【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
ニューヨークに来て、初めての夜。
食事を終わらせたメンバーは、それぞれの部屋に戻った。
ことりは、海未にババ抜きを付き合わされている。
どちらかのカードが必ずペアになるため、2人でやるババ抜きほどつまらないものはない。
それならば、最初からジョーカー+別のワンペア…の3枚で充分ことが足りる。
そんなことは百も承知なのだろうが、このカードゲームで連戦連敗中の海未は、なにか必勝法があるハズだと、ことりを練習台に、何度も勝負を挑んでは返り討ちにあっていた。
「…次こそ勝ちます!」
海未のカードは残り2枚…。
「…ええっと…う~ん…こっちかな?」
…えっ!?…
「こっち?」
…ふぅ…
「やっぱり…」
…わぁっ!?…
「…ね…ねぇ、明日も早いからそろそろ寝よう…」
ことりは最後のカードを引く前に、海未に提案をした。
「ダメです!」
しかし、即答で拒否される。
「必ずや、必ずや勝つ方法が何かあるハズです!いざ!」
「う~ん…海未ちゃん、ごめん!」
「ぬわぁぁっ!なぜなのですぅ!…」
「じゃあ、これで終わりに…」
「いえ、もう一度!」
「海未ちゃん…」
海未に『癖』を教えない…あるいは、1回でも勝たせてあげない、ことりもことりである。
彼女も案外、意地が悪い…いや、勝負事には厳しいと言うべきか。
こうして、海未とことりの夜は更けていった…。
「それで…どうしてアタシたちの部屋だけ3人なのよ」
「どうして…って、にこちゃん!くじ引きしたら、そういう部屋割りになっちゃったんだから、しょうがないじゃん」
穂乃果は「私に言われても…」と困った顔をしている。
「どうせ、寝るだけなんだから、別にいいじゃない…それとも私と一緒は、いや?」
と絵里が問い掛けた。
「そんなことは言ってないわよ…」
しかし、にこは一瞬、絵里から目を逸らした。
「あ、なるほど!そういうことか!つまり、にこちゃんは、絵里ちゃんとの間に『希ちゃん』がいないとダメなんだ!そういえば、このツーショットはあんまり見ないもんね」
「そんなことないわよ!」
「考えてみれば、にこちゃんと絵里ちゃんて、両極端の2人だもんね!」
「なにがよ!?」
「スタイル!頭の良さ!性格!」
「それは、そっくりアンタに返すわよ」
「こういうの、なんて言うんだっけ?北風と太陽?豚に真珠?猫に小判…」
「月とスッポンでしょ!…って、誰がスッポンよ!はい、そこ!絵里、笑わない!」
「うふふ…ごめんなさい!」
「私、希ちゃんに話して、部屋、替わってもらおうか?」
「そんな余計なこと、しなくていいわよ!」
「それとも、にこちゃんが希ちゃんと替わってもらう?」
「だから、別にいいから!」
…アンタが向こうに行ったら行ったで、今度は真姫が困るだろうし…
…アタシが真姫のところに行っても、それはそれで気不味くなるし…
「?」
「なんでもないわよ!」
「でもね、穂乃果。私たち3人、共通点もあるのよ」
「えっ?絵里ちゃんとにこちゃんと穂乃果の共通点?…わかった!『長』繋がりだ!」
「長繋がり?」
にこは首を傾げた。
「うん、ほら…元生徒会長、現生徒会長…元部長」
「あぁ、なるほど…」
「なるほど…って絵里ちゃん、違うの?」
「う~ん…半分正解」
「半分?」
「私たち、3人とも『長女』でしょ?」
「!」
「そう言われれば、そうね」
「そっか、にこちゃんもお姉ちゃんだったんだっけ!」
「どういう意味よ!」
「お母さんかと…」
「妹と弟よ!」
「ははは…そうでした…」
「あなたたちの、そういうとこも、もう見られなくなるのね…」
「絵里…」
「絵里ちゃん…」
「…穂乃果…」
「はい!?」
「亜里沙をよろしくね!あの子、まだ日本の生活に慣れてなくて、世間ズレしてるとこがあるから…」
「よろしくなんて、そんな…」
「にこの妹さんも音ノ木坂に入って、アイドル活動するのかしら…」
「さあ…」
「にこちゃんは入って欲しいと思う?」
「そうねぇ…」
と言ってしばらく考えたあと、こう言った。
「入りたい!って言ったら、止めないわよ。だって、きっとあの子たちの世代にも、穂乃果か絵里たちがいるハズだから…」
…ふふふ、決まったわね…
それを聴いた2人は、にこの顔をマジマジと見た。
「にこちゃん、熱ある?」
「お水飲む?」
「おぉ~い!!ここ、感動するとこ!!!」
「真姫ちゃ~ん、ただいま~!」
部屋に戻ってきたのは希。
「ジュース買ってきたよ~…って、まだシャワー中やったかな?」
「あ、ありがとう…もう、出たわよ。今、服着てるとこ…」
「あ、急がなくてもいい…ん?…これは…」
希は棚の上にあったノートを見つけて手に取ると、ページをペラペラと捲った。
…楽譜?…
「希、なに勝手に見てるのよ」
洗い髪をタオルで拭きながら、真姫がドレッシングルームから出てきた。
「あ…ごめん…」
「中…見たの?」
「おたまじゃくしがいっぱいいた…って、これ見よがしに置いておくんやもん、見たくなるやん」
「そうね、置きっぱなしにした私が悪いわ」
「真姫ちゃん…その曲…もしかして?」
「いいの…私が勝手にやってるだけだから、気にしないで」
「ウチは音符読めんから、どんな曲かはわからないけど…」
「9人で新しい曲を歌うことがないのはわかってるわよ。だから、これは『If』の世界の曲…」
「…」
「なによ?言ったでしょ!μ'sは解散するけど、スクールアイドルは続けるって。だから色々なテーマで書き貯めてるの!」
「そう…」
「まさか、こういう展開になるとは思ってなかったけど…」
「ウチもや…」
「えっ?」
「真姫ちゃんと、ひとつの部屋で、一晩過ごせるチャンスがくるなんて!」
「そ、そっち!?」
「せっかくやから『発展途上』やったとこ、どれくらい成長したか、調べてみようか?」
「な、な…」
「最近してなかったからね…『ご無沙汰ワシワシ』ってことで」
「なに、それ!?意味わかんない!」
「真姫ちゃん、覚悟!」
「希!本当に怒るわよ!」
「いいやん、減るもんやないし」
「そういう問題じゃないでしょ!明日も早いんだし、もう寝るわよ!」
「え~、もう寝るん?」
「寝るわよ!」
「枕投げ…」
「するわけないでしょ!」
「う~ん…つまらない」
「いいの、それで」
「じゃあ、寝る前にウチから質問があるんやけど」
「なに?」
「真姫ちゃん、好きな人、いる?」
「はぁ?なに、いきなり?」
「修学旅行の定番やろ」
「修学旅行じゃないでしょ!」
「付き合い悪いやん」
「今に始まったことじゃないでしょ!」
「ウチはね…いるんよ。好きな人…」
「えっ!?」
「聴きたい?」
「べ、別に…希の趣味なんて興味ないわよ…」
「それは…真姫ちゃん!」
「ヴェ~~~!」
「ずいぶんな反応やね…」
「…ご、ごめん…」
「大丈夫、嘘やから!」
「希!」
「真姫ちゃん…」
「なに?」
「ウチの好きな人…大切にしてね!」
「えっ?」
「じゃあ、おやすみ…」
「えっ?えっ?ちょっと、どういうこと?」
「ふふふ…おやすみ…」
…大切にしてね?…
…誰のこと?…
…絵里?にこちゃん…でも、もう卒業していなくなるんだし…
…そんなこと言われたら、考えて眠れなくなるじゃないの!…
…あぁん、もう!この部屋割りは最低だわ!明日は別の人に替えてもらおう!…
~つづく~