獣を心に感じ、獣の力を手にする拳法「獣拳」
獣拳には相対する二つの流派があった。一つ、正義の獣拳「激獣拳ビーストアーツ」、一つ、邪悪な獣拳「臨獣拳アクガタ」
二つの流派は一つに還り、獣拳奥義「慟哭丸」を用いて全ての元凶である不死の存在「無間龍」ロンを封印した。
それから3年後のドイツ、
「腹減った〜」
ロンを封印したトライアングルの1人、漢堂ジャンは腹を空かせていた。世界中で獣拳を広めていた彼だが、そろそろ日本に戻ろうかと考えていた。だが昨日、ゲキチェンジャーに奇妙な通信が入った。
『明日、ドイツのモンド・グロッソ会場に来るように!みんなのアイドル束さんより♪』
ジャンも世界の情勢が分からないほど馬鹿ではない。
ここ数年、獣拳を教える機会が少なくなってきている。その原因は二年前、日本で起きたある事件がキッカケだった。
白騎士事件、日本に放たれた約1000発のミサイルを一機のISが全て破壊したという事件。
IS《インフィニット・ストラトス》は宇宙開発の為のパワードスーツとして作られたが、兵器転用の危険性もあるためそれを禁ずるアラスカ条約なるものが締結され、それが障害になっているとジャンは感じていた。
ジャンがそう考えている訳はそれの出現が世の中を歪めてしまったからである。ISは女性にしか動かせない、その絶対的な事実が世の中を女尊男卑の風潮に変えてしまった。
女性に獣拳を教えようならば「ISがあるからいい」と一蹴され、男性に教えようにも「獣拳ではISには勝てない」と怯える始末。
このままではロンの慟哭丸の封印を見守る自分の後継者を探すのも一苦労である。
「うー!頭ウジャウジャするー!!」
謎の通信に導かれたISの世界大会「第2回モンド・グロッソ」の会場前で頭をかきむしるジャン。すると、
「!?ゾワゾワ…?悪いヤツか!」
ジャンはロンを封印してからから「悪意」に人一倍敏感に反応できるようになった。その「悪意」の発せられる所に向かうとそこは何処かの廃工場か何かのようだった。
その中を覗くと、一人の少年を椅子に縛り付け、銃を突きつけている数人の大人の集団が目に入った。
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クソッ!迂闊だった、まさか俺が攫われることがあるなんて。こんなんじゃいつまで経っても強くなれない。
「さーて、織斑一夏君?キミには人質になってもらうよ?織斑千冬を棄権させるためにね!」
相手は男と女が二人ずつ、男の方はご丁寧にも銃を構えている。女の方もISを動かせるようだ。どうやって脱出したものかと考えていると、
「おい…、何で織斑千冬が大会に出ている!?日本政府め、脅迫を無視したのか!!」
「チッ!ならこのガキに用はない!」
ガチャリ、と俺の頭に冷たい感触が伝わる。
「ガキ、言い残すことはあるか?」
さて、人生14年、短い人生だったな。なら、
「千冬姉、俺の出来が悪くてゴメン。そして、さようなら」
誘拐犯らが銃のトリガーに指をかける。そして、俺の脳天を鉛玉が貫通して、なんてことにはならなかった。
「お前ら!子供になんてことしてんだ!!」
廃工場に第3者の声が響いた。声の主は千冬姉と同じくらいの年頃だろう茶髪の男だった。胸に獣が三本の爪で引っかいたようなマーク、日本のスクラッチ社の人間だろうか。確かあそこでは特殊な拳法を教えているとか言ってたかな?確か獣拳とかいう。でも、ISに勝つにはマスタークラスの実力が必要で少なくともジャガー拳使いのマスターレツじゃないと無理とか言ってたな。習っている蘭が言うには。
「チッ!誰だか知らないけど見られたからには生かしちゃおけない!」
まずい。あの人が特殊な紫激気を使えるウルフ拳のゴウさんなら勝機はあるかもしれないが、あの人は上着が紫色だと聞いている。しかし目の前にいるのは紫色でも青でも、ましてやマスターランの黄色ですらない、赤の上着を着た人物。
「俺のことはいいです!逃げてください!!」
「遅せーんだよ!!」
女2人がフランスの量産機「ラファール」を展開して来訪者に襲いかかる。その場にいた誘拐犯も一夏も来訪者の敗北を確信した。だが、
「ISが何だ!お前らゾワゾワする、ゾワゾワのキチキチだ!!」
来訪者が両手を前に構える。そして、
「滾れ、獣の力!ビースト・オン!!」
左拳を右拳で包み込む。それと同時にラファールからライフルによる弾幕が来訪者を襲った。
「よし!これで…!?」
終わったと思った誘拐犯。だが、爆炎の中から赤い全身タイツの戦士が現れた。
「何だ貴様は!?一体何者だ!!」
「体に漲る無限の力、アンブレイカブル・ボディ!ゲキレッド!!またの名を…」
来訪者が名乗りを上げる。それと同時にその背後から巨大な赤い虎が吠えた。
「激獣タイガー拳使い、漢堂ジャン!!」
これが俺織斑一夏と獣拳との出会いだった。