ポケモン「絵描き」の旅【未完】   作:yourphone

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立ち向かいしは ~勝てそうに無い~

ジャイアントホール。冷たい雪が吹き付けてきている。

その中心で、ブールが狂ったようにホワイトキュレムを攻撃し続ける。

 

「ギィカ、ホワイトキュレムの左手!」

「ギガアアア!」

 

ギィカの『うちおとす』がブールを払おうとしたホワイトキュレムの左手に当たる。

『うちおとす』の効果でホワイトキュレムの左手がだらんと下がる。

ブールはホワイトキュレムの顔を集中して攻撃している。そのせいかホワイトキュレムが口から出す技が出せない。

んで、あれの使える技は今のところ『クロスフレイム』『コールドフレア』『りゅうのはどう』『りゅうせいぐん』の四つ。ブールみたいにもっと使えるのなら別だけど、これしか使えないはず。

 

「レイカ『10まんボルト』!」

「ナッ……トゥウゥウゥウゥ!」

 

ブールのおかげで『クロスフレイム』と『コールドフレア』は使えない。『りゅうせいぐん』をブールに当てようとすると自分にも当たってしまうから使わない。

つまり。

 

「キュルキュ」

「ハッサン『とっておき』!」

 

『りゅうのはどう』さえどうにかしてしまえばただのサンドバッグよね!

 

「な、く……ホワイトキュレム! 何をしているのです! そのような目障りな「うっさいわよあんたのが耳障りだわ口閉じて目ぇ閉じてさっさと降参しなさい許さないけどね!」っくぅうう!」

 

指示一つ出させない。トレーナーが動けずポケモンも動けない。そう、これが『ハメ』という戦闘方法。

 

「あんたはチェックメイトにはまったのよ!」

「ぐぐぐぅ……」

 

……問題は。あれだけブールが攻撃を加えているのにホワイトキュレムにダメージが見られないところ。

これじゃあ体力500000000(五兆)相手に1ずつしかダメージが入らないようなもの。正直、勝ち目が見えない。

ハエの体当たりで人が死ぬのかって話。

 

「サナ『サイコキネシス』!」

「サァッ!」

 

サナが飛び上がろうとしたホワイトキュレムの体を『サイコキネシス』で押さえる。

 

「おい、騒音」

「あによ黒帽子」

「このままじゃあ泥試合すぎる。なんか良い手は無いのか?」

「……んだったら、ほい。げんきのかたまりを六個。それとかいふくのくすり。ピーピーマックスも大盤振る舞いよ」

「良いのか? っていうかその量どっから出したんだよ!?」

「細かいのは気にしちゃ負けよ。…………」

 

ブールはまだ乱舞している。

ハッサンにはあらかじめ大量のヒメリのみを与えてある。『とっておき』のPPは気にしなくてもいい。最悪そこいらに放り投げてあるやつ食うでしょ。

ペティとツービーが手持ちぶさたっぽいわね。まぁ仕方無い。

レナは……ん、流石はエリートトレーナー。ちょいちょい休憩してるわね。

 

「ブラック君、N君。それと…メイコ君? わたしには良く分からないのだが……これは勝てそうなのか?」

 

国際警察のハンサムが声をかけてくる。

 

「あー。そのだな」

「この調子ならいつかは勝てます」

()()()()、か。……やはりゼクロムが必要だ。だが……」

 

ハンサムがコートから黒い何かを取り出す。

……ん? ちょ、ハンサムなんであんたがそれ持ってんのよ!

 

「ブラックストーンはここにあれど認められし使い手がおらん!」

「ばっかなの!? ブラック! さっさと呼び出しなさい!」

「………俺?」

「~~~~っ!」

 

余りにも馬鹿みたいに聞き返してくるからちょ~っと声がつまっちゃったっ、わぁ!

 

「あんたしか居ないでしょうが!」

 

「うおっうっせぇ!」

「良いからさっさと…………」

 

ん、待て。何かしら。なーんか見落としている、そんな感じ。とてつもなく大事な事を見落としている。

 

「おい、どうしたんだ?」

 

――そしてその大事な事は。あたしらが殺される事に直結している、そんな予感。

 

「おい、おい!」

「メイコちゃん?」

「っと。なんか……いえ。何でもないわ」

 

そう、ここはポケモンの世界よ? 寿命とかならまだしもそんな死ぬとか殺すとか、そういうのは無い。…………無い、と、思う。

 

「…………」

「ちっ、何でもないなら…試してやるよ」

「ではブラック君。これを」

 

ブラックがハンサムからブラックストーンを受け取る。

その途端、ブラックストーンが光を出す。

 

「むっ、これは…」

「これは…レシラムの時と同じ……!」

 

その光は、光なのに黒く、何故か落ち着いてくる。

ふとこれを見てゲーチスはどうしているか気になり、奥を見る。

 

ゾクッ

 

ゲーチスは、そう、笑っている。

狂人の笑いだ。頬をひきつらせるような笑い方。思わず鳥肌がたったわ。……いやまぁ、あたし既に鳥だけど。

 

――――そこで、嫌な予感を放つ存在が目に入った。

 

「え、N。N!」

「なんだいメイコちゃん」

「ゲーチスが使ったいでんしのくさび! ホワイトキュレムになるとき使ったわよね!?」

「そ、そうだけど――」

「どうなった!?」

「どうって」

「いでんしのくさびは()()()()()()()()()()()って聞いてんのよ!」

「いや、溶けてキュレムの体に溶けていったけど……」

 

サアァァァァと全身から血の気が引く。

 

「ブラック! 今すぐゼクロムの復活を止めなさい!」

「はぁ?」

「はやく!」

「いや、もう出てくる!」

 

ブラックストーンが宙に浮く。

アークがブラックストーンに走る。

 

「っ……!」

 

羽を伸ばし止めようとするが、あたしが触れる直前で弾け、

 

「ババリバリッシュ!」

 

ゼクロムが復活する。復活してしまう。

 

「これが……」

「ゼクロム……!」

 

ハンサムとNがゼクロムを見上げ、呆然とする。

 

「よし、ゼクロム! ホワイトキュレムを倒すんだ!」

「バリバリダー!」

 

伝説のポケモンの声はあたしでも理解出来ない。

なんて現実逃避してる場合じゃない!

 

「ふっははははは! これを、これを待っていましたよ!!!」

「ほーう、ゲーチス! ゼクロム相手に何が出来るってんだ!」

 

駄目、駄目ダメダメ!

 

「んなことさせるかぁあぁあぁ!」

 

羽ばたく。飛べ、ヒッピーちゃんの体!

 

「もう遅い! ()()()()()()()()()()()()は既に発動しています!」

 

ゲーチスが手に持ついでんしのくさびをホワイトキュレムに投げる。

いでんしのくさびは空中で溶け、ホワイトキュレムの体に吸い込まれ……

 

「キュルキュルァァァァ!」

「ドブッ!?」

 

ホワイトキュレムの全身から炎が吹き出し、ゼクロムに向かって伸びていく。

あまりの熱量にブールが一旦離脱し、あたしの場所に転がってくる。

 

「な、ゼクロムよけろ!」

 

ゼクロムは宙に浮き、炎から逃げる。

 

「メ、メイコさん? これは、俺が『げきりん』してる間に何が」

「……いでんしのくさび。二つ目」

「はい?」

 

怒りか悔しさか分からないけど、体に力が入らない。文章を口に出すことさえだるい。

 

「これで、ホワイトキュレムと、ゼクロムが、融合されるわ」

「は? ……え!?」

 

ゲーチスは確か、ホワイトキュレムは伝説のポケモン二体分と言ってたわね。つまり、これで、三体分。

 

「フフフフフフ、ハハハハハハ! アクロマの残した研究のお陰でキュレムは完全に進化し、言うなればグレーキュレムとなり! わたしの目的は達成されるのです!」

 

ホワイトキュレムの炎がゼクロムを包み込んだ。

そのまま、炎の中にホワイトキュレムも入り込む。

 

炎は一層強くなる。空には雷雲が集まり、雷鳴。

雷が炎に落ち、電気を帯びた炎はまるでタマゴのように丸くなる。

 

壊さなくちゃいけない。壊さなくてはあたしたちに未来はない。

そう、頭では分かっててもその神聖なタマゴには誰も触れられない。ましてや……攻撃だなんて……

 

 

バキッ

 

バキバキッ

 

雷に打たれた大木が倒れるような音が鳴り、炎が、帯びている電気が、凍りつく。

まるで太陽。炎の本体が太陽そのものでアークは太陽の表面を跳ね回るプロミネンス。

 

………はんっ、いつからあたしは詩人になったんだか。

うじうじうじうじ怯える? それのどこがメイコなのかしら? あたしはメイコ様よ。この世にあたしより強い奴は居ないわ!

 

「すうぅぅぅぅぅ。ふうぅぅぅぅぅ」

 

息を吸え。そして、吐け。考えろ。

あれの孵化は止められなさそうね。

 

「……んだったら、出てきたところを吹き飛ばす。全力でね。ブール!」

「……ドブッ! え、あ、なんですかメイコさん!」

「あんたのポケモンたちを全部かき集めなさい! あれを吹き飛ばすわ!」

「はい!」

 

飛べる? オーケー体は反応してくれるわね。

飛び、レナたちの元へ向かう。

 

「レナ! ブラック! N! ちゃっちゃと起きなさい!」

「……はっ、メイコさん! あれ、あれ!」

「見りゃあ分かるわ! あれから出てきたところを消し飛ばすわよ!」

「メイコちゃん、それは……」

「あらN起きた? あんたのとうさんとやらは笑いすぎでこっちの事なんか見てないわよ」

「そうしゃなくて……」

 

Nの顔も雰囲気も暗いわね。

 

「なら何もしなくていいわ。ハンサムを安全なところまで避難させときなさい」

「…………」

「んで、ブラック――」

「は、ははは、ゼクロムがあんな簡単に喰われるなんてな、ははは、はは、あはは」

 

うわぁぶっ壊れてやがるわ。こわっ。

まぁ、これぐらいなんだったらあのタブンネでも出せば良いでしょ。

ブラックの腰のモンスターボールを片っ端からぽちぽちぽちっと。

一つ目ローブシン。二つ目ジャローダ。三つ目、お、ビンゴね。

 

「あぁ? もしかしてまた私の出番? なら嬉しいわねぇブラックのやつ最近まったく出してくれなくてつまんなかったのよぉ!」

「そうよタブンネちゃん。まずはそのバカを殴ってあげなさい」

「けっ、勝手な命令しないでよねぇ。……って、勝手な、じゃないわねこれぇ。こんの……」

 

色違いのタブンネが拳を振り上げる。

 

「あほんだらぁ!」

「グハッ!」

 

殴られたブラックは吹き飛ぶ。目算二メートル飛んだわね。

 

「ヒュー♪ 素晴らしい。マーベラス。拍手までしちゃうわ」

「ふふ、まぁねぇ。こんぐらい出来ないとぉ」

「さて」

 

ハンサムの姿は無い。Nが安全なところまで連れていったわね。

 

 

……まぁ、恐らく、あたしらがここであれを倒せなければ。

 

 

 

世界に安全なところなど無いけど。

 

「メイコさん、準備出来ました!」

「私もいけます!」

「ブール、レナ。ブラックは?」

「わりぃわりぃ。あんまりにもあんまりだったんでボーッとしちまった」

「たく、トレーナーなんだからもっとハイメンタルで居なさいよねー」

「その通りねぇ」

 

タブンネも同意してくる。

 

 

バキバキッ

 

 

「……そろそろよ。面倒な指示はしないわ」

「うん」

「了解です」

「ただ、全力で――」

 

「「「 吹っ飛ばす!」」」

 

ほぅ、珍しく揃ったわね。

 

 

バキバキバキバキッ!

 

 

「産まれるが良いぃ! グレーキュレムよぉ!」

 

氷にヒビが入る。ヒビから炎と雷が吹き出る。

 

伝説が、産まれる。

 

 

「今よ!」

「いけぇ!」

「お願い!」

「やっちまえぇ!」

 

ギィカがレイカがペティがサナがレィシーがツービーがローブシンがジャローダがシビルドンがシャンデラがクリムガンが

 

一斉にタマゴから顔を出した()()に攻撃を加える。

 

 

岩にビームに電撃に念力に斬撃に吹雪に気合い玉に葉っぱに泥に炎にエネルギーが当たり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一切のダメージを与えられ無かった。




4721文字です。
……あれ? 前回よりも長いのですがそれは。
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