【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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やりたいことは その17 ~「穂」の字に「ほ」の字~

 

 

 

 

在校生6人のスマホに、絵里からメッセージが入ったのは、深夜のことだった。

 

 

 

この時、穂乃果はベッドで考えことをしていた。

A-RISEとの会話に、このあとのμ'sのヒントが隠されている…そう思ったからだ。

 

 

 

…『同じユニットなら最強なんだがな』…

 

 

 

英玲奈の言葉が、耳に残っている。

 

 

 

…同じユニットかぁ…

 

 

 

そこに飛び込んできた、メッセージ。

 

3人で話し合った結果、今度のライブを以てμ'sを卒業することに決めた…そう書かれていた。

 

 

 

…そっか…

…やっぱり、そうかぁ…

…でも仕方ない!この決断を尊重しなきゃ…

 

 

 

…ん?…あっ!そうだ!…

 

 

 

穂乃果はそう呟くと、何度か頷いた。

そして、やおら、ベッドから起き上がり電話を掛ける。

 

 

 

「あ、こんな時間にごめん…。メッセージ…見た?うん、それでちょっと相談に乗ってほしいことが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝…。

 

 

 

穂乃果は練習着に着替えると、音ノ木坂へと向かった。

廊下を走り、階段を上り、屋上に出る扉を開ける。

 

 

 

「!」

 

 

 

「穂乃果!」

 

 

 

「う、海未ちゃん!?な、なんでいるの…あっ…」

「私だけでは、ありませんよ」

「えへへっ…」

「ことりちゃん!」

「おはようございます!」

「遅いにゃ~!」

「花陽ちゃん!凛ちゃん!」

「まったく、相変わらずマイペースねぇ」

「真姫ちゃん…なんで?なんで?今日練習だなんて一言も…」

穂乃果は、右に左にと首を振る。

 

「だって、ライブ、やるんやし」

「私たちも、まだスクールアイドルだから」

「まぁ、アタシはどっちでも良かったんだけど…」

その背後から現れたのは、卒業生の3人。

 

「希ちゃん!絵里ちゃん!来てたのぉ?」

「…って、なんでアタシの名前は呼ばないのよ!」

「お約束にゃ」

ドッと一同が笑う。

 

「偶然?」

「ことりは、そろそろ練習したいな…って」

「私もです」

「面倒くさいわね…ずっと一緒にいると、何も言わなくても伝わるようになっちゃって…」

そう言うと真姫は、大きくノビをした。

「みんな、答えはきっと同じだったんだよ!」

「ことりの言う通りです。μ'sはスクールアイドルであればこそ…です」

「うん、結論は出た。あとはライブを頑張るのみ!!」

穂乃果の言葉に、全員が頷いた。

「…でも、そうしたらドーム大会は…」

「大丈夫、凛ちゃん!それも絶対実現させる!」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「ライブをするんだよ!」

「…どういうことにゃ?」

「ライブはするでしょ、解散ライブ…」

「違うよ、真姫ちゃん!みんなでライブをするんだよ!スクールアイドルが、いかに素敵かをみんなに伝えるライブ!」

「なにそれ?意味わかんない…」

「スクールアイドルは、A-LISEや私たちだけじゃない!」

「はい、スクールアイドルみんなが歌って、踊って…それを知ってもらうライブをします!」

「花陽!?」

「昨日、穂乃果ちゃんから電話もらって…2人で一生懸命考えたの。そして出た答えが…」

「全国のスクールアイドルが集まって、みんなでライブする!」

「はぁ?バカじゃない!全国の…って…」

「うん、にこちゃん。全国は言い過ぎかも…。だけど、できるだけ声を掛けて、ひと組でも多く参加してもらおうと思うんだ!」

「つまり…合同ライブ…ということですか?」

「ね?すっごく、いい考えがでしょ!?ねっ!ねっ?」

「まだ理解してないんだけど…それは自分たちで大会を開く…ってこと?」

「違うよ、真姫ちゃん…実はね…」

 

 

 

「えぇ~っ!共演!?」

 

 

 

「うん、みんなで同じ曲を歌って、踊るんだ!」

「ほ、本気ですか?」

「今から間に合うの?」

「絵里ちゃんの心配はもっともだけど、やる!絶対にやる!」

「そんなこと言っても…どれだけ大変だと思ってるのよ」

真姫はそう言うと、首を左右に振った。

「わかってるよ。時間はないけど、もしできたら面白いと思わない?」

「いいやん!ウチは賛成!」

「面白そうにゃ~」

「もう、無責任に…」

「でもね、真姫ちゃん。実現したら、ホントにすごいイベントになるよ!?」

「仕方ないわねぇ…」

「にこちゃん?」

「スクールアイドル『にこに~』の最後のステージは、その他大勢が華を添える!ってことでしょ?」

「それは、ちょっと、違うような…」

「でも、そうしたら…A-RISEとも一緒にステージに立つ…ってことでしょ?」

「うん、OKしてくれれば」

「それはすごいかも!にことA-RISEが同じステージに!…一生に一度、あるかないか…いや、もう二度とそんな機会は訪れないわね」

「そうだね!一生に一度の…世界でいちばん素敵なライブ!」

ことりはニッコリと微笑んだ。

「これは今までで、一番面白ライブになるかも知れませんね」

「海未ちゃん…みんな…」

穂乃果は、花陽の顔を見た。

それに気付いた花陽は、えへへ…と照れ笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一緒にライブ?…」

 

 

 

穂乃果の電話の相手は、綺羅ツバサ。

 

彼女は穂乃果の唐突な依頼に、次の言葉が出ずにいる。

そこで、穂乃果がそのまま話を続けた。

 

「私たちμ'sは…やっぱり、ここでおしまいにしようということになりました…」

「…そう、残念ね…。なら、A-RISEに入る?6人まとめて面倒見るわよ。ひょっとして、そういう相談かしら?」

「…いえ、まさか…。あ、でも…まだ、解散することを身内以外には伝えられてなくて…だから、最後のライブを行って、そこで発表します!」

「最後の…解散ライブ?」

「はい…」

「それって格好良すぎない?」

「あははは…そうですかね?」

「みんなが見たいときには、もういない…なんて、まるで一瞬で消えちゃう流れ星みたいじゃない」

「流れ星…ですか…。そうかも知れませんね…」

「ドーム大会のことは?」

「そうなんです。実は、それが引っ掛かってて…。だから考えたんです…。最後に…みんなが集まってスクールアイドルの素晴らを伝えられたら…って」

「えっ?」

「やっぱりμ'sだけで、ドーム大会の開催を導くなんて、力不足です。A-RISEのみなさんの力だって必要です。…そう考えたときに、ふと思ったんです。全国のスクールアイドルが『ドーム大会開催に向けて、力を合わせればいいんじゃないか』って。私たちだけが盛り上がってもダメなんじゃないかな…って」

「なるほど…全国のスクールアイドルが、心から楽しいと思えるライブをやれば、たとえ私たちがいなくなってもドーム大会に必ず繋がっていく…というわけね」

「はい!」

「そういえば…μ'sのキャッチコピーは『みんなで叶える物語』だったわね…。あなたたちらしい、面白いアイデアだと思う」

「それに…もう一度、A-RISEと同じステージに立ちたい…と」

「!」

「最初で最後になると思いますが…」

「光栄だわ。今をときめくμ'sから、お誘い頂くなんて」

「いやぁ、それほどでも…」

「それに、みんながハッピーになれるというのも悪くない。私たちも、あと少しだけ、スクールアイドルだし…協力するわ」

「ありがとうございます!」

 

 

 

「でも、ひとつ、参加するには条件があるの」

 

 

 

「条件?」

 

 

 

「私と付き合ってほしい…」

 

 

 

「ぶほっ!…そ、それは…」

 

 

 

「穂乃果さんは、今、付き合ってる人とかいるの?」

「いません、いません!音ノ木坂は女子高ですし…」

「好きな人は?」

「す、好きな人?…」

「園田さんかしら?」

「う、海未ちゃん?いやいや海未ちゃんは好きだけど、いつも怒られてばっかりで…」

「それじゃあ、南さん?」

「こ、ことりちゃん?う、うん…ことりちゃんも好きだけど…ってμ'sのメンバーはみんな大好きです。でも、付き合うとか付き合わないとかは…」

「うふふ…冗談よ…」

「…で、ですよねぇ…あぁ、ビックリした…あははは…」

 

 

 

…半分本気だけど…

 

 

 

「な…なんと!?」

 

 

 

「いや、別に…。それより、私たちが参加する条件は…新たに曲を作ってほしい」

 

 

 

「え~っ!!新たな曲~っ!?」

穂乃果は、思わず電話であることを忘れて叫んだ。

 

 

 

ツバサは、一旦スマホを顔から離して、耳鳴りが収まるのを待ってから返答した。

「えっと…せっかく、みんなでライブをするなら、それにふさわしい曲というものがあるはず。いわばスクールアイドルのテーマ曲…」

「テーマ曲…」

「そんな曲を作れるのは、大会優勝者である、あなたたちだと思う」

「A-RISEだって優勝チームじゃないですか」

「私たち無理よ。曲の方向性が違うもの」

「はぁ…新たな曲かぁ…」

「もちろん、あなたたちだけに押し付けるつもりはない。作詞、作曲、衣装、演出…全面的に協力させてもらう」

「A-RISEが?」

「どうかしら?それが私たちの参加する…唯一の条件」

 

 

 

少し考える穂乃果。

 

 

 

だが、すぐに

「…やりたいです!それすごくいいです!私もそうしたいです!!」

と力一杯、元気に答えた。

 

「だ、だから、声が大きいって!」

「あ、すみません…つい…」

 

…ふふふふ…

…あははは…

 

お互い顔は見えないが、どんな表情をしているかは、手に取るようにわかる。

 

「やっぱり、あなたは面白い人ね…」

「そ、そうですか?」

「やるなら…時間はないわよ?」

「はい、大丈夫です!ありがとうございました!早速準備に入ります!では、また!!」

 

 

 

ツー…ツー…ツー…

 

 

 

「…切れた…」

ツバサは苦笑したあと、手にしたスマホの画面を見た。

 

そこには、満面の笑みで、走っている穂乃果の姿が映っていた。

 

少なくとも、ツバサにはそう見えた。

 

 

 

 

 

…高坂穂乃果さん…

 

…まだ同じ時間を過ごすことができるのね…

 

 

 

 

 

~つづく~

 


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