「第二章一編モモンガとプレアデス」の翌朝
朝、ナーベラルは上機嫌で食堂の席に着いた。
昨日はモモンガ様係として、敬愛させて頂いている主人の何らかの実験、検証に立ち会いお手伝いをする事が出来るなど、他のメイドを差し置いて特別な経験をさせていただいた事に対する喜びと「至高の御方のお役に立てた」という自負で天にも昇るような心地だったからだ。
また、主人に頼まれてた姉、ユリ・アルファへのフォローも恙無く出来た。お姉さまもモモンガ様に申し訳なく思っていた様ですが、モモンガ様は「出来ないことを発見する。それが検証の成果なのだ」と仰っていたから問題ないはずです。意味は良く分かりませんが。
それにしても妙に食堂が、ざわついているような?
すると珍しく、一般メイドのフォアイルが快活な彼女には珍しく、おずおずとナーベラルと同じテーブルに座り、チラッチラッと、こちらの様子を窺っている。
(なんなの?)
普段 ナーベラルは「無愛想」「何を考えているか解らない」という事もあって、一般メイドに懐かれる質では無かったが、何故かフォアイルだけでなく、一般メイドのインクリメント、リュミエールまで示し合わした様にナーベラルのテーブルに着席する。
(んん……?)
!? ああ……ふふ この娘達ったら昨日モモンガ様係だった私に「昨日のモモンガ様はどんな事をお話になられて、どんな事を成し遂げられたのか?」という『日刊モモンガ通信』の事を聞きたくて仕方ないのね?
本来なら一般メイドの物である栄光ある部屋付きメイドの仕事を、緊急事態だからって
「あの、ナーベラルさん」
「ええ なにかしら?(ふふ……私のモモンガフォルダが火を噴くわよ)」
「……ユリさんが、モモンガ様のご寵愛を受けたというのは本当でしょうか?」
「ブーーーーーーーーーーーーーッ」
(は?は?は? え?え?え?)
ナーベラル・ガンマは普段の彼女からは想像が出来ないような面白い顔をした。
「昨日、シクススから聞いたのですが‥‥」
「え……そんなわけ……」
いえ 待って。そう言えば、昨日モモンガ様に呼ばれて姉さんがモモンガ様のお部屋に来た時、間違いなく湯浴み上がりだったわ……本来、あの時間は姉さんは食堂か廊下の掃除の点検をしているハズ。仕事が終わってもいないのに、あの真面目な姉さんが湯浴み?それに、いつも使っている物とは違うソープの香りもした……アレは、いつもモモンガ様の部屋に呼ばれて行く場合は、『そういう』とき……だから? そういえば、姉さんが入室して「剣を振ってみてくれ」とモモンガ様に命じられた時の落ち込みよう!アレも「いつもの」とは違う御用命で残念だったからでは……?
「……あるかも知れない」
「やっぱりー!そうなんですかあー!きゃあ~!」とフォアイルが嬌声を挙げる。
その声を聞きつけたのか、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータがフラフラとナーベラルのテーブルに来て机の上に肘をついて両手で両頬を支える様にして「なぁにいぃ?どうしたのおぉ?」と聞いてきた。うん エントマは今日も可愛い。
「その……モモンガ様がユリ姉さんに……ご、御寵愛を賜われたと……」
するとエントマは「ああー それ?」とでも言わんばかりに
「うん 知ってるうぅ~。ソリュシャンも言ってたわよおぉ?」
なんと!そんな……「羨ましい!」
「ナーちゃん、心の声が漏れてるわよおぉ?」
「はっ!?」
「もうメイドの娘たちはみんな知ってるみたいよお?」
「なんで私は知らないのよ!?」
「知らな~い」
そう言い残して去りゆくエントマを見送りながら「その件、詳しく!」とリュミエール達に詰め寄るナーベラルの姿があった。
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