【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
翌朝…。
「おっはようにゃ~」
「おはようございま~す」
ホテルのロビーに降りてきた絵里を出向かえたのは、凛と花陽。
「おはよう…あなたたちだけ?」
「時間前ですから」
「凛はまだ眠いけど、かよちんに起こされたにゃ!」
「えへへへ…お腹空いちゃって…。ちょっと先にカフェでモーニングしちゃいました」
「にこちゃんと穂乃果ちゃんは?」
「私が起こしたから、もう降りてくると思うけど…あ、来たわ…って、なに、朝から言い合いしてるのかしら」
「だいたい、アンタは寝相悪すぎるのよ!どうして絵里を越えて、アタシのとこまでくるのよ!」
「え~と…それは…」
「おまけに、蹴るわ殴るわ…アタシに恨みでもあるの?」
「ないよ。あるわけないじゃん!」
「朝から、なに揉めてるにゃ?」
「穂乃果の寝相が悪過ぎて、アタシは寝不足なのよ!寝惚けて『なんで、にこちゃんがいるの?』とか言うし!!」
「たははは…」
「そう言えば、穂乃果ちゃん、合宿の時も、とんでもないとこで寝てたよね」
「うん、花陽ちゃん、あの時は崖の上にいた…。普段、家で寝てる時は、そんなことないんだけど…」
「あり得ないでしょ!」
「よしてよ、寝不足で体調不良だなんて」
絵里がクスッと笑って言った。
「逆にあの状況で熟睡してる、アンタが凄いわ」
「そ、そう?」
「でも、絵里ちゃんだって寝言…」
「穂乃果!それは黙っててあげなさいよ」
「えっ!?寝言?私、なにを言ってたの?」
「えへへ…」
「まさか、絵里があんなことを…ね…」
「うん、あんなことを…」
「えっ?えっ?ちょっと、なぁに~?」
「いや、いや…」
「凛も聴きたいにゃ!」
「じゃあ、またあとで」
「うん、約束にゃ!」
「ちょっとぉ~」
「えりち、朝からどうしたん?」
「ホント、騒がしいわよ…」
「希、真姫!おはよう!…えっと…こっちの話は置いておいて…それより、そっちは良く寝れた?」
「ウチはバッチリ!」
「わ、私も…」
…って、寝る前に希がおかしなことを言うから、気になって熟睡できなかったけど…
「それより、海未とことりは?」
真姫は自分のことを悟られないよう、話をすり替えた。
「それが…まだなのよね」
と絵里。
「珍しいはね。いつも集合時間の30分前には来るような人が」
「でも、真姫ちゃん。出発の時も一番遅かったにゃ!」
「そういえば、そうね…」
そして、待つこと5分…。
「おはようございます…」
海未とことりは、集合時間ギリギリに現れた。
「海未ちゃん、ことりちゃん、おはよう!って…なんか元気ないね」
穂乃果は2人の顔を見る。
「そ、そうですか?」
「う、うん…そんなこと…ねぇ?」
「は、はい」
「?」
…海未ちゃんがトランプで勝てなくて、朝までしてたとは…言えないよね…
…ことりには悪いことをしてしまいました…
…ですが、今晩こそは!…
「海未ちゃん、顔が険しいけど、なにかあった?」
穂乃果は再び、海未に問い掛けた。
「ニューヨークにも、こんな自然豊かなところがあるのね」
「大都会の真ん中に、こ~んなに大きな公園があるなんて…素敵だね」
にこの言葉を受けたことりが、周りをグルッと見渡して、楽しそうに微笑む。
「う~ん…気持ちいい…」
花陽はグッと身体を伸ばしたあと、大きく深呼吸をした。
「テンション上がるにゃ!」
「凛ちゃん、嬉しそうだね」
「だって、かよちん!絶好のランニング日和にゃ!自然と身体が動いちゃうにゃ!」
「結構走ってる人がいるんだねぇ」
と穂乃果。
「東京で言ったら、駒沢公園みたいな感じやないかな?」
「あぁ、なるほど!…って、行ったことないけど」
「もう、いつまで話してるの?気持ちはわかるけど、早くスタートしないと。これから、あちこち行くんでしょ?」
「そうね、真姫の言う通りね。じゃあ、行きましょうか…って、海未は?」
絵里が、姿の見えない海未を探す。
「あ、いた!」
見つけたのは、ことり。
海未は大きな木の陰に隠れていた。
「海未ちゃ~ん…大丈夫だよ~!」
手招きをする、ことり、
それを見て、海未が恐る恐る近づいてくる。
「ことり!…信じても…よいのですね…」
「そんな風にしてると、逆に海未ちゃんが不審者に思われちゃうよ」
「!」
「そういうこと。さぁ、行くわよ!」
絵里はいつものように、パン!と手を叩いた。
「出発にゃ~!にゃにゃんがにゃ~!」
弾かれたように、凛が飛び出す。
「うふっ、凛ちゃん元気やねぇ…」
「…花陽ちゃん、花陽ちゃん…」
「どうしたの?ことりちゃん」
ランニングする花陽に、並走していることりが、小さな声で話し掛けてきた。
「…今日の夜…花陽ちゃんの部屋に行っていいかな?…」
「えっ?…別に構わないですけど…」
「…そのまま、寝てもいい?…」
「ええっ!?だって、ことりちゃん、ちゃんと枕、持ってきたんでしょ?」
「…うん、それはそうなんだけど…」
「…凛ちゃんに訊かないと…」
「…そうだね…じゃあ、あとで訊いてみる…」
そう言うとことりは、スピードを緩めて花陽から離れていった。
…今日は海未ちゃんから離れて、グッスリ寝たいの…
…花陽ちゃん、助けてね…
入れ替わるように花陽の横に来たのは、にこ。
「…花陽、そのままでいいから、耳だけ貸して!…」
「は、はい…」
「…今晩、そっちに泊まるから…」
「そっちに泊まる?」
「…アンタの部屋で寝かせて!って言ってるの!」
「ま、また?」
「また?」
「あ、いや…なんでもないです…。あ、花陽は別に構わないですけど…凛ちゃんが…」
「まぁ、そうね。わかったわ、あとで凛を説得するわ…」
にこは、そう言うと、少し速度を上げて前に行く。
…穂乃果と一緒だと、熟睡できないのよ…
…かといって、海未とことりの部屋じゃ居づらいし、真姫と希の部屋も気まずいし…
「…かよ…」
「?」
「…ちょっと、いい?…」
そう言って花陽の隣に並んだのは、真姫。
「…その呼びかた、久しぶりだね…」
「…だって、なかなか2人きりに『なれない』んだもの…」
真姫は花陽とプラネタリウムを観に『デート』をした日、2人きりの時に限り『かよ』と呼ぶと決めていた。
それは真姫が花陽を、親友と認めた証し。
だが、恥ずかしくて、メンバーの前で披露したことは、一度もない。
「どうしたの?」
「…あ、いや…その…今日、かよの部屋で寝てもいい?…」
「ま、真姫ちゃんも!!」
さすがに3度目とあって、花陽の声は大きくなった!
「?」
他のメンバーが花陽を見る。
「ちょっと、声が大きいわよ!っていうか、真姫ちゃん『も』ってなに?」
「あ、あぁ、ごめん。別に、深い意味は…えっと、花陽は構わないけど、凛ちゃんが…」
「わかってるわよ!あとで交渉するわ」
…希と一緒だと、色々ペースが狂うのよね…
…お陰でろくに、眠れなかったし…
「花陽ちゃん!」
声を掛けたのは希。
その声を聴いた花陽は
「の、希ちゃんまでぇ!?」
と飛び上がらんばかりの驚きよう。
「なんのこと?ウチはただ、もうちょっとペースあげた方がいいんやないかと思って、声掛けたんやけど」
「えっ!?あっ…」
確かに、考えごとをしながら走っていたせいか、先頭の凛との間がだいぶ開いている。
凛が飛ばし過ぎてるというのも、あるのだが。
「なんかあったん?」
「いえいえ…」
「それはそうと、今日、ウチ、凛ちゃんと部屋替わって貰おうかな?」
「な、なんと!?」
「ウチと一緒に、最後の夜を過ごさへん?」
「の、希ちゃん!」
「…なぁんてね!」
「…はぁ…」
「でも、半分は本気やけど」
「えっ!」
「まぁ、凛ちゃんがいいって言ってくれそうもないから、無理やとは思うけど」
「はぁ…」
…みんな昨日の夜、なにかあったのかな?…
…それとも、花陽がなにかしたのかな?…
「はい、じゃあ、ここでランニングは終了!…どうしたの?花陽。まだ、アップなのに、相当、疲れてるみたいだけど」
「はい、絵里ちゃん…アップなのに、なぜか、すごく疲れました…」
~つづく~