永遠ノ燈【凍結】   作:天津毬

3 / 8
#03 起動/迎撃戦

まず最初に言わせてもらう。…これを聞いているお前は多分、よほどの天才か、暇人か、切れ者か…とにかく変人だ。

それは俺が保証する。

考えても見てくれ、俺はこの音声データ––––––独白を確かにプロテクトフォルダに入れたが、今頃フォルダは壊れてる筈だ。

お前はそのフォルダを、破滅的な世界情勢の中で、旧新潟に作られた、あの天災が作った核シェルター内にあったハッキング困難な壊れたスーパーコンピュータを再起動させて、なおかつ膨大なデータの中からわざわざ抽出して、復元して、聞いているんだ。

普通の人間なら1年かけてやっとの事をあんたはわざわざやって、これを聞いているんだ。

本当に頭が下がる。だがそういう人間は嫌いじゃないし、新鮮だ。

こっちは皆が皆、最初から決められたプログラムに従って電気信号で動く人間––––––いや、もはや機械やロボット、あるいはAIの類しかいないからな。

そんな世界の中で存在するコンピュータウイルスの類である俺の戯言に耳を傾けてくれる奴がいるなら、それは嬉しいし、光栄だ。

そして、『あいつ』が救われる確率が上がるだろうから、『あいつを守って欲しい』という俺の最後の願いも叶う訳だ。

…もっとも、あんたが自衛隊––––––いや、今は9条改正で防衛軍だっけ?

そこの所属でなきゃ、話にならないが––––––。

ま、いい。せっかくだ。お願いを兼ねた雑談でもしよう。

そうだな––––––

女の話をしようか。

その女は所謂ツンデレというタイプの女でな…普段は気が強いが虚を突かれると可愛くなる奴だ。まぁ、アニメや漫画では需要あるけど、現実では需要ないし、まず嫌われるタイプな。

だが、なんとなくだが、俺はその女––––––そうだな、仮にツンデレ女とでも呼ぼう。

え?そのまんまってか?…気にするな。

で、俺はそのツンデレ女と行動をしていた。

元いた場所に帰りたい。

ツンデレ女のそんな願いを叶えるために。

いやはや何度も聞き返したよ。本当に元いた場所に––––––現実世界に帰りたいのかって。

…そっちの情勢を詳しくは知らない。でも地獄だってことは、なんとなく知ってる。

そんな世界に、ツンデレ女はわざわざ御都合主義と異常、歪んだ観念で塗り固められてはいたものの、平和な世界からそっちみたいな地獄に行くって言ったんだ。

…まぁ、そいつは知らなかったらしいがな。

それに、俺もそいつに教える気なんてなかった。

教えても、あいつはそのまま突き進んだ。

『人は自分が深く傷つかなければ自分の愚かさに気付けない。』––––––そのツンデレ女とそいつの姉は、その言葉に当てはまる典型的な人間だったな。

でも、あいつは自身の目的を目指し、諦めさせようとしてもあいつはそのまま突き進んで行った。

頑固で、我儘で、でもそれはそれで強さがあった訳だ。なら、多分あいつはそっちの世界でも生き残れる。

––––––でも、もしそのツンデレ女が––––––篠ノ之箒が折れてしまいそうになったら、あんたは、そいつを助けてやってくれ。

ありゃ、見た目は鉄でも心は硝子。

強そうだが、それでいて繊細で、寂しがり屋だからさ。

…勝手ですまないが…箒を、頼む––––––。

 

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

第45896フォルダ付近・情報領域。

そこに––––––国崎肇が纏う漆黒に鮮血色のセンサーやメインカメラ保護装甲に守られた双眼で輝跡を描きながらゴーレムに襲い掛かる紫電弐式がいた。

『なんなんだよお前⁉︎さ、さっさとやられろよ‼︎』

束がゴーレムの外部スピーカー越しに叫び、ゴーレムが、紫電弐式目掛けてレーザーを放つ。

「……。」

けれど肇は腰部に稼動アームで接続された跳躍ユニットの角度を調整し、回避。

さすがにゴーレム全6機による6機12門のレーザーを躱すのは無理だったため、わずかにレーザーが掠るが、装甲に施されたレーザー蒸散塗膜がレーザーを弾く。

一瞬、動きが鈍る。でも、止まらない。

肇はそのまま直進する。

そして、上腕部にあるナイフシースと呼ばれる、文字通りナイフの収納と空力制御を兼ねた大型の突起から、刃渡り25センチ程の、サバイバルナイフ型の短刀である21式短刀を展開。

短刀がナイフシースから展開したガイドレールを辿って肇の手元に運ばれ––––––逆手で掴み、抜刀。

その間にも、肇の紫電弐式は跳躍ユニットを吹かし、ゴーレムに迫る。

先鋒のゴーレムが肇の左手前方に差し掛かり––––––右手で逆手に握ったナイフでゴーレムの首筋に該当する部位を斬り飛ばし、さらに手の中でジャグリングのように回転させながら、順手で握り直し、右手前方のゴーレムを、右肩から左腰にかけて、切り裂く––––––そして2機のゴーレムは爆散する。

それに束の驚愕した声が外部スピーカー越しに聴こえる。

だが同時に背後に残存ゴーレム4機が回りこみ––––––

『…は、はは。残念でしたぁ‼︎ゴーレムにやられに来ただけだったね‼︎お馬鹿さん‼︎』

束は勝ち誇ったように言う。

だが肇は何でもないような、つまらなそうな顔をして––––––背部と腰部に取り付けた4基の兵装担架にマウントさせた突撃砲を展開。

突撃砲の40ミリ短距離滑腔砲から、劣化ウラン弾を、穿つ。

それがゴーレムに弾着し––––––機体内部にめり込む。

「弾着、今。」

肇が呟くと同時にゴーレムの内部にめり込んでいた劣化ウラン弾が爆発し––––––ゴーレムは木っ端微塵に消し飛んだ。

『–––––––ッ⁉︎』

束は今度はウィンド越しにこちらを見る。

だから肇はそちらを横目で見て、ほくそ笑み、

「…だれが、『やられに来たお馬鹿さん』だって?」

『⁉︎』

皮肉たっぷりのニュアンスで、束の先程放った言葉を返す。…確か、ブーメランを返す、とか言うんだっけ。

「ああ、あとペチャクチャ言うのは止めとけ。小物にしか見えなくて滑稽だから。」

『んな⁉︎ふざけ––––––』

束が叫び終わる前に短刀をウィンドに突き刺し、ウィンドを構成するプログラムを破壊する。あれ以上聴いてたら、間違いなく腹の底から笑いがこみ上げ、爆笑していたから。

そしたら今度は自分に死亡フラグが立って、自分が死––––––いや、消滅(ロスト)するかも知れないから。

だから、不用意な発言は控える。電子で形作られた世界でそんなモノは不要かも知れないが、何もかもがプログラム通りにはいかない––––––現に自分が箒と簪をイレギュラーに変えたのだから。

だとしたら––––––非効率だが、運というヤツが束にも味方しない確率がないとも言えない。

「…それにしても……」

肇は呟く。

「篠ノ之…ややこしいし箒で良いか。…彼奴、現実世界の情勢知ったらどうすんだろ。」

この世界に留まるだろうか。

…いや、留まらない。外が地獄でも、彼奴は歪だ、異常だと認識したこの世界から出ようとする。

…だが、外に出て生きて行けるか?生半可な覚悟じゃ彼奴は生き残れない。あっさり死ぬ。

そんな世界だ。

…それでも彼奴は出ようとするんだろうか…?

 

そう考えながら、肇は第45896フォルダに帰投した。

 

 

 

 

■■■■■■

 

第45896フォルダ内部。

 

箒は投影されたウィンドに映されていた肇とゴーレム6機の戦闘を見て、唖然とさせられていた。

「…あの無人ISを…」

箒は呟く。

「どうって事はないよ。絶対防御もないし使い捨て同然…なら、あっさり倒せるのも同然でしょ?」

簪がさも当然。と言う感じに言う。

「…そうだな。」

そして箒もそれを否定しない。

(自我のリミッター解除を肇に施される前ならきっと…『そんなことはない‼︎あの一夏だって苦戦したんだ‼︎あんな奴が簡単に倒せるはずがなかろう⁉︎』…なんて言ってたんだろうなぁ…)

箒はそう思い苦笑いする。同時に、今までの自我のリミッターを解除してもらう前の自分があまりに滑稽で馬鹿馬鹿しくて、恥ずかしくて…羞恥心が沸々と湧いてきて、顔を赤くする。

と、そこに紫電弐式を纏った肇が戻って来る。

そして簪が紅椿の改装作業に戻る。

「紅椿はどれくらいまで完成した?簪。」

「…8割くらい。2割はまだ。」

「…そうか。」

「ちなみにまた無人ISが来てる。現在第19973レイヤーを通過中。」

簪が淡々と報告する。

(っ⁉︎まだ来るのか⁉︎)

思わず箒は驚く。

「数はどんくらいだ?」

「…500。」

「うっへ〜あちらさん、精が出てるね〜。」

簪が言う。

そして肇は呆れながら苦笑いする。

それで、箒はさらに驚く。

「な⁉︎ISは467機までしか作れないんじゃ…‼︎」

「…ま、そういう事じゃないか?」

驚愕する箒に肇が言う。

「この世界ってさ、仮想現実。プログラムで形作られた、御都合主義の体現だろ?つまりさ、ここならプログラムが対応する限り、なんでも出来ちゃうって事だろ。沈没した戦艦を再構築して魔改造するとか、魔法みたいなのしちゃうとか、ISコアを元来の上限以上作ってしまうとか…そういうのが簡単にできる、便利で歪で混沌とした世界––––––もっとも、この世界の本性知ってて、尚且つプログラムに干渉できなきゃ無理だけど。」

ミネラルウォーター––––––元来飲む必要はないが、感覚的に肇は飲みながら、箒に応えた。

ふと、簪が箒の制服の袖を引っ張る。

「…できた。」

掌の中に、赤色を基調として、赤茶色の迷彩の入った待機状態の紅椿を持って、箒に見せる。

「‼︎すまん簪、ありがとう。」

箒はそう、礼を言って、紅椿を受け取る。

「最適化とか、ある程度は施したから…あと、幾つか突撃砲の類も装備させた。」

簪が言う。

「…え?銃?」

それに箒は唖然とした顔で聴く。

「…何か問題?」

「…いや、その…リミッターが外される前のバカな私は射撃訓練をしてなくて…。」

「つまり銃の扱いに慣れてない?」

「…恥ずかしながら…。」

それを聞いて簪は呆れる。だが、それを見越していたかのような顔をして、言う。

「何となくは分かってたわ…だって、織斑と近接訓練ばっかしてたから。」

「う”…」

「だから火器管制補助システムを付けた…。これで、銃の扱いに慣れてなくても多少は当てられる。」

「…すまない、助かる。」

箒は、礼を言う。そして、

「…紅椿壱型丙––––––起動‼︎」

箒は、叫び、紅椿あらため、紅椿壱型丙が起動し、深紅に赤茶色の迷彩の入った、流線形フォルムの全身装甲が箒を包み––––––紅椿壱型丙が、展開した。

「これが……私の…」

展開した紅椿壱型丙の装甲を見ながら、箒は呟く。

「新しい甲冑ってトコかな。」

銃剣搭載型突撃砲を兵装担架に搭載し右手にも保持し、左手に追加装甲を保持した肇が言う。

「…前より頼り甲斐がありそうだ。」

背部兵装担架の右側に突撃砲、左側に長刀を搭載し、右手に突撃砲、左手に追加装甲を保持した箒が呟く。

やはり、全身装甲の方が心理的に落ち着き、安心するらしい。

「私は後方支援を行うから。」

そこに打鉄改ニを纏いながら、簪が言う。

やはりこちらも全身装甲だが、2人の機体より幾分かゴツい。

肩上部と背後には兵装担架の代わりにマルチロックオンミサイル『山嵐改』の発射基計4基。さらに肩部側面には40ミリ滑腔砲計2門。両腕部には12.7ミリチェーンガンと近接用のアーマースパイク…という重装備だった。

「改ニは重たいから。」

…当然、その機体は重い。

「…敵IS、このフォルダ周辺に到達したよ…。」

ウィンドウを展開して、簪が状況を伝える。

肇と箒が、身構える。

簪も全兵装の安全装置を解除する。

瞬間、第45896フォルダのゲートを突破して、大量のゴーレムが流れ込んで来た。

「おいでなすった––––––」

肇は、何処か楽しそうに、呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




中途半端ですが今回は終わりです。
大学が忙しくて書く暇が中々確保できない…orz

前回、肇の紫電弐式は戦術機ベルクートが元ネタと言いましたがすみません、不足でした。
戦術機ブラックウィドウⅡの部分も取り入れています。( 兵装担架が4つとか。)
ちなみに箒の紅椿のカラーリングはシュヴァルツェスマーケンの戦術機Mig-27アリゲートル(ベアトリクス・ブレーメ専用機)が元ネタです。なお、外見は戦術機武御雷が元ネタ。


今回の見所…あんまり、ないなぁ…小物っぽい束だけかな…。



次回も不定期ですが、よろしくお願い致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。