鈴木悟分30%増量中   作:官兵衛

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第四章四編 悪魔(悪いひとたち)に囲まれる魔王(小市民)

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリックで首脳会談が行われている時にセバスからモモンガに入ったメッセージ。

それが始まりであった。

 

 アルベドとデミウルゴスとパンドラズアクターは主人が突然動きを止めてメッセージらしい物と会話を始めた途端に起こった珍しい光景に驚くこととなる。

 体がブワッと光ったと思ったら、御手で執務室の机をガシンッと殴りつけたのだ。

 

「……セバスからのメッセージだが……ツアレが八本指に攫われたそうだ」

 

 モモンガは苛立った。もともと八本指の事は調査済みであり、彼らを利用しての王国の掌握について検討しており、それ故にセバスやアルベドに「潰しますか?」と問われた際に言葉を濁したのだが、こんな事なら潰せば良かった!という思いがあるためである。

 

 3人は数瞬困った様に固まったが、その中で率先してパンドラズアクターが尋ねる。

「ツぅアレお嬢様は「モモン様」のお仲間の姉君と先ほどお聞きしましたが……「モモン様」としてお助けになられますか?「モモンガ様」としてお見捨てになられますでしょうか?」

 

「助ける。モモンガとして助ける!というかだ!本当なら初めから八本指を皆殺しにしても良かったんだぞ!あのクズどもめ!アレらの有用性について調査していたらこれだよ……」

 苦々しげに吐き捨てるモモンガに3人の下僕は、自分の力の至らなさを申し訳なく思い顔を伏せる。

「……これは私の判断ミスである。彼らは私が思っていたより軽率であり、私が考えていた以上に愚かと云える。もう、その程度の奴らに有用性や利用価値などを考える必要は無いと私は考える。あれだけツアレを……酷い目に遭わせておいて、まだ足りないのか?……彼奴らは自らの欲望にまみれて虎の尾を踏んだ」

 

 正直、八本指を利用するという案を出した者に対して少しも思うことがない訳ではない。しかし最終判断をしたのは自分であり、責任の全ては自分にあるべきだ。

 

 会社に居たイヤな上司みたいになりたくは無いものな‥‥。

 

 そう云う心理状態を含めた上で、苛立ちが見えるモモンガの姿に

 ここまで怒れる主人は初めてかも知れないと3人はビクリと体を縮める。

 主人は低く呟くような声で続ける。

 

「……デミウルゴス、アルベド、パンドラズアクターよ。私の信頼するナザリックの頭脳たる3人で、『ツアレを無事奪還する』『八本指に思い知らせる』『漆黒の名前を高める』『今後の作戦の下地作り』を兼ねた作戦を考えよ」

 

「「ハッ」」

 

「裏組織ごときが栄光在るナザリックに逆らうとどうなるか教えてやりますとも」

 

「うむ 頼んだぞデミウルゴス」

 

「きっと彼らが生きていたことを後悔して泣き叫びながら死ぬことも出来ない目に遭わせてやりますわ」

 

「……やり過ぎじゃないか?アルベド」

 

「お任せ下さいモモンガ様!このパンドラズアクター! モモンガ様を不快にせしめた彼奴らを地獄に叩き落とし、ツアレお嬢様をお救い致しますぞ!」

 

「あ……うん、程々に頼むぞ」

 

「モモンガ様」

 

「なんだアルベド」

 

「例の作戦を同時実行しては如何でしょうか?」

 

「え?」

 

「デミウルゴスの『魔王』案で御座います」

 

「なるほど、それは良いですね。同時に実行出来ると思います」

 

「ふむ……そうだ…な……?」

 

「では、少し変更し悪魔の像は八本指が隠し持っており、そのせいで八本指は悪魔に襲われた……という感じで行きましょう」

 

「よろしいかと。事件と同時にその様な噂を広めましょう」

 

「ラナー王女と話はついたの?」

 

「はい すでに」

 

「え?」

 

「そもそも今回の囚われのお姫様役であらせられるツアレ嬢が攫われて連れて行かれた場所は判明しているのでしょうか?」

 

「それが……現在、監視体制では無かったため姉さんは確認出来ていないと思います。普段でしたら私がモモンガ様を見張って、見守っているので分かったと思いますが、今回は御一緒でしたので……」

 

「うん オマエ今、確実に「見張って」と言ったがな……まあ、良い。ツアレの行き場所はニニャの助けを借りれば大丈夫だろう」

 

「ニニャの……で御座いますか?」

 

「うむ 八本指の拠点自体は場所の確認は出来ているのであろう?」

 

「はい 数カ所ありますので、間違えて襲撃してしまうとツアレ嬢の身に危険が及ぶやも知れません」

 

「それは大丈夫だ。パンドラズアクター。作戦開始直前にニニャと探索しセバスと私が突入しツアレを助けよう」

 

「解りました。それでは同時に『ゲヘナ』を開始致しますので、ツアレとニニャをゲートで退避させてから『漆黒』として頂きましょう」

 

「そして私達は王国の国庫を襲います」

 

「え? 王国の?酷くないか?それは……」

 

「酷くありません」

 

「はい」

 

「王国という腐った果実を落とし種を取り出すのに必要で御座います」

 

「はい」

 

「ではモモンガ様は『漆黒』としてこれこのように動いて頂きます」

 

「はい」

 

「ふははははっ 素晴らしいショーの始まりですぞ!主演はマイマスター、助演男優はデミウルゴス殿でございます!」

 

「‥‥‥はい」

 

 モモンガは虚ろな目で返事するマシーンとなっていた。

 

 

 

 

 

 

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 王都『リ・エスティーゼ』 皮鎧職人セルジオ・アロンナ 母への手紙より

 

 その日の夕時、突然無数の空をとぶ烏が遠くの空に見えた。

 みんなで気持ち悪いねと言っていた。烏は群れを成してこちらへ向かって飛んで来た。そして我々は城塞を越えて飛来した『彼ら』を見た。

烏だと思っていたのは無数の悪魔としか例えようのない生き物だった。黒い150cmから200cmほどの体。その背中にはコウモリのような羽が生えており尖った耳と、耳まで裂けた口、口には大きな牙が生えており目は黄色というお伽話通りの形をしていた。余りの恐ろしさに子供の頃、ママに「いい子にしていないと悪魔に攫われちまうよ」と叱られた事を思い出した。ああ 嗚呼‥‥ママ ごめんよ いい子にしますから、どうか神様、助けて下さい。

 

 

 

 

 

 王都『リ・エスティーゼ』 王都冒険者組合職員ライシトレ・コンセイソン 口述

 

 王都は突如飛来した悪魔の群れに混乱の極みを迎えた。逃げ惑う市民。はぐれた母を呼び泣き叫ぶ子供。阿鼻叫喚の嵐。そこには地獄があった。あれは戦場で体験するものだと聞いていたが、確実にココには地獄があった。

 冒険者組合所長からの通達を1階の溜まり場に居た数十人の冒険者に伝えた「どうかみんなの力を貸して欲しい!恩賞は間違いなく出すから500メートル先にある避難所の出入口を守って、悪魔を入れないようにしてくれ!」

 みんなの顔が物語っていた。「そもそもそこに辿りつけるのか?」と しかしあの避難所には数百人の一般市民が逃げ込んでいる 今もその最中だ。誰かが行かなければ……と訴えた。「我々が行こう!」とゴールドプレートのチームが立ち上がって外に出て走りだしてくれた。だが50メートルも行かないうちに悪魔に取り憑かれて内臓を引きちぎられて死ぬ者、空へと持ち上げられて落とされて死ぬ者、生きたまま顔を食われる者などばかりで、彼らが勇気を示してくれた3分後に、もう彼らは居なくなった。

 もう 私は溜まり場で青い顔をしている冒険者達に「地獄に行け」という通達を出すのを止めた。

 

 

 

 

 

 王都『リ・エスティーゼ』王城門番 アルベルト・ルイス・ガジャルドン 口述

 

 貧乏貴族の末弟として生まれて父の口利きで守衛を務めて11年経つが平和そのものの良い仕事だった。

 守衛は戦争に行かなくても良い。せいぜいエライさんの顔を覚えて、権力者を顔パスしてあげれば文句も出ない仕事だ。

 だから平和ボケした俺に、あの日の出来事は理解できなかった。

 守衛隊長から「決して悪魔を城に入れるな!」という叱咤が背中に浴びせられる。お前らは門の中だが俺達は門の外だ。だが何故か悪魔は城まで攻めて来なかった。でもいつ来るか解らない恐怖に怯えていると、城の中から戦士長のガゼフが門を開けて市民を助けに行きたいと喚いてやがる。ここは王の居る城だ!それを守るのがオマエの仕事だろ!ついでに俺達も守りやがれと心の中で思ったもんだぜ。平民出身には分からないのかねえ。国の象徴たる王の大切さが。

 

 

 

 

 

 王都『リ・エスティーゼ』 宿屋『ゴンサロ』の主人 ゴンツェロ・デ・ベニート・セカデス 王都監察官への供述

 

 あの大きな商館が八本指の根城だなんて知りませんでした。本当です。

あの日 南の方角から悪魔の群れが一気に襲いかかって来て、あの商館にも取り付いたし、私の宿屋にも取り付いてきました。必死に棒きれで悪魔を追い返していたら商館の方から「ドカンッ」とか「ガツンッ」とか大きな音が聞こえました。はい なんども……といっても20回くらいでしょうか。街の噂では、悪魔召喚の儀式に失敗したとか暴発したとか‥‥‥それで悪魔が寄ってきたと聞きました。あいつらとんでもねえクズ野郎です。そんな激しい音の後に商館が燃え出したんです。

 火が消えた後に衛兵達を手伝って瓦礫を退かす作業をしました。そうしたら商館の地下から出てきたのです。体が不自然に潰れた不気味な死体と埋もれていた不気味な像が!

 

 

 

 

 王都『リ・エスティーゼ』 衛兵隊長補佐マリアーノ・ラホイ・ブレイ 口述

 

 衛兵たちは一丸となって市民街へと悪魔の群れが流れこむのを防いでいました。なんども、もう駄目だと思いました。しかしある時、美しく張りのある声で「我々が突っ込む!もう一度だけ押し返してくれ!」という声が聞こえました。振り向くと見目麗しいラキュース・アインドラさんがゆっくりと歩いて来ました。蒼の薔薇の登場に衛兵たちはなんとか悪魔を押し止めて彼女たちの突破口を作り出しました。そして駆け抜けていく彼女達を見送って、みんなもう俺達のやれることはやったと座り込んでしまいました。悪魔の群れは再び襲いかかってきましたが、我々はもう立つ気力もありませんでした。ああ死ぬのか‥‥そう諦めた時に突然風が起こったのです!黒い風が!突然目の前に飛び込んで来た黒い鎧の騎士は一振りで悪魔を数匹斬り殺し、空に浮かぶ黒髪の女性マジックキャスターが唱える魔法はとんでもない範囲の悪魔を黒焦げにしました。彼らはミスリルチームの『漆黒』と名乗ると我々に水とポーションを分け与えてくれ、「もうひと踏ん張りだけしてくれ、敵の首魁を倒してくるから。それまで街の人達をたのむ」と告げてマジックキャスターのフライに掴まり飛び立ちました。その時、私たちを助けるために任務の途中で飛び込んできてくれたのだと気づいたのです。彼は『漆黒の英雄』モモンでした。

 

 

 

 

 

 城塞都市『エ・ランテル』 冒険者チーム『漆黒』ニニャ  日記より

 

 !!! 今日の日記は長くなります。いつもは一、二行だけど、今日の日記は長くなります!

 モモンさんより突然「学校が終わり次第宿屋に迎えに行く」という知らせを聞いて驚いて帝国立魔法学校が終わって急いで宿屋に帰ると、ハムスケの喉やお腹を撫で撫でしているモモンさんが居た。ハムスケは「と、殿ぉ~ お戯れをおおおおお」と喘いでいた。ナーベラルさんが凄い目でハムスケを睨んでいた。怖かった。

 モモンさんはゲートを開いて僕を招き入れると出た所は豪奢でありながら妙に壁や机が荒らされた邸内でした。セバスさんとユリさんが挨拶をしてくれる。

そしてモモンさんは言いにくそうに「ニニャよ 謝ることがある。」と言った。

「君の姉さん、ツアレニーニャ・ベイロンをセバスが保護したが八本指という裏組織に奪われてしまった。これから助けに行くので協力して欲しい。」

バチンッと目から火花が飛び散る様な衝撃を受ける。

 姉さんが見つかった!

 裏組織に攫われた!

 これから助けに行く!

 凄すぎて麻痺するだろうと思っていたけど 自然と両目から涙が溢れた。

 でもその後 攫われたことを思い出して心配になり、モモンさんが助けに行ってくれることをありがたく思った。

「もちろんです!どんな協力でもします!」と言うと、モモンさんは姉さんの手作り人形は持っているか尋ねられた。人形を差し出すと机の上において「さあ ニニャ。このスクロールを使うんだ……おっとその前に……」といって10枚くらいの魔術スクロールを渡してくれた。対魔法防御や対魔法探知用の呪文が込められているらしい。それらの効用を一つ一つ説明してくれたが、これは魔法を使う際の注意を実地でレクチャーしてくれているみたいでした。

 そしてスクロールの上に姉さんの手作り人形を乗せて、〈物体発見/ロケートオブジェクト〉のスクロールを発動させると、フワリと浮いた姉の人形は空中に浮いて移動を始める。その先に姉さんが居るらしい。それで私を含めた『漆黒』のメンバーで人形の後を付けて行くと一件の商館に辿り着きました。

 

 

 その後は商館に突入したセバスさんがガツンガツンと「八本指」の幹部を叩き潰して、奥の方からモモンさんが姉さんを連れてきてくれました。13歳で生き別れた姉さんは相変わらず綺麗な金髪と整った顔と優しい目を持っていた。僕が「姉さん」と叫ぼうと思った瞬間、姉さんは「セバス様ああ~~」と僕の前のセバスさんに抱きついた‥‥‥え?

 

 え?

 

 え?

 

 6、7年振りに逢った妹がすぐそばに居るんですが‥‥‥。

 そうですか、なるほどなるほど 女ってこんなもんですか 好きな男が出来たらこんなもんですか 妹なんてこんなもんですよね ふふふふ

 モモンさんが気まずそうに 「んんんっ」と咳払いをして、僕の方をチラッチラッと見て姉さんにコチラを見せようと努力してくれている。‥‥本当に良い人だなあ。この方は。

 それまで割と満更でもなさそうに姉さんを抱き締めていたセバスさんが姉さんを僕の方へ向けるとようやく姉さんは僕に気づいたように「まあっ 大きくなって‥‥‥」と目を潤ませながら僕を抱きしめる。初めは「えっ 今から感動しろと?」などとヤサぐれていた僕ではあるが、やはり姉の胸の中は良い。何度も「姉さん」と叫びながら泣きじゃくった。

しばらくするとモモンさんがゲートを使い、セバスさんが私たちをカルネ村に送ってくれた。

 数日後に迎えに来るから、それまでバレアレ薬品店で世話になっていて欲しいとの事で、セバスさんはゲートの向こうに消えた。姉さんはゲートが消えるその瞬間まで「セバスさまぁあああ」と泣き叫んでいた。はいはい。

 僕の義兄はお爺ちゃんになる覚悟をしなければならないのですね……ふふ。

 僕たちはカルネ村でゆっくりと沢山の事を話した。お互いに相手に心配させないようにボカした部分は多々あったけど僕たち、いや 私達『姉妹』は、今 幸せになった。

 

 

 

 

 

『リ・エスティーゼ王国』アダマンタイト級冒険者「蒼の薔薇」リーダー ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ  黒い表紙の日記?に記す

 

 神よ見たか!大いなる黒き剣の力を!わが伝説の剣 魔剣キリネイラムを!

 ‥‥‥いや、思わず気が上がり過ぎてしまった様です。今日は本当に大変でした。

 まさか、生きているうちに「悪魔」なるものと対峙しようとは思わなかった。そういう物は御伽話の登場人物だと思っていたからだ。

でも、今日、私は見たのだ『悪魔』と『英雄』の両方を!英雄は私の剣と同じように黒く、そして時々光り輝いていた!

 イビルアイが「ヤルダバオトと初めて出会ったモモン様は光に包まれた!」と言っていたから、きっと本当の力を出すと輝くのね……良い……実に格好良い設定です!

 しかし あれでミスリルプレートだなんて、冒険者組合の目は節穴だろうか?あの漆黒の鎧に漆黒の剣、しかも大剣を二刀流とか解っていらっしゃるわね、あの御方は……。

 

 今日の大活躍をもって「アダマンタイトプレート」に昇格するらしいけど、当然ね。むしろあんな大英雄と同じプレートである事が面映ゆいわ。

 

 ただ、作戦を共にして一緒にヤルダバオトを討伐したイビルアイが初恋に身悶えて、定期的に「ももんさまあ‥‥‥」と呟く習性を身につけた件については文句を言う権利があると思うの。

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓スイートルーム モモンガ自室より

 

 

 

 そこには「どうして こうなった‥‥‥ 」とベッドの上で頭を抱えるオーバーロードが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「やはりモモンガ様は慈悲深い御方で御座いますな。」

 

「ええ そうですともパンドラズアクター。」

 

「ナザリック以外の者でありながら、あの御怒りよう……モモンガ様は我々ナザリックだけに目を向けて欲しい気持ちは重々ありますが、モモンガ様程の御方はそれに留まらないという事ですね。」

 

「必要とされることなら仕方ないが、無駄な殺生は好んではおられぬようです。たとえ対象が、ニンゲンだとしてもです」

 

「それに、軽々しい悪がナザリックへもたらす不利益についても思慮深くお考えなのでしょう」

 

「そうですね……やはり、あの件の報告書はお出しするのを控えましょう……。きっとモモンガ様を心苦しくさせてしまうと思うのです。あなたはモモンガ様の創造物。良くお解りではないですか?」

 

「ふはーは!デミゴルウス卿!情報は情報総監で全て吸収してからモモンガ様へとお渡し致します。あなたの言うとおり「羊」の件はモモンガ様にお伝えしない方が良いという判断は分かりますが、情報総監として拒否致します。ミスター。全てお伝えするべきです。一から十まで隅々と!」

 

「モモンガ様にお任せしろという事ですね?なかなか厳しいことを仰いますね。パンドラズアクター。」

 

「いえ!……信じているのです。デミウルゴス殿。宝物庫の中で寂しく過ごして終えるハズだった私を必要とし外の世界へと連れ出して下さったあの御方を!」

 

「なるほど……流石はモモンガ様に創られたNPCです。正直貴方が羨ましい」

 

「羨ましがって頂く必要など御座いません。モモンガ様は私だけの主人でなかりければ」

 

「……分かりました。『ありとあらゆる物』での検証結果はそのまま出させて頂きます」

 

「はい よしなに」

 

 その日のうちに情報総監から上がってきた報告書「羊によるスクロール作成」についての文書にはモモンガより「保留」と「重要機密」の両方の判子が押された。

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ2

 

スレイン法国特務機関

 

「脱走兵の消息が掴めたらしいね」

 

「ええ 今回は逃しません 漆黒聖典隊長の名にかけて」

 

「クアイエッセは連れていかないの?」

 

「はい‥‥私は大丈夫だと思っているのですが、上層部は兄が妹を気遣うことになるかも知れぬと」

 

「彼がそんなタマには見えないけど」

 

「ははは‥‥」

 

「あーあ また 今回も留守番かあ」

 

「仕方ありません あなたの存在は秘中の秘」

 

「まったく 早く敗北を知りたいものだよ」

 

「そんなバケモノが居るのですかねえ バケモノを殺すための存在であるアナタが」

 

「まあねー」

 

「アナタが居なければ私こそは人類最強だと思っているんですけどね」

 

「お?私を『人類』だなんて思っていてくれるの?」

 

「‥‥‥」

 

「ああ すまない意地悪するつもりじゃなかったんだ。まあ 早く私を倒す様な強い奴に恋をしてソイツとの子供を作りたいよ」

 

「そんな日が来るとは思えないんですけどね」

 

「そう?」

 

「はい」

 

「ふふふ ぷれいやーなら可能性ある」

 

「?! なるほど、神に等しい彼らならアナタにお似合いでしょう」

 

「ふふっ このツートンの髪とか気に入ってくれるかなあ 神(かみ)だけに!」

 

「‥‥‥‥‥‥チッ」

 

「ごめんなさい」

 

「広めて良いですか」

 

「ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 




 
 

 

最後の市民の声は「パリは燃えているか」をBGMにしてお楽しみください






yelm01様、おとり先生、244様、きなこもちアイス様、ronjin様 毎度の事ながら誤字脱字の修正を有り難う御座います。
誤字脱字が多いくせに更新速度だけ早くて申し訳ないです(笑)

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