After the Wars   作:A_R_S

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in 1953 winter

1948年のベルリン解放により各地の統合戦闘航空団は解散となった。各々原隊への復帰をしていた中、オラーシャでは陸軍がウィッチの活躍への反感によりクーデターを引き起こす。捕らえられたサーニャや他のウィッチを救い出すためにエイラは動き、カールスランド等の救援によって作戦は成功する。

 

しかし、オラーシャ中部からモスクワを目指していた戦車の一部が中の人間を動力源にネウロイ化し、それを皮切りにオラーシャ西部全域で戦車がネウロイ化してしまう。

これに対しオラーシャ、スオムス、カールスランド三国によって戦車ネウロイへの反抗戦争が勃発、この一連の戦闘をオラーシャ事変と呼ぶ。

 

当初モスクワ寸前まで迫っていたネウロイだったが、第二次ネウロイ戦争と比べれば危機は大きくなかった。組織的な反撃によって押し返すことは十分可能で、作戦は順調に事を進めていた。

しかしその時、サーニャは部下の一人を庇い砲弾の爆発に巻き込まれ、彼女は半年以上生死の境目をさ迷うことに。

これを期にエイラが対戦車の鬼となり、おびただしい数のネウロイ戦車と中の人間を撃滅していく。

事実として六割のネウロイ戦車はエーリカとエイラによって撃破されていて、この二人だけでほとんど勝ったようなものである。

その後戦争が終わり少しすると、半年の昏睡から覚めたサーニャに手紙が届く。

エイラからの別れの手紙であり、基地にストライカーユニット三つが買えるほどの大金を置いて、その日を境にエイラは自らのストライカーとともに行方不明となってしまった。。。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「…寒い」

 

ウィーンの冬の夜は、いくらオラーシャで育っていても、寒いものは寒い。学校から家までのそう遠くない距離でも、一人で歩く冬の夜道は寒いのだ。

昔は夜は私の居場所だった。上空五千メートルでも、魔力のおかげで寒さを感じることはなかった。少なくともこんな風に、頬をさすような鋭い寒さは。

 

時々、明け方に目が覚める。夜に寝るようになってからもう三年になるのに、かつての温もりを求めて体が動くのかもしれない。

私から空の世界を奪い去ることになったあの一発の砲弾がなければ、今こうして寒さを誰かと分かち合えない未来は訪れなかったのかもしれない。

若い少女を守った選択には、一抹の後悔もない。その程度で心配をかけてしまう自分自身が、ただただ情けないだけだ。

所詮私は夜にしか居場所のない魔女であったのだろう。彼女はそうして私から離れていった。

 

もう会わない―――その方がお互いにいいだろうから―――そう言い残し、誰にも行き先を告げないまま、彼女は空の彼方に消えた。

今もどこにいるのか分からない。彼女の祖国では一時大騒ぎになり、捜索隊も組まれたが、やがてそれも下火となった。

時折一方的に連絡を寄越してくるということは、生きてはいるのだろう。その手紙はいつも大きく移動する前に書いているようで、次の手紙は何万キロも離れた所から送られてくることも多い。

 

 

初めて話した時も、彼女は優しさに溢れていた。新しい土地になじめず一人ぼっちで不安でいた私のことを、過度に温めすぎないように、暖炉のような温もりをくれた。

その優しさに触れてしまった私は、いつしか彼女から離れることが出来なくなってた。

その優しさに甘えてしまった私には、自分で立つことすらままならなくなってしまったのだ。

いつも傍に彼女の優しい顔があったから、私はやっと半人前になれた。彼女の支えがあったから、私は一人のウィッチとして認められていたのだ。

それは『信頼』なんて言葉で綺麗に飾れるようなものではない。

 

 

『依存』である。

 

 

 

髪を落とし、自らの命を省みず捕われた私を助けに来たときに、たぶん彼女も同じなんだと思った。私たちは昔ほど鈍感ではなかったと思う。彼女だって私の想い気がついていたのだ。それでいて私を傷つけないように、と優しく触れていた。

 

 

それは“共依存”だ。愛だの恋だのといった、美しくてもの悲しいものではない。もっと黒くドロっとしていて、タールのようにねっとりとこびりついたモノ。

かつて私たちの間に存在していたであろうそれは、気がつかないうちに越えてはならない一線を越えてしまっていた。

それに気づかないふりをして、戦いを口実に、ごまかしながら再び彼女の背中に体を預けられる日々を享受しようとして。

 

 

―――それは一瞬のうちに崩壊した。

 

 

 

 

―――――会いたい。

 

―――――会えない。

 

―――――会ってはいけない。

 

 

少なくとも今はまだ、私たちは会ってはいけない。会ってしまえばまた昔に逆戻りだ。お互いに依存してしまえば楽になれるが、その先に待っているのは終焉だ。

 

だからこそ彼女は―――距離をおいたのだ。私から、彼女と離れる覚悟なんて出来ないことも、たぶん分かっていて。それで私の手を離す。そういうところもまた彼女の優しさだろう。

 

いつかその笑顔をまた見られるまで、私は彼女のことを忘れてしまわないとならない。それが笑って会うための条件だ。

 

 

 

 

この広い空の下のどこかで、あなたは私のことなんて一度忘れて。

いつかまた―――あなたと“笑って”会える日が来るといいわ。

 

 

 

 

ああ、それでもこんな寒い日には、彼女の温もりを思い出してしまう。

 

―――手が温もりを求めている。それぐらいのことを、あなたは許してくれますか?

 

 

 

 

 

 

―――――ねえ、エイラ?

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