そしてさらに明かされる現実世界の情勢…。
第45986フォルダ・市街地レイヤー
銃声。
砲声。
爆発音。
倒壊音。
それらが市街地レイヤーの高層ビル群から成るコンクリートジャングルに木霊していた。
先程肇たちがゴーレムを迎撃した交差点はノイズと土煙のレイヤーを纏ったクレーターとゴーレムの残骸だらけですでに原型を留めておらず、周りのビルも半壊していて、壁に走った亀裂にはノイズや炎、煙のレイヤーが走っていた。
さながら戦争映画のような雰囲気のフィールドと化していた。
瞬間、一際大きい爆発音と共に交差点の近くのビルが音と煙のレイヤーを立てて倒壊する。
その、煙のレイヤーを突き破り、紫電弐式を纏った肇が倒壊するビルとその破片の中を、針で縫うように飛ぶ。
そしてその肇を、青白いレーザーの雨が掠める。
セシリアのブルティアーズが放ったレーザーだった。
「ぐぅぅ…ちょこまかと‼︎」
セシリアは悪態をつきながらレーザーライフル、スターライトMk.2と思考操作兵器ビットによるフルバーストによるオールレンジから放つレーザーの雨で肇を追い詰める。
一方の肇はそれをM6A1のレーザー蒸散塗膜の張られた銃剣で弾き、次に襲い来るレーザーをシェルツェンを前面に突き出すことで防ぎ、シェルツェンに掛かった衝撃でバランスが一瞬崩れるが、それさえ利用して体を捻り、角度をつけた跳躍ユニットを噴射することでロール回避を行い、レーザーを難なく躱す。
(さて––––––そろそろ次かな…)
セシリアのレーザーを躱し、防ぎながら、肇は次に備える。
その次、とは、
「かかったぁ‼︎」
煙のレイヤーから飛び出してきた、ラウラのシュヴァルツァレーゲンだった。
(いや、バレバレだろう。セシリアが撃ってた時にコイツは居なかった。じゃあ先回りして待ち伏せして、そこにセシリアが誘導している––––––普通に考えたら分かるだろ。)
そう考えていた肇にラウラは右腕のプラズマ手刀で斬りかかってくる。
肇はそれを、M6A1の銃剣と同じくレーザー蒸散塗膜の張られた【CIWS-Type18ナイフ】をナイフシースから展開。
プラズマ手刀がギリギリまで肇の首筋に迫る––––––が、肇は冷静に、ナイフシースから伸びたガイドレールを伝って運ばれてきたナイフを掴み、逆手で抜刀。
瞬間、跳躍ユニットの角度を再調整し、ロケットブースターを噴射する。
急な体勢変化に、肇の内臓が潰れる––––––なんてことはない。だってプログラムだから。
ロケットブースターで加速した肇は勢いを利用し、ナイフを振り下ろし、プラズマ手刀をナイフで受け止める。
そして、再度角度を再調整した跳躍ユニットを右側に向け、噴射。
脚部の膝間接にある鋭利で大型の装甲ブロックでガラ空きになっていたラウラの横腹に、右足で回し蹴りを入れる。
「ぐぅっ‼︎」
ラウラが苦悶の表情を浮かべながら吹き飛ばされ、そこに肇が背部兵装担架をダウンワード方式で2基展開し、40ミリ滑腔砲を、放ち、弾着。ラウラは円柱型のガラス張りのビルに直撃し、そのビルを倒壊させる。
それでラウラはしばらく動けない。
「このぉぉぉぉ‼︎」
その、蹴りと兵装担架による砲撃直後の肇に、セシリアはスターライトMk2、ビットを用いた機動砲撃戦を仕掛けてくる。
(ちっ、機動砲撃戦かよ…コレ、苦手なんだよなぁ…オマケに今回はレーザーだし…)
肇は内心、毒付く。
肇はセシリアのレーザーを先程と同じように、躱し、防ぎながら距離を詰めて行く。
近接戦で潰す気なのだ。
もっとも、ただ真っ直ぐ突撃するだけではない。ビル群を盾にして、ビルの壁面を足場に90度反転して反対側の壁に飛び移るオルブライトターンをしながら、機動砲撃戦を仕掛けてくるセシリアのレーザーを躱しながら、距離を詰める。
「……下っ手クソが。”あっちのお前”の方が、多分今のお前より遥かに上手いぞ。機動砲撃戦。」
現実世界のデータから知った中にあった、鎌ケ谷市に駐屯していた日本防衛軍旧欧州人部隊に居た”あちらのセシリア”を思い出して、その機動砲撃戦の腕前を現在戦っている仮想世界のセシリアと比較して、肇が呟いた。
「なっ⁉︎ば、馬鹿にしてぇ‼︎」
セシリアはそれで頭に血が上ったのか、レーザーの攻撃がさらに激しくなるが、冷静な判断も出来ないのか、同時にレーザーの命中率が酷く下がる。
(…プライドが無駄に高い上に簡単な挑発に乗りやすい…あっちの世界のコイツとはえらい違いだ。)
内心呆れながら、肇は思う。
(それに耳障りだし、そろそろ…)
肇は右手のM6A1を構え直し、4基の背部兵装担架のうち、内側2基は脇下を通して展開させ、外側2基は背後に向けて展開させる。
そして、跳躍ユニットをジェット推進からロケット推進に切り替え、急激に加速。
向かう先は––––––4基のビットの内の1基があった。
セシリアはやっとヒートアップが収まり、判断力が冴えるが、時既に遅し。
肇はビットの1基に取り付き、そのビットを盾にする。
ビットには、乱戦下における味方ビットや搭載ISへの誤射を避けるべく、射線上に味方ビットや搭載ISが存在した場合、安全装置が掛かる仕組みになっている。
これはそのビットを操作するIS側も同じ––––––つまり、セシリアにも他のビットにも、今の肇––––––射線上にいる味方ビットは、撃てない。
セシリアは肇の思惑に気付くが、また時既に遅し。
肇は少し口角を釣り上げ、取り付いたビットを盾にM6A1の機関砲を、放つ。
1基、また1基と撃墜する。
セシリアは急ぎ敵味方識別システムの味方欄から肇の取り付いているビットを除外しようとするが、その作業が終わる寸前で今肇の取り付いているビット以外のビットが落とされる。
さらに肇は取り付いていたビットにC4爆弾を取り付け、起爆。
セシリアはスターライトMk2を放とうとするが、肇はすかさずM6A1の機関砲で銃身やエネルギー収束部を撃ち抜き、爆破する。
そして、肇はセシリアを落とそうと、急接近して––––––
「お生憎様、ビットはまだありましてよ‼︎」
サイドスカートに搭載されていたミサイルタイプのビットを、セシリアは展開する。
「あっそ。」
しかし肇は驚きも減速もせず、興味無さそうな反応をして––––––
「だから、どうした?」
左手に持っていたシェルツェンでセシリアのブルーティアーズを、殴り付ける。
…直前、なぜかセシリアは、嘘偽りない。淑女らしい微笑みを浮かべた。
瞬間、シェルツェンの表層部に取り付けられていた爆発反応装甲に、ブルーティアーズを殴りつけた時の衝撃が伝わり––––––一斉に、起爆した。
同時に、爆発反応装甲内に仕込まれていた鉄鋼散弾がセシリアを穴あきチーズにして––––––セシリア、だったものが市街地レイヤーの電柱に落下し、突き刺さり、赤い液体が電柱の足下に降り注いだ。
「う、ぐっ」
すると、先程ビルに直撃したラウラが瓦礫の山から抜け出そうと必死にもがいていた。
だが、びくともしない。
それもそうだ。ISの耐荷重量は最大498キロ(ちなみに現実世界の普通のパワードスーツなら”最低500キロの耐荷重量”がある。)しかなく、1トンもの瓦礫すら持ち上げられないのだ。
そして今のラウラには数トン級の瓦礫が山積みになっていて、普通なら潰れていてもおかしくなかった。…が、今は絶対防御が発動しているから潰れないでいる––––––そういう状況だった。
「おのれ…貴様を殺せば、私が嫁を貰えたのに––––––」
なんて事を言う。
大方、篠ノ之束か織斑千冬に俺を殺せば織斑一夏をやるとでも言われたんだろう。
そして織斑一夏の為に奉仕するようなプログラムをされたセシリアもラウラも、あの楯無も、疑う事なくそれに従い実行した。
織斑一夏のため、織斑一夏を中心にあるこの仮想世界の統治者たる篠ノ之束のために奉仕することだけが彼女らの存在理由だから。
それに異議を唱える事も考える事も出来ないようにプログラムされて––––––…。
肇はそれに、もはや哀れみすら覚える。
だが、
(俺もまた、誰かさんの犬として、箒を連れ出さなきゃならない…だから…)
「悪いが死んでくれ。」
瞬間、ラウラの顔が絶望で染まる。
肇はM6A1の40ミリ滑腔砲に40ミリ炉号弾(燃料気化弾)を装填し––––––
「安心しろ、楽に死ねる。」
それをラウラに向けて、放った。
瞬間、ラウラは心の底から喜ぶように笑顔を浮かべ––––––この歪な仮想世界から解放されるのを喜ぶように笑って–––––––ありがとう、と言った。
40ミリ炉号弾がラウラの上に重なる瓦礫の山に弾着し–––––––気化熱による、暴力的な爆炎と巨大な火柱が盛大に上がり、熱が周辺を襲い–––––––ラウラが埋もれていたビルの瓦礫はラウラもろとも、跡形も無く消し飛んだ。
…どのみちISの絶対防御が尽きれば瓦礫の重さにジワリジワリと少しずつ押し潰されながら死ぬのだ。
その方が多分、いや間違いなく生き地獄だ。
今みたいに一瞬で死ねる方が、マシだった。
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第45986フォルダ・市街地レイヤー
同時刻・別地点。
そこでは箒と簪が楯無と戦いを繰り広げていた。
簪の重火力の弾幕が楯無のミステリアスレイディの水のナノマシンを相殺しながら、箒が楯無に3式長刀で楯無のランスと斬り合っていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
箒が3式長刀を振るい、楯無のランスの先端を切り裂く。
楯無がそれで飛び退き、ランスに内蔵されているガトリングで箒を牽制しつつ、簪の重火力を水のナノマシンで受け止め続ける。
と、瞬間、肇と対峙していたラウラとセシリアがいた方角から盛大な火柱が立ち上がり––––––楯無の網膜に、ラウラとセシリアの反応がロストした事を告げるウィンドウが投影される。
「⁉︎…くっ‼︎」
(ひとまず退散ね…‼︎)
楯無はそう呟き、相変わらず水のナノマシンを展開しながら、フォルダの市街地レイヤー上空に開いた穴から、撤退した。
「…っ、はっ…はっ…終わった…の、か?」
箒が息を荒くしながら言う。
「そう…みたい。…また別のフォルダに移動しなきゃね…。」
簪も若干息を荒くしながら、市街地レイヤー上空の穴を見上げながら、そう、呟いた。
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???・日本国・北太平洋、青函連絡船団。
大海崩に伴う青函トンネル崩壊により、本州から孤立した北海道に物資や情報を伝える為に、1988年の廃止から実に36年ぶりに青函トンネルの崩落、通行不能となったことによって再組織されたものだった。
もっとも、従来の青函連絡船は船団ではなく単船で、青森函館間の運航のみだったが、現在は民間のフェリーや輸送船、タンカー、防衛海軍の護衛艦や輸送艦から成る船団と化しており、さらに運航範囲も青森函館間から函館室蘭間、函館小樽間、室蘭根室間と、運航範囲も遥かに拡大していた。
というのも、理由は陸路が…特に山間部を中心に深刻なダメージを受けたこと、沿岸地域に人口が集中している事が理由だった。
現在運航中の船団は、巡洋艦【みくま】以下、沿海域戦闘艦【しまかぜ】、DWT型貨物船【海城丸】、【第3乗馬丸】から成る、第3船団だった。
同船団、旗艦・巡洋艦【みくま】・艦橋
「…漂流物が酷いな…。」
航海長の男性が海面を見ながら、漏らした。
彼の言う通り、海面には無数の木材や大きめのブルーシートが海面を漂っていた。
「各艦、漂流物に注意せよ。スクリューにでも引っかかったら今度は我々が漂流するハメになる。」
みくまの艦長である大田幸子大佐が、命じる。
「了解。全艦にそう伝えます。せっかく大海崩を生き延びた貴重な船ですからね。」
通信士の女性オペレーターが言う。
そう、この巡洋艦【みくま】やこの船団の船は全て大海崩を生き延びた貴重な、今や国の財産とも言うべきものだった。
大海崩の被害は凄まじく、日本に当時日本防衛海軍の保有していた艦艇も大多数を損失し、今やモスボール保存されていた老朽艦を再就役させねばならないほど、逼迫していた。
国を建て直すだけなら、軍の艦艇は時間を掛ければ良い。だが、状況はそれを許さないのだ。
「…⁉︎対空レーダーに反応‼︎」
レーダー観測係のその一声で艦橋内に緊張が走る。
「数16…対艦誘導弾です‼︎」
レーダー観測係の報告に大田はチッと舌打ちし、
「貨物船はフレアを放ちつつ回避行動‼︎本艦と【しまかぜ】は対空迎撃戦に移れ‼︎」
大田は、怒鳴る。
(全く…こちらだって自分達の分しか物資がないというのに……だいたい今この世界で戦争なぞしてなんになる……フランス・カナダ同盟⁉︎)
大田が内心、毒付く。
瞬間、【みくま】の後部甲板のVLSと【しまかぜ】のミサイル発射基からシースパローが放たれ、水平線より迫り来る敵誘導弾に向けて、飛んで行く。
それと同時に【海城丸】と【第3乗馬丸】が甲板に増設したチャフ・IRフレア発射基からチャフやフレアが空に放たれ、空と海面を照らす。
「敵誘導弾、12発撃墜。なれど4発健在!依然接近中‼︎」
対空レーダー観測係が怒鳴る。
「第1、第2、第3主砲、第1から第4速射副砲、レーダー連動射撃‼︎」
大田が再び指示を飛ばす。即座に前部甲板の第1から第3主砲と両舷2基ずつの第1から第4速射副砲がイージスレーダーと連動。
砲弾の散布面積を広げるべく主砲には対空散弾、速射副砲には高速鉄鋼弾が装填され––––––
「撃ち方始め。」
大田が命じ、CICの砲手が砲撃を開始する。
瞬間、爆炎と共に轟音が響き主砲から対空散弾が、小さな火点と共に空を切る高速鉄鋼弾が速射副砲から、放たれた。
そして、数十キロ離れた水平線上で2つの爆発。
「…誘導弾、全弾撃墜。」
対空レーダー観測係が告げる。
そして全員が息を漏らす。
大田も、全身から力がどっと抜ける。肝が冷えっぱなしだった。
「…諸君、ご苦労だった。諸君らのおかげで貨物船は救われた。」
大田が、艦橋、CIC要員たちを労う様に告げる。
「だが気を抜くな。警戒態勢を維持。…進路そのまま、このまま小樽に向かう。」
「…で、ですがまたミサイルを撃たれる可能性が…」
通信士の女性オペレーターが言う。
が、遮って、
「…レーダーに反応あり!数12‼︎この速度は…戦術機です‼︎」
対空レーダー観測係の報告にまた艦橋内に緊張が走る。
「機体識別…これは…タイフーン?それに…味方?」
すると機体は【MEF-2020タイフーン】、識別は味方、と表示された。
「多分、函館の欧州連合軍でしょうね。」
大田が言う。
すると、97式近接長刀を背部兵装担架に担ぎ、ユニコーンを思わせるブレードアンテナを持つ、指揮官機らしきタイフーンが【みくも】の隣に並び、
『こちらは、欧州連合軍、第666独立戦術機中隊【シュヴァルツェスマーケン】隊長、ユリア・ホーゼンフェルト大尉。我が隊はこれよりそちらの護衛を行います。』
タイフーンを率いる中隊長が、通信を入れてくる。
「護衛に感謝する、と伝えよ。」
大田が通信士に命じて、ため息を吐く。
(彼らにも苦労をかけている…もう、彼らの故郷はないというのに…。)
大田は内心、呟いた。
今回はここまでです。
第45986フォルダの戦闘は終わり、ラウラ&セシリア死亡…でも、大丈夫。ちゃんと現実世界で生きてますから。
さてその現実世界…世紀末に加え、絶賛、日本がフランス・カナダ同盟と戦争状態…。
最後のタイフーンの指揮官は…シュヴァルツェスマーケン見た人なら部隊名と苗字、タイフーンの背部兵装担架の武装でなんとなくあの人の血縁者だな…って分かる…ハズ。
そして大田幸子大佐ですが、マブラヴオルタの甲21号作戦時に海神を艦載した潜水艦の艦長だったアノ人です。
あと彼女が言っていた、「彼らの故郷はないというのに…」つまり欧州は大海崩で…。
次回も不定期ですがよろしくお願い致します。
追記:あ、ISの耐荷重量についてはワールドパージの時に山田先生が使ってたISがCIWS4基で荷重オーバーギリギリだったらしいので、調べたらこれくらいだったって、数値です。