【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
最終章(みんなが大好き編)です。
やりたいことは ~卒業旅行~
「ニューヨークでライブ!?」
理事長の言葉に、メンバー全員が口を揃えて驚いた。
無理もない。
μ'sとしての活動は、ラブライブの優勝をもって幕を閉じたのだから…。
本大会で栄冠に輝いた数日後、にこと希、絵里の3人は卒業式を迎えた。
これからはそれぞれ、別々の道を歩むことになる。
メンバー全員で校内を散策し、μ'sとして最後の時間を過ごす。
そして…活動の拠点とした『屋上』に、一礼して感謝の意と別れを告げた。
新たな人生へと旅立つ3人。
それを見送る6人。
校門の前で、いよいよ…という時に花陽がスマホを見て叫んだ。
「ええ~!!大変ですぅ!!」
慌てて部室に戻る花陽。
他のメンバーも、つられて走り出す。
PCを立ち上げた彼女は言った。
「次回のラブライブが、アキバドームでの開催を検討してるとのことです!」
「アキバドーム!?」
「それってアタシたちも出られるの?」
「そんな訳ないやん。ウチらはスクールアイドルやなくなるんよ」
「わ、わかってるわよ…でも、ほら、ゲスト出演とか…」
「まさかぁ…」
「あら、実はそうでもなくてよ…」
「!?」
「理事長!」
「お母さん!」
部室にひょっこり現れたのは、ことりの母…音ノ木坂の理事長だった。
「どういうことですか?」
「まだドーム大会の開催は、決定ではないみたいなの。だから、その実現に向けて、今大会優勝者の…あなたたちに協力してほしい…って今、知らせが来たところ…」
「協力…ですか?」
穂乃果が理事長に聴き返した。
「単刀直入に言うと…ニューヨークに行って、ライブをしてみない?…っていうお誘いなんだけど」
「ニューヨークで!?」
「ライブ!?」
「どうするん?」
「どうするも、こうするもアメリカよ!ニューヨークよ!渡航費も滞在費もスポンサーが持ってくれるって言うんだし、こんなおいしい話はないじゃない!行かない手はないわよ」
「にこっち、それはそうやけど…」
「なによ?」
「この間のライブが最後って決めていたから、そう簡単に、頭と気持ちの切り替えができないのよ」
「希も絵里も行きたくないの?アメリカよ、ニューヨークよ。卒業旅行と思えばいいじゃない」
「そうにゃ!こんなチャンスは二度とないにゃ!」
「観光気分で行って、ライブをするっていうのは…ちょっと違うと思うの」
「ウチもそう思う」
「だったら、ライブは真剣にやればいい…それだけのことじゃない?」
「にこ…」
「そうだよ、絵里ちゃん!確かにあれ以上のパフォーマンスはできないかも知れない…っていうのはわかるけど…向こうに行ったら行ったで、気分も高まるだろうし」
「そうだよね。私も行きたいな…みんなと一緒に」
「それにさ、このライブが成功して、μ'sの知名度がもっともっと上がったら、ドームの出演だってあり得なくはないよね」
「うん、お母さんも言ってた。可能性はあるかもって。実際、学校にはμ'sへの取材申し込みが、結構来てるらしいの。今のところは、丁重にお断りしてるみたいだけど」
「穂乃果…ことり…」
「私は反対です!」
「う、海未ちゃん?」
「ニューヨークですよ、ニューヨーク?私たちだけで行くのは、危険過ぎます!きっと身ぐるみ剥がされて、あんなことやこんなことをされて…あぁ、ダメです…生き恥を晒すくらいなら…」
「えっと…海未ちゃんは、ちょっと放っておこうか…」
さすがの穂乃果も、この状況には匙を投げた…。
「凛はパスポートないにゃ!」
「花陽も…」
「アタシも」
「穂乃果も持ってないや」
「私は持ってるわよ」
「そりゃあ、アンタは持ってるでしょうよ…」
と真姫に噛みつく、にこ。
「べ、別に自慢したつもりじゃ…」
少しバツが悪そうに、真姫は下を向いた。
「ことりも持ってるよ…」
「そっか…ことりちゃんはフランスに留学するつもりだったんだもんね…」
「あ、そういうつもりじゃ…」
穂乃果を気遣って、ことりは慌てて手を振った。
「パスポートなら、ウチも持ってるよ」
「私も…」
「なによ!希と絵里は、持ってるなら手間要らずじゃない。行く行かないで迷う必要なんてないでしょ!じゃあ『持ってない組』は、今から申請に行くわよ!」
「申請って、どこに行ったらいいのかにゃ?」
「ここからだと、一番近いのは有楽町の交通会館だよ。初めてだと1週間くらいかかるよ」
「さすが、ことりちゃん!」
「1週間…って、結構ギリギリじゃない!急ぐわよ!」
「待って、にこちゃん!」
「なに?穂乃果?」
「海未ちゃんも多分、持ってないと思うから、一緒に…」
「私はいいです!行きませんから!」
「そういう訳にはいかないでしょ!」
「面倒な人!」
「出たにゃ!真姫ちゃんの決めゼリフ!」
「海未ちゃんは、こうなると一番厄介やね…」
「確かにそうね…」
希も絵里も、笑って海未を見ている。
「それで、あなたたちは行くの?行かないの?」
その2人に真姫が問い掛けた。
「えっ?ウチら?…えりち…どうするん?」
「…仕方ないわねぇ…」
その言葉に一同がドッと笑った。
「ちょっと、それはアタシのセリフでしょ!」
にこだけが、不満げな様子。
「決まりね!ニューヨークでのライブ!」
真姫はパン!と手を叩いてこの場を締めた。
「やった~!楽しみにゃ~!」
「うん、凛ちゃん!ワクワクするね」
「それにしても…ウチの言った通りやろ!あの時、ことりちゃんが見たっていう夢…あれ、本当になったんやん」
「あっ!…」
一同は、2ヶ月ほど前、希がことりの見た夢に対して「正夢なんやないかな…」とコメントしていたのを思い出した。
「うん、世界大会じゃなかったけど…みんなでアメリカに行くっていうのは、その通りになったね」
「ことりちゃん『今度は』忘れ物したらいかんよ」
「うふふ…」
「…で、結局、何を忘れたんやったっけ?」
「なんだっけ?…えへへ、それが思い出せなくて…」
…ことり専用の枕なんだけどね…
…でも、花陽ちゃんがいてくれれば平気だってわかったから、もし忘れちゃっても、もう大丈夫だもん…
ことりは、希にはわからないよう、花陽に向かってウインクをした。
~つづく~