技でこちらが手を出せないようにしたね。お見事。」
ふっ、と微笑むとその人は炎を見つめていた。
無意識だった。
まさかダメージを与えることができるとは思わなかった。
炎の中ではポケモンが苦しそうにしている。
あれ、小さくなった?
目の錯覚かと思ったが、炎の中をよく見ると少しづつその影が小さく小さくなっている。
「ロコンストップ。」
『ああん?』
文句あり気だが、炎が姿を消した。
砂浜には炎のによる焼け跡が残り、その中心にロコンに似た黒い先程とは全く違う姿をしたポケモンが倒れていた。
「ありがとうゾロア。ゆっくり休んで。」
その人はモンスターボール取り出し、ポケモンを収めた。
ゾロア、あの倒れていたポケモンの名前か。
「不思議そうだね。ゾロアは他のポケモンの姿を真似ることができるんだよ。最初の大きなポケモンはゼクロム。」
スラスラと私の疑問に答えていく。
『と、とりあえずバトルは終わり?』
頭の上から声がする。
アゲハントのこと忘れてた。
「うん。ボクの負けでバトル終了。」
肩をすくめてにこにこ笑っている。
あっという間のことでバトルをしたという実感がわかない。
『うっしゃー!勝ってやったぜぇ!』
ロコンは一匹ではしゃいでいる。
勝つことは嬉しいことだろう。
でも、怪我をしてまでバトルをするのは私には考えられない。
「ポケモンバトルはポケモンの本能に近い。彼らは戦うことで強くなり生き残っていく。キレア、君は疑問を感じるていたようだが必要なことなんだよ。」
私の心は全てお見通しのようだ。
「そうだ、さっきの約束。」
風が吹く。
緑の髪がゆらゆら揺れる。
「ボクの名前は"N"。」