「はい、Nさん。」
私は紅茶の入ったカップを出した。
「ありがとう。」
にこにこと笑っている。
不思議な人だ。
バトルの後、私はNさんを研究所まで連れてきた。
どうやら先生に用事があるようだ。
研究所まで来て一連の話を先生にすると、先生は急いでラプラスの手当に向った。
先生はこの島にいるもう1人の人間で私の育ての親だ。
ポケモンの研究所を行っている。
「君は忘れてしまったと思うが、実は9年前に会っているんだ。」
一切覚えていない。
9年前なら私は4歳くらいだろう。
ちょうど先生と暮らし始めた頃だろう。
「小さかったから無理もないね。」
にこにこしながら紅茶に口をつける。
ガチャ
唐突にドアの開く音が響く。
「帰ったぞ。」
「先生。」
先生が帰ってきた。
「ラプラスだが、大した怪我は無かった。Nが手加減してくれたからな。」
いえいえと笑っている。
「改めまして、お久しぶりですねオリーブ教授。」
オリーブは先生の名前だ。
「教授はやめてくれ。」
先生と呼ぶのはいいが、教授と呼ばれてることをいつも嫌がる。
私は急ぎ先生にもお茶を入れる。
「今回は悪かったな、わざわざ呼び出して。」
どうやらNさんは先生に呼び出されたらしい。
「オリーブさんは命の恩人ですから。今回は彼女、キレアの件ですよね。」
「そうだ。」
先生はいつも使っている椅子に座った。
背もたれが少し壊れていてぎぃっと音を立てた。
「もう少しであいつは13歳の誕生日を迎える。誕生日の日にマサラタウンまで連れて行ってくれ。そこからは1人で大丈夫だ。」
私はカップを先生に渡す。
「先生は一緒に行かないの?」
「俺は島から離れられないからな。だからNに頼んだ。」
先生が一緒に来てくれるとばかり思っていたので驚いた。
「わかりました。」
「キレア、外の世界へ出るのはお前にとって必要なことだ。お前の未来にとって。」
服の裾をぎゅっと掴む。
顔が自然と下を向く。
「あと数日の間Nはポケモンバトルを教えてやってくれ。外の世界の話もしてくれ。」
先生が紅茶を飲む音が聞こえる。
「キレアは連れて行くポケモンを6匹選んでおけ。」
「島から離れたくない。」
涙がにじんで来るのがわかる。
喉の奥も熱くなる。
「キレア、親離れの時期だ。いつかは俺から離れなければならない。それの練習だと思え。」
あとそうだ、小さく先生がつぶやく。
「ポケモンリーグにチャレンジしたらこの島に帰って来ていいぞ。できればチャンピオンになって戻ってこい。」
顔を上げると先生が輝く様に笑っていた。
私も表情が和らぐ。
ならなってやる。
ポケモンチャンピオンに。