【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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新しいわたし その10 ~バスルーム~

 

 

 

 

 

花陽は困った顔をしている。

それを見て希が言う。

 

 

 

「ひょっとして、お風呂、嫌いなん?」

 

 

 

「そんなこと、ありません!」

花陽は慌てて否定した。

「ちゃんと毎日入ってますよ」

「半日歩き回って、汗、ベタベタやろ?最後は焼き肉やったし、ニオイもついてるんやない?お風呂入ってサッパリすればいいやん」

「それはその通りですが…」

「パジャマはないけど、ウチのスエットがあるから、それ着ればいいし」

「あ、でも…下着が…」

「今日買ってきたやん!」

「あ、確かに!…あ、いやいや、まだ、買ったばっかりだし…もったいなくないですか?」

「ん?ずっと飾っておくつもりなん?」

「いえ、いえ…」

「…ウチに気兼ねしてるんやろ?それは花陽ちゃん『なし』やからね。そんなんされたら、逆に困るんよ。μ'sのメンバーは、家族みたいなもんなんやから、今更、遠慮はせんといて」

「う~ん…」

少し考え込んだが、すぐに言葉を返した。

「はい、わかりました!そうですね…ありがとうござます。それじゃあ、お言葉に甘えます」

花陽の顔が元気になった。

「それでいいんよ。うん、そしたら、今、お風呂を案内するね」

「花陽、お風呂、行きま~す!」

 

…ん?アムロ?…誰の影響なんやろ?…

…花陽ちゃんも時折おかしなことを言うんよね…

 

希は心の中で首を傾げた。

 

 

 

花陽は身支度を整えると、希に案内されて脱衣場に向かった。

「バスタオルは、これを使って」

「はい」

「あと、これ。新しいスポンジ」

「あ、わざわざ…」

「あと中にあるものは、適当に使って」

「ありがとうございます。すぐ出ますから」

「ダメやって!湯冷めするから、ちゃんと温まらんといかんよ。ウチは急がないから」

「はい、わかりました」

「素直でよろしい。じゃ、ごゆっくり…」

「はい、では、お先に…」

希が脱衣場を出て行った。

 

花陽は着ていたものを脱ぐと、丁寧に畳んで、洗濯機の上に乗せた。

「失礼しま~す」

その向こうに誰もいないと知りつつも、そう断ってから折り畳み式のスライドドアを開けて、浴室へと足を踏み入れる。

 

「えっと…これがシャンプー、こっちがコンディショナーで…これがボディソープ…」

と、花陽が確認する。

この3点の確認作業は「眼鏡を掛けていた時からのクセ」である。

今はコンタクトをしているので迷うことはないが、裸眼の視力はかなり悪いため、入浴時の失敗は数限りなかった。

 

「さすが希ちゃん、どれも高そうですねぇ…」

マジマジとボトルを見入る。

花陽が見たことない銘柄だった。

 

軽くシャワーを浴びたあと、さっきもらった新しいスポンジで、身体を洗う。

「うひゃあ、なんて滑らかな泡立ち。スベスベ感がスゴいねぇ…。やっぱり、花陽もこういうのに変えなきゃダメかな?」

一旦、全身の泡を流して、湯船の蓋を開ける。

「おぉ!温泉仕様ですか!」

中から現れたのは乳白色のお湯だっだ。

「希ちゃんは、温泉も詳しそうだねぇ…。うん、みんなで温泉とか行ったら、楽しそうだなぁ。また枕投げとかしたいなぁ」

花陽は夏と秋に行った合宿を回想していた。

「花陽はみんなに裸を見られるのも、みんなの裸を見るのも恥ずかしいのですよ。温泉に行くとなると、それをクリアしなければいけません!凛ちゃんの裸なら見慣れてるんだけどねぇ…」

花陽は湯船に浸かりながら、小さな声でひとり喋っている。

「中学の修学旅行も、みんなが花陽の胸ばっかり注目するから、生きた心地がしませんでした…」

でも…と目を瞑り、ひとつ大きく息を吐いた。

 

「でも、μ'sのメンバーとなら平気かなぁ…」

 

そう言うと、湯船から出て鏡の前に立った。

お湯をかけて鏡の曇りをとると、自らの「あられもない姿」が、映しだされた。

 

 

 

「花陽はもっと魅力的なスタイルになれますか?」

 

 

 

自分の胸や腰を触りながら、そう呟いた。

「…と、眺めても仕方がないですね。希ちゃんを待たせちゃうから、早く頭を洗っちゃいましょう」

 

花陽がイスに座って髪を洗い始める。

いつも自分が使っているシャンプーとは違う香り。

しかし、それは知らない匂いではない。

それは、さっきまでそばにいて嗅いでいた希の香り…。

それを今、花陽は頭から纏おうとしている。

希に全身を包まれている感覚。

 

その香りは、花陽に安心感をもたらすと共に、背徳感をも与えた。

 

 

 

…明日、練習に行ったら、みんなにバレちゃうんじゃないのかな…

 

 

 

花陽がそんなことを考えながら、シャンプーの泡を流していると

「は~な~よ~ちゃん!」

と背後から希の声が聴こえてきた。

「はい?」

花陽が振り返ると、少し開いたドアの隙間から、希が顔を出している。

「あ、すみません、のんびりしちゃって。もう、終わりますから…」

「いや、ゆっくりしてて」

「ん?」

「実は…ウチも一緒に入ることに…」

 

「えっ!?」

戸惑う花陽。

 

その瞬間、スライドドアが勢いよく開く!

 

「バ~ン!」

自ら効果音を口にして、素っ裸の希が入ってきた。

 

「うわっ、うわっ…の、希ちゃん!」

「よいではないか、よいではないか、ウッシッシッ」

「待って、待って!ワシワシはなしですよ!」

「よいではないか、よいではないか」

「希ちゃん!?」

 

誰か助けてぇ…花陽は完全にパニック状態に陥った…。

 

 

 

 

 

~つづく~


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