反省はしていないし後悔もしていない
本格的に暑くなり始めた日の昼。湖で泳いで納涼している縁斗に平和に一番似つかないようで一番似合う者が訪れた。
小「やぁ、涼しそうだね。」
縁「なんだ小町か、サボりなら映姫様にチクッとくぜ。」
小「相変わらずお堅いねぇ、今回は四季様の遣いとして来たんだよ。」
縁「映姫様が?俺に用?俺なんか地獄に落とされる様な事したっけ...」
小「まさか、地獄に落とすなら私よりよっぽど強い奴を寄越すよ。」
縁「まぁ、良い。案内してくれ。」
小「あいよ。」
幾ら幻想郷の用心棒とはいえ滅多な事じゃ閻魔である映姫に逆らう事は出来ない。だからこそ道中は少し緊張した、怪訝そうな顔付きの縁斗だった。
小「失礼します。伊織縁斗をお連れしましたよー。」
縁「失礼します。」
映「ご苦労です。それでは小町には持ち場に戻って下さい。」
小「あいあいさー。」
地獄の裁判所「是非曲直庁」の応接室に通された縁斗は尚更顔が強ばっていた。縁斗の中で映姫は割と小さいイメージがあったが仕事が仕事だからか少し大人びて見えた。縁斗が小柄過ぎるのもあるかも知れない。
映「そんなに緊張しなくて大丈夫です。」
あくまでも冷静だった。
縁「は、はぁ.....」
映「困惑するのも無理は無いでしょうがあなたが罪を犯して呼ばれたという訳じゃないのです。」
縁「わ、分かりました。それで、要件とはなんでしょう?」
映姫は少し笑って一冊の重々しい外観のノートを縁斗に渡した。
映「これはいわゆる閻魔帳です。これの記録を貴方に任せたいのです。」
縁「えぇ!?なんで俺なんすか?」
映「もともと罪人である輝夜達に託すことは出来ませんし、とはいえ寿命がある者にも任せれないので完全な罪人ではなく、それでいて寿命の無い貴方に任せたいのです。」
縁「どうすれば良いんですか?」
映「例えば人里で盗みを働いてる人がいたらその人の名前と罪状を書けば良いだけです。嘘を書いたら貴方が罪に囚われますので。」
縁「デス〇ートみたいな感じですね。分かりました。」
映「それと、歩合制ではありますがお給金も出ますので。」
縁「お、まじですか、ありがとうございます。」
映「それでは用事は以上です。私は業務に戻りますので。」
縁「分かりました。じゃあ俺もこの辺でお暇します。」
映姫は部屋を出ると溜め込んでいた物を一気に吐き出すような深い溜め息を吐いた。
小「らしくないですね。そんな溜め息を吐くなんて。」
映「持ち場に戻りなさい、と言ったでしょう。それに私にだって溜め息を吐く事ぐらいあります。」
小「自分の気持ちには白黒つけれないんですか?深くは聞きませんけど、縁斗が好きなんでしょう。それもわざわざあんな大役を任せてでも呼び出す口実をでっち上げるほどに。」
映「.....まったく。こういう事に関しては貴女には負けます。」
小「縁斗に心を読まれないように能力を制限する術式を部屋に掛けたせいで自分も白黒つけれなかった。さしずめそういったとこですよね。」
映「まさに、その通りです。」
小「だったらあたいが全力サポートしますよ。働きが悪いあたいでもクビにせず雇ってくれてるせめてもの恩返しです。」
映「ありがとうございます小町。ですが、これは自分で白黒つけます。」
小「........それでこそ映姫様らしいです。」
数日後忙しいスケジュールを無理やりこじ開けて、紅魔館に訪れた。門番や妖精メイドの慌てぶりとは裏腹に映姫は不思議と冷静だった。
流石の咲夜やレミリアも動揺を隠せない様子で縁斗の部屋に通した。紅魔館はただならぬ雰囲気になっていたが、縁斗は来た理由を察していた。もちろん先の事についてだと思っているから的外れな見当ではあるが。
映「突然、訪ねして申し訳ありません。」
縁「いえいえ、大丈夫です。ところで用事って例の件ですか?」
映「いえ、その.....今回はそうじゃなくて.....」
縁「?」
いざとなって躊躇いが出て言葉が詰まった。しかしあの一言が映姫の脳裏を過ぎった。
小「自分の気持ちには白黒つけれないんですか?」
映姫はありったけの勇気を絞り出し、言い放った。
映「私は貴方が好きなんです!!!!」
突然のこと過ぎて縁斗は耳を疑った。目を丸くした。とにかく頭の整理が追いつかなかった。
映「こういうのは初めてなんです.....でも.....こうなってしまった以上白黒はっきり付けたいんです!」
縁斗は落ち着きを取り戻すと改めて思考を回し始めた。何故俺なのか、そもそもこれは夢では無かろうか、あれこれ考えていたがやらなきゃいけない事があると気付き、映姫に向き直った。
縁「あの、なんというか、ありがとうございます!こんな俺に恋してくれて.....俺もこんな事言われるの初めてだから正直いってめっちゃ嬉しいです。.....でもごめんなさい!」
それを聴いた時映姫の顔が初めて大きく変わった。大分悲しそうであった。
縁「俺、片想いですけど今好きな人がいるんです。だからそういう気持ちを持ったまま映姫様の気持ちを受け入れるのは失礼だと思ったんです。だからごめんなさい。」
縁斗は深々と頭を下げた。
映「いえ、こちらこそ申し訳ございません。.....でも、その、.....もし良かったら待ってて良いですか?.....私の番が回って来るまで。」
縁「........映姫様でもそんなこと言うんですね。えぇ、大丈夫ですよ。もし俺の今の恋が終わって気持ちに整理が付いたら、改めて迎えに行きます。」
映「ありがとうございます。縁斗。」
「縁斗」と呼ばれるのが当たり前の筈だがこころなしか一瞬ドキッとした。それ程縁斗は映姫を意識せざるを得なかった。
門の外まで映姫を縁斗は不意に気になったことを聞いてみた。
縁「ところで、なんで俺なんかが良かったんですか?」
映「先の宴会で一目見た時、可愛いなって思ったんですが、戦ってる時のカッコよさとのギャップで.....」
縁「ギャップ萌え.....」