【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
在校生6人のスマホに、絵里からメッセージが入ったのは、深夜のことだった。
この時、穂乃果はベッドで考えことをしていた。
A-RISEとの会話に、このあとのμ'sのヒントが隠されている…そう思ったからだ。
…『同じユニットなら最強なんだがな』…
英玲奈の言葉が、耳に残っている。
…同じユニットかぁ…
そこに飛び込んできた、メッセージ。
3人で話し合った結果、今度のライブを以てμ'sを卒業することに決めた…そう書かれていた。
…そっか…
…やっぱり、そうかぁ…
…でも仕方ない!この決断を尊重しなきゃ…
…ん?…あっ!そうだ!…
穂乃果はそう呟くと、何度か頷いた。
そして、やおら、ベッドから起き上がり電話を掛ける。
「あ、こんな時間にごめん…。メッセージ…見た?うん、それでちょっと相談に乗ってほしいことが…」
翌朝…。
穂乃果は練習着に着替えると、音ノ木坂へと向かった。
廊下を走り、階段を上り、屋上に出る扉を開ける。
「!」
「穂乃果!」
「う、海未ちゃん!?な、なんでいるの…あっ…」
「私だけでは、ありませんよ」
「えへへっ…」
「ことりちゃん!」
「おはようございます!」
「遅いにゃ~!」
「花陽ちゃん!凛ちゃん!」
「まったく、相変わらずマイペースねぇ」
「真姫ちゃん…なんで?なんで?今日練習だなんて一言も…」
穂乃果は、右に左にと首を振る。
「だって、ライブ、やるんやし」
「私たちも、まだスクールアイドルだから」
「まぁ、アタシはどっちでも良かったんだけど…」
その背後から現れたのは、卒業生の3人。
「希ちゃん!絵里ちゃん!来てたのぉ?」
「…って、なんでアタシの名前は呼ばないのよ!」
「お約束にゃ」
ドッと一同が笑う。
「偶然?」
「ことりは、そろそろ練習したいな…って」
「私もです」
「面倒くさいわね…ずっと一緒にいると、何も言わなくても伝わるようになっちゃって…」
そう言うと真姫は、大きくノビをした。
「みんな、答えはきっと同じだったんだよ!」
「ことりの言う通りです。μ'sはスクールアイドルであればこそ…です」
「うん、結論は出た。あとはライブを頑張るのみ!!」
穂乃果の言葉に、全員が頷いた。
「…でも、そうしたらドーム大会は…」
「大丈夫、凛ちゃん!それも絶対実現させる!」
「えっ?」
「ライブをするんだよ!」
「…どういうことにゃ?」
「ライブはするでしょ、解散ライブ…」
「違うよ、真姫ちゃん!みんなでライブをするんだよ!スクールアイドルが、いかに素敵かをみんなに伝えるライブ!」
「なにそれ?意味わかんない…」
「スクールアイドルは、A-LISEや私たちだけじゃない!」
「はい、スクールアイドルみんなが歌って、踊って…それを知ってもらうライブをします!」
「花陽!?」
「昨日、穂乃果ちゃんから電話もらって…2人で一生懸命考えたの。そして出た答えが…」
「全国のスクールアイドルが集まって、みんなでライブする!」
「はぁ?バカじゃない!全国の…って…」
「うん、にこちゃん。全国は言い過ぎかも…。だけど、できるだけ声を掛けて、ひと組でも多く参加してもらおうと思うんだ!」
「つまり…合同ライブ…ということですか?」
「ね?すっごく、いい考えがでしょ!?ねっ!ねっ?」
「まだ理解してないんだけど…それは自分たちで大会を開く…ってこと?」
「違うよ、真姫ちゃん…実はね…」
「えぇ~っ!共演!?」
「うん、みんなで同じ曲を歌って、踊るんだ!」
「ほ、本気ですか?」
「今から間に合うの?」
「絵里ちゃんの心配はもっともだけど、やる!絶対にやる!」
「そんなこと言っても…どれだけ大変だと思ってるのよ」
真姫はそう言うと、首を左右に振った。
「わかってるよ。時間はないけど、もしできたら面白いと思わない?」
「いいやん!ウチは賛成!」
「面白そうにゃ~」
「もう、無責任に…」
「でもね、真姫ちゃん。実現したら、ホントにすごいイベントになるよ!?」
「仕方ないわねぇ…」
「にこちゃん?」
「スクールアイドル『にこに~』の最後のステージは、その他大勢が華を添える!ってことでしょ?」
「それは、ちょっと、違うような…」
「でも、そうしたら…A-RISEとも一緒にステージに立つ…ってことでしょ?」
「うん、OKしてくれれば」
「それはすごいかも!にことA-RISEが同じステージに!…一生に一度、あるかないか…いや、もう二度とそんな機会は訪れないわね」
「そうだね!一生に一度の…世界でいちばん素敵なライブ!」
ことりはニッコリと微笑んだ。
「これは今までで、一番面白ライブになるかも知れませんね」
「海未ちゃん…みんな…」
穂乃果は、花陽の顔を見た。
それに気付いた花陽は、えへへ…と照れ笑いを浮かべた。
「…一緒にライブ?…」
穂乃果の電話の相手は、綺羅ツバサ。
彼女は穂乃果の唐突な依頼に、次の言葉が出ずにいる。
そこで、穂乃果がそのまま話を続けた。
「私たちμ'sは…やっぱり、ここでおしまいにしようということになりました…」
「…そう、残念ね…。なら、A-RISEに入る?6人まとめて面倒見るわよ。ひょっとして、そういう相談かしら?」
「…いえ、まさか…。あ、でも…まだ、解散することを身内以外には伝えられてなくて…だから、最後のライブを行って、そこで発表します!」
「最後の…解散ライブ?」
「はい…」
「それって格好良すぎない?」
「あははは…そうですかね?」
「みんなが見たいときには、もういない…なんて、まるで一瞬で消えちゃう流れ星みたいじゃない」
「流れ星…ですか…。そうかも知れませんね…」
「ドーム大会のことは?」
「そうなんです。実は、それが引っ掛かってて…。だから考えたんです…。最後に…みんなが集まってスクールアイドルの素晴らを伝えられたら…って」
「えっ?」
「やっぱりμ'sだけで、ドーム大会の開催を導くなんて、力不足です。A-RISEのみなさんの力だって必要です。…そう考えたときに、ふと思ったんです。全国のスクールアイドルが『ドーム大会開催に向けて、力を合わせればいいんじゃないか』って。私たちだけが盛り上がってもダメなんじゃないかな…って」
「なるほど…全国のスクールアイドルが、心から楽しいと思えるライブをやれば、たとえ私たちがいなくなってもドーム大会に必ず繋がっていく…というわけね」
「はい!」
「そういえば…μ'sのキャッチコピーは『みんなで叶える物語』だったわね…。あなたたちらしい、面白いアイデアだと思う」
「それに…もう一度、A-RISEと同じステージに立ちたい…と」
「!」
「最初で最後になると思いますが…」
「光栄だわ。今をときめくμ'sから、お誘い頂くなんて」
「いやぁ、それほどでも…」
「それに、みんながハッピーになれるというのも悪くない。私たちも、あと少しだけ、スクールアイドルだし…協力するわ」
「ありがとうございます!」
「でも、ひとつ、参加するには条件があるの」
「条件?」
「私と付き合ってほしい…」
「ぶほっ!…そ、それは…」
「穂乃果さんは、今、付き合ってる人とかいるの?」
「いません、いません!音ノ木坂は女子高ですし…」
「好きな人は?」
「す、好きな人?…」
「園田さんかしら?」
「う、海未ちゃん?いやいや海未ちゃんは好きだけど、いつも怒られてばっかりで…」
「それじゃあ、南さん?」
「こ、ことりちゃん?う、うん…ことりちゃんも好きだけど…ってμ'sのメンバーはみんな大好きです。でも、付き合うとか付き合わないとかは…」
「うふふ…冗談よ…」
「…で、ですよねぇ…あぁ、ビックリした…あははは…」
…半分本気だけど…
「な…なんと!?」
「いや、別に…。それより、私たちが参加する条件は…新たに曲を作ってほしい」
「え~っ!!新たな曲~っ!?」
穂乃果は、思わず電話であることを忘れて叫んだ。
ツバサは、一旦スマホを顔から離して、耳鳴りが収まるのを待ってから返答した。
「えっと…せっかく、みんなでライブをするなら、それにふさわしい曲というものがあるはず。いわばスクールアイドルのテーマ曲…」
「テーマ曲…」
「そんな曲を作れるのは、大会優勝者である、あなたたちだと思う」
「A-RISEだって優勝チームじゃないですか」
「私たち無理よ。曲の方向性が違うもの」
「はぁ…新たな曲かぁ…」
「もちろん、あなたたちだけに押し付けるつもりはない。作詞、作曲、衣装、演出…全面的に協力させてもらう」
「A-RISEが?」
「どうかしら?それが私たちの参加する…唯一の条件」
少し考える穂乃果。
だが、すぐに
「…やりたいです!それすごくいいです!私もそうしたいです!!」
と力一杯、元気に答えた。
「だ、だから、声が大きいって!」
「あ、すみません…つい…」
…ふふふふ…
…あははは…
お互い顔は見えないが、どんな表情をしているかは、手に取るようにわかる。
「やっぱり、あなたは面白い人ね…」
「そ、そうですか?」
「やるなら…時間はないわよ?」
「はい、大丈夫です!ありがとうございました!早速準備に入ります!では、また!!」
ツー…ツー…ツー…
「…切れた…」
ツバサは苦笑したあと、手にしたスマホの画面を見た。
そこには、満面の笑みで、走っている穂乃果の姿が映っていた。
少なくとも、ツバサにはそう見えた。
…高坂穂乃果さん…
…まだ同じ時間を過ごすことができるのね…
~つづく~