【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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やりたいことは その12 ~凱旋~

 

 

 

 

ニューヨークでのライブを無事に終えたμ's。

 

現地スタッフからは

「Great!」

「Amazing!」

「Marvelous!」

と絶賛され、手応えは感じていた。

 

しかし、一夜にして、まさかこんなことになろうとは…。

 

 

 

 

 

帰国したメンバーが成田から向かったのは、穂乃果の部屋。

 

彼女たちの表情は一様にして、疲労困憊といったところ。

疲れまくっている。

 

穂乃果の部屋と、雪穂が運んできた穂むらの饅頭、日本茶…このワンセットが揃って、ようやくホッとした顔になった。

 

 

 

「やっと我が家に帰ってきた…って感じ?」

「そりゃあ、アンタの部屋だからね」

「あははは…でもさ、普通、国内に旅行に出掛けても、地元の景色を見ると『あ~帰ってきたぁ~!!」ってなるじゃん!」

「そうやね」

「だけど今回は…」

と穂乃果。

 

メンバーはここに着くまでの様子を、各々頭の中で振り返る。

 

 

 

 

 

空港ではライブの映像が流れ、彼女たちに気付いた『ファン』にサインを求められた。

しかも、ひとりやふたりではない。

今まで経験したことのない、長蛇の列。

初めての出来事に戸惑いつつも、その場はなんとか凌いだメンバー一同。

 

 

 

次に待ち受けていたのは、地元アキバのフィーバーぶりだった。

 

 

 

至るところにμ'sの大小ポスターが貼られ、店のそこかしこに『μ'sの街、アキバ』というポップが目に付く。

そしてA-RISE御用達の『あの駅前の巨大ヴィジョン』でさえ、μ'sのニューヨークライブの様子を繰返し流していた。

 

まさに街を挙げての便乗ぶり…いや、歓迎ぶり。

 

ここでの認知度は以前から高かったが、それでも『一部のファンの間では…』とエクスキューズが付いていた。

 

しかし、彼女たちは、ライブの衣装を着て歩いているわけでもないのに、全方向から視線が集まるのを感じていた。

 

それは今までにない感覚。

 

視線を気にしないように振る舞おうとすればするほど、逆に不自然な動きになってしまう。

 

それが原因なのか…それとも9人で団体行動をしているせいなのか…はたまた、自然と醸し出されるアイドルとしてのオーラなのか…行く先々で『ファン』に囲まれ…その恥ずかしさやら緊張やらがあって、逃げるようにして、穂乃果の部屋までやってきた…というわけだ。

 

 

 

 

 

「スターになるってことは、こういうことなのよ」

にこはこの様子を楽しんでいるが、それ以外のメンバーは、本人たちに自覚がないにも関わらず、急に有名人になったことに、不安を隠しきれなかった。

 

 

 

「ウ…ウゥッ…無理です!こんなの無理ですっ!!」

「まぁまぁ、落ち着いて…」

「泣かなくても…」

穂乃果とことりに慰められているのは、海未。

「参ったわね…。帰ってきてから、街を普通に歩いていても気付かれるくらいの注目度。海外でのライブが至るところで流れてる…」

「真姫ちゃん、これって夢なんじゃない?」

「はぁ?そんわけないでしょ?」

「にゃ?穂乃果ちゃんの気持ちもわかるにゃ!」

「でしょ?でしょ?…だとしたらいつから…」

「このニューヨークライブの話自体が、夢だったんにゃ…」

「凛ちゃん、そこから?」

「いや、凛ちゃん…もしかした、ことりちゃんが見た夢…まだその中にいるのかも!」

「あ、穂乃果ちゃん、それだ!」

「穂乃果もことりも、バカなことを言わないでください!」

「いやいや、海未ちゃん…そもそも廃校になるっていうのが、夢だったんじゃないかな?」

 

 

 

「そこから!?」

 

 

 

これには、さすがにメンバー全員が穂乃果に突っ込んだ。

 

 

 

「雪穂ちゃん、いったい何があったんか、説明して欲しいんやけど…」

「はい。みなさんのライブがテレビとネットで、生中継局されたのは、知っての通りです」

「そうやね」

「凄かったのは、そのあとです!」

「?」

「まずアメリカの有名アーティストが、お姉ちゃんたちのライブ映像を観て『素晴らしい!』って、呟いて…」

「えぇっ!?」

「ほら、この人…」

と雪穂がスマホの画像を見せる。

「本当だ…」

「…で、これが、あっという間に話題になって…ワイドショーやニュースで『日本の女子高生がニューヨークで快挙!!』って繰返し報道されたから。それで、今回のライブだけじゃなくてμ'sが過去にアップした動画も、取り上げられたりして…」

「わっ、すごい再生数になってる!」

花陽は雪穂のPCを見て、驚きの声をあげた。

「じゃあ私たち、本当に有名人に?」

と絵里。

「そんな…無理です!恥ずかしいぃぃ…」

「海未ちゃん…だから泣かなくても…。あ、でもさ、それって!海外ライブが大成功だったってことだよね!?」

「うん!そうだと思う!」

「だよねぇ、花陽ちゃん!これはドームも夢じゃないよね!これでドーム大会も実現したらラブライブはずっとずーっと続いていくんだね!よかった!嬉しい~!」

「まだ、そう決めつけるのは早いんじゃないかしら」

「絵里ちゃん、冷静だね」

「なにかあまりに出来すぎで…そんなに上手くいくのかしら…って」

「確かにね」

真姫はうん、うんと首を縦に振る。

「それにしても、海未ちゃんほどやないにせよ、こう急に注目されちゃうと…芸能人が変装して外出する気持ちもわからなくはないやね」

「もうね、大変だったんだよ。さっきもファンの人が、お店にお姉ちゃんを訪ねてきてさ」

「えっ!そうなの?」

「まぁ、お母さんは『これで売り上げが上がるかしら?』…って、喜んでたけど…」

「まさか『高坂穂乃果の店』なんて、看板出さないよね!?」

「えっ!?えっ!?…それは…出さない…でしょ…」

 

 

 

…雪穂ちゃん、そのつもりだったね…

 

 

 

花陽は雪穂に『前歴』があることを知っている。

店内にはまだ『アキバのお米クイーンも太鼓判!』と書かれた文字と、花陽の写真が載ったチラシが貼られているからだ。

 

 

 

「それはそうと、これからは人気アイドルなんだから、行動に注意しなさいよ」

「えっ?にこちゃん?」

「A-LISEを見ればわかるでしょ?人気アイドルというのは常にプライドを持ち、優雅に慌てることなく…とにかく、どこに目があるかわからないから、外に出るときは恰好も歩き方も注意すること!」

「めんどくさ…」

真姫がいつも通りの一言。

「確かに、そこまで気を遣うのは…」

「私もちょっと…」

花陽もことりは「ねぇ…」と顔を見合わせた。

「アイドルってそういうものでしょ!」

「にこが言うこともわからなくないけど…それよりも前に、考えなきゃいけないことがあるでしょ!!」

「考えなきゃいけないこと…って…絵里ちゃん、なに?」

「穂乃果はわからない?」

「…はて…」

「こんなに人気が出てファンに注目されているのよ?」

「そうやね、これは間違いなく…」

 

 

 

「?」

 

 

 

 

~つづく~


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