あたしと比企谷の友達Diary   作:ぶーちゃん☆

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さて、今回からは新たな章のはじまりとなります!
“新たな章”だなんて、そんな大したもんじゃありませんけども(^^;)


ではではどうぞ!





体育祭編
日記5ページ目 初めての……


 

 

 

 全身から甘い香りを漂わせて悶える少女の艶っぽくも激しい動きに、俺のベッドがギシギシと苦しげに哭く。

 熱情の籠もったその少女の熱い吐息が、切なく開く形のいい唇から吐き出される度に、己の内から沸き上がる恥ずかしさ故の体温の上昇がこの身を容赦なく焦がす。

 

 折本……俺はもう……

 

 

「あはははは! ねぇねぇ比企谷ー! これ超ウケんだけどー! このマンガなんで都合よく女の子の服ばっか破れんのー!? しかも事あるごとにコケて女の子の胸揉んじゃうとかスカートの中に頭突っ込んじゃうとか有り得なくなーい!? ひぃ〜! 超おかし〜」

 

「……」

 

 ……なんで俺の部屋で勝手に人のマンガ読んで勝手にベッドで笑い転げ回ってるリア充非オタ女、しかも勘違いとはいえ昔好きだった女の子にラッキースケベの説明をせにゃならんのだ……

 八幡もう耐えられないよぅ……恥ずかしくて死んじゃいそうだよぅ……

 

 

 ──なぜ俺の部屋に折本が居るのだろうか。その理由は、今から一時間ほど前まで遡らなければならない。

 出来ればその一時間前から人生をやり直したいです。

 

 

× × ×

 

 

 文化祭も終わり、ようやく平穏なぼっち生活に戻れると安堵の溜め息を漏らしていたのもほんの一瞬の出来事。

 まさか二度と関わることも無いと思っていた相模とこんなにも早く関わることになろうとは……

 

 文化祭以来、教室で「うち可哀想」オーラを発し続けるウザい相模。それに業を煮やした獄炎の女王からの依頼と、ぽわぽわぷりりんなめぐ☆りんの依頼が重なったことにより、相模を体育祭運営委員長に祭り上げてから数日、早くも暗礁に乗り上げて沈没寸前な体育祭運営委員の日々。

 俺は相模を祭り上げることに元々乗り気では無かったが、まさか初日からやらかして委員会を崩壊させてくれるとは、さすがに想定外だっての。

 

 そんな、早くも文化祭以上にお疲れのご様子な俺の前に突如現れた嵐。

 

「あ、比企谷ぁー! もー、やっと来たよ〜」

 

 ぐったりとチャリを漕ぎながら校門を出た所で待っていたのは、なぜか激おこな我が友人(笑)、折本かおりだった。

 

 

「ちょっと比企谷! 超信じらんないんだけど!」

 

 ……未だ唖然とする俺に、一方的にまくし立ててくる友達(推定)

 とりあえず一旦落ち着いてくれませんかね。スゲー目立っちゃってるからね?

 

「お、折本、よく分からんが……ここだとちょっと人に見られちゃうから、移動させてくんね……?」

 

「はぁ!? ……ん、まぁいいけど」

 

 なんでこいつ突然現れてこんなに怒ってんだよ……意味が分からないよ。

 

 普段なら目立たない……もっと言えば存在すら認識されない俺だけど、今ばかりはとある理由でステルス機能が剥がれちゃってるんですよ。

 だから下手な騒ぎになられると本当に困る俺は、なぜだか激おこなままの折本を宥めつつ、その場を離れ二人で帰路に着くのだった。

 

 

× × ×

 

 

 学校から離れ、まわりに総武生の姿が見られなくなってきた頃、隣でチャリを扱ぐ折本が登場時の不機嫌オーラそのままに口を開いた。

 

「ホントマジで信じらんないんだけど」

 

 まだ怒ってんのかよ……てか何に対して怒ってるんですかね。

 

「あたしさー、こないだ今度連絡するからって言ったよね」

 

「……あ、ああ。言ってたな、確か」

 

 あの文化祭の薄暗い屋上で、こいつが笑顔でそんなこと言っていた情景が思い出された。

 

「あたしさ、帰ってから寝る前に『これからよろしくねー』って打って、比企谷にメールしたんだけどさー……」

 

 さらに不機嫌そうな低音とジト目になる折本を見て、ああ、そういうことか……と、折本がなにを言わんとしてるのかがようやく理解できた。

 

「比企谷、アドレス変えてんなら変えてるって言ってくんない……? メールは送れないし電話番号も分かんないしで、あたし超途方に暮れちゃったんですけど」

 

 やっぱそうなりますよね。

 てか中学の頃はあれだけ折本からのメールに恋い焦がれても、待てど暮らせど一向に送られて来なかったってのに、一切待ってない今になってメールしてくるとか、どんだけ時差があるんですかね。

 

「……まぁ確かにアドレスは変えたが、お前あん時そもそも俺からの返答の隙なんか一切無いまま、とっとと屋上から消えたじゃねーかよ」

 

 返答の隙があっても教えたかどうかは微妙だけども、恐いからそれは言いません。

 

「そりゃ確かにあの時は千佳待たせたままだったから急いでたけどさー……、でもあれじゃん? あたしが連絡するって言ったのに全然連絡無かったら、比企谷の方から連絡くれたっていいんじゃないの?」

 

 ……さすがサバサバ系を自称するコミュニケーションモンスターは言うことが違う。

 そのシチュエーションでこっちから連絡するとかどんだけ難易度激高だと思ってんだよ。「うわっ、こいつマジでメールしてきたよ。社交辞令ってことくらい気付けよw」って思われる危険性高過ぎだからね? それ。

 

「あ、ああ、すまんな。なんか携帯変えたとき、お前のアドレス消えちゃってたみたいなんだわ」

 

「……へー」

 

 うっわ……全然信じてない顔ですね。

 まぁ消えちゃったんじゃなくて消したんだけどね。アドレス変えるのも連絡先消すのも、人間関係をリセットする為には普通真っ先にすることでしょ?

 

「……ま、いいけど。てかあたしここしばらく超悩んでたんだけど? 連絡先も分かんないし比企谷んちも分かんないし、どうやって連絡とればいーんだろう……ってさぁ……。今日みたいに他校の前でウチの制服で待ってんのとか超目立ってやだったんだかんね? ジロジロ見られるわナンパされかけるわ」

 

 全然「ま、いいけど」とは思えないような嫌そうな顔して恨み言を投げつけてくる折本。

 まぁ校門前に他校の女子生徒が待ってるのって目立っちゃいますしね。折本はそれなりに可愛いし。

 たぶんこいつがここまで怒ってるってことは、校門前で待とうと気持ちの踏ん切りをつけるまでに、ここ数週間でそれなりの葛藤があったのだろう。

 

「まぁその、なんだ……悪いことしたな」

 

 俺のその言葉に、折本は突然にかっとした笑顔に変わる。

 

「ま、いいや。こうして会えたわけだし、なによりも比企谷ってそんな風に謝るんだーってところも見れてウケたし」

 

「いやウケないから」

 

 ホントこいつの表情はコロコロ変わるな。

 中学の時はそんな所に勘違いして惚れたつもりになって、こないだ再会した時にはそんな所が無神経で無配慮で嫌悪感を覚えて、そして今はまた悪くないとか思ってしまっている。

 ホント男って単純!

 

 

× × ×

 

 

「ねぇねぇ比企谷。じゃああとでもう一回連絡先交換しようよ。今度は消さないでね」

 

「お、おう」

 

 総武高校の近くから、家の近くへと伸びる川沿いのサイクリングコースを並んで走りつつ、折本との会話がポツリポツリと続いていく。

 

「あ、そういえば今日からLINEやれば良くない?」

 

「あ? LINE? あー、それ俺やってないしやる気もないから」

 

「えー? なんでー? タダなんだし良くない?」

 

「あのな、世の中にはタダより高いものは無いという言葉があってだな」

 

「なにそれタダなのに高いとか意味分かんないだけど、ウケる」

 

「……いや、ウケないから」

 

 実際基本タダなのに上場出来ちゃうとか恐くて仕方ない。気が付いたらソシャゲ廃人みたいに身ぐるみ剥がされちゃいそう。

 

「それにアレだ。なんか返信遅れたり既読スルーとかすると虐められちゃうんでしょ? なんでそこまで縛られなきゃなんないの? マジで恐怖しかないわ」

 

「偏見すぎウケる! いや、まぁそういうの気にして、ずっとスマホ手にしてる子とかも居るけどさ」

 

 偏見じゃないじゃん。

 

「てか俺とかメール来ても見なかったフリとかするし、見たのバレちゃう既読とか付いちゃったら逃げらんないし」

 

 いやホント平塚先生とLINEなんてやった日には、恐くてスマホ廃棄しちゃうまである。

 

「……てか今から連絡先交換しようって言ってる本人にソレ言うとか、ちょっとウケないんだけど……」

 

 しまった! 罠に引っ掛かってしまった! いや、どこにも罠は見当たりませんでしたね。完全な自爆ですねわかります。

 ジメッとした目で俺を睨めつける折本だが、次の瞬間にはイタズラめいた笑顔を見せる。

 

「ま、いいけどねー。もし比企谷にメールしてもなんも返答無かったら、出るまで一晩中コールしーちゃおっと」

 

 それもう嫌がらせの域なんですけど……

 

「それに他の子たちはみんなLINEだから、比企谷だけアナログってのも比企谷らしくてウケるしねっ」

 

 ……ホントこいつ変わんねぇな。こういう良い笑顔向けられると、馬鹿な俺はまた勘違いしてしまいそうになる。

 

「……さいですか」

 

 少しだけ熱くなってしまった顔には、秋の川沿いの空気が心地いい。これなら手をうちわ代わりにする必要もないからな。

 

「? なんで比企谷赤くなってんの?」

 

 やだバレてるじゃない!

 恥ずかしいわね。

 

「……ばっか、そりゃずっとチャリ漕いでりゃ暑くもなんだろうが」

 

「そ? あたしは寒いくらいだけどなー。ま、いいや」

 

 サバサバ系は細かいところを気にしないから助かる。『細かいこと気にすんな』ってのがサバサバ系に対する必殺の殺し文句だしな。

 ついつい折本の昔から変わらない笑顔にドキッとしてしまっていた俺なのだが、だがしかし次の折本の言葉にはドキッとじゃいられなかった。

 

「ところでさー、連絡先交換もしたいし、これからどっか寄ってかない?」

 

 え? 二人でってことですかね。いやまぁこの状況で二人じゃなかったら逆に困っちゃうけど。

 突然折本の友達とか出てきたら美人局かと思ってお金払っちゃう!

 

「え? やだけど」

 

「即答ウケる!」

 

「ウケねぇよ……」

 

 普通に考えてついこないだ再会したばっかの折本と二人でどっか店寄るとか、あまりにもハードモード過ぎだろ。

 ここは断固として丁重にお断りしよう。

 

「いいじゃん友達なんだし。……で、比企谷はどこがいい?」

 

 ねぇ折本さん。人の意見聞いてた? なんで即答で断ってんのにどこがいい?って話になってるのん?

 ……だったら俺は言わねばなるまい。俺の帰りを待っている素晴らしい場所があるのだということを……

 

「……家」

 

 もう帰りたくて仕方ないです。帰らせてください。

 

「……」

 

 なんで帰宅提案!? 超ウケるんですけど、と、まったくウケてない顔して怒られちゃうかと思ってたのだが、折本は顎に手を添えて暫らく考えこんでいるご様子。

 

「……んー、家……かぁ……ま、まぁ比企谷だしなー……」

 

 なにやら聞き取れないくらいにブツブツと呟いている折本。

 どしたのん? と次なる行動を見守っていると、折本はバッと顔をあげて笑顔でサムズアップ。

 

「いいよ! 比企谷んちとかウケるしお金も掛かんないしねー。よっし、んじゃあ比企谷んちにレッツゴー!」

 

 

 え? なんで?

 

 

× × ×

 

 

 そんなわけが分からない謎展開により陥ってしまったこの事態。

 なんとかラッキースケベについての質問を有耶無耶にして回避した俺だが、未だ心は平静さを取り戻せてはいない。

 今日は小町が塾で帰りが遅いみたいだからまだいいけど、なにせ曲がりなりにも昔好きだった女の子が、なんの因果か俺のベッドに寝そべってマンガを読んでいるのだ。冷静になれっていうほうが無理がある。

 ちくしょう……お前が無造作に頭乗せてるそれ、俺が今夜も使う枕なんだぞ? 絶対寝るときとか良い匂いしちゃって悶々としちゃうじゃねぇかよ。寝られなかったらどうしてくれんだよ……

 

「ぶっ! あはは〜! ちょこちょこエロいけど、これ結構面白いねー」

 

 そしてさ、一番の問題は折本がそう言って笑いながらベッドを転げ回る時にさ、チラチラと見えちゃうんですよ。意外なほどスラッと引き締まった綺麗に伸びる足の付け根から覗くオレンジ色の布が。あっちでラッキースケベこっちでラッキースケベ。ラッキースケベのバーゲンセールかよ。

 いや、もちろん悪いから見ないように努めてはいるんだよ? ハチマンウソツカナイ。

 でもどうしたって視界に入ってきちゃうじゃん? あれについつい目が行っちゃわない男子なんて健康とは言えない。

 

 こいつはこんな状況慣れてんだろうけど、俺には刺激強すぎィィ!

 

「ねぇねぇ比企谷聞いてんのー? ……あ」

 

「え」

 

 やべぇ、見ないように努めていた俺の視線がどこを向いていたのかバレちゃった? 全然努めてないじゃん。

 

「ちょっと比企谷、なに人のパンツ覗いてんの……?」

 

「……ア、アホか、覗いてねーわ。お前が勝手にゴロゴロ転げ回るから見えちゃうんだりょうが」

 

「動揺しすぎウケる」

 

「ホントすみません」

 

 ギロリと睨みながらウケると言う折本さんって恐いです。お願いだから通報だけは勘弁してください。

 

 短いスカートの裾をぐっと押さえ付けて未だ冷めた視線を俺に向けてくる折本に、なんとか反撃を試みる。てか話逸らさなきゃね。

 

「……てかアレだぞ? お前はこうやって男友達の家に遊びにくるとか慣れてるんだろうが、彼女も友達も居ない俺はこんなシチュエーションすげぇ緊張してるんだからな? ついつい目が行っちゃったって仕方ないだろ」

 

 ……やだ! 話を逸らすどころか、スカートの中見ちゃってたことの自己擁護しちゃった!

 でもホントそれだよね。こういうサバサバ系女子と男友達の距離感ってよく分かんないよね?

 あれでしょ? 友達だけど、こういうシチュエーションでなんとなくノリで色々(意味深)と済ませちゃったりするんでしょ? ちょっとやってみる? 的に。やばい、偏見がとどまることを知らない。

 

 か、仮に折本がそういうタイプだったとしたって、八幡はそういう展開は期待してないよ? ホントだよ?

 

 すると折本はなぜだかキョトンと首をかしげる。ちょっと可愛い。

 

「……慣れてる? あたしが男子んちに行くのが? あはは! そんなの慣れてるわけないじゃーん」

 

「え? そうなの?」

 

「そりゃ他にも女子が何人か居るときなら遊びに行ったことはあるけどさー、女子があたしだけとか一対一とかで遊びに行くとかあぶないじゃん。いくら友達って言ったって、ねぇ? ……だから慣れてるどころか、今日が初めてだっての。男子んちにあたし一人で来たのなんて」

 

 なにそれ、俺ってばやっぱりすげぇ偏見持ってんだな。こういうタイプの子に。

 てか折本が意外と身持ち堅くてウケる。……いやちょっと待て。

 

「いやお前あぶないって。じゃあなんでウチ来たんだよ……」

 

「……え、いやだって……そりゃ、ねぇ」

 

 俺の当然すぎる質問に、なぜだか折本は答えを言い淀む。

 

 ……え? ちょっと待って? ま、まさかお前……

 

 と、中学までの俺なら確実に勘違いして襲って返り討ちになってたまである。返り討ちにされちゃうのかよ。

 悲しいけど、もう答えは見えてるのよね。

 

「仮に比企谷が変な気持ちになっちゃったとしても、変なことする勇気があるわけないじゃん。ウケる」

 

 ですよねー。はい、分かってました。

 

「これでも比企谷に家に来れば? って誘われた時はちょっと焦ったし、ここに向かってる最中だってこう見えて結構緊張してたんだー」

 

 誤解を招くような言い方やめてね? 俺、家に来れば? なんて一切誘ってないよね?

 

「で、いざ来てみて、こんなエロいマンガ読んでたりスカートの中覗くとかを目の当たりにするとちょっと焦りもしたけど、」

 

 健全な少年マンガをエロマンガと一緒にするなよ小娘! そして覗いていたわけではないと言ってんだろうが。

 

「……でもま、他人の為にあんなこと平気でやっちゃう比企谷が、女の子が嫌がるようなことするわけないって分かってるしね」

 

「…………あ、そう」

 

 ……なんだよ。さんざん言ってくれちゃった割には、最終的には俺を信用してるってところに話を落ち着かせやがったよこの女。

 こいつって意外と天然であざといんじゃねぇか……?

 

「ま、いいや。そんなわけだし? 覗いてたことは今回は不問にしてあげよっかな。……まぁ比企谷にならちょっとパンツ見られちゃうくらい別に構わないっちゃ構わないけどー、でもやっぱアレだな。タダで見られちゃうのはなんか癪だし、今度から比企谷んちに遊びに来るときはジーンズとか履いてこよっかなー?」

 

 またもやにひっとイタズラっぽく笑う折本に、不覚にもまた少しだけドキッとしてしまう。

 タダじゃなければいいのかよ……あとまたウチに来ちゃう予定なのかよ……

 

 てかパンツ見られちゃうくらいとか言うなっつの。そういうところ少しは恥じらえよ。おじさん、こういう時にちょっと恥じらいを見せるくらいの女の子の方がグッとくるんだけどなー。

 ま、そう言いながらもこいつちょっと赤い顔してるし、意外と照れ隠しの軽口なのかもしんない。

 

「よしっ、んじゃ比企谷にまた覗かれちゃわないように気を付けて続き読もっと」

 

「だから覗いてねぇっての……」

 

 折本ってばしつこい。もうその話はマジで勘弁してほしいです。ていうかこいつまだマンガ読むのかよ。

 大体、よくよく考えたら折本はマジでなにしに来たんだ……? 連絡先交換するだけなら、別に総武高校から地元までの道すがらで事足りたはずじゃねぇの?

 

 まぁ折本みたいな“友達と面白可笑しく遊ぶことこそが青春!” ってタイプの人間なら単に遊びに来たってだけなんだろうけど、それでも多少なりとも緊張しちゃってまで家に来る必要なくない? マンガ読んでるだけだしさ。

 

 

 ──そんな不意に湧いた疑問にタイミング良く解をもたらすかのように、仰向けになってマンガをペラペラ捲りながら、なんでもないかのように折本が口を開く。

 

「あ、そだ、比企谷」

 

「あ?」

 

「あのあとさー、学校の様子とかどう?」

 

 

 ……ああ、そうか。こいつはこれが聞きたかったからずっと俺と連絡を取りたかったのだ。わざわざ会いに来たのだ。

 何気ないように軽い感じで聞いてきながらも、なぜだかこいつの気持ちがよく分かってしまった。

 

 

『あの子がサボったことによって迷惑掛けられて苛ついてた連中の悪意が、全部比企谷に向くかもしんないよ?』

 

 

 折本は、友達である俺が文化祭でやらかしてしまったあの後の“事の顛末”を心配してくれているのだ。

 

 まったく……誰もそんなことお願いしてないってのにお節介な奴だ。

 でも一方ではその勝手なお節介が、なぜだかそんなに悪くねぇな、なんて考えてしまっている俺も居るのだった。

 

 今まではそんなこと思いもしなかったことなのに。……やれやれ、これが友達効果ってやつなのかもな。折本かおり、やっぱこいつはなかなかに侮れんわ。

 

 

続く

 






というわけでありがとうございました!
今回の話は次回の話と合わせて1話で済むと思ってたのですが、安定の延びを見せてしまいました……orz

しかし今までさんざん色々書いてきたのに、こんなにもあっさりと八幡の部屋に入っちゃえる折本恐ろしい子!



というわけでまた次回お会いいたしましょう(^^)/



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