鈴木悟分30%増量中   作:官兵衛

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第五章三編 竜の血族(ドラウディロン)vs竜人(セバス)

 

 

 

 

 

 

 

『竜王国』の玉座の間にて 招待により貴賓としてリ・エスティーゼ王国冒険者組合所属のアダマンタイト級冒険者チーム『漆黒』の副リーダー セバス・チャンが綺麗な姿勢で、女王ドラウディロン・オーリウクルスの前に起立している。その厳粛な雰囲気と鋭すぎる眼光は179cmの体躯を大きく見せており、玉座の間に並ぶ閣僚達の感嘆を得ていた。

 

何故、ナザリックによる初外交という大切な案件が、やや不器用な面もあるセバスに任されたのかはいくつか理由がある。

まず、そもそもが「アダマンタイト冒険チーム『漆黒』」としての接触であると云うこと。

そして、相手は1/8とは云え初めての『ドラゴン』という高位生命体であり、擬態や嘘などを我々が知らない方法で打ち破る術を持っている可能性があると云うこと。

こちらからの提案が普通に聞いた場合、相手に都合が良すぎるため、本来の交渉上手なデミウルゴスなどに任せると切れ者と噂の竜王国宰相に胡散臭がられて約束を取り付けられない可能性があると云うこと。デミウルゴスにニヤニヤされながら「良いお話があるのですが」と言われるのと、セバスにニッコリと微笑まれながら「良いお話があるのですが」と言われた場合、普通の人間ならセバスの方が安心出来るよね?という話であり、更に真の姿を見破られたとして、セバスは竜人であり、ドラゴンの血を引く相手国女王から、同族意識などで譲歩を引き出しやすいのではないか?ということが上げられる。

 

そして、女王と会うと云う事で非武装が前提であるが、もし何らかの理由で竜王国との交渉が決裂し敵対状態になった場合に、セバスなら徒手空拳で脱出が可能であるということも大きな理由の一つであった。

それに、そもそも今回は嘘も駆け引きも必要がない。彼らに取っても我々に取ってもWin-Winな案を提案するだけである。

セバスの人柄と、それが培ってきた人望が会談を良い方に持って行ってくれるのではないか?と送り出したモモンガは存在しない心臓をバクバクさせながらナザリックで一報を待っている。

 

 

 

 

 

 女王は何故か怒った様な顔で隣の懐刀である宰相だけに聞こえる声で話しかける。

 

「おい 先ほどから心臓がバクバクしておるのじゃが」

 

 健康だけが取り柄だと思っていた我が女王の発言に宰相は珍しく狼狽する。

 

「だ、大丈夫ですか?お加減は?謁見は中止に致しますか?」

 

「あのな‥‥その、な この人、滅茶苦茶タイプなんじゃが」

 

「‥‥‥は?」

 

「やばい マジやばい これが恋か‥‥」

 

「うおい!?なに言ってんのこの幼女!?」

 

「年齢的にも釣り合ってるしな 実は」

 

「知りませんよ!?やめて下さいよ。こんな時に発情(フケ)だとか」

 

「おい 人を馬みたいに言うのは止めてもらおうか」

 

「しかし昔から馬と竜は密接な関係がありますし」

 

「いや 本当もう駄目。なにこのナイスミドル。あと何故か曽祖父を思い出すのじゃが」

 

「グランドファザコンだったんですね。知りませんでした」

 

「うっさい 禿げ」

 

「は、は、禿げとちゃうわ!?」

 

 

 何か隣の宰相と思われる人物とゴニョゴニョやり続けている女王の目の前に突っ立ったままになったセバスが声を掛ける。

 

「‥‥‥あの 女王陛下におかれましては、この度は御招待いただき有難うございます。」と深く長いお辞儀をする。

 

「ひゃ、ひゃい」

 

「ひゃい?」

 

「う、ううん えー 遠路はるばる御苦労であったセバス殿」

 

「はっ とんでも御座いません」

 

「その‥‥セバス殿には奥方はおられるのでしょうか?」

 

「‥‥‥は?」

 

 宰相がセバスからは見えない位置で女王の脇腹にドスッと指を一本突き立てる。

 

「ぐふっ グググ‥‥これだけは聞かせてくれぇ‥‥」と小声で宰相に懇願する。

 

 

「いえ 妻はおりませんが」

 

「!?」 セバスの見えない位置でドラウディロンが小さくガッツポーズをする。そのガッツポーズを「ぱしっ」と宰相に叩き落とされる。

 

「ん。すまない、その‥‥なんでも『漆黒』の方々は祖国の情報を広く集めているとお聞きしましたが」

 

「はい その通りです。我々は魔法実験の失敗により此方に飛ばされて来た旅人で御座いますゆえ、王国では良くして頂いておりますが、望郷の念は尽きず、帰国の方法を皆で模索しております。」

 

「ふむ‥‥では、そなた達の祖国の名前は何と申されるのか?」

 

「はい 『ユグドラシル』に御座います」

 

「ユグドラシル‥‥? ん!?聞いたことあるぞ!」

 

「えっ 嘘!?」

「誠で御座いますか!?」

 

 当然、上が宰相、下がセバスの発言である。

 

 ドラウディロンは宰相をジト目で見たあと、セバスに語りかける。

「うむ ワシ‥わたしの曽祖父は『ブライトネス・ドラゴンロード』と呼ばれていた建国の竜なのだが、確かに曽祖父が語っていたのだ。『六大神はユグドラシルより降臨した神であり、八欲王はユグドラシルから追放された者達だ』と」

 

「なんと!」

 

「当時のワタシは幼くて、お伽話と昔話の区別もついておらなくてな‥‥。今思えばあれは昔話を聞かせてくれていたのじゃなぁ」と懐かしげに目を細める。

 

「良いお爺様で在らせられたのですね。他にお聞きになられた事はありませんか?」

 

「むう‥‥六大神は600年前、八欲王という事は500年前もの昔になるのう‥‥というくらいのことしか覚えておらぬなあ」

 

「そうですか‥‥いや ユグドラシルの存在が明らかにされただけでも嬉しゅうございます」

 

「そ、そうか? すまぬな役に立てなくて」

 

「とんでも御座いません」

 そう深く頷くとセバスは白鬚の中でニコリと笑う。

 

「ぐふっ と、ところで手紙の中に興味深いことが書かれていたが?」

 

「はい ギルド・アインズ・ウール・ゴウンによる防衛網と共栄圏の構築についてですね?」

 

「うむ‥‥‥すまんが口頭で分かりやすく説明してくれんか?」

 

「はっ ここに分かり易く書かれた取扱説明書が御座いますので御覧下さい」

 

「とりあつかいせつめいしょ?」

 

 セバスは懐より取り出した羊皮紙を、受け取りにきた宰相に手渡す。

 

 それは簡単に言うとこの様な内容だった。

 

 

『ギルド・アインズ・ウール・ゴウン(以下AOG)と国境を超えた盟約を結ぶ事を提案します』

 

1.AOGが提唱する防衛網を築いて安全で平和な社会作りを実現

*国に害為すモンスターをAOGが即座に退治を致します

*他国の軍が貴国の国境を越えた場合、AOGが責任を持って追い払います

*正当な理由ある場合での軍事行動をAOGが補助します

 

2.市場価格の20%の値段で麦を中心とした食料を販売させて頂きます

*AOGが提供する食料を2年後から国内で販売する権利を御許可下さい

*安く安定した食料輸入が確保され国民の食糧事情が解消されます

*貴国民に買って頂いて得た利益の10%を関税として納税致します

*政府が買い上げて国民に販売、配給されるのも自由です

 

3.AOG共栄圏(仮名)による貴国のメリット

*各国が今抱える大きな問題である『安全と平和』をAOGが実現します

*各国が抱えている食糧問題を解決し国民を飢餓から救います

*各国が国費の半分以上を軍事費に費やしている問題を解決致します

*灌漑施設や埋め立てなどの国家の大工事をAOGが格安で引き受けます

 

4.貴国にAOGがお願いする物

*「思いやり予算」として国家予算より3%を御提供下さい

*もし他の国もAOG共栄圏に加入した場合、その国への軍事行動はお控え下さい

 

注*思いやり予算は金貨など貨幣で無くても大丈夫です。

 貴国の名産品である鉄鉱石、貴金属や毛皮、香辛料などで納めて頂くことも可能です

 *戦闘方法や工事、当方の農作物などは魔法などの尋常では無い力に頼りますことを御了承下さい

 

 

 

 セバスからの羊皮紙を一読し、女王に渡したあと宰相が珍しく汗をかきながら「なんだろう‥‥‥すっっごい胡散臭いんだけど」と呟いた。

 

 宰相から羊皮紙を受け取った女王が言葉を発する。

 

「これは‥‥我が国にとってメリットしか無い様に思うのだが‥‥?あなた達のメリットは何か?」

 

「ドラウディロン陛下が仰られた様に、私どもは『ユグドラシル』の落とし子の様なものです。数名は『漆黒』としても活動しておりますが、我々には公式な後ろ盾がありません。あるのは軍事力だけです」

 

「軍事力とは仰られるが、そもそもアインズ・ウール・ゴウンというギルドには如何ほどの戦力があるというのだ?」

 

「そうですね。正確な数字はお話ししかねますが‥‥最低でもアダマンタイトチームで10チーム分以上だとお考え下さればよろしいかと」

 

「なんと?!アダマンタイトチームなら数チームで軍隊の進軍をも防げると言われているのに10チーム以上の戦力じゃと?!ま、誠か?」

 

「はい」

 

 セバスは嘘をついていない。ただし平均レベル30程のアダマンタイトチームと違って、平均レベル60オーバーのチームが数十チームなのであるが

 

「むむう それで‥‥‥我々に貴方達の後ろ盾に成れと?」

 

「いえ それでは失礼ながら『竜王国』以外の国に取って『我々』という、この世界で飛び抜けた『力』を手にした貴国を危険視し争いの火種となるかも知れません。我々が望むのは戦争でも殺戮でも有りません。この国を襲うモンスター、軍隊の悉くを退けましょう。我々と戦うことが如何に無駄で無意味な事かを悟るまで」

 

「しかし、その見返りが国家収入の3%と云うのは余りにも、我々にとっては都合良く、あなた方にとって割があわないのでは無いか?『話が良すぎる取引には裏がある』というのは世の常。あなた方を疑うような事を言って申し訳ないが」

 

「しかし国費の3%というのはかなりの額だと思うのですが?」

 

「この提案によると君たちが平和を愛し、他国への軍事行動などを考えなければ防衛の全てを請け負ってくれるかの様に書いてある。それが本当なら雀の涙ほどの額だよ3%と云うのは。宰相!昨年の国家予算から軍事費へ使った額の割合は?」

 

「はっ 51%です。スレイン法国への上納金は加算しない額で、ですが。」

 

「そうだ。我が国はビーストマンに襲われているので最近軍事費が高騰しているが、他の国の多くも5割前後が軍事関連費への歳出なのだ。たかだか3%の予算で安全と平和を買えるなどと夢物語か詐欺師の類にしか思えぬのだ」

 

「では、残った予算で何を為しえますか?」

 

「う‥‥む そうだな。どうだ?宰相」

 

「97%を軍事関連費以外に使える。なんとまあ施政者としては夢のある話ですね。現在の我が国であればビーストマンの被害に因る遺族などへの福祉や住居の世話、慢性的な水不足を解消するための溜め池事業、鉱山開発などに使いたいですね」

 

「それは素晴らしい。」

 

「そりゃそうですよ。しかも本当にモンスターからも敵国からも守ってくれた上に豊富で安価な食料があるなら理想郷だって作れるでしょうな」

 

「‥‥‥そう それだ。この安すぎる食料の販売というのは何なのだ?盆地で平地が少ない我が国には有り難い話だが貴方達のメリットは何なのだ?」

 

「いえ 我々はこれから他国が開拓していない広大な土地への灌漑工事を行い、大規模な第一次産業・農作物と酪農業に力を入れる予定です。ただ規模の大きさの割に我々は少数ですので、かなりの余剰食料が出る予定です。それを買って頂けるのであれば捨てるという無駄な事をする必要もなく僅かばかりでも貨幣を手に入れられる。これは我々にとっての「メリット」と言えるのではないでしょうか?」

 

「しかし‥‥市場価格の20%では、労働者の賃金、土地の代金に見合わない。特に第一次産業はその2つこそが経費の殆どと言えます。」と宰相が問いかける

 

「そこは我々としては余り物を買って頂くと云うことで御納得下さい。20%と聞けば安すぎる様に聞こえるかも知れませんが、そもそも農民が卸問屋に卸す価格も市場価格の3割程ですから、そんなに変わらないですしね」

 

「このAOG共栄圏に加盟した国とは軍事衝突を起こすなと書いてある件じゃが‥‥まあ 我々は他国に攻め入った事は殆ど無いから良いのだが、例えば竜王国とバハルス帝国が加盟した状態でバハルス帝国が我々に攻め入った場合はどうなる?」

 

「そこに誰しもが納得出来る正当性があった場合はバハルス帝国首脳陣と竜王国首脳陣による示談交渉をお願い致します。もし正当性無き軍事行動でしたら‥‥AOGにより盟約違反を問う事になるでしょうね」

 

「無視したら?」

 

「ペナルティを受けて頂きましょう 兵士の成り手が居なくなるまで彼の国の軍隊を殲滅させて頂きます」

 

 ‥‥‥本気だ。 ドラウディロンはセバスの軽い調子から、本当にこの者共は軽い調子で一国の軍隊を殲滅出来る戦力があるのだと悟った。

 

 

 その後も、宰相と女王の質問は続く

 軍備を弱体化させるだけさせて攻めてくるのではないか?

 我が国の農民が受ける被害について

 我々の代わりに戦ってくれたAOGの兵などへの損害に対する補償について

 食料を輸入している最中に突然、売買をストップされたら兵糧攻めになるのだが

 鉄鉱石で納めるとした場合の貨幣への換算価値について

 

 等など多岐にわたって行われた。

 中にはセバスが独断で答えることの出来ない質問も出てきたため今日の質疑はこれで終了し宿泊部屋に帰ってスクロールにて問い合わせるため、答えを聞いた後、明日に質疑再開と云うことで今日は解散した。

 

 セバスと閣僚が退出後、浮かれる女王様に厳しい顔をした宰相が話しかける

 

「これは一ギルドとの盟約どころの騒ぎでは在りません!限りなく甘く魅惑的な脅迫以外の何物でもない!実に悪魔的だ!将来的に国と国とを覆い尽くす連邦政府に発展させるつもりなのではないか?という疑惑も持ちます。もちろん連邦政府はAOGです。」

 

 珍しく汗まみれになって宰相が熱弁するのをドラウディロンは微笑ましく思いながら「続けよ」と促す。

 

「なぜなら防衛の全てを依存するという事は、任せる側の軍備の軽減にも繋がるが、防衛を任される軍隊を持つ国の好きにされる状態を作るという事でも有ります。これでは彼らは獲りたい時に我らの国を獲れる権利を与える様なものです。

軍事的に独立していない国など国体を成しているとは言えません!なぜならどんな話し合いでも解消されない政治的問題を抱えた時、最終的に折れるのは常に軍隊を持たない国になるであろう事は明白です!少なくとも現在の社会は「理不尽な無理を通した国を各国が批難し、力のある国が引き下がる」様な成熟した社会でも、優しい世界でも無いのです!」

 

「その通りだな宰相」

 そう呟くと遠くを見るような目で周りを見渡し女王は独り言の様に話す。

 

「しかし、国内外のモンスターを退治し、他国とも率先して戦いまでしながら態々我が国を騙して攻め獲る‥‥そんな周りくどい事をしてまで得るほどの物が我が国にあるか?」

 

「それなんですよ‥‥‥ないんですよね。かなり穿った見方としてはモデルケースとして我が国を優遇しまくって、本来の狙っている国を引き吊りこむエサにするのかな?とか」

 

「いつでも盟約の破棄は自由と言ってたから、優遇され尽くしてから程良い所で逃げるか?」

と悪い顔で宰相をからかうように言う。

 

「‥‥それが出来ない状態に追い込まれている。それをした瞬間「もう盟約国ではありませんね」とAOGに襲われる。大穴として破棄する気が起きないほど幸せになっている。以上の3つから好きな物を選んで下さい」

 

「おまえ ワシが相手の嘘を見抜けるのを知っているだろう?」

 

「はい 顔の表情筋の微細な動きや竜の持つ読心術のスキルなどで解るんでしたっけ」

 

「うむ 100%という訳ではないが十中八九は嘘を見抜ける。恐ろしいことに今日の質疑中、彼は一度も嘘をついてない」

 

「‥‥‥それは本当に恐ろしいですね」

 

「彼が今日、最後のワシの質問になんと答えたか覚えておるか?」

 

「はい 陛下は「なぜ我が国のような小国を助けてくれるのか?」と質問されました」

 

「うむ それに対して彼は答えた」

 

 

  困っている人が居れば、助けるのが当たり前です

 

 

「なんというか、あの時な ストンと胸に落ちたんじゃ、その言葉が。 今までの、どの言葉よりも彼の魂の言葉である気がしたのだ」

 

 

 

 

 

 







244様、いつも誤字脱字の修正を有り難う御座います。 しかも今回は題名まで!(笑)


十五夜@様 脱字修正を有り難う御座います
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