少年が高校で野球部に入るようですよ   作:Arupejio2

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貴方が遠くに行ったって、私は貴方を覚えているから。

「君が何処にいたとしても、僕は君を見守っているから。」


サクラ舞う空

さら「……ごめんなさい。やっぱり私は、誰も信じられません。」

 

アル「えっ……ちょっ、何言って……。」

 

さら「私は、これ以上耐えられるほど強くないから……。だから……さよなら。アルペジオ君。」

 

アル「さ、さら!!!」

 

さら「……最後に、アルペジオ君なら、信じてもいいと思えました……!」

 

アル「ま、待てっ!!!さらあああ!!!」

 

さら「ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日の事を、俺はよく覚えていない。何故って、さらが……目の前で好きな人が自殺しようとしたんだぞ?そんなの死にものぐるいで止めるに決まってるだろ?そのせいか、俺はあの日の出来事をよく覚えていない。結果から話せば、俺はさらの自殺を食い止めることは出来た。荒療治だったが。どうやって止めたのか……それも覚えていない。しかし、俺はさらの自殺を止められても、さらの心を変えることは出来なかった。

 

アル「ほんと……、役立たずだよな……俺。」

 

自分の好きな人の心を変えられずに終わった俺。何が好きな人だ……。そんな事言う資格は俺にはない。結果、俺はあの日からさらと話すことはなくなった。寧ろ……さらの方が俺を避けてるみたいだ。

 

アル「当然……だよな。」

 

ただ、不思議な事が一つある。あの日以降、『誰も俺と口を聞こうとしないのだ』。まるで……『俺がそこにいないような……』。そういえば、あの日の前日は雨だったっけ?今思えば、俺達の関係の終わりを告げる啓示みたいなもんだったのかもな。そして、そんな日々が続いて、俺達は明日、この親切高校を卒業する。沢山の思い出を残して……。

 

アル「感慨深いなぁ。俺が卒業だなんて。」

 

学校生活最終日の今日の放課後、俺は今さらとの思い出の場所、屋上にいる。あの日の出来事から、まるでここだけ時間が止まっているような気がした。それは勘とかそういうのではなくて……俺達の関係自体がここに縛り付けられているようで……。ここにさらはいないのに、今も俺の近くにいる、そんな気がしてならないんだ。

 

アル「さら……。ごめんな。俺が不甲斐ないばかりに……。」

 

そんな罪悪感に駆られながら、俺は空を見上げていた。三月の空、桜の花びらが舞い上がって、とても綺麗……なのに、今年の桜の空は何処と無く悲しく感じる。愛おしくなるほど可愛らしい色をした桃色が、まるで灰色に見えてしまう。時間をかき消してしまう、悲しい色。その喪失感漂う空を不気味に思った俺は、ふと、校庭に目を向けた。そしたら……。

 

アル「…………あれ?さら?」

 

そこには俺が世界で唯一愛した子がいた。あの日以来、色を失ってしまった彼女。髪を束ねているピンク色のリボンも、照れると可愛らしくほんのり桃色に染める頬も、彼女の鏡みたいに綺麗な目も、全てが色を失ってるように感じる。まるで、この空の桜の花びらのように。

 

アル「忘れ物でもしたのかな?」

 

するとさらは、急に校門を出て、何処かに向かった。何時も、あの子が帰る道とは全く違う方向だ。

 

アル「どうしたんだ?…………ついて行ってみるか。」

 

俺は駆け足でさらに気づかれないように、後をつけた。その道のりは、とてもとても長く感じた。そして俺は、何故かこの時さらの思い出が走馬灯のように駆け巡っていた。

 

アル「どこまで行くんだ……?」

 

そしてようやく辿りついた場所は、墓地だった。俺は最初びっくりしたが、多分、亡くなったさらのお母さんのお墓参りだと直ぐに理解した。

 

アル「明日卒業式だもんな。」

 

そして俺の予想どうり、さらはお母さんのお墓の前で、自分の学校生活のことや、周りの事を話し始めた。そして線香をお供えして帰る……はずだった。お供えをして、事が終わったと思ったら、さらは別のお墓を探し始めた。

 

アル「な、なんだ?まだ誰かいるのか?」

 

俺は不思議に思いながらも、さらの後をつけていった。そしてさらが立ち止まった場所は、墓地の中でも一際端の方のお墓だった。

 

アル「誰のお墓だ?」

 

不思議に思っていると、突然さらは地面に座り込んでしまった。あまりの出来事に俺は動揺を隠せなかった。そして隠れる必要も無いと感じた俺は、さらの元に駆け寄った。

 

アル「さらっ!大丈夫か!?どうしたんだよ!?」

 

しかし、さらは俺の返事には答えてくれなかった。けど、俺はその時はっきりと見た。さらが嗚咽を漏らしている所を。

 

さら「ひっく…………ふぅ……。…………い。」

 

アル「さら?」

 

さらはその時何か呟いていることに気付いた。しかし、嗚咽のせいで何を言っているのかよく聞き取れない。

 

アル「さら、どうしたんだよ、どうして泣いてるんだ?」

 

さら「……なさい。…ごめん……なさい……!」

 

アル「さ、さら?」

 

やっと聞き取れたその言葉は謝罪だった。誰に向けられた謝罪家はわからない。

 

アル「さ、さら、どうして誤ってるんだ?これは誰のおは……………………。」

 

きっとこのお墓に埋葬されてる人が関係してると思った俺は、墓に刻まれている名前を見た。そして俺は、目の前の現実に対して、呆然としていた。

 

『〜家 アルペジオ 20XX〜20XX』

 

アル「…………は?……な、なんだよ……これ?なんの……冗談だよ……?」

 

俺はしばらくまともな思考が出来なかった。世界がまるで、180度回転してしまった、そんな気分だった。

 

アル「さ、さら……、これどういう…………ッ!」

 

しばらくして俺は……ようやく思い出したんだ。『あの日の事』を、すべて。

 

〜〜〜回想〜〜〜

 

さら「……最後に、アルペジオ君なら、信じてもいいと思えました……!」

 

アル「ま、待てっ!!!さらあああ!!!」

 

その時俺は、今にも屋上から飛び降りそうだったさらの腕を、咄嗟に掴みかかっていた。というか、さら自身、もう屋上から身を投げ出していたところを掴んでいたので、俺はさらを腕1本で支えている形になっていた。

 

さら「ッ!?離して!!私はもう!だめなんです!!」

 

アル「離すかバカッ!!!!」

 

さら「そ、それに……このままじゃアルペジオ君も……。」

 

アル「うるせぇ!!そんな事関係ねえんだよ!!!」

 

さら「ッ!?」

 

アル「俺は!お前が大好きなんだよ!!死んで欲しくなんかないんだよ!!!どんな悲しい事とか辛いことがあっても!強く、強く生きて欲しいんだよ!!!だから俺はこの腕を離さない!!一緒に落ちた時は!俺がお前を庇ってやる!!」

 

さら「どうして……どうして……そこまでして私に固執するんですか……?」

 

アル「何度も……言わせんな恥ずかしい!」

 

さら「?」

 

アル「俺がお前の事が大好きだからだっつってんだろ!!!!」

 

さら「……!」

 

アル「ま、待ってろ!今引き上げ……!?」

 

その時の屋上は、雨のせいで滑りやすくなっていた。何時もなら気にしないが、俺はこの時ほど、前日雨が降っていて、屋上がわずかに濡れていたことを恨んだことは無かった。

 

アル・さら「ッ!?」

 

俺が足を滑らせたことにより、俺とさらは、屋上から落下した。俺はその時のことを鮮明に思い出せた。世界がスローモーションに見えた。

 

アル「……!」

 

さら「(アルペジオ君……ごめんなさい……。貴方はこんなに、私のことを信じてくれていたのに……私は……今更それに気づくなんて……ごめん……なさい……!)」

 

アル「……さら。」

 

さら「…………?」

 

俺は落ちながら、さらに『最期』の言葉を投げかけた。

 

アル「……負けんじゃねぇぞ……!」

 

そして俺は、文字通り死力を使って、さらの下に回るようにして、さらを抱き抱えた。そして…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さら「……うっ、うぅ……。」

 

先生「よかった!気がついたか!」

 

さら「こ、ここは……?」

 

先生「病院だ!屋上から落下したって聞いて驚いたぞ!!」

 

さら「屋上…………ッ!!アルペジオ君は!?無事なんですか!?」

 

先生「………………彼は、彼は勇気ある生徒だったよ。」

 

さら「えっ……?」

 

〜〜〜回想終〜〜〜

 

アル「…………。」

 

全部思い出した。俺はあの日、さらを庇って死んだんだ。だから、あの日の事だけ俺は今まで忘れていて、人々が俺の事を無視……いや、見えていなかったわけだ。

 

アル「そういう事か…………。」

 

そして、同時に俺が地縛霊的な感じで、ここに存在している理由もわかった。そして全てを思い出した今の俺なら…………。

 

さら「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……。」

 

アル「……さーら。」

 

さら「えっ……?…………アル……ぺジオ……君……?」

 

アル「うっす!久しぶり!ようやく話せたな!」

 

さら「……わ、私どうかしてしまったんでしょうか?遂に幻覚まで……。」

 

アル「ばーか。幻覚じゃねーよ。ちゃんと俺だよ。」

 

さら「それじゃあ…………あっ……あぁ……うわあああああああああ!!!(泣)」

 

アル「さ、さら!?」

 

さら「ごめんなさい!!私のせいで!アルペジオ君は!!死ぬのは私だけで、貴方は関係ないのに!!私だけ、平然と生きて…………ごめんなさい!ごめんなさいぃ……(泣)」

 

アル「さら…………。泣くなよさら、俺は気にしてねえよ。」

 

そう言って俺は、さらの髪をそっと撫でてやる。久しぶりのさらの髪の毛の感触が伝わってくる。しかし、今のさらは、とても弱々しい感じがした。

 

さら「嘘……です。」

 

アル「嘘じゃないよ。本当に気にしてない。」

 

さら「気にしてなかったら!!!私の前に現れるはずがありません!!!」

 

アル「…………その事なんだけどさ。俺もさ、わかったんだ。俺がここにいる理由。」

 

さら「ここにいる理由……?」

 

アル「…………さら。」

 

さら「えっ?」

 

俺は、優しくさらを抱きしめる。その小さな体で、今まで沢山の悲しみや苦しみを受け止めてきたと思うと、俺まで泣きたくなる。

 

さら「あっ……。」

 

アル「なぁ、さら。俺以外に友達出来た?」

 

さら「…………はい、アルペジオ君と一杯練習しましたから……。」

 

アル「人と話す時、照れないようになった?」

 

さら「……はい。」

 

アル「お姉ちゃんと、仲直り出来た?」

 

さら「……はい……!」

 

アル「もう……自殺しようなんて、思わなくなった?」

 

さら「……はい!」

 

アル「…………俺がいなくて……少しでも、ほんの少しでも、寂しいって、感じた……?」

 

さら「………………かった。」

 

アル「……。」

 

さら「寂し……かった……!もっともっと!一緒に話したかった!!色んな場所に行って、沢山思い出作りたかった!!何時もの屋上で、二人で寄り添って……何時までも一緒にいたかった……!(泣)」

 

アル「……そっか。」

 

その言葉を、どれだけ待ち望んでいただろうか。俺が、心の底から愛したこの子に、その言葉を言われることを、どれだけ待ち望んでいただろうか。

 

アル「もう……心残りなんてないよ……。」

 

さら「えっ……?」

 

アル「もう……いかなきゃ。」

 

さら「えっ……、もう、行ってしまうんですか!?」

 

アル「……ごめんよ。でも、嬉しかった!最期に……お前からその言葉を聞けて!俺は今、本当に幸せなんだ!」

 

さら「……アルペジオ君……。」

 

アル「なあ、さら。もう、迷わずに前に進めるよな?」

 

さら「……はい!」

 

アル「けど、やっぱり人間ってのはさ、どうしようもなく悲しい時とかあるんだよ。だから……そんな時はさ、」

 

さら「……?」

 

アル「俺が、お前に見えなくても、何時までも見守ってるってこと、忘れないでほしいな……。」

 

さら「……忘れるわけ……ないじゃないですか……。」

 

アル「……ありがとう!」

 

ああ、そうか。

 

さら「ま、待ってアルペジオ君!!」

 

もう、俺の大好きな人と会えないってのに。

 

さら「私……本当は……。」

 

こいつが、強く生きれるって、確信できたから……だから俺は……。

 

さら「アルペジオ君のこと……」

 

 

 

 

 

 

最期まで、笑っていたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は卒業式です。この親切高校で私は、大切な物を見つけられました。私の事を心の底から信じてくれる人、愛してくれる人、そして……私の大好きな人。そんな大好きな人とすごせたから……私は今日も胸を張って生きていける。例えどんなに辛くても、悲しくても、笑い飛ばして生きていける。その強さを教えてくれたのは、ほかの誰でもない、あの人だったから。

 

 

 

 

 

『卒業式の空、別れの空、旅立ちの空。この日の桜は、とても美しかった。空一面に花びらを飛ばして。それはまるで桜の空のよう。その色はもう悲しい色ではない。可愛らしくもあり、綺麗でもあり、そのくせ、一生懸命に舞っている、そんな桃色の桜の花びら。少女は歩いていく。満開の桜の空の下、未来に向かって。』




ちょっと柄にもなく真剣に書いてみました。
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