鈴木悟分30%増量中   作:官兵衛

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第二章二編 Stand by (Touch) me

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるでワンマン会社の社長の様に、モモンガは執務室で部下から提出された膨大な報告書に目を通していた。鈴木悟の体のままだったら何連続過労死しているか解らないほどに過酷な状況の日が続く。アンデッドだから体の疲労はないが、精神面で蓄積されていく疲弊は何ともしがたいモノがあったが、病みかけたときに、時折起こる精神異常無効化の光が優しく自分を包んでくれると、それなりに楽になることは出来た。

「アンデッドの精神異常無効化って、そもそもバッドステータスにならなかったと思うんだけどなあ……」そう呟きながら机の上に数十㎝に積まれた書類の束を見て、眼孔の赤い光が涙ぐむかのように揺れるのを感じた。

「それにしても……」

 彼ら下僕(しもべ)達は能くやってくれている……よくぞ短時間でこれだけの情報が得られたものだ。『ナザリック1の知謀の持ち主』と設定され、恐らくそれが反映されているであろうデミウルゴスはともかく、アウラも臨機応変な行動と冷静な観察眼を基にした内容の報告書は、非常に客観視されており解りやすくて良い。なんとなく書かれていない事で冒険してないか心配もあるが、予想以上に初めてのお使いが上手く行った様で微笑ましく思う。

 

 まず、デミウルゴスからの報告書だが……知的生命体を捜索に行ったデミウルゴスによると『ナザリックから西南に10キロという近郊に村を発見。御命令通りに接触は避け、透明化出来るエイトエッジアサシンによって村に侵入し、観察の結果「ヒト種」とその家畜のみにより構成された村である事が判明致しました。少ないながらも家畜を飼育しており、主な仕事は村近辺の畑仕事と森への食用のためと思われる植物やウサギ、イノシシなどを採取が確認されております。規模としては150人くらいの村で、森が近くにあるのに大した柵などの防衛体制を敷いていないという事は、特に敵対している国が隣接していない状況である可能性があり、更にモンスターに対する警戒・防御設備も薄いことから、森にモンスターは居ないのか、それとも出ても気にしないほどに弱いのか、自分たちが強いのかはコキュートスなどによって確認してもらう必要がありそうです。ただし使っている道具などから文化レベルも高く無さそうであり、魔法の使用も見られないのでユグドラシルの人間(プレイヤー)の様な強者では無いと思われます。ですので、まずは森に入った人間などを狙いナザリックへ拉致し、情報の聞き出しと、危険度を調べるためのモルモットとされる事を進言させて頂きます。すでに採集パターンなどを調べ、拉致に都合の良い人間の当たりは既につけております』という内容の報告である。

 

(ふむう これにアウラの報告書を重ねて見ると……)

 

『ナザリック北の森に入りました。小動物や鳥などの生き物は豊富であり、モンスターの気配も微弱ながら多数存在しているようです。そのまま進むと使い魔のフェンがモンスターの気配を察知したので予定より深くまで進み、3mほどのユグドラシルでは居ないフサフサの毛に包まれたモンスターが洞窟で寝ているのを発見しました。予想レベルはユグドラシルレベルで30~40と見られます。更に東へと進むとオーガを2匹とゴブリンの集団が移動しているのを見つけましたが、さきほどのフサフサモンスターの縄張りには入らない様にしているようなので、フサフサのレベルは30~40でありますが、オーガ達にとっては充分警戒すべき強度であると思われます。オーガやゴブリンのレベルは低すぎて良く解りませんでした。恐らくレベル10以下だと思います』

 

 ふむ、となるとだ。とりあえず「人間の村」がある。モンスターや人間などの敵対生物の脅威にさらされていない状態にある。モンスターに関してはアウラが発見したレベル35前後のフサフサが縄張りにしているせいで、ゴブリンやオーガが近づかないと云うことか?そもそも人間のレベルが、20~30有れば充分ゴブリン達は圧倒出来る訳だしな。 しかし、レベル10以下のゴブリンにオーガか……ユグドラシルの彼らよりは弱い様だ。フサフサはレベル35前後でユグドラシルには居ないモンスターだと云う……。

 ううむ あと縦ラインは良いが、横ラインでの情報の共有が出来るシステムを作らないとな。もしアウラの発見したモンスターの情報がデミウルゴスに共有されていれば、違う推測から必要な調査が出来ただろうに……アルベドに情報の統括と連絡係を任せるか?しかしアルベドはナザリックの管理者として凄まじく働いているからな……。俺がゲームでやっていた事を現実的なレベルで実務としてこなし、更に人事管理や秘書業務までやってもらっている。膨大な情報を受信し精査しつつ発信など出来る訳がない。

しかし、ウルベルトさんとタブラさんには本当に感謝せねばな……ナザリックの頭脳担当がこんなに必要となる時が来るとは……ん? あー そうかそうか イヤだなあ……アレが居るんだよなあ。しかし、どう考えても頭脳担当がもう一人居ると有り難いんだよなあ。うーん、ううう――――ん。

 

 

 ……よし、気分転換に、この世界で初めての「人間」を「遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)」で見てみよう。現実逃避じゃない。決して現実逃避じゃないぞ?

 ミラー・オブ・リモート・ビューイングを備え付けてある部屋に移動するとセバスが後についてくる。

 豪奢な西洋の白い鏡台の様なこのアイテムが「遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)」だ。指定したポイントを距離に関係なく映し出せると聞けば、非常に便利そうだが、低位の対情報系魔法で簡単に隠蔽されて見えなくなってしまう上に、攻性防壁の反撃を非常に受けやすいため敵の拠点の偵察などには使えず、運営の用意したNPCレイドボスの周辺も見えないため、ユグドラシル時代は活用機会は少なかった。ただ、さすがに今回は小さな村を覗くだけだ。大丈夫だろう。うん。よし、やっぱり対・攻勢防御用の魔法だけでも掛けておこう。と呪文を呟く。これで対象が攻勢防御魔法を仕掛けてもこちらに被害は無いはずだ。……いや、あと覗いているのを発見できなくなる対・探知魔法の魔法も掛けておこう。うん、そもそも覗いている事が気づかれない方が良いしな……。べ、別に気が小さい訳じゃないぞ。セバスが見ているんだし、そろそろ始めるか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 セバスは至高の41人の一人であり、ユグドラシルでのワールドチャンピオン「たっち・みー」により作り出された執事(バトラー)である。

 見た目としては60歳前後の白髪の老人ながら179センチの均整の取れた身体を持ち、執事として相応しい気品と教養を備えていると同時に、執事としては不釣り合いな尖すぎる眼光を持つ。またアインズ・ウール・ゴウンの所属としては「極善(カルマ値:300)」という属性の持ち主でであり、この場所に於いては異質と言って良い存在だ。

 

 目の前で「遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)」に防御魔法を被せる主に対して

 

 (……ミラーを使うだけで、この用心深さ……流石、至高の御方を束ねておられた方で御座います)

 

 と感服することしきりであった。

 そしてモモンガ様は「ハッ ヨッ」とミラーの操作に苦心しつつも次第に使い方に慣れた様子。流石モモンガ様素晴らしい。と拍手をすると「わざわざ着いていてくれてすまないな、セバス」と気を使ってくだされた。

「勿体無き御言葉。執事として当然の事です」とお答えする。

 その後も鏡に向かってモモンガ様が「南西10キロというとこの辺りかな?」と呟きながら鏡を操作される。

 後ろから覗きこんで見ると小さい点の様な影が大きく拡大され出して、1つの小さな村を空から俯瞰で見ている状態になる。

 更に村を拡大して行くと村の道々に人が走り回ったりしている光景が映される。セバスには村の全ての出入口を統一された鎧を着込んだ兵士達が取り囲んでいる剣呑な状況であるように見えた。

 

「ん?祭りか?」

 

 とモモンガ様が不思議そうに呟かれる。

 

「いえ……違います……これは……」とセバスは内心の不快さを隠しながら言い淀んだ。

 そう これは違う。それは戦闘を職業とした兵士が、牧歌的に暮らしていたであろう小さな村の住民たちを蹂躙しているのだ。食料や物品を奪う「略奪」ですら無い。犯し尽し、殺し尽している。こういうのは好きでは無い。ギルド・アインズ・ウール・ゴウンは悪のギルドであり異形種のみで組織されている。正確に言えばプレアデスの末妹は異形種では無いが、基本的にヒトの命が軽い。

 ヒトで云う所の羽虫(はむし)程度にしか、ナザリックの仲間たちはヒトのことを何とも想っていない。

 それは仕方ないことであるし、私もナザリック至上主義であり、至高の御方のためであれば人間に対して力を振るうことを厭わない。

しかし、せめて、せめてこういう風にアインズ・ウール・ゴウンに関係のない所で無碍に殺されているヒト達を心の中で憐れむことは許して頂きたい……。

 

 その光景を見ていたモモンガ様は「わっ」「おかしいな……」と呟かれながら、何度かお輝きになられる。

『異形の王』であるモモンガ様にとっても人間など弱いだけでなく愚かな種族という認識でありましょう。事実こうして仲間同士で殺し合うなどと云う醜い姿を見れば尚の事です。

 一応執事としての職務で「いかがなされますか?」とお尋ねしてみますと

 

「うむ 見捨てるのが正解なのだろうな。ナザリックにとって何の益も無く、リスクがあるだけだ」

 

「はっ」

 セバスは(あるじ)の予想された当然の返答に眼を(つむ)(うなず)く、しかし主の言葉はそれで終わりでは無かった。

 

「ただな……タダだ、セバス」

 

「はい」

 

「これは、一体なんだ?」

 

「……虐殺でしょうか」

 

「私には、彼ら村人が騎士に殺されなければならない理由が解らないのだが?」

 

「……はい 彼らは糧秣を奪うでもなく、ただ村人の命と尊厳のみを奪っております。敵対国による嫌がらせ……でしょうか」

 

「こんな小さな村を殲滅しても国に経済的損失は無さそうだからな。確かに嫌がらせか……この村は国に見捨てられたのか……」

 その後、「我々と一緒だな……」と小さな声で主人が呟かれたのをセバスは聞き逃さなかった。

 

 それが我々がユグドラシルから見捨てられたという事を仰っているのか、それとも私たちが他の至高の40人から見捨てられたという事を指しているのかは解りませんでしたし、寂しそうな後ろ姿にお聞きすることは出来ませんでした。

 

(私たちナザリックの者を唯一見捨てず最後まで残り支配して下さった慈悲深き御方。アルベドは玉座の間でナザリック運営のために、たった独りで苦労され続けるモモンガ様に寄り添い続けたと云う……どんな気持ちだったのでしょうね……)

 

 モモンガはゆっくりと振り返りセバスを見つめる。その暗闇の中に灯る炎の様な眼球はセバスの心の中を見透かす様だった。

 そして何かを決心した様にセバスに問いかける。

 

「セバス。お前は、どうしたい?」

 

!?「……至高の御方の御指示に従うが、我々下僕の最も望むことで御座います」

 

 セバスは一瞬驚いたものの、たっぷりの時間を掛けて恭しくそう答えた。その信念に間違いはない。その時、自分がどんな表情を浮かべていたのかは解らないが主人は体を輝かせながら満足そうに笑って「そうか……わかった。行こう」とだけ仰られた。

 

「色々試したい事や調べたいこともあるからな」と言い訳のように付け足された後に、

 

 ……お前の中に確かに居るのだな……「たっち・みー」さんが

 

 と呟き、骨だけで構成された手の平でセバスの胸を、そっとなぞった。

 

 その時の私の感動という言葉では追いつかないほどの感激をどうお伝えすれば良いのかは分かりません。私はギリギリの所で涙を堪えて頭を垂れて「光栄で御座います」とお伝えしました。

 本当に光栄で御座います。たっち・みー様が私の中に息づいていると仰って下さった事も、あなた様にお仕えさせて頂くことも……。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 こ、こっわー! セバスの眼光鋭すぎぃ! 

 なんなの? 骸骨くらいなら眼力で圧縮出来るの? 凄い圧迫感だったのだが!?

 守護者各位のデータは、かなり読み込んだんだけど、セバスの設定って余り書かれてなかったのだが、もしかして「たっち・みー」さんの人格の影響をかなり受けてないか?あの感じからすると。セバスの背後に、たっち・みーさんのゴーストというかスタンドみたいなのが「バーン!」って見えたよ!

 

 たっち・みーさん……あの時、助けて頂いた恩を、あなたの息子さんに返しますよ。 

 まあ、他にも仲間にして頂いた恩だとか、他のギルメンにも返しきれないくらいの恩があるんだけどな……その子供達に少しずつでも返していけると良いな。

 

 

 

「さて そうと決まれば支度を急ごうか。ナザリック外でもフライは使えたし、魔法は使えると思うから大丈夫だと思うがな……セバス、では敵となる兵士の強さを測ってくれ」

「はっ」と云う返事と共に食い入るように鏡を覗きこむセバス。しかし「むう?」という言葉を発しただけで戸惑っている様な顔をしている。

 

「どうした?セバス 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)越しでは判断出来ぬか?」だとしたら大変都合が悪いのだが。

 

「いえ……その…確かに分かり難く御座います……レベルが低すぎて」

 

「ん? 村人ではないぞ。敵の騎士だぞ。プレートメイルを身にまとった」

 

「はい 村人はレベルが存在しているのかどうか……精々レベル1か2だと思われます。敵の騎士も3~6ほどです。……一人だけレベル10程の者がおりましたが」

 

「……ええー」

 弱すぎないか? ユグドラシルのイベントモブキャラだってもっと高かったぞ? あ……開始直後のチュートリアルの敵だからか? いやいやいやいや、ゲーム脳は辞めろ俺。ここが現実世界として考え行動するんだ。事実彼らは一般人の村人を一方的に蹂躙しているではないか。我々は異形の者であり異世界からの来訪者。比べるのがオカシイのかも知れない。

 ならば、この戦闘行為によって、助ける村人との好意と友好関係を経て、現地住民との良い関係での繋がりを持つべきだろう。

 デミウルゴスによれば現時点で、この世界で原住民による魔法の使用は確認されておらず、また異形の者も人間のコミュニティには存在して居ないとの事だったな……人間種に見えて、魔法で戦うタイプでは無い者が行くのが良いな。どうせ敵はそうとう弱いらしいしな。

 

「では、今すぐにプレアデスとシャルティアとアルベドを集合させてくれ」

 

「はっ」セバスはメッセージを飛ばし全員を集合させている。その間に自分も用意しよう。

 昨日、《パーフェクト・ウォリアー/完璧なる戦士》を使い、一時的に戦士化すれば、どんな武器でも鎧でも装備・使用可能なことは解った。

 しかし、その間に魔法を使うことは出来なくなるし、戦士スキルも発動しない。

 その代わりに、オーバーロードのままでも《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》で造った剣と鎧なら装備も使用も可能だ。ただ魔法職でありながら戦士職の装備をしているというペナルティのせいか、その間に使える魔法は5種類に限られてしまう。戦士としての強さも、レベル100ながら魔法職のステータスのため、まあ戦士で言えばレベル30~40と言った所か。今回の敵には充分過ぎるだろうし、フルフェイスヘルムにより顔が隠れ、人間に偽装出来るのが有り難い。

 使用魔法に緊急離脱用の《グレーター・テレポーテーション/上位転移》と攻撃用に《ヘルフレイム/獄炎》、《グラスプ・ハート/心臓掌握》、移動用に《ゲート/異界門》と……おっと、《タイム・ストップ/時間停止》を試すのを忘れてはイケナイな。時間対策が出来ている敵かどうかで難易度が変わるからな。

 

 では……《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》!

 ふふふ……やはりこの黒いフルプレートに黒い大剣の二本差しは非常に格好いいな……「モモンガ・ザ・ダークウォリアー」とでも言おうか。

などと感慨に耽っていたら、「モモンガ様失礼します」のアルベドの声とともにプレアデスとシャルティアが入室して来た。

 私の格好を見て何か言おうとしたアルベドを手で制すると「時間がないので単刀直入に伝える」と宣言する。

 

「後々の思惑もあって、このミラーの向こうで襲われている村人を助ける。理由は

 1.敵兵はレベル10以下の弱卒でありリスクは無い

 2.ノーリスクで現地住民へと恩を売る形で初接触が出来る貴重な機会である

 3.敵兵を生け捕りにし、大量の情報を確保できること

 4.他のプレイヤーが存在していた場合に、我々が善良なる組織だという判断をしてもらうためである」

 

 こう言われるとカルマ値が低い下僕でも「人間など放っておけば宜しいのではありませんか?」とは言いづらいハズだ。

 

「それは分かりましたが、その格好からするとモモンガ様も行かれるおつもりなのでは有りませんか? 敵の様子を聞くに問題ないとは思いますが、下僕たちだけで事足りる事です。モモンガ様はご自重下さりますよう。どうしても行くならば私もお供させて下さいませ」とアルベドに強く言われる。

 

「ダメだ。お前には重要な任務を与える予定だ」

 

「……解りました。その任務、責任をもってやり遂げさせて頂きます」

 重要な任務という言葉に顔を引き締めたアルベドが反論を辞めて引き下がる。

 

「先に伝えておくが、この戦いはあくまで村人を救うのと同時に、村人に恩を感じてもらい、友好関係を築く事が肝要である。以下の点に注意してもらいたい。怖がらせないために人間種に見えるものだけで行くこと。また、現地での使用が確かめられていない魔法も使用禁止だ。ただ村人に見られていない場所なら良いし、敵兵に見られるのは良い。彼らは漏れなく消えるからな。とりあえず現地人らしく振る舞い不信感を減らしたいので、現地で確認出来ている力……レベル30くらいだな……手を抜いて戦うこと。彼らは低レベルだからそれでも十分に制圧出来るはずだ。なので、余り派手な戦い方は避けるように。パンチ一撃で敵の頭が爆散したとかシャレにならんぞ?セバス、ユリ」

 

「「はっ」」

 

 

「では手順であるが、東の門よりセバス、ユリ、西門よりナーベラルと私が突入し敵兵を蹴散らす。そしてエイトエッジアサシンと共にシャルティアと……」

 

 モモンガは細々と指示を与えていく。そして御方からの命令を受け取った下僕は喜びに震えそうなのを耐えながら恍惚とした表情を浮かべ、幸せと責任感を同時に充填させていった。

 

 

 

 

 

 

 

「以上だ」

 

「「「はっ」」」

 

「アルベドよ。もう、ミラー・オブ・リモート・ビューイングの使い方は覚えたな?ではアルベドはコキュートスを呼んでミラーで周囲の監視と状況を事細かく私に伝えてくれ。シャルティアたち包囲部隊への指示も頼むぞ」

 

「お任せ下さい」

 

「また、この事をアウラやデミウルゴスたちにも伝えておいてくれ。彼らの与り知らない所で突如事件を起こすことになって申し訳ないからな」

 

「そんな!?申し訳ないなどと!?迷惑などと考える守護者などいる訳が御座いません!むしろモモンガ様が与えてくれる現象には喜びと幸せしか感じません!」

 

「あ……そうなんだ」それもどうかと思うが

 

「はい!バッチ来いです!」

 

 モモンガは軽く目を閉じると眉間を指で摘んで「早くなんとかしないと……」と思った。

 

 それに、横のラインの情報共有を確立しないとな……。

 

「では、セバス、ユリ、ナーベラルは私と供に私のゲートで行くぞ。シャルティア、重要な任務を突然任せてすまないな」

 

「なにを仰られるでありましょうか?嬉々として任務を全うさせて頂くでありんす。デミウルゴスやアウラが後で悔しがるのが眼に浮かぶ様でありんすえ」

 

「うむ シャルティアならどんな強敵だとしても遅れはとるまい。危険を感じたらメッセージで連絡の上、皆の帰還のためのゲートを開き、仲間の救出を頼んだぞ」

 

「はい! おまかせ下さい!」

 主からの信頼を感じたシャルティアは鼻息も荒々しく無い胸を叩くと傅く。

 

 

 さて 現実の戦いか……。怖いという気持ちも少なくはない。

 

 

 ふ――――

 

 モモンガはアンデッドの体には必要ないが、自らの心に必要とした息を大きく吸い込んで吐き出した。

 

 そして頼もしい下僕を見渡すとゆっくりと、仲間と何よりも自分自身に刻むように語りかける。

 

「『練習は本番のように 本番は練習のように』という有名な言葉がある。今回の場合はゲーム感覚でリラックスして殺れって事になるのか?やれやれ、「ゲーム感覚で人殺し」とかどこの痛いガキなんだよ……そんなガキになるんじゃないぞ。俺も、守護者達も、だ。 相手は脆弱な人間だが、だからこそ、一つ一つの命をしっかり丁寧に飲み込め。我々は彼らと違い目的を持って行動するのであり、彼らはその犠牲者なのだから。では行こうか、我がアインズ・ウール・ゴウンの使徒たちよ。……ゲートよ開くが良い!」

 

 

 

  

 

 

 

 

 




 
 
 
 
 
 
 


誤字脱字の報告、ほんっっとうに有り難う御座います。反省して良く見直してから投稿しているのですが、自分自身の脳では勝手にOKを出してしまっているのか発見できないまま内容だけでなく、文章まで恥ずかしい物をお出ししてしまって申し訳ありません。
おとり先生様、woodenface様、河灯泉様、モーリェ様 まりも7007様、ronjin様 kubiwatuki様、bomb様、カド=フックベルグ様 有り難う御座います
特にyelm01様には毎回毎回、本当にお世話になっております。有り難う御座います。助かっております。

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