鈴木悟分30%増量中   作:官兵衛

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アルベド日記④「はじめては あるべど」

 

 

 

 

 

 

◯月×日

 

 スレイン法国は形だけはそのままで、国是などの芯を入れ替えることになりました。予定通りに、元・漆黒聖典のクアイエッセを最高神官長として据えます。彼らは「スルシャーナ」と「モモンガ様」をこれからは信仰の対象として暮らし栄えるでしょう。それまでの支配層は何故かキレイに居なくなりましたからね。スムーズに行きました。まあ、何故か同時期にデミウルゴスのオモチャが増えすぎて、プルチネッラ達が嬉しい悲鳴を上げているようですが。

 

 

 

 

 

○月×日

 

 ドラゴンも神人も片づきましたので、私の野望の第一弾に着手致します。

 まずは、私の部屋の隣に部屋を一部屋頂きました。

 ココは、いずれモモンガ様との蜜月を過ごしたりする部屋として活用する予定でございます。くふー。

 

 

 

 

 

◯月×日

 

 執務室へと御報告に伺ったら、何故かモモンガ様が留守にされていました。ミラーで調べようとしたら姉さんに「共和国に行かれたのよ」と教えてもらう。

 どうも、モモンガ様は共和国でラキュース大統領が悩んでると、役に立ちそうな図書館の本を翻訳して施しに行っているようでございます。

 私が可愛く抗議したのですが「共和制・独裁王政・宗教国家の全てをテストしている最中で、この文化レベルでは共和制が最も難しい。参考書くらい与えても良いだろう? AOG共栄圏内は国民の移動が自由だ。人気がある所に民衆は移動するから各国のトップは大変なのだぞ?」とお答えになられました。

 本当に彼らを直接支配するつもりはないようでございます。人間ごときがモモンガ様のお手を煩わせるなど烏滸がましいと、支配してもらうなど身分違いも甚だしいと常々宣言していた私ですが、ここまで人間が、自由を与えられ我が世の春を謳歌しているのを観ていると、少しの苛立ちと、モモンガ様の真意を少しだけ感じるのも事実でごさいます。

 

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 突然モモンガ様が「セバスと男同士の話がある」と私に退室を命じられて、訝しんでいたのですが、なんとセバスがツアレと結婚することを発表致しました。それはおめでたいことで御座います。私も女の端くれですから、結婚という慶事に非常な憧れがあることは否めません。デミウルゴスも妙に喜んでおりました。あの感じですと、何か含む所があるようです。彼のことですから、異形種と人間の交配に興味があるのでしょう。

 異形種と人間。不出来な結果に終われば、モモンガ様が人間相手に浮気することはなくなるやも。やも。

 

 

 

 

 

○月×日

 

 モモンガ様がセバス夫妻の結婚に触発されたらしく……「そろそろ結婚のことを考えてやらねばな」と呟かれた。

 キタ ―――― と思ってお話に飛びついて「私もそう思いますっ! 是非、1日も早くそうするべきです!」と提言したら「だよなー ハムスケの旦那を捜してあげるって言ってたのに放置していてはいかんよな」と仰れた。

 ハ、ハムスケ!? ね、ね、ね、ネズミのことなんてどうでも良いじゃありませんか!? モモンガ様! 目の前に、もっと、こー可愛いサキュバスがおりますよ!? ほらほら、ももんがさまはああああああ!

 

 

 

 

 

○月×日

 

 ネズミの中で比較的ハムスケのようにふわっとした毛皮のネズミを魔法で大きくしてハムスケの夫候補にした。ハムスケを呼んで紹介したら「……殿、こーゆー知的さの欠片もない雄は拙者の好みではござらぬよ……」と断った。

 なにこのネズミ。モモンガ様の好意を無下にするとは上等です。アウラに言って剥がすわよ?

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 番外席次が現れたとデミウルゴスが切れ気味に報告がありました。これはちゃーーーんす!

「急いでシャルティア、コキュートスを討伐軍として差し向けましょう、宜しければ私が指揮を執ります!」そして確実に殺ります。

 と、提言をさせていただいたのですが、モモンガ様が自ら出向き話を聞いてみたいと仰る。あああ……お慈悲が深すぎますモモンガ様。

 どうかモモンガ様が番外席次を連れて帰りませんように。

 

 

 

 

 

○月×日

 

 とりあえず番外席次はウチの子にならないようで、ようございました。

 なんでも下界でまだまだ修行したいとのことです。まあ、定期的に腕試しにナザリックを訪れるそうですが……。むう。

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 早速番外席次がナザリックを訪れて、シャルティアと戦ったみたいです。早すぎないかしら早すぎないかしら。

 事故死に見せかけて()っておしまいなさいとシャルティアを(そそのか)してみましたが「モモンガ様に大怪我をしないように手加減しろと言われているでありんす。モモンガ様の愛人が増えることよりも、モモンガ様の御命令を達成できない方が何万倍もイヤでありんす」と断られました。

 くうっ シャルティアが正論を……。なんでしょうこの屈辱。

 

 

 

 

 

○月×日

 

 モモンガ様が今日、久しぶりに黒騎士モモンの姿になると「いそいそ」とお出かけになられました。セバスが護衛に随伴致しましたのでお止めはしませんでした。

 人間のガゼフが天寿を全うしたらしく、その葬儀に出席になられるとのことでございます。

 モモンガ様は昔よりあの者に思い入れがあるようで御座います。結局モモンガ様御自身はエ・ランテルで彼の者がリ・エスティーゼ王の使者として参ったとき以来、直接お会いにはならなかったように思いますがモモンガ様の御心を捉えて放さないガゼフに少し嫉妬いたします。

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 バハルス帝国のジルクニフ皇帝が病に臥せったようです。モモンガ様自ら御見舞に上がり、ポーションをお与えになると少し回復したとのこと。彼の者は、もっと若い頃は才気溢れる皇帝でしたが、昔なじみの愛人が亡くなってからは何事も消極的になってしまったと聞いております。余程、その愛人を愛していたのでしょう。「愛人ごときが?」とお思いになるかも知れませんが自分にとっての最大の理解者であり、閨以外でも胸襟を開いて語り合える仲だったと聞いております。そういう者を失くすと力が入らなくなるのは当たり前です。きっと色んな所で気付かされるのです。愛していたと。その人に格好つけたくて頑張ってきたのだと。我々以上に命が刹那に流れていく人間だからこそ、その一瞬の光。一瞬の情愛が儚く美しく見えるのかも知れません。まあ、セバスの病気が感染ったようなことを考えてしまいました。……でも、モモンガ様も元々は人間。だとすれば、モモンガ様はそのような想いや考えをナザリックの誰よりも理解され行動されているとしたら……? ああ、私は今、本当のモモンガ様の御心に少しだけ触れられた気が致します。

 

 

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 モモンガ様が月に一回ほど、ツァインドルクスのところへお独りで出向かわれておられます。決して私の随伴を許してくれない。時々セバスを連れていくことがあるのは彼が竜族だからか、彼が善の者だからか。表向きはツァインドルクスにしか感知しえない情報や、この星のシステムについて話し合っているとのことですが、モモンガ様がお帰りになられたときの妙にスッキリした顔が少し……なんだか気になります。スッキリ……高位竜族は両性具有だとか……ツァィンドルクスは最高位竜……はっ!? まさかっ!?

 

 

 

 

 

○月×日

 

 共和国の初代大統領だった、ラキュース・アインドラが死去したと報告がありました。もう彼女が大統領を辞して数十年が経っておりますし、過去の人の話題だと思っていたのですが、共和国が『建国の母』という扱いで国葬を執り行うらしいです。特に興味のない話題だったのですが、モモンガ様も出席されると仰るので大反対したものの、行かれてしまいました。まあ、国民に「モモン様だー!」とバレバレになって、涙目で逃げ帰ってこられましたが……可愛いお人……こほん。後日、追い回した国民共への罰を考えて提出したのですが、却下されました。残念。

 

  

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 遂にイビルアイがナザリックに来た……彼女はモモンガ様に惚れ惚れです。私は彼女を要注意人物だと考えております。イビルアイはモモンガ様と一緒で元々が人間で、そして今は不老不死のアンデッド。環境が似ており、お互いでしか分からない感情や機微で通じ合ってしまうのではなかろうかという不安が私の心を澱ませます。あの者はパンドラズアクターが扮するサービス満点の黒騎士モモンと仲良くなっており、きっとモモンガ様と自分の仲を都合よく改竄しているにちがいありません。モモンガ様はそこまで想っている訳ではないのに自分の思い込みで懸想を深めるとはなんという厚かましい女なのでしょうか。とりあえず同じ吸血鬼ということもあり、シャルティアに預けておけばあの変態から逃げ出すか、(性的な意味で)喰われてモモンガ様から離すことができるかも知れません。

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 アウラが「シャルティアが新入りの面倒を見ているけど、あの馬鹿じゃ心配だよ」と言い出した。モモンガ様の決めたことに反発するなんて珍しい。しかし、よくよく考えてみると、最近のアウラは少し機嫌が悪い。この前もマーレが「最近のお姉ちゃんの弄りが酷いんです……」とデミウルゴスに愚痴っていた。なぜデミウルゴスなのでしょう? そこは守護者統括の私の出番ではなくって? まあ、アウラの機嫌の悪さの原因は、初めは私も分かりませんでしたし、本人も認めたくなかったようですが、どうやらシャルティアがイビルアイに付きっきりになってしまったのが面白くないようです。

 やれやれ、体は日に日に大きくなっていくのに、まだまだ子供なのね? 一応、モモンガ様の夫人候補なのだからもっとシッカリしてもらわないと。

 

 

 

 

 

◯月×日

 

 アウラとナザリックを歩いていると、シャルティアにベタベタ抱きつかれながら歩くイビルアイとすれ違った。……彼女たちの後ろ姿をアウラがスゴいジト目で見ていた。もう、やきもちなんて素直じゃないわねえ。

 去り際にシャルティアがイビルアイを後ろから抱きしめつつ、イビルアイの胸を揉みしだいていた。すごいセクハラしてた。するとゲンナリしたイビルアイが「ええい! この体はモモン…ガ様のものだ! 弄り回すな!」とキレていた。

 ……なんですって? モモンガ様のものだと? その貧相なボディがモモンガ様の物ですって? むむむむむむむむむむむう! 「いたいたいたいたいたいたいたいたいたい アルベド?! 痛いって!」とアウラが叫んでいた。気がついたらアウラにアイアンクローをかけていた。ごめんなさいね? アウラ。

 危なかった。もう少しで同僚の頭蓋骨を爆散させるところでした。失敗失敗。てへ。

 

 

 

 

 

○月×日

 

 イビルアイとモモンガ様がおでかけになられた。 監視……見守るためにミラーで覗くために姉さんの部屋に行く。

 あーーー 近い近い近い! なに!? 今のナニ!? なんかイビ助がモモンガ様の胸骨を指でクリクリしていたのですけど!? なに? デートなの!? やっぱりこれってデートなの!? 浮気ですわね!? 完全に! 吸血鬼はみんな泥棒猫なの!?

なにしてんの! なに抱きついてるのよ、この小娘! 握りしめた水晶が砕ける。代わりに何かを掴む。

 ギリギリミシミシという御機嫌な音と共に姉さんの悲鳴が聞こえた。姉さんに本気のアイアンクローをかけていた。なんか姉さん、しくしくしくしくと泣いてた。マジ泣きだった、

 

 その後、暫くのあいだ、姉さんに会うたびに「ごきげんよう ゴリラ (いも)」と言われるようになった。 これはヒドイ。

 

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 デミウルゴスの報告で、この星の8割をアインズウールゴウン共栄圏に加入させることが完了したそうです。すでにこの星の事実上の支配者はモモンガ様に他なりません。もう、宝箱はモモンガ様の手中に。ちなみに敢えて2割は残したままにするそうです。なるほど……最低限の懸念を残しておく……さすがモモンガ様。

 

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 モモンガ様の御指示でツァインドルクスに会いに行ってまいりました。図書館から大量の本を持って行きましたが……まあ、そんなに重要な本は無かったので問題はないのですが……。大丈夫よね? あなたまさかモモンガ様の浮気相手じゃないわよね? と疑いながら観察していると、私の心の声が漏れたのか、「いや、骸骨はちょっと……レベルが高すぎます」という呟きが聞こえた。ふふん、確かにモモンガ様は万物の最上位で御座いますとも。身の程を知っているようで何よりで御座います。

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 イビルアイが家出したという報告がシャルティアから上がりました。モモンガ様は「はあ?」と呆然とされていましたがバツの悪そうなシャルティアの表情から何かあったのか問いただすと、「見限られたあ! 呆れられてしまったでありんす!」と半泣きになっていた。くふふ……作戦通り……。と心の中で悪い顔を致しました。

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 竜王国のドラウディロン女王陛下が2ndナザリックに訪れる。この方は、たまに訪れられるとセバスを視姦して帰られる。今日は珍しくシャルティアとアウラと休暇だったこともありドラウディロン女王もお茶会に誘った。ハーレム部屋に連れていき恋話に花を咲かせる。ドラウディロン女王はなんとしてもセバスと結ばれたいと涙ながらに訴えた。なんというか、同じ恋する女として身につまされる想いです。アウラも思わず「アタシ達もモモンガ様が100年待てと仰られて、もう100年経つのだけれど、未だに話が進まなくてさー」と愚痴った。……まあ、アウラの言いたいことは解ります。私だって早ければ早いほうが嬉しいというか……でも、何か切っ掛けが無ければ……切っ掛け? ふうむ………。

 

「アルベドが何か悪い顔をしているでありんす」

「つまり、平常運転ということだね」

「……オマエ達、仲良いのう」

 などと三人が好き勝手話していましたが、頭の中で思いついた案を後ほどデミウルゴスに相談し煮詰める。うふふ。待っていてくださいね。貴方。

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 準備は万端。明日の100周年記念祝賀祭でドラウディロン陛下も招聘完了致しました。今頃は彼女も身を高ぶらせていることでしょう。うふふ。

 さて、イビルアイは間に合ったようですが、番外席次の方はちゃんと連絡が行っているのでしょうか? シャルティアに任せたので不安ですけれど。

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 100周年記念祝賀祭。無事終了致しました。

 ツァインドルクスがドラゴンの姿でやってきて、秘宝の全てをモモンガ様に託した姿は部下としてグッと来るものが御座いました。その後、とてもとてもお輝きになられましたけど。ツァインドルクスは決して一介の竜ではありません。その知識と経験と叡智。始原の魔法ワイルドマジックの使い手。その、この星の守り神が心よりモモンガ様に心服したことは素晴らしい慶事。さすがモモンガ様で御座います。いえ……ステキですわ……ア・ナ・タ。

嗚呼……明日は、明日は……。く、く、くっふぅーー。

 

 

 

 

 

◯月×日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

ごちそうさまでした。くふー。

 

 

 

 

 

 

 

◯月☓日

 

 あああ……もう……なんと書けば良いのかしら。今日ほど、日記をつけてきて嬉しい日はありません。誇らしい日はありません。

 遂に……嗚呼、文字にしてしまえば嘘になってしまいそうです。

 いつでも、文字は言葉に追いつかず。言葉は心に追いつきません。この私の感情を。この世界で初めて得た私の心を、どう書けば良いのか、どう残せば良いのか見当がつきません。

 嗚呼……結論から言いますと、遂にモモンガ様と結ばれました。結ばれました。結ばれました! 結ばれました!!

身も心も結ばれました。結ばれました。結ばれました!結ばれました!! 結ばれました!! !結ばれました!!!結ばれました!!! 結ばれました!!!結ばれました!!!結ばれました!!! 結ばれました!!!結ばれました!!!結ばれました!!! 結ばれました!!!結ばれました!!!結ばれました!!! 結ばれました!!!結ばれました!!!結ばれました!!! 結ばれました!!!結ばれました!!!結ばれました!!! 結ばれました!!!結ばれました!!!結ばれました!!! 結ばれました!!!結ばれたのです!結ばれたのでございます!

 はふう。くふう。はあ、溶けそう……むしろ ()れそう。モモンガ様 ()れ。

 

 予定通りにモモンガ様に結婚の儀を自然な流れにてお願いすると、しばらくお考えになられた後、ハーレム部屋にいらっしゃって「よし、結婚しよう」と直球で仰ってくださいました。そのときのみんなの喜び様は大変なもので、本来ならライバルでもある彼女達の涙が同好の士として愛おしく思えました。

 その後、みんなと家族計画を相談したいと仰って一人一人呼び出されました。

 

 まず1人目に呼ばれた番外席次が興奮気味に帰ってきました。

「大変。モモンガ様は本気。人間に変身して皆と交わると言ってた」と珍しく早口でまくし立てた。それを聞いてアウラとイビルアイは顔を赤くして、シャルティアは微妙な顔をしていた。私はずっと「はあはあはあはあ」と顔を熱くさせて興奮の坩堝で御座います。

 

 2人目に呼ばれたアウラが帰ってくる。アウラは泣いていた。嬉しそうに泣きじゃくっていた。シャルティアが初めてアウラのお姉さんのように慈しみの目でアウラを抱きしめて頭をなで続けていた。そんな中でもシャルティアは、やはり複雑な顔をしていました。

 

 3人目に呼ばれたイビルアイが帰ってきた。彼女は呆然としながら、フラフラとなんとか歩いてソファーに座ると「モモンガ様が子供を作り、出産するために私を一時的に人間にすると仰っていた……」と虚ろな表情で呟いた。

 番外席次が「モモンガ様、何でもアリだな」と呆然としながら首を振った。私は「アナタは人間に憧れていたのではなくて? そのまま人間のままで居なくて良いの?」と尋ねた。イビルアイは少し考えた後「うん もちろん人間は素晴らしいと今も思っている。でも、それ以上に永遠の命で永遠の時間をモモンガ様と……あと少しだけ君たちとも過ごしたいと想ってしまったんだ」と返事した。私が「あら、ワガママね」と言うと「家族は似るって言うしな」と言い返された。むう。さりげなくモモンガ様と家族だと強調された。やはりこの子は危険だわ。

 

 4人目のシャルティアが凄くスッキリした顔で帰ってきた。やはりこの子も一時的に人間にしてもらうのだろうか? そう思ってましたのにシャルティアの第一声は「わたしは今回はパスでありんす」という意外なものでした。理由を聞くと「わたしの恋い焦がれるモモンガ様は普段のモモンガ様。子供が欲しいという気持ちがある訳でも無いのに、人間のモモンガ様に抱かれるのは、まるで自分の恋を裏切っている気がするでありんす。同時にわたしをそう創ってくださったペロロンチーノ様をも裏切っているようで気持ち悪いでありんすえ」と淡々と話す。私は「シャルティア……あなた……良いの?」と驚きながら尋ねると「その変わり、普段のオーバーロードのモモンガ様に戻ってから抱いてもらうから良いんでありんす」……なるほど、それも悪くないわね。くふふ。

 

 さて、真打ち登場です。正ヒロインは最後に出るものです。ウキウキした足取りで旦那様のもとに向かいます。

 

 そして……モモンガ様から予期せぬ言葉が……。

 

 なんと私の設定を戻すと。モモンガ様はタブラ様に創られた私に一点のスポイトを垂らした。それは私がモモンガ様を愛するように仕向けた呪いであると。それを修復し、元のタブラ様が作りし私に戻すと。私を……私を愛しているがゆえに歪みも呪いもない私に愛されたいと。そう考えるようになり苦悩されておられたとおっしゃるのです。

 ああああああ何をおっしゃいますかモモンガ様? それもこれも全てで私でございますのに。汚れも呪いも全てが私で、全てでモモンガ様をお慕い申し上げておりますのに。

 今まで、この百年間。100年かけて捧げ続けてきた私の愛が、心が、2人の記憶が何故そのような物に否定されなければならないのでしょう。それを否定する者がいれば私が叩き潰してさしあげましょう。このギンヌンガガプで。それがタブラ様でも叩き潰しましょう。タブラ様より与えられしこのギンヌンガガプで。どうかどうか今の私、今のモモンガ様と私の育んてきたものを否定だけはしないでくださいませ。

 気づくと私は子供のように泣いていました。モモンガ様は私を抱きしめて、親が子供をあやすように慰めてくれました。ああ、この御方はいつでもどこでも私達の親であってくれました。創ってくれました。守ってくれました。育ててくれました。……愛してくれました。愛させてくれました。全てが貴方様に与えられ、全てを捧げたかった。解っておられません。叡智の結晶であるはずのモモンガ様が知らないことを、私が教えて差し上げなければ。

私は切々と訴えます。ただ訴えます。どれだけ私がモモンガ様を愛しているかを。

 それが通じたのでしょう。モモンガ様は私を抱きしめたままでアルベドが好きだと仰ってくれました。もう愛し合う二人に言葉は要りません。

 

 もう……後は……その……わかるでしょ? うぇへへひひひひいいいひいひひひひひひほほほほほほ。

 あ、叩いた机が壊れましたわ……明日、ユリに言って交換してもらいましょう。

 図書館には本当に様々な本があったのですが、その中にあった格闘術の本から学んだ「キャプチュード」という技でモモンガ様をベッドへと叩きつけると、シャルティアと「(モモンガ様との)もしものときのために」と練習した寝技でモモンガ様を責め立てました……すると……く、く、く、くっふぅーーーー。モモンガ様は私に全てを委ね……はふんはふん。ああ、思い出しても体が熱くなってきます。

 

 そして二人は結ばれた訳です!

 結ばれたわけです! まずは骨で15時間。人間になってから25時間ほど愛していただきました。くふふ。

 途中でモモンガ様が「死んじゃう……」とか、シクシク泣いておられた気が致しますが、あれは完全に嬉し泣きで御座いましたね。はい。

 

 ……はあ……もう幸せ……。くふくふくふー。

 

 旦那様、愛しております。愛しておりますぅ!

 

 

 

 

 

 

 

 









takaseman様 244様 (ΦωΦ)様 誤字脱字修正を有難うございます。

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