【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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新しいわたし その11 ~裸の2人~

 

 

 

 

 

一般的なマンションのバスルーム。

それほど広いわけではない。

中に入ってきた希が、一歩進んだだけで、花陽と密着するほどの距離となる。

 

普段はふたつに分け、シュシュで結ばれている希の長い髪…。

しかし、今はそれがほどかれ、器用にタオルで巻かれている。

 

それ以外は何も身に付けていない。

 

希の乱入に、髪を洗っていた花陽は驚きのあまり、立ち上がったまま動けない。

希に背を向けて、固まっている。

 

「花陽ちゃん…」

さっきのテンションとは打って変わって、穏やかな…しかし、寂しげな声。

「の、希ちゃん…?」

希は背後に密着し、花陽の腰からお腹へと自分の両腕を回した。

「ぴゃあ!」

今日、何回目かの花陽の悲鳴。

希の豊かな胸が、花陽の背中に押し付けられる。

 

…うわっ、うわっ、希ちゃんの胸が…

 

焦る花陽。

 

「ワ、ワシワシはなしですよ!」

今日3回目の警告。

「約束出来ひん…って言ったやん…」

「き、聴いてません!」

 

 

 

その刹那…

 

 

 

希は両腕をうまく使って、花陽の身体を「クルッ」と反転させると、その勢いのまま抱きしめた。

「きゃあ!」

花陽が、小さく叫ぶ。

 

希の顔は花陽の肩口にあり、彼女からはその表情を伺い知ることはできない。

 

ひんやりとした希の真っ白な肌と、少し上気して火照った花陽の肌が触れ合う。

花陽にとっては、生まれて初めて裸のままの胸と胸とが密着するという、艶かしいシチュエーション。

 

いつもの彼女なら、きっとすぐに卒倒しているだろう。

それでも、少しだけ冷静になれたのは、希の『異変』がそれを上回っていたからだ。

 

「希ちゃん…今日、なんか、変です…」

「うん、そやね…。ウチもわかってる」

「なにか…あったんですか…」

「…ごめん、色々迷惑やね…」

「迷惑とか、そんなんじゃ…」

「ウチなぁ…」

言い掛けて、希の言葉が止まる。

 

 

 

…あかん…こんなこと花陽ちゃんに言ったらいかんやん…

…でも…花陽ちゃんにしか言えんのよ…

 

 

 

「ウチなぁ…時々、情緒不安定になるんよ…無性に人恋しくなるっていうか…そのバイオリズムが、今日の花陽ちゃんの存在と合致してしまったん」

希は言葉を止めることが出来なかった。

だが、この言葉には少しだけ嘘が混じっている。

でも、まだ明かせない。

 

「それは…いつも、ひとりきりだから…ですね…」

花陽の問い掛けに、希は

「それを言い訳にはしたくないんやけど…」

と答えた。

「いいと思います…言い訳にしても」

「ダメな先輩やね…」

「なんでそんなこと言うんですか…μ'sのメンバーは家族だって、希ちゃんがさっき言ったんですよ」

「そうやね…」

「だったら…花陽じゃ、全然チカラになれないかも知れないけど…困ったことがあったら言って下さい!」

「ありがとう、花陽ちゃんは本当に優しい娘やね…。そうしたら…」

「はい…」

「お願い、もう少しだけ、このままでいさせて」

「…はい…」

花陽が返事をすると、希の抱き締める腕の力が強くなった。

 

 

 

お互いの鼓動が響き合っている。

花陽には、希のそれがSOSに感じられた。

初めて見た希の「陰」の部分。

助けてあげなきゃ…と花陽は強く思った。

 

 

 

「希ちゃん…このままだと風邪ひいちゃいますから、一度、湯船に浸かって温まりません?」

「そうやね」

 

花陽が濡れたままの髪の毛を手で絞ると、タオルを頭に巻いて湯船に入った。

希が掛け湯をしてから後に続く。

2人は向き合っていたが、乳白色に濁ったお湯のお陰で、花陽はそれほど恥ずかしさを感じずにいた。

 

「花陽ちゃん…」

「は、はい!」

「もうひとつお願いしていいかな…」

「は、はい。出来ることがあれば、何なりと…」

「笑わんといてね…」

「なんですか?」

「今度は、花陽ちゃんに後ろから、ギュッとされたいんやけど…」

「あ、そんなことなら簡単で…って…ええっ!?」

「ダメならいいんよ」

「そんなことを言われたら…でも、これは結構、恥ずかしいです」

「ウチも恥ずかしいんよ」

確かに希の顔は真っ赤だ。

「わかりました…。じゃあ、希ちゃんは、向こうを向いて下さい」

「うん…」

希が湯船の中で、身体の向きを変えた。

「では、失礼して…」

花陽が少し距離を詰めて、希の肩越しから抱き寄せた。

「誰かにギュッてされるのって、なんか幸せやね」

「花陽も、とても穏やかな気持ちになってます」

「お風呂があったかいから?」

「それだけじゃありませんよ。きっと、人と人との温もりを感じるからです」

「さすが花陽ちゃん。ウチには言えないセリフやね」

「そんなこと…」

「ねぇ、花陽ちゃん」

「はい」

「せっかくその格好になってるんやから、たまには…ウチにワシワシしてみる?」

「な、なんと!?」

「いつもウチだけで悪いやん…しても…いいんよ」

 

 

 

…わっ、わっ、どうしよう!?…

…希ちゃんのおっぱいをワシワシ?…

…確かに…こんなチャンスは二度とないかも…

…しかもナマですよ、ナマ!…

 

 

 

花陽は頭がボーッとしてきた。

 

 

 

やおら希が叫んだ!

「あかん、このままやったら、2人とも逆上(のぼ)せてしまう!花陽ちゃんは先に上がった方が良さそうやね…」

「そうですね…」

 

…ホッとしたというか、残念というか…

 

幸か不幸か、花陽の逆ワシワシはお預けになった。

 

 

 

 

 

~つづく~


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