【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「μ'sの次のライブは、いつやるの…ってことですよね?」
絵里の問い掛けに、そう答えたのは雪穂だった。
「正解!」
「なんで雪穂が答えるのよ!お姉ちゃんだってわかってたんだから!」
「はいはい、負け惜しみ言わない!」
にこに注意された穂乃果は、プゥ~と膨れてソッポを向いた。
「穂乃…」
それを見て海未がなにか言おうとしたが、花陽との約束を思い出し、自制する。
「実は『雪穂のお姉ちゃんって、μ'sだよね!次はいつライブやるの?』みたいな質問が結構多くて…。でも、私の口から『μ'sは解散しちゃうんだよ…』なんて言えないし…」
「あれ?でもさ、μ'sは解散するって、みんな知らないんだっけ?」
「はい。公(おおやけ)には、なにも発表しておりませんので」
「だけど、だとしても…穂乃果たち、スクールアイドルなんだよ。絵里ちゃんたちが3年生だって、みんな知ってるじゃん!」
「多分、見ている人にとっては、私たちがスクールアイドルか、そうじゃないか…ってことはあまり関係ないんじゃない?」
「真姫ちゃんの言う通りです。実際、学校を卒業しても、趣味でアイドル活動を続けている人はいるし…A-RISEみたいに、本当にプロになっちゃう人たちだって…」
花陽は、そう言ったあと海未の顔を見た。
「実はその件で、この間、花陽から相談を受けていたんです。いつ、どのタイミングで、μ'sが解散したことを伝えるべきなのか…って」
「その時は新入生歓迎会がベストかな…って言ってたんですけど、この状況だと、早めにアナウンスした方が…」
「そうやね…」
「なんか…もったいないね…」
「穂乃果…」
「せっかくみんなに認めてもらえたのに…」
「穂乃果ちゃん…」
「あ、ごめん!ごめん!穂乃果、こんなに注目されたこと、今まで一度もないからさ…」
「…」
穂乃果の気持ちもわからないでもない。
未練がないと言えばウソになる。
だが、すでに解散は決めたこと。
その葛藤が、メンバーを無言にさせた。
「ライブ…」
「えっ?」
「やるしかないんやない?」
「希ちゃん…」
「ライブ…ですか?」
「そう、みんなの前でもう一度ライブをやって、ちゃんと終わることを伝える。ライブに成功して注目されてる今、それが一番なんやないかな?」
「解散ライブ…」
穂乃果がポツリと呟く。
「それに…ちょうど、ふさわしい曲もあるみたいやし…ね、真姫ちゃん!」
「えっ!?」
「ちょっと、希…」
「いいやん、隠さなくても…。実は真姫ちゃん、新しい曲を作ってたんよ!…μ'sの新曲…」
「!!」
「新曲!?」
「本当なの?」
「でも、解散するのにどうして?」
にこ、絵里、ことりが矢継ぎ早に質問をする。
「希にも言ったけど…別にこういうことを想定してたわけじゃ…。スクールアイドルは続けるんだし、曲は作っておくに越したことはないじゃない」
「そうだね」
穂乃果が…納得…と頷く。
「だけどタイトルは『桔梗(仮)』って書いてあったやん」
「な!…それも見てたの?…」
「ききょう?それって、どういう意味?」
「肺に穴が開くことにゃ、」
「それは『気胸』でしょ!」
「さすが真姫ちゃん!医者の娘だけあるにゃ!」
「ふふふ…穂乃果ちゃん、凛ちゃん…花言葉って知ってる?」
希が2人に問い掛ける。
「それは知ってるけど…」
「桔梗の花言葉までは…」
「桔梗の花言葉は…honesty(正直、誠実)、 obedience(従順)…そして…endless love(永遠の愛)、the return of a friend is desired(友の帰りを願う)…なんやって!」
「永遠の愛…」
「友の帰りを願う?」
と絵里とにこ。
「それってまさか」
「アタシたちのこと?」
「…と訊いてるけど、どうなんやろか?」
「ノーコメント!想像に任せるわ」
真姫の顔は赤い。
…まさか、あれを読み取るとは…
…これだから希は…
「真姫ちゃん!聴かせてよ!」
「あるんやろ?」
穂乃果と希にそう促され、真姫は渋々ポケットからプレーヤーを取り出した。
穂乃果がそれを受けとると、すかさずイヤホンを自分とことりの耳に差す。
「!」
「…優しい曲…」
「なんか、あったかい…」
「いいな~!凛も聴きたいにゃ!」
「アタシのソロはちゃんとあるんでしょうね!?」
「私も早く聴きたい!」
「お、えりちもやる気やね?」
「そ…そういうわけじゃないわよ…」
少し前のめりになったことに、照れたのは絵里。
「別に恥ずかしがらなくてもいいやん」
「そんなんじゃ…」
「ねぇ、海未ちゃん!これで作詞できる?」
「はい、もちろんです。私も書き貯めている詞はありますし…それに…」
「それに?」
「いつかまた、9人で歌えることを夢見ていましたので」
「μ'sの?」
「私も!」
「ことりもですか!?」
「向こうでも、ずっと衣装ばかり見てた!これ絵里ちゃんに似合うな…とか、にこちゃんはこんな感じかな…とか」
「うふふ…みんな考えることは同じってことやね。どう?やってみない?μ'sの最後を伝えるライブ」
「…」
「穂乃果?」
「あ…ごめん。あのさ、私、ニューヨークで道に迷ったとき、お姉さんに助けてもらった…って言ったでしょ?」
「幽霊の?」
「凛、そういうこと言わないで!」
絵里が険しい顔をする。
「あはは…ごめん、ごめん!…で、その…幽霊…じゃない、お姉さんがどうかしたの?」
「みんなとはぐれて、心細かったのもあるのかも知れないけど…廃校を阻止できて、ラブライブにも出れて、優勝までしちゃって…。そうしたら次の目標はなんだろう?…って思っちゃって。なんのためにニューヨークまで来たんだろう…って」
「燃え尽き症候群…やね」
「私たちは卒業するから『次』は考えていないけど、残る側は新たな目標…モチベーションというのかしら…そういうのは、当然、必要だもの」
「それでね…お姉さんに訊いてみたんだ。どうしてお姉さんは、ここで歌ってるのか?…って。あ、そうそう、お姉さんも、前は穂乃果たちみたいにグループで歌ってたんだって!…でも、色々あったらしくて…」
「そりゃあ、何年も、何十年もって続けられればいいけども…そう簡単にはいかないから…」
にこは自分の体験を思い出しながら、静かに言った。
「うん…。だけどね、お姉さんはそこで歌い続ける理由を、こう言ったんだ」
…簡単だったよ…
…今まで自分たちがなぜ歌ってきたのか…
…どうありたくて、何が好きだったのか…
…それを考えたら、答えはとても簡単だったよ…
「わかったような、わからないような…」
「うん、凛ちゃん!穂乃果もその時、そう思ったんだ。でも、その言葉…今、わかった気がする!」
「にゃ?」
「やっぱり、歌うことが好きなんだ!だから私たちの歌を聴いてほしい!!想いを伝えたい!」
「穂乃果!」
「穂乃果ちゃん!」
「お姉ちゃん!」
「うん!やってみよう!こんな素敵な曲があるんだったら、やらないともったいないよね!やろう!μ's最後のライブ!そして、みんなに伝えよう!…μ'sは…解散します…って…」
「異存はないですね?」
「まったく…仕方ないわねぇ!!」
「ふふふ…まだ、終わらないんやね!…って、えりち?…」
「えっ?」
考え事でもしていたのだろうか、一瞬、上の空状態だった絵里。
「絵里は反対なのですか?」
リアクションが薄かった絵里に、海未が尋ねる。
「そ、そんなこと、あるわけないじゃない!」
「だよねぇ!」
その言葉にホッとした表情の穂乃果。
「…練習…厳しくいくわよ!」
絵里の声に、全員が立ち上がる。
「いっくよ~!ラストライブに向かって、全力で走るよ!」
「オーッ!!」
だが、そんな中、花陽は絵里の様子に、少しだけ違和感を覚えていた…。
~つづく~