【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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やりたいことは その4 ~それぞれの部屋で~

 

 

 

 

 

ニューヨークに来て、初めての夜。

 

食事を終わらせたメンバーは、それぞれの部屋に戻った。

 

 

 

ことりは、海未にババ抜きを付き合わされている。

 

どちらかのカードが必ずペアになるため、2人でやるババ抜きほどつまらないものはない。

それならば、最初からジョーカー+別のワンペア…の3枚で充分ことが足りる。

 

そんなことは百も承知なのだろうが、このカードゲームで連戦連敗中の海未は、なにか必勝法があるハズだと、ことりを練習台に、何度も勝負を挑んでは返り討ちにあっていた。

 

「…次こそ勝ちます!」

海未のカードは残り2枚…。

 

「…ええっと…う~ん…こっちかな?」

 

…えっ!?…

 

「こっち?」

 

…ふぅ…

 

「やっぱり…」

 

…わぁっ!?…

 

「…ね…ねぇ、明日も早いからそろそろ寝よう…」

ことりは最後のカードを引く前に、海未に提案をした。

「ダメです!」 

しかし、即答で拒否される。

「必ずや、必ずや勝つ方法が何かあるハズです!いざ!」

「う~ん…海未ちゃん、ごめん!」

「ぬわぁぁっ!なぜなのですぅ!…」

「じゃあ、これで終わりに…」

「いえ、もう一度!」

「海未ちゃん…」

 

海未に『癖』を教えない…あるいは、1回でも勝たせてあげない、ことりもことりである。

彼女も案外、意地が悪い…いや、勝負事には厳しいと言うべきか。

 

こうして、海未とことりの夜は更けていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで…どうしてアタシたちの部屋だけ3人なのよ」

「どうして…って、にこちゃん!くじ引きしたら、そういう部屋割りになっちゃったんだから、しょうがないじゃん」

穂乃果は「私に言われても…」と困った顔をしている。

「どうせ、寝るだけなんだから、別にいいじゃない…それとも私と一緒は、いや?」

と絵里が問い掛けた。

「そんなことは言ってないわよ…」

しかし、にこは一瞬、絵里から目を逸らした。

「あ、なるほど!そういうことか!つまり、にこちゃんは、絵里ちゃんとの間に『希ちゃん』がいないとダメなんだ!そういえば、このツーショットはあんまり見ないもんね」

「そんなことないわよ!」

「考えてみれば、にこちゃんと絵里ちゃんて、両極端の2人だもんね!」

「なにがよ!?」

「スタイル!頭の良さ!性格!」

「それは、そっくりアンタに返すわよ」

「こういうの、なんて言うんだっけ?北風と太陽?豚に真珠?猫に小判…」

「月とスッポンでしょ!…って、誰がスッポンよ!はい、そこ!絵里、笑わない!」

「うふふ…ごめんなさい!」

「私、希ちゃんに話して、部屋、替わってもらおうか?」

「そんな余計なこと、しなくていいわよ!」

「それとも、にこちゃんが希ちゃんと替わってもらう?」

「だから、別にいいから!」

 

…アンタが向こうに行ったら行ったで、今度は真姫が困るだろうし…

…アタシが真姫のところに行っても、それはそれで気不味くなるし…

 

「?」

「なんでもないわよ!」

「でもね、穂乃果。私たち3人、共通点もあるのよ」

「えっ?絵里ちゃんとにこちゃんと穂乃果の共通点?…わかった!『長』繋がりだ!」

「長繋がり?」

にこは首を傾げた。

「うん、ほら…元生徒会長、現生徒会長…元部長」

「あぁ、なるほど…」

「なるほど…って絵里ちゃん、違うの?」

「う~ん…半分正解」

「半分?」

「私たち、3人とも『長女』でしょ?」

「!」

「そう言われれば、そうね」

「そっか、にこちゃんもお姉ちゃんだったんだっけ!」

「どういう意味よ!」

「お母さんかと…」

「妹と弟よ!」

「ははは…そうでした…」

「あなたたちの、そういうとこも、もう見られなくなるのね…」

「絵里…」

「絵里ちゃん…」

「…穂乃果…」

「はい!?」

「亜里沙をよろしくね!あの子、まだ日本の生活に慣れてなくて、世間ズレしてるとこがあるから…」

「よろしくなんて、そんな…」

「にこの妹さんも音ノ木坂に入って、アイドル活動するのかしら…」

「さあ…」

「にこちゃんは入って欲しいと思う?」

「そうねぇ…」

と言ってしばらく考えたあと、こう言った。

 

「入りたい!って言ったら、止めないわよ。だって、きっとあの子たちの世代にも、穂乃果か絵里たちがいるハズだから…」

 

 

 

…ふふふ、決まったわね…

 

 

 

それを聴いた2人は、にこの顔をマジマジと見た。

 

「にこちゃん、熱ある?」

「お水飲む?」

 

「おぉ~い!!ここ、感動するとこ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真姫ちゃ~ん、ただいま~!」

部屋に戻ってきたのは希。

「ジュース買ってきたよ~…って、まだシャワー中やったかな?」

「あ、ありがとう…もう、出たわよ。今、服着てるとこ…」

「あ、急がなくてもいい…ん?…これは…」

希は棚の上にあったノートを見つけて手に取ると、ページをペラペラと捲った。

 

 

 

…楽譜?…

 

 

 

「希、なに勝手に見てるのよ」

洗い髪をタオルで拭きながら、真姫がドレッシングルームから出てきた。

「あ…ごめん…」

「中…見たの?」

「おたまじゃくしがいっぱいいた…って、これ見よがしに置いておくんやもん、見たくなるやん」

「そうね、置きっぱなしにした私が悪いわ」

「真姫ちゃん…その曲…もしかして?」

「いいの…私が勝手にやってるだけだから、気にしないで」

「ウチは音符読めんから、どんな曲かはわからないけど…」

「9人で新しい曲を歌うことがないのはわかってるわよ。だから、これは『If』の世界の曲…」

「…」

「なによ?言ったでしょ!μ'sは解散するけど、スクールアイドルは続けるって。だから色々なテーマで書き貯めてるの!」

「そう…」

「まさか、こういう展開になるとは思ってなかったけど…」

「ウチもや…」

「えっ?」

「真姫ちゃんと、ひとつの部屋で、一晩過ごせるチャンスがくるなんて!」

「そ、そっち!?」

「せっかくやから『発展途上』やったとこ、どれくらい成長したか、調べてみようか?」

「な、な…」

「最近してなかったからね…『ご無沙汰ワシワシ』ってことで」

「なに、それ!?意味わかんない!」

「真姫ちゃん、覚悟!」

「希!本当に怒るわよ!」

「いいやん、減るもんやないし」

「そういう問題じゃないでしょ!明日も早いんだし、もう寝るわよ!」

「え~、もう寝るん?」

「寝るわよ!」

「枕投げ…」

「するわけないでしょ!」

「う~ん…つまらない」

「いいの、それで」

「じゃあ、寝る前にウチから質問があるんやけど」

「なに?」

「真姫ちゃん、好きな人、いる?」

「はぁ?なに、いきなり?」

「修学旅行の定番やろ」

「修学旅行じゃないでしょ!」

「付き合い悪いやん」

「今に始まったことじゃないでしょ!」

「ウチはね…いるんよ。好きな人…」

「えっ!?」

「聴きたい?」

「べ、別に…希の趣味なんて興味ないわよ…」

「それは…真姫ちゃん!」

「ヴェ~~~!」

「ずいぶんな反応やね…」

「…ご、ごめん…」

「大丈夫、嘘やから!」

「希!」

「真姫ちゃん…」

「なに?」

「ウチの好きな人…大切にしてね!」

「えっ?」

「じゃあ、おやすみ…」

「えっ?えっ?ちょっと、どういうこと?」

「ふふふ…おやすみ…」

 

 

 

…大切にしてね?…

…誰のこと?…

…絵里?にこちゃん…でも、もう卒業していなくなるんだし…

…そんなこと言われたら、考えて眠れなくなるじゃないの!…

…あぁん、もう!この部屋割りは最低だわ!明日は別の人に替えてもらおう!…

 

 

 

 

 

~つづく~


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