【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
花陽は困った顔をしている。
それを見て希が言う。
「ひょっとして、お風呂、嫌いなん?」
「そんなこと、ありません!」
花陽は慌てて否定した。
「ちゃんと毎日入ってますよ」
「半日歩き回って、汗、ベタベタやろ?最後は焼き肉やったし、ニオイもついてるんやない?お風呂入ってサッパリすればいいやん」
「それはその通りですが…」
「パジャマはないけど、ウチのスエットがあるから、それ着ればいいし」
「あ、でも…下着が…」
「今日買ってきたやん!」
「あ、確かに!…あ、いやいや、まだ、買ったばっかりだし…もったいなくないですか?」
「ん?ずっと飾っておくつもりなん?」
「いえ、いえ…」
「…ウチに気兼ねしてるんやろ?それは花陽ちゃん『なし』やからね。そんなんされたら、逆に困るんよ。μ'sのメンバーは、家族みたいなもんなんやから、今更、遠慮はせんといて」
「う~ん…」
少し考え込んだが、すぐに言葉を返した。
「はい、わかりました!そうですね…ありがとうござます。それじゃあ、お言葉に甘えます」
花陽の顔が元気になった。
「それでいいんよ。うん、そしたら、今、お風呂を案内するね」
「花陽、お風呂、行きま~す!」
…ん?アムロ?…誰の影響なんやろ?…
…花陽ちゃんも時折おかしなことを言うんよね…
希は心の中で首を傾げた。
花陽は身支度を整えると、希に案内されて脱衣場に向かった。
「バスタオルは、これを使って」
「はい」
「あと、これ。新しいスポンジ」
「あ、わざわざ…」
「あと中にあるものは、適当に使って」
「ありがとうございます。すぐ出ますから」
「ダメやって!湯冷めするから、ちゃんと温まらんといかんよ。ウチは急がないから」
「はい、わかりました」
「素直でよろしい。じゃ、ごゆっくり…」
「はい、では、お先に…」
希が脱衣場を出て行った。
花陽は着ていたものを脱ぐと、丁寧に畳んで、洗濯機の上に乗せた。
「失礼しま~す」
その向こうに誰もいないと知りつつも、そう断ってから折り畳み式のスライドドアを開けて、浴室へと足を踏み入れる。
「えっと…これがシャンプー、こっちがコンディショナーで…これがボディソープ…」
と、花陽が確認する。
この3点の確認作業は「眼鏡を掛けていた時からのクセ」である。
今はコンタクトをしているので迷うことはないが、裸眼の視力はかなり悪いため、入浴時の失敗は数限りなかった。
「さすが希ちゃん、どれも高そうですねぇ…」
マジマジとボトルを見入る。
花陽が見たことない銘柄だった。
軽くシャワーを浴びたあと、さっきもらった新しいスポンジで、身体を洗う。
「うひゃあ、なんて滑らかな泡立ち。スベスベ感がスゴいねぇ…。やっぱり、花陽もこういうのに変えなきゃダメかな?」
一旦、全身の泡を流して、湯船の蓋を開ける。
「おぉ!温泉仕様ですか!」
中から現れたのは乳白色のお湯だっだ。
「希ちゃんは、温泉も詳しそうだねぇ…。うん、みんなで温泉とか行ったら、楽しそうだなぁ。また枕投げとかしたいなぁ」
花陽は夏と秋に行った合宿を回想していた。
「花陽はみんなに裸を見られるのも、みんなの裸を見るのも恥ずかしいのですよ。温泉に行くとなると、それをクリアしなければいけません!凛ちゃんの裸なら見慣れてるんだけどねぇ…」
花陽は湯船に浸かりながら、小さな声でひとり喋っている。
「中学の修学旅行も、みんなが花陽の胸ばっかり注目するから、生きた心地がしませんでした…」
でも…と目を瞑り、ひとつ大きく息を吐いた。
「でも、μ'sのメンバーとなら平気かなぁ…」
そう言うと、湯船から出て鏡の前に立った。
お湯をかけて鏡の曇りをとると、自らの「あられもない姿」が、映しだされた。
「花陽はもっと魅力的なスタイルになれますか?」
自分の胸や腰を触りながら、そう呟いた。
「…と、眺めても仕方がないですね。希ちゃんを待たせちゃうから、早く頭を洗っちゃいましょう」
花陽がイスに座って髪を洗い始める。
いつも自分が使っているシャンプーとは違う香り。
しかし、それは知らない匂いではない。
それは、さっきまでそばにいて嗅いでいた希の香り…。
それを今、花陽は頭から纏おうとしている。
希に全身を包まれている感覚。
その香りは、花陽に安心感をもたらすと共に、背徳感をも与えた。
…明日、練習に行ったら、みんなにバレちゃうんじゃないのかな…
花陽がそんなことを考えながら、シャンプーの泡を流していると
「は~な~よ~ちゃん!」
と背後から希の声が聴こえてきた。
「はい?」
花陽が振り返ると、少し開いたドアの隙間から、希が顔を出している。
「あ、すみません、のんびりしちゃって。もう、終わりますから…」
「いや、ゆっくりしてて」
「ん?」
「実は…ウチも一緒に入ることに…」
「えっ!?」
戸惑う花陽。
その瞬間、スライドドアが勢いよく開く!
「バ~ン!」
自ら効果音を口にして、素っ裸の希が入ってきた。
「うわっ、うわっ…の、希ちゃん!」
「よいではないか、よいではないか、ウッシッシッ」
「待って、待って!ワシワシはなしですよ!」
「よいではないか、よいではないか」
「希ちゃん!?」
誰か助けてぇ…花陽は完全にパニック状態に陥った…。
~つづく~