【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
ラブライブ!の1ヶ月は、60日くらいあるんじゃないか…と改めて思う今日このごろ…。
ことりのスマホが鳴った。
それは穂乃果の部屋で、μ'sのメンバーが最後のライブを行う決意を固めた瞬間だった。
「もしもし?お母さん?」
「!」
メンバーに緊張が走る。
「うん、穂乃果ちゃんち。えっ?今から?…訊いてみるけど…うん、わかった…はい…じゃあ…」
「お母さん?」
「理事長?」
それぞれ口にした呼び方は違うが、もちろん同一人物を表す。
「うん、お母さんから…。でも理事長としての電話だった」
「?」
「なにかありましたか?」
「う~ん…穂乃果ちゃん、花陽ちゃん、今からうちに来れる?」
「今から?」
「ことりちゃんち?」
「詳しくはその時に話したい…って…」
「お邪魔しま~す」
「失礼します…」
ことりが穂乃果と花陽を、自分の住むマンションへ連れて行き、リビングに通した。
そこに待っていたのは…自宅にいるのにも関わらず『いつものように』スーツを身に纏った、ことりの母。
「穂乃果ちゃん、小泉さん、今晩は。ごめんなさいね、お呼びだてしちゃって…」
「ご無沙汰してます!」
穂乃果はそう言って、ペコリと頭を下げた。
…ご無沙汰?…
…毎日とは言わないまでも、学校で頻繁に顔を合わせているよね?…
花陽も…ことりとその母も…穂乃果の言葉に耳を疑った。
それを察してか、穂乃果が弁明する。
「あ、いや、ことりちゃんの家に来たの久しぶりで…。だから『ことりちゃんのお母さん』として会うのも久しぶりたがら…」
「あ~…そういうこと!?」
3人は一様に納得した。
「花陽ちゃんは、結構来てるよね?」
「はい、衣装作りのお手伝いで何回か…」
「ほらね!穂乃果はホントに久しぶりなんだよ」
「そうだね…なにかあると、集まるのは穂乃果ちゃんの部屋だもんね。さっきもそうだったし」
ことりの言葉を受け
「いつも、お邪魔しちゃって…。穂乃果ちゃんのお母さんにも、ちゃんとご挨拶に行かなきゃ…って思ってるんだけど」
と母親として謝辞を述べた。
「いえいえ、広いだけが取り柄の部屋なんで」
「あら、それが一番なんじゃない?うちなんて、狭くて、呼ぼうにも呼べないもの…あ、良かったら、召し上がって」
「あ、はい!では、遠慮なく!」
「い、いただきます…」
2人はそう勧められて、出されたお茶菓子を口にする。
それから少しの間、ことり親子と穂乃果…そして花陽は、他愛のない会話をして時間を過ごした。
ここで花陽は『理事長』ではなく『ことりの母』としての顔を、初めて見ることになった。
…理事長さんも、普通のお母さんなんですね…
和やかに話す3人を見て、花陽はそんなことを思った。
どれくらい経ったろうか。
「それはそうと…お母さん…話って?」
ひとしきり談笑したあと、ことりが母に尋ねた。
「そうね!その為に来てもらったんだものね」
その瞬間、顔は『母のそれ』から『理事長のそれ』になった。
「単刀直入に言うわね…。音ノ木坂のスクールアイドル…μ'sを続けてもらうことはできないかしら?」
「μ'sを続ける?」
思わぬ言葉に、ことりも驚いたようだった。
…いや、生徒会長の穂乃果、新しく部長になった花陽が呼ばれた時点で、なにかあるとは思っていたが…まさか理事長直々に、そんな要請をされるとは想像だにしていなかったのだ。
「スクールアイドルとして圧倒的な人気を誇るA-LISEとμ's…。ドームでの大会を実現させるには、どうしてもあなたたちの力が必要なんだと、大会関係者はみんなそう思っているわ」
「お母さん…」
「出発前にも同じようなことを言ったけど…μ'sには今回のライブの成功を受け、その声が一層高まっているの」
「確かに、ここまで人気が出ちゃうと…っていうのはわかりますけど…」
花陽は、ことりと穂乃果の顔を見て、同意を求めた。
頷く2人。
「3年生が卒業して、スクールアイドルを続けるのが難しいのであれば、別の形でも構わないわ」
「別の形?」
「とにかく、今の熱を冷まさないためにも、みんな、μ'sには続けてほしいと思っている…」
「そんな…」
「無理に…とは言えないわ。でも、前向きに考えてほしいの…」
「お母さん…」
「…ですが…困りましたね…」
翌日、音ノ木坂に集まったμ'sのメンバー。
海未を始め、全員が当惑していた。
「うん、海未ちゃん。困ったことになっちゃったね… 。最後のライブの話をしていたところなのに…」
花陽の眉毛はいつもにも増して、ハの字の角度がきつくなっている。
「私は反対よ!ラブライブのおかげでここまで来られたのは確かだけど、そうまで義理立てする必要があるの?」
「真姫ちゃん…義理立て…とはズバッときたね…」
と言うものの、穂乃果は否定も反論もできなかった。
「でも、大会を成功に導くことができれば、スクールアイドルはもっと大きく羽ばたける」
「ニューヨークに行ったのも、その為やしね…」
「待ってよ!その役割は果たしたじゃない!…絵里も希も…ちゃんと終わりにしようって…μ'sは3年生の卒業と同時に終わりにしよう…って決めたんじゃないの!?」
「真姫の言う通りよ!ちゃんと終わらせる…って決めたんなら、終わらせないと…違う?」
「にこ…」
「違わない…違わないんやけど、2人やって、気持ち、揺れてるやろ?」
「うっ…」
「にこっち…いいの?続ければドームのステージに立て…」
「もちろん立ちたいわよ!…けど…私たちは決めたんじゃない。9人みんなで話し合って…。あの時の決心を簡単には変えられない!わかるでしょ?」
「にこっち…」
「でも、にこちゃん!もしμ'sを終わりにしちゃったらドーム大会はなくなっちゃうかもしれないよね…」
「凛たちが続けなかったせいで、そうなるのは…」
「花陽…凛…それは…そうだけど…」
にこは頭を抱えて、座り込む。
「穂乃果ちゃん…みんな…ごめんね…」
突然謝ったのは…ことりだった。
「こ、ことりちゃん?」
「ことり?」
「どうしたん?急に」
「お母さんが、あんなこと言わなければ、みんな、こんなに悩まなくも済んだのに…」
「ことり、それは違います。苦しかったと思いますよ…お母さんとして…理事長として…このことを伝えるのは…」
「海未ちゃん…」
「そうやね。学校を代表する立場やから、それはそれで仕方ないんやない?どのみち、大会関係者から話が来たんやろうから…。誰から聴かされても同じやったと思うよ」
「希ちゃん…」
「そうにゃ!μ'sがスターになった証しにゃ!」
「凛ちゃん…」
「こういうのを『贅沢な悩み』って言うんだよ…ね?かよちん」
「う、うん…そうだね」
「部長はどうしたいの?」
「へっ?わ、私?」
「アンタしかいないでしょ?」
「はぁ…難問ですぅ…。にこちゃんたちが卒業しないのが、一番いいんだけど…」
「穂乃果みたいなことを言わないでください!」
「う、海未ちゃん…また、そういうことを…」
「部長として言わせて頂くなら、スクールアイドルμ'sは解散します。それでも、どうしても…というなら6人でやるしかないと思います。ただし、その場合でもμ'sの名前は使いません」
「かよちん…」
「私たちが…スクールアイドルしてではなく、9人で活動を続けられれば、話はまた別ですが…」
「それは…む…」
絵里はなにか言い掛けたが、途中で口をつぐんだ。
…絵里ちゃん?…
花陽は絵里の今の言葉に、この間と同じような違和感を覚えた。
「…穂乃果はどう思うの?」
だが絵里は、何事もなかったように穂乃果に話を振った。
「うん!わからない!」
「穂乃果…」
その開き直った回答に、苦笑いする絵里。
「だってさ、みんな正しいんだもん。歌うのは好きだし、続けたい。そしてμ'sを観たい、続けてほしいという人がいる。だったら、その期待には応えたい。私たちはいままで、そうしてきたんだから」
「…」
「だけどスクールアイドルに対する拘りもある。9人揃ってこそμ'sだという気持ちも強い…」
「…」
「ただ…」
「ただ?」
「ただ私たちが最高のパフォーマンスができないようなら…中途半端なステージになるくらいなら…続けるべきじゃないと思う」
「!!」
メンバー全員が、一瞬、頭を殴られたような衝撃を受けた。
…最高のパフォーマンス!?…
『全身全霊』
穂乃果の言葉に、自分たちが歌った詞の一部を想い浮かべた。
「もう一日だけ、個人個人で考えてみようよ!何をどうしたらいいのか…もう一日だけ…」
~つづく~