「あたしタラコソースシシリー風と小エビのサラダー」
「わたしはマルゲリータとフレッシュチーズとトマトのサラダで」
お昼休みにお弁当を食べてから、何も食べずにこんな時間まで遊び倒していたあたし達は、思い思いに料理を頼む。
ふむふむ、比企谷はミラドリとディアボラ風ハンバーグか。結構がっつり食べんなー。
葉山くんは……プ、プロシュートとフォッカチオ!?……ワイン呑みのおつまみかよウケる!
千葉パルコを出たあたし達は、比企谷リクエストのサイゼに入店して注文を済ませたあと、楽しく雑談しながら料理を待つ。
まぁあたし達と言っても、もちろん達の中に比企谷は含まれず、こいつはひとり嫌そうに面倒くさそうに、たまに相づちを打ってるだけだけども。
そしてあたしは葉山くんと千佳と話したり二人の会話に耳を傾けながらも、時折そんな比企谷のダルそうな横顔を眺めては頬を弛めている。
──ん〜〜〜、ぶっちゃけ今日は………………めっちゃ楽しかったぁぁ!
今日待ち合わせに遅刻しちゃったのは千佳のせいなんだけど──だってこいつ「今日総武高校の葉山くんと遊びに行くんだー♪」なんつってクラスの女友達に自慢気に話しやがって、さんざん質問攻めにあったんだもん──ビジョン前で嫌っそうな顔して待ってる比企谷を発見してからは、もうず〜っと楽しくてしょうがなかった。
待ち合わせ早々、こいつは相変わらず自分を軽く見る発言をするもんだから、ついイラッときちゃったものの、勢いで手なんか繋いじゃったりしてね。
こいつ超赤くなって、手とか超汗かきまくってびしょびしょになってんだもん。超面白かった!
ま、かく言うあたしも、実は結構バクバクしちゃってたんだよねー、あの時。比企谷と手ぇ繋いで心臓バクバクとかウケる。
映画館での比企谷も面白かったな。あたしが隣に座ったら軽くキョドるし、耳元でこそっと話し掛けたらまたキョドるし。なにあれ可愛いくない? キモカワってやつかなー。
一時期キモカワとやらが流行った時とか、意味分かんないって内心馬鹿にしてたけど、今ならまぁ分かるかもね。
パルコでの買い物もめっちゃ楽しかったな。
あたしのファッションショーを見せ付けてやったら、比企谷は予想通りにキョドりまくるわ目を逸らすわ。
ひひっ、でもそっぽ向きながらも、比企谷のやつ横目でチラチラとあたしのこと見てたの知ってんだかんねー。あれでバレてないつもりなのかね。ウケる。
もっと際どいのとか生足とかばんばん見せ付けてやれば良かったかもねっ。ヤバい想像しただけで笑えるっ!
ま、どうやら比企谷にはあたしの私服姿が魅力的に映ってたってことだろうし、そう考えると結構嬉しいかも。
そして極め付けはごはんにサイゼを選択したこと。
うん。やっぱ比企谷って超面白いわ。他の男共とは全然違う。
今まであたしに近づいてくる男子っていえばどいつもこいつも下心丸見えで、妙にカッコ付けたり妙に紳士ぶったり妙にお洒落ぶったりとかして、全っ然ウケなかった。言ってしまえば劣化版葉山くんって感じかな。葉山くんみたいな格好良い姿に憧れて、無理に自分を作って空回りしてるって感じ。
かと言って葉山くんが格好良いか? と聞かれたら、うん。まぁそれは間違いなく格好良い。
でもあたしにとってど真ん中にズバッと突き刺さるってわけでは無いんだよねー。確かにすごい格好良いしいい人なんだけど、いいトコ自慢できる友達止まりかな。
そこいくと、目の前で早く帰りたそうにしてるこのしょーもない男は、今まさにあたしのど真ん中にズッバァッと突き刺さってるって感じ。
……んー……なんかさ……こう考えると、あたしって比企谷のこと好き過ぎじゃない? これはアレなのか? やっぱ友達的な感情じゃなくて、色恋沙汰的な感情なのか?
「でもやっぱ葉山くんとか超スノボ似合いそう〜! さっきわたし達が選んだウェアとか合わせたら超格好良かったもん! ねーかおりー」
「だよねー。そこいくと比企谷はプラスチックの赤いソリとか超似合いそー」
「……あー、はいはい。そうっすね」
突然の千佳からの流れ弾に、色々と思考中だったあたしが思ったことをストレートに答えると、それを聞いた比企谷の目がどんよりと曇り、心底面倒くさそうに一瞥された。
あたしは、そんな一切カッコ付けない紳士ぶらないお洒落ぶらない素の顔を見て、さらに頬が弛む。
──あれ? あたしさっきまでなに考えてたっけ? 比企谷見てたらどうでもよくなっちゃったかも。なんかまた友達感情だか色恋感情だかって、無駄に難しく考えてたような気がするんだけど、んー……ま、いっか。とりあえずあたしは比企谷が面白くて好きってことで!
今がせっかくこんなにも楽しいんだから、そんなことよりもとりあえず今を楽しまなくっちゃねっ。
× × ×
各自料理が届き、ようやく初デートのディナーが始まった。
この金額でこれだけテーブルが豪華に埋まるって考えたら、やっぱサイゼで良かったんじゃない?
「いっただっきまーす」
早速タラコパスタにフォークを突き刺し、くるくる回してぱくりと一口。
「んー、うまい! やー、危うくお腹鳴っちゃうとこだったよー」
そうなのだ。遊びに夢中になりすぎるあまりすっかり空腹具合なんて忘れてたけども、一度意識しちゃうとこればっかりはね。
いくらお年頃の乙女とは言っても、生理現象の前には太刀打ち出来ないのよねー。
「……ちょっとかおり、あんたはしたないってば……!」
「ん? 別によくない? いつもあたしこんなんじゃん」
「もー……葉山くんも比企谷くんも引いてるからー……」
マジ!? ちらと男性陣へと目をやると……
「はは……別にそんなことはないよ」
「……」
どうやら軽く引かれてるらしい……
てかさ? 普段こんなんなのに、男子の前では女らしくなる女の方がやじゃない? あたしは人によって態度とか変えたくないんだけどなー。
「ま、いいんじゃねぇの? 折本だし。ここで恥じらいとか女らしさを見せられた方がむしろ気色悪い」
「ひっど!? ちょっと比企谷? フォローになってないんだけど」
「そりゃフォローしたつもりはないからな。むしろさっきの仕返しまである」
「ぷっ! ウケる」
こんな悪態吐いてるけど、なんだかんだ言って比企谷は“あたし”を認めてくれてるんだよねー。
うん。こういうのって結構ポイント高いんじゃない?
「おう。今のはウケていいとこだ。珍しく笑いのポイントが一致したな」
あはは、ホント比企谷って面白いな。どこまであたしの頬を弛める気なのよこいつ。表情筋が使い物にならなくなったらどうしてくれんのよ。
じゃああたしからも仕返ししてやんなきゃね〜♪
「比企谷マジムカつくー。……とりゃ!」
「あ、ちょ……なにすんだお前……」
あたしは隙をついて比企谷のお皿からフォークで料理を目一杯すくうと、勝ち誇った笑顔でぱくりと頬張る。
「あっち! んーでもやっぱうまいっ! へっへー、仕返し仕返し! 実はさっきからちょっと狙ってたんだよね、比企谷のミラドリも美味しそうだなって」
「……いやお前、それ仕返しじゃなくて単なる横取りだろ……」
「いいじゃん。せっかく美味しいんだからシェアしようぜー」
「シェアもなにもお前一人で食っただけだろ……」
たく比企谷め。ああいえばこういうやつだなー。可愛い女子が美味しく頂いてあげたんだから細かいこと気にすんなっての。
……たくしゃーないなっ、と、あたしはクリーミーなタラコソースがたっぷりと絡まった魅惑のパスタを、一口分くるくるとフォークに巻いた。
「ほい。食べていーよ」
そう言って比企谷の口元にフォークを持っていってあげる。ヤバいあたし優しくない?
「……アホか、いらねーよ」
なのにこいつは、そんなあたしの優しさを無下にしやがった。ちょーウケないんですけど。
「……なに? あたしのパスタは食べられないっての?」
「俺の酒みたいに言うな、上司かお前は。……だからいらんっつの……」
「はぁ? マジムカつく。比企谷があたしばっか食べたみたいに言うからわざわざあげてんじゃん。ほら早く」
「……いらん」
なにこいつー。マジ頑なすぎじゃない?
軽くムッとして比企谷を睨めつけてみたら……あれ? なんか凄い照れてるんですけど。
……あ、これって所謂あーん状態じゃん……しかもあたしが使ったフォークでやんの。
なんか比企谷とこうしてるのがあまりにも自然過ぎて全然気付かなかった。
これじゃまるでバカップルじゃん。うっわ……なんかちょっとあっついんだけど……!
ぐぬぬ……比企谷め、あたしに恥をかかせたな? まぁ単なる自爆だけどね。ウケる。
「あっれー? もしかして比企谷間接キスとか気にしてんの? ぶっ、中学生じゃないんだから。バッカじゃないの」
と、あまりにも悔しいあたしは、そう比企谷をからかって恥ずかしさを自制する事にした。
幸いにも比企谷はそっぽを向きっぱなしだから、情けないことに熱を帯びてる顔は見られないで済むし。
……ん? なんかあたしと比企谷の向かいの席から、千佳と葉山くんの生暖かい視線を感じる気がするけど、気にしたら負けな気がする。
「……んなもん気にするわけないだりょ」
ぶっ! ちょー気にしてやんの! なに? 比企谷ってこんなに可愛いやつだったっけ? 耳とか超赤いし、なんか嗜虐心が超くすぐられるんだけど!
ふむ、これはあれだ。絶対に食べさせてやろう。
あたしは悪戯っぽく微笑むと、左手で比企谷の脇腹をちょちょいと突ついてやった。
「うひゃいっ!? もがっ……!?」
というかなりキモい叫び声と共にこっちを向いた比企谷の口に、折本かおり使用済みフォークを思いっきり突っ込む。へっへー、あたしの勝ちー。
「あっはははは! …う、うひゃいっ!? だってー! ……ちょーキモくてちょーウケるー!」
マジ比企谷面白過ぎでしょ……! これはもうズルいってレベル。あーお腹痛い!
お腹を抱えて笑い転げながらも、なんとか比企谷の口からフォークを引き抜くと、そっぽを向いて、めちゃくちゃ不満そうにタラコパスタをもきゅもきゅと咀嚼してる。いや、不満そうというよりは凄い照れてるって感じかな。
「ど? ミラドリも美味しいけど、あたしのシシリー風も美味しいでしょ」
未だそっぽを向いたまま咀嚼し続ける比企谷にニヤニヤと訊ねてやると、
「……まぁまぁ、だな。ま、やっぱミラドリの王座は揺るがん」
と褒めてんだか貶してんだか分かんないような感想を述べる。比企谷が照れてる時の感想なんて話半分でおっけーなんだけどね。
「……だが決して“あたしの”じゃねーからな。サイゼは全国津々浦々、どの店舗で食ったって安定して美味いんだよ」
比企谷ってサイゼの回し者なの!? ウケる! あんたどんだけサイゼ愛が強いのよ。
捻くれと照れ隠しもここまで行くと呆れを通り越して感心しちゃうわ。
「なんで? だってあたしのじゃん、これ」
でもそんな比企谷に、あたしはトドメを刺してやるのだ!
言っとくけどあたし達二人の人生において、この先ずっと比企谷には勝ち目なんてないかんねっ。
「だって……かおりエキスがたっぷりだから美味しかったんでしょっ?」
「………………アホか」
「ひひっ」
一切こっちを向かない比企谷の真っ赤な耳を眺めて満足しつつ、あたしはようやく食事の続きを始める。
お待たせシシリー風。やっと食べてあげられるからね。
一口分のパスタをくるくるとフォークに巻き付けて口へと運ぶ。
パスタを頬張るとクリーミーなタラコソースが口いっぱいに広がったのだが、ここでふと先ほどの自分のセリフを思い出す。
……あ、そういえばなにげに今の一口って比企谷エキスたっぷりなんじゃん。
…………ん、んー、美味しいはずなんだけど、いまいち味が分かんないや……
× × ×
和やかな食事は時を忘れさせる。なんか超楽しいなー、今日の夕ごはん……ん?
「……あ」
「どしたの? かおり」
「ん? なんでもなーい」
……あっぶなー、あまりにも和み過ぎちゃってて、今日のもうひとつの目的を忘れてた〜……
まぁ別に無理なら無理で構わない程度の目的ではあるんだけど、こんな機会は滅多に無いし、出来れば聞いときたいんだよね。
とはいえ聞かれたくないしこのままではちょっと無理なのだ。なんとか二人っきりになれないもんかな。
と、それからしばらくのあいだ会話を楽しみつつも隙を窺っていると、思いのほか早くチャンスが巡ってきた。
「ごめん。ちょっとトイレいいかな」
「あ、うん。どうぞー」
不意に葉山くんがトイレに立つ。通路側に座る千佳が立ち上がり、葉山くんを奥の席から出してあげるのを眺めながら、ここが目的のチャンスと見た。
葉山くんがトイレへと向かうのを確認したあたしは声をあげる。
「あたしもトイレ行ってこよっかなー」
そう言って立ち上がり、すたすたと歩を進めた。
幸いこの店舗はトイレへの通路が客席から死角になっている造りだから、トイレの出口で彼が出てくるのを待っていれば、客席からの目は気にせずに話せるだろうという算段なわけだ。
でも、トイレへと向かう通路を曲がったところで、とても意外な光景が待ち構えていた。
「俺になにか話でもあるのかな」
あたしの計画とはまるで真逆。なんとそこには、葉山くんが壁に寄り掛かってあたしを待っていたのだった。
× × ×
「……びっくりしたー。まさかあたしが待たれてるとは思わなかった」
あたし的には、トイレから出てくる葉山くんをここで待ち構えときゃいいやと思ってたから、まさに予定とは真逆の展開。
「ははっ、さっきからどうもこっちに意識を向けてきてるなと思ってたところに、俺がトイレに立った直後に自分も行くと言い出したから、これはなにかあるな、とね」
……へー、やっぱ葉山くんって鋭いんだな。比企谷とはまた違う感じ。
「そっか。まぁあたしって分かりやすいタイプだしね」
「ああ、そこは否定しない」
ぷっ、とお互いに軽く噴き出す。こんな爽やかなイケメン笑顔、あたしじゃなかったら惚れてるんだろうな。
「で、なにか用かな。まぁ比企谷の件だろうけど」
「まーねー。……んじゃ単刀直入に聞くね。葉山くんってさ、比企谷のなに? どんな関係なの?」
あたしの単刀直入過ぎる質問に、葉山くんは難しい顔をする。
ありゃ……意味わかんなすぎたかな……
「これはまた漠然とした質問だな……。なんて答えればいいかな」
「だ、だよねー。ごめんね、あたしよく質問とかも猪突猛進過ぎて主語が無いとか言われんだよね、あはは〜……」
こんなんだから稀に千佳に怒られちゃうんだろうな。比企谷にもぽかんとされちゃったりもするし。
やっぱ口に出す前にちょっと考える癖を付けねば。
「えと……ね。じゃあ細かく説明するね? …………実はあたしさ……総武の文化祭に遊びに行った時に比企谷に再会して、……んで、あの屋上での出来事を目撃しちゃったんだよね」
「……!? ……そうなのか」
「そ。……んで、あれ見て比企谷ってバカだけど凄いなって、面白いなって思って、それで友達になったんだ」
……葉山くんはあたしと比企谷の馴れ初め……ではないけど、そんな再会の流れを聞いて、なぜか僅かに微笑んだ。
「そうか。あれを目撃した上で比企谷の友達になれるってことは、君は表面上だけじゃなくて、ちゃんと中身を見て判断してるんだね。……比企谷のやつ、いつも一人だなんだと言いながら、勿体ないくらい良い友達がいるじゃないか」
あ、なるほどね。今の微笑みってそういう事か。
「へへ、でしょ? ちょっと比企谷には勿体ない女だよねー」
「まったくだ」
なんだろ。顔合わせからもう何時間も一緒に過ごしてるはずなのに、いま初めて真正面から向かい合ってくれた気がする。
んー、やっぱ葉山くんて、比企谷の友達……にしか見えないんだけどな。
「で、ね? 話もどすけど、あのとき葉山くんは比企谷のあんなバカでどうしようもない作戦に即座に乗れたじゃん? ……あんなこと、よっぽど比企谷の考え方を理解してなきゃ無理だと思う。でもそのあと、どうしてこんなやり方しか出来ないんだ……って、苦しそうに言ってた。……あれってさ、比企谷の考え方は、理解はできるけど認められないってことだよね」
「……そうだね。折本さんの言う通りだよ」
「だよね。あんなバカな作戦にあっさり乗って事態を収拾させるってことは、よっぽど比企谷のことを信用してるからなんだと思う。でも一方では比企谷のこと認められないでいる。でもそれは比企谷のことを心配してるからにも見える。……だから分かんないんだ。葉山くんって、比企谷のなんなんだろ? って。……だからもっかい聞くね。葉山くんって、比企谷の友達? それとも……敵?」
そう。それが葉山くんに聞きたかったこと。
「……ちょっと気になってたから、せっかくこうして会う機会が出来たことだし、じゃあ葉山くんに直接聞いてみよっかなってね」
……でもそんなあたしの疑問に、葉山くんは意外なことに素直には答えてくれなかった。
「どうしてそれを知りたいのかな。俺と比企谷がどんな関係だろうと、君はそんなこと一切関係なしにあいつと関わっていくんだろ?」
ホント意外。あたしの勝手なイメージでは、この人は爽やかな笑顔で友達だよって答えるもんかと思ってたから。
それを信用するかどうかは目をみて決めようかと思ってたけど。
「んー……なんでかな。……ほら、あたしは比企谷の友達だけど学校違うじゃん? だから…………ぶっちゃけ心配なんだと思う。あいつがまたあんなバカなことしちゃうんじゃないかって。……葉山くんなら分かってると思うけど、あのバカは自分をすっごい軽く見てんだよね。だからまたあんなこと繰り返して、いつか取り返しが付かなくなっちゃう時がくるんじゃないかってのがすっごく不安」
今回はまだ良かった。相模さんがちゃんと自分で自分を鑑みれるいい子だったから。そして、比企谷の大切な部活仲間たちもやり方を認めてくれたっぽいから。
でもいつか、大切なものを壊しちゃいそうで。
「だから、葉山くんはいい人そうだし、比企谷を心配してるフシもあったから、もし友達なんだったら、あたしが見れないとこであいつのことを見ていて欲しいって……注意して欲しいって思ったのかも、ね」
「そうか」
「うん。…………ま! もっとも比企谷のことだしー? いくら葉山くんが注意したって聞きゃしないだろうから別にいいんだけどねっ。あくまでも保険ってやつ? もしもの時はあたしが背中ぶっ叩いて元気にさせてやるし、元気にさせてやれる自信もあるしね」
そう言ってふふんと胸を張る。
なんかちょっと湿っぽくなっちゃったってのもあるし、なにより押し付けがましいよね、こんなんじゃ。
比企谷と葉山くんの関係は比企谷と葉山くんだけのものだし、あたしがそれについてどうこう言う立場ではないんだよね。
「だからまぁそれはそれとして、ただ単純に二人の関係がちょっと気になっただけ。だぁってさー、あいつ『知り合いじゃない』とか『関係ない』としか教えてくんないんだもーん」
「知り合いでもなければ関係もない、か。……ぷっ、あいつらしいな」
「ね。あいつアホだもんね」
二人してくくっと笑い合うと、葉山くんは苦笑を浮かべて口を開く。
その口から出た言葉を聞いたら、さっきはなんで葉山くんが比企谷との関係を素直に答えてくれなかったのかがすごい理解できた。
──そっか、葉山くんは……
続く
そっか、葉山くんは、比企谷に恋してるんだね……
……なわけあるかボゲェ!(ハイキュー影山的に)
……ってことで、今回もありがとうございました!
前半はイチャイチャと甘めに、後半はちょっぴりぐ腐腐にお贈りいたしました〜☆
違うかっ!
やだ折本のライバルが葉山とか無理ぃ!
しっかし、待ち合わせ→映画館→パルコで1話なのに、サイゼだけで1話にまとまらない不思議っ(*^_ ’)
さてさて、ダブルデートは次くらいには終えられるのでしょーか!?
ではまた次回(^^)/~~
さて、ここからはオマケです。特に笑いもオチも無い単なるあのシーンの補完ですのでご了承くださいませませm(__)m
〜葉山&折本がトイレに立ったあとの席にて〜
千佳「……」
八幡「……」
千佳「……か、かおりも葉山くんも帰ってこないねー……」
八幡「……え、あ、おう……」
千佳「……(き、気まずい……ちょ、ちょっとかおり?早く帰ってきてよー!?)」
八幡「(気まずい……仲町さんと二人とかどんな罰ゲームだよ……。にしても遅くね?なんなの?あいつらウンコなのん……?)」
千佳「(……うわ〜、さすがに無言のままでいるのはキッツいな……。あ、ならせっかくだし、あんまお喋り出来てないからしてみよっかな……まだ言えてないことあるしね)」
千佳「あのっ、比企谷くん」
八幡「ひゃいっ!?」
千佳「……ぷっ(いやいや緊張しすぎでしょ……まぁこれはこれで意外と可愛いかもしんない!なんかちょっと緊張とけたかも)」
八幡「(ふぇぇ……恥ずかしいよぅ……もう死にたいよぅ……)」
千佳「あのさ、……その、今日はありがと」
八幡「……は?」
千佳「えと……さ、今日は葉山くんに意識集中しすぎてて、まだちゃんとお礼言えてなかったから……ありがと。あとお礼遅くなっちゃってごめんっ」
八幡「あ、や……べ、別に仲町さんにお礼とか言われるようなことしてないんだけど……」
千佳「いやいやそんなこと無いよ!だって比企谷くんがかおりのお願い聞いてくんなかったらこうして一緒に遊べなかったんだから」
八幡「……いや、まぁ妹に命令されちまったしな」
千佳「(妹?あ、比企谷くんって極度のシスコンなんだっけ。かおりが爆笑してたっけな)」
千佳「でも、なんであれ比企谷くんのおかげだもん。こうして楽しい1日を過ごせたの。比企谷くん居なかったら、葉山くんとお近づきになることなんて出来なかったしねーっ」
八幡「……いや、別に」
千佳「あ、あとさ」
八幡「?」
千佳「仲町さんはやめてくれない?わたしも呼び捨てでいーよ」
八幡「……お、おう。じゃ、じゃあ仲町で」
千佳「うん。よろしくね、比企谷くん」
八幡「……うす。(さん付けは拒否なのに俺は“くん”なのね。ま、いいけど……)」
千佳「……」
八幡「……」
千佳「(か、会話途切れちゃったよー……こ、これ以上はもう無理かな……。でも、ふふ、かおりの言ってた通り、確かにぶっきらぼうだけど比企谷くんって結構いい人だなぁ。……ま、あのかおりのマイペースに付き合えるくらいだもん。そりゃいい人だよね)」
八幡「(仲町って意外と良い奴なのかもな。まぁあの折本の親友やれてるくらいだし、良い奴くらいじゃないとアレの相手は勤まらんわな)」
千佳・八幡「「((ほっこり))」」
おわりん
まさかの台本形式!(人生初!)
すみませんね、こんな面白くもなんともないオマケで(苦笑)
もしかしたら「折本たちが居なくなったあとの気まずそうな二人が気になる」みたいな感想をいただくかも?って思ったんで、先に書いちゃいましたw