【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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やりたいことは その15 ~A-RISE、Drive、Lovelive~

 

 

 

 

 

ハァ…ハァ…ハァ…

 

 

 

息を切らして走っているのは、穂乃果。

家に帰り、これからのことを、ベッドの上でゴロゴロしながら考えていたところ、突然電話が鳴り、呼び出された。

 

 

 

相手の名は…

 

 

 

綺羅ツバサ…。

 

 

 

言わずもがなA-RISEのリーダーである。

電話は「近くまで来てるから、ちょっと会わない?」という内容。

ふたつ返事でOKをした穂乃果は、急ぎ身仕度を整えると、家を飛び出した。

 

 

 

そして指定された場所に辿り着く。

 

 

 

そこには白を基調としたミリタリールック風の衣装を着た…いかにもA-RISE然とした少女が立っていた。

 

「ツバサさん!」

「穂乃果さん!おかえり…でいいのかしら?随分とご活躍な様子で…」

「あははは…なんなんですかねぇ…私たちが一番驚いてます」

「ねぇ、少し時間ある?車を待たせてあるの…。ドライブしましょ?」

「ド、ドライブ!?時間はありますけど…免許取ったんですか?」

「うふふ、違うわよ…」

そう笑いながら、ツバサは穂乃果の手を引っ張ると、数メートル先に停めてあった黒塗りの車へと歩を進めた。

 

「えっ!こ、これって…」

穂乃果は一瞬、たじろいだ。

 

そこにあったのが『リムジン』だったからだ。

 

 

「デビュー曲の撮影で使ってるの」

「あ、それで…」

穂乃果は、彼女がこの時間、この場所で衣装を着ている理由を理解した。

 

 

 

「うわっ…すごい…」

 

 

 

中に入った穂乃果は、そこに優木あんじゅと統堂英玲奈がいたにも関わらず、まずはそのゴージャスな内装に圧倒され、茫然としてしまう。

 

「立ってないで、座ったらどう?」

「なにか飲む?」

 

あんじゅと英玲奈に声を掛けられ、穂乃果はやっと現実世界に戻ってきた。

 

「あっ…こ、こんばんは…」

「うふふ…ちょっと始めはビックリするよね…あぁ、座って…」

とあんじゅ。

「は、はい…失礼します…」

穂乃果は車内の…『コの字』に組まれた、革張りのソファに腰を下ろした。

「撮影は?」

「さっき終わったところ。ちょうど近くだったから…。少しいいですよね?」

ツバサが運転手に声を掛けると、車は静かに走り出した。

 

「どうだった?向こうは…」

「は、はい…とても楽しく勉強にもなりました」

あんじゅから手渡されたミネラルウォーターを口にして、穂乃果は少し落ち着いた。

「そうか…」

英玲奈は相変わらず、言葉短く、ぶっきらぼうに相槌を打った。

「ライブ、大成功だったみたいねぇ…」

あんじゅはを脚を組み替えながら、穂乃果に訊く。

 

 

 

…あんじゅさん…

…い、色っぽい…

…っていうか、見えちゃいそう…

 

 

 

その仕草に、思わず穂乃果の視線は、彼女の短いスカートの裾へと移る。

 

 

 

 

「どうか…した?」

「あ、いえいえ…別に…」

 

 

 

…μ'sにはいないタイプだよね…

 

 

 

少しだけアンニュイな雰囲気が漂うあんじゅを見て、穂乃果はそう思った。

 

 

 

「穂乃果さん」

「はい!」

「あんじゅに気を付けてね?」

「えっ?」

「意外とエッチだから。変なことされないように」

「!」

「ちょっと、ツバサ…うふふふ」

「は、はぁ…」

 

 

 

…希ちゃん系なのかな?…

 

 

 

「それはそれとして…次のライブはどこでやるの?」

「えっ?あっ…それがその…」

「その顔は、どうしよう…って顔ね」

「決まってないのか?」

「はい…。μ'sは3年生が卒業したら終わり。それが一番いいと私たちは思っていました」

「…」

「でも、今はすごいたくさんの人が、私たちを待っていてくれて…ラブライブの発展に力を貸せるなら…って…」

「期待を裏切りたくない?」

「応援してくれる人がいて…歌を聴きたいと言ってくれる人がいる。だから期待に応えたい…私たちはずっとそうしてきたから…やっぱり…」

「だったら続ければ?」

「あんじゅさん…」

「迷うことはないんじゃない?」

そう言うと、あんじゅは穂乃果の前に、1枚のカードをスッと差し出した。

「これは?…」

「名刺…って言ったらいいのかしら。私たちをこれからマネージメントしてくれるチームの」

「マネージメント…?」

「私たちは、スクールアイドルを辞め、プロとして歌っていく。学校を卒業してスクールアイドルじゃなくなっても、この3人で…A-LISEとして歌っていきたい、そう思ったから」

「はい、すごく素敵なことだと思います」

「でも、私たちも、それを決断するまでは相当迷ったの。だから、あなたの気持ちはわかっているつもり…」

「ツバサさん…」

「特にツバサは、μ'sに負けたことで、かなり自信をなくしていたからな」

「英玲奈!」

ツバサは…余計なことを言わないで…という顔をした。

それを見て、ふふふ…と笑う英玲奈。

「続けるか、否か、それが問題だ…って感じで」

「ハムレットね…。ラブライブを目指し、スクールアイドルとして活動、そして、成し遂げたときに終わりを迎える…それはそれで、とても美しいことだと思う」

あんじゅは髪を弄りながら喋る。

こういうところは、少し真姫に似ているかも知れない。

「でもね…」

ツバサが言葉を繋げる。

「やっぱり名前がなくなるのは寂しいの…。この時間を、この一瞬をずっと続けていたい。そして、お客さんを楽しませ、もっともっと大きな世界へ羽ばたいていきたい。そう思ったから 私たちは…」

「…」

「穂乃果さんがどういう結論を出すかは自由よ。でも、私たちは続ける…あなたたちも続けてほしい」

「共に、ラブライブを戦ってきた仲間として、これからも…私たちは競い合っていきたい」

「ツバサさん…あんじゅさん…」

 

「ところで…小泉さんは、元気にやってるか?」

「へっ?小泉さん?…花陽ちゃん?」

不意に飛び出した英玲奈の質問に、少し戸惑った穂乃果。

だが

「…えぇ…元気ですよ。部長として、みんなを引っ張っていってます」

とすぐに返答した。

「そ、そうか…」

「?」

「いや、一緒に利き米コンテストで戦ったから…それだけだ」

「は、はぁ…」

ツバサとあんじゅはその言葉を聴いて、ニヤニヤしている。

「?」

腑に落ちないのは穂乃果。

しかし、数日後、その理由を知ることになる…。

 

「あ、あの…」

「?」

「A-RISEは…みなさんは、ドーム大会に呼ばれたら…」

「当然出るわよ」

「断る理由がない」

「…ですよねぇ…」

「私たちのひとつの目標は、ドームでの単独ライブをすること。だから、もし呼ばれて出たなら…いい『下見』になる」

「ドームで単独ライブ!!…すごいな…。考えたこともなかった…」

「あなたたちなら、きっとドームをフルハウスにできるわ」

「フルハウス…」

「満席ってことよ」

「はぁ…えっ?え~っ!!穂乃果たちが?ドームを?」

「出来るわよ。あなたたち9人は、それだけの実力も魅力もあるもの」

「羨ましいな。私たちと同じユニットだったら、最強なんだがな…」

「同じユニット…そうですね」

「12人を束ねるリーダーは大変そうだけどね」

あんじゅは穂乃果の顔を見た。

「わ、わたし?無理、無理、無理…ツバサさんお願いします」

「ツバサは無理だな。自分勝手で、人をまとめるようなタイプじゃない!」

「…悔しいけど、反論できない…」

 

「ぷっ…」

穂乃果はそれを見て、吹き出してしまった。

 

「な、なに?おかしい?」

「A-RISEのみなさんも、私たちと変わらないんだな…って。なんか普段は普通に仲良しなんだな…って」

「勘違いされがちなのよね…。変わらないわよ、私たちだって、あなたたちと」

「はい…。良かったです、話ができて」

「私たちの思いは伝えたわ。あとは穂乃果さんたち次第…。もし、スクールアイドルに拘らず、活動を続けていくのであれば、いつでも相談に乗るわよ。さっきのカードに連絡先が書いてあるから」

「いつか一緒にステージに立てたらいいわね」

「どっちにしろ、自分たちの道だ。頑張れよ」

 

 

 

 

 

3人の激励を受け、穂乃果は車を降りた。

 

 

 

 

 

~つづく~


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