【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「さて、今日はなにを食べましょうか?」
ビルから夜景を見た9人は、そのままレストランに入り、メニューを眺めている。
夕食…というより、晩御飯に近い時間になっていた。
「お腹減ったにゃ!」
「ちょこちょこ食べてたんやけどね…」
「うひゃあ…どれも高そうだね?」
「そう?こんなものじゃない?」
「えっ!?あ、じゃあ、ここは真姫ちゃんのおごりということで…」
「なんで、そうなるのよ!」
「穂乃果ちゃん!いくら真姫ちゃんやからって、そんな集(たか)るようなことを言ったら…」
「そうですよ!これでは真姫との関係が、お金目当てと受け取られ兼ねません。そういった行為が、こちらに自覚はなくとも、イジメに繋がっていくのです!」
「う、うん…そうだね…真姫ちゃん、ごめん…」
「べ、別に私は気にしてないけど…。それより、さっきから、かよ…じゃない、花陽の様子が変なんだけど…」
「そういえば、ご飯だっていうのに、元気ないね…。花陽ちゃん、大丈夫?どこか具合悪い?」
ことりが心配して、声を掛ける。
しかし、返事はない。
よく見ると身体が小刻みに震えている。
「花陽…ちゃん?…」
「具合悪いのですか?」
「熱あるんやない?」
「かよちん?泣いてるの?」
「えっ?、花陽ちゃんが泣いてる?」
「希!アンタ、なんかしたでしょ!?」
「ウ、ウチ?ウチは『まだ』なにもしてないんやけど…」
「まだ?」
「いや、そこはスルーで…」
「そう言うにこちゃんこそ、かよちんに…」
「なんでアタシが、花陽を泣かさなきゃいけないのよ!」
「本当にどうしたのよ?多少の薬ならあるわよ」
「さすが真姫ちゃんにゃ!」
「まさか、ホームシック?」
絵里の質問に、花陽は小さく首を振った。
そして蚊の鳴くような声で呟いた。
…くまい…べたい…
「えっ?」
…くま…たべた…
「熊、食べた?」
「いやいや、穂乃果ちゃん!ここにきて『熊、食べた』とは言わないんやない…」
「白米が食べたいんですっ!!!」
花陽は、やおら立ち上がると大声で叫んだ。
その声に驚き、椅子からずり落ちる8人。
「は、白米?」
絵里が訊き直した。
「そう!こっちに来てからというもの、朝も昼も夜も…パン!パン!パン!!パン!!パン!!!白米が全然ないの!!!なぜ米国なのに、お米が食べられないんですか!?」
「うまい!座布団1枚」
「…穂乃果ちゃん…」
能天気に相槌を打つ、穂乃果に呆れることり。
「でも、昨日の付け合わせでライスが」
「白米は!付け合わせじゃなくて!主食!!海未ちゃんのクセに、そんなこともわからないんですか!!」
「うぁ、ご、ごめんなさい!」
「海未が圧倒されてる…」
にこは初めて見る光景に目を疑った。
「ちょっと、凛…」
「真姫ちゃん…凛もこんなかよちん、初めてにゃ…」
「ううっ…あったかいお茶碗で、真っ白なご飯を食べたい…」
「取り敢えず、花陽ちゃん、これ食べて」
ことりが花陽の口元に、パンを運ぶ。
「はむっ…あ、このパン美味しい♪…でも、ダメなんです。花陽の『お米ーター』はゼロなんです!エンプティです!」
「お米ーター?」
「凛も初めて訊いたにゃ…」
「すごい白米へのこだわり…」
さすがの穂乃果も、少し顔がひきつっている。
「あれ?かよちん?」
「…」
「花陽?」
今の今まで、立ち上がって力説していた花陽の動きが、ピタリと止まった。
「かよちん…死んじゃった…」
とたんにポロポロと涙を流す凛…。
「凛!バカなこと言わないで!」
真姫が慌てて、花陽の胸に自分の顔を押し当てる。
…あ、花陽の胸…やわらかい…
…じゃない!…
…えっと…心臓!…動いてる!…
…脈!…ある!…
…呼吸!…問題なし!…
「大丈夫!生きてるわ!」
「ま、真姫ちゃん!」
「ただ、本当に燃料切れなのかも…」
「そんなことってあるのですか?」
「知らないわよ…仮死状態…というより、仮眠状態?」
「人工呼吸はせんでいいの?」
「いらない!」
「心臓マッサージは?」
「いらない!」
「…って、希ちゃん!それ、ワシワシの手つきにゃ!」
「バレたか…」
「実は尻尾が付いてて、それがスイッチになってるとか…」
「ドラえもんか!」
「電源ケーブルが付いてるとか…」
「エヴァか!」
「もう、穂乃果もにこちゃんも、ふざけてる場合じゃないでしょ!」
「…じゃあ、どうすればいいの?」
「応急処置として、ご飯を食べさせるしかないわ」
「コンビニがあればいいのですが…」
「真姫ちゃん、どこかいいところ知らんのん?」
「まぁ、知らなくはないけど…」
「ウチがおぶっていくん?」
「体格的に一番適任でしょ?」
「真姫ちゃん、かよちんはそんなに重くないにゃ!」
「そんなこと言ってないでしょ!それとも凛が運ぶ?」
「もちろんにゃ!」
「凛ちゃん、無理しなくていいんよ。よいしょ!じゃあ、いこうか…」
「お、お姫様抱っこ~!?」
「この街に、まさか、あのお店の支店があろうとは…」
「はい、穂乃果ちゃん!まさかまさかです!しかも、大盛り無料券が使えるなんて!」
「ダイエットの時、寄り道して良かったね!」
「人生、なにがどう転ぶかわからないねぇ…あ、おかわり!」
「よ、よく食べるわね…」
「あ、真姫ちゃん、花陽を救ってくれて、ありがとう」
「べ、別に…救ったなんて大袈裟よ」
「おかわり!」
「…って、本当にそう思ってる?」
「む?真姫ちゃん、今、なにか言った?」
「ううん、なんでもない」
…まぁ、いいわ…
…あなたが元気になってくれれば、それでいいの…
~つづく~