【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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新しいわたし その12 ~宝物~

 

 

 

 

 

花陽は先に風呂から上がった。

身体を拭いて、今日買ってきたばかりの(ブラジャーと同じシャーベットグリーンの)ショーツを身に付ける。

身体を捻って、後ろ姿を確認してみた。

「おぉ、ピッタリ!」

満足そうに微笑んむ。

希が用意したスエットに着替えると、ドライヤーで髪を乾かし、先にダイニングキッチンへと戻った。

 

希からは「冷凍庫にアイスが入ってるから、先に食べててや」と言われた為、取り敢えず中を開けてみる。

小さめのカップアイスが5つ。

「これは、高いアイスですねぇ…。カチカチで、すぐに溶けないって言ってたから、少し出しておきましょう」

そこから、ふたつ取り出しテーブルに並べた。

 

…それにしても…

 

さっきの情景を思い出し、花陽はまだドキドキが止まらない。

遡って見れば、今日の希は、ずっとおかしかった。

妙に色っぽかったり、突然、甘えてきたり、急に黙りこんでみたり…

 

花陽に凛がいるように、希には絵里がいる。

少なくとも花陽は、そう思っている。

だから、きっと今日のような姿を、絵里には見せているのだろう。

 

 

 

…でも今日は…

 

…なんで花陽なんだろう…

 

 

 

「考えごと?」

風呂から上がり、ワンピースタイプのルームウェアに着替えた希が、花陽に声を掛ける。

洗い髪はそのままで、まだ束ねてもいない。

「アイス、食べてないやん」

「そんな、いくら花陽でも、そんなに食い意地は張ってません」

「ウチを待っててくれた?」

「もちろんです。少し出しておいたから、多分、ちょうど食べ頃かと」

「さすがやねぇ。じゃあ、一緒に食べよっか?」

「はい」

 

いただきま~す…2人はアイスを口にした。

「う~ん、美味しいですぅ」

「お風呂あがりのアイスは、最高やね」

「いつも食べてるんですか?」

「ほぼ日課」

「太りません?」

「…みんなには、絶対ナイショやからね…」

「今日に限って言えば、花陽も共犯者です」

「明日、少し先に行ってランニングしようか…」

「そうですね…」

2人が顔を見合わせて笑う。

 

それから2人は、他愛もない話をしながらアイスを食べた。

「髪、乾かしてくるから、隣の部屋でテレビでも観て、ゆっくりしててや」

と、希が席を立つ。

「希ちゃん、髪、長いから、乾かすのも大変ですね」

「そうなんよ」

「花陽はすぐに終わっちゃいますけどね…手伝いましょうか?」

「そんなん、悪いやん」

「花陽に出来ることなんて、これくらいしかありませんから」

 

…そんなことないんよ…

 

希は心の中で呟く。

 

「うん、ありがとう。お願いするね」

「はい」

 

そして花陽は、希の髪を乾かすのを手伝った。

 

 

 

「ありがとう。やっぱり、2人だと早いねぇ」

「いえ、いえ、どういたしまして。乾かし甲斐がありました」

「結構な、重労働やろ?」

「はい、想像以上に。でも、楽しかったですよ。美容師さんになったみたいで」

「ウチは本当にいい後輩を持ったねぇ」

「大袈裟ですぅ」

「ふふふ…。ところで花陽ちゃん、眠くない?疲れたんと違う?」

「はい、まだ全然…と、いうか今日は内容が濃すぎて、色々、興奮しちゃって、きっとすぐには寝れません。それに電車の中で『お昼寝』しちゃいましたしね」

「そやね」

2人して頭をポリポリと掻いた。

「普段何時くらいに寝るん?」

「花陽は…そうですねぇ、日付が変わる頃くらいまでは起きてますねぇ」

「朝は?」

「朝ですか?今は、5時半ですかねぇ」

「早いやん!」

「朝練あるし…」

「それにしても早過ぎなんやない?」

「あと…お弁当作るので…」

「なるほど!それは納得。しかも、2個分やもんね?」

「お恥ずかしい…」

「明日はそんなに早く起きたらいかんよ」

「そうですね」

「練習は10時やったっけ?花陽ちゃんは、一旦、家に帰って出直すにしても、7時に起きれば間に合うんやない?」

「はい」

「よし。それじゃ、あとは歯磨きだけ済ませちゃおう」

「はい」

 

花陽は来るときにコンビニで買った歯ブラシを持って、洗面台に向かう。

希が洗面台の三面鏡に隠されている、右の扉を開く。

そこには、2本の歯ブラシがあった。

 

「あっ!」

花陽は思わず声をあげた。

見るつもりはなかったのだが…不可抗力である。

 

「見ちゃった?もう1本はえりちの分。たまに泊まりに来るんよ」

花陽は、どう切り返して良いのかわからない。

「その話はまたあとでね」

「はぁ…」

「今日の夜は長いんよ。寝かさないんやから」

「なんかエッチです」

そうかな?…と言って希は笑った。

 

 

 

歯磨きを終えると、ダイニングキッチンの奥にある、8畳ほどのフローリングの部屋に通された。

希の部屋だ。

「ジロジロみたら、いかんよ」

と希。

そうは言われても、目を閉じてるわけにはいかない。

花陽は、つい部屋を見回してしまう。

 

まず目に付くのは部屋の奥にあるセミダブルサイズのベッド。

鮮やかなチェリーピンクのカバーが掛けられている。

ベッドの上には、数個のクッション。

 

そのベッドの枕側の壁には、3段の吊棚。

ぬいぐるみやら観葉植物やらが、わりと不規則に飾られている。

「希ちゃん…余計なお世話だとは思うんですけど…これ、地震の時、危なくないですか?落下したら、顔面直撃ですよ」

「そうやね。ウチもわかってんるんやけど、風水に従うとこうなるんよ」

 

…風水もやるんだ…

 

花陽は妙なところで感心してしまった。

 

 

 

吊棚の隣には、ローボードとキャビネットを組み合わせた戸棚。

 

「あっ!」

花陽がなにかを見付けた。

 

「これ、夏合宿の時の写真ですよね!」

戸棚の中には、やや大きめのフォトフレーム。

そこには真姫の別荘で撮った、μ'sのメンバーの集合写真が飾られていた。

 

デジカメをセットし、セルフタイマーで撮った写真…。

シャッターが切られる…まさにそのタイミングで、花陽のお腹が大きく鳴って、みんなが一斉に吹き出した瞬間が収められている。

花陽にとっては、少し苦い思い出…。

 

「それなぁ、ウチの大切な宝物なんよ」

「花陽は、これを見るたびに恥ずかしくなりますが」

「そのお陰で、みんな100%以上の笑顔やん。未だにウチ、真姫ちゃんのこんなに笑ってる顔、見たことないよ」

「確かにそうですけど…」

「だから、これは花陽ちゃんに、感謝、感謝の1枚。ウチは勝手に『奇跡の1枚』って呼んでるんやけどね』

「はぁ…そう言ってもらえると、少し救われます…」

「救われたのは、ウチや」

「えっ?」

「ううん、ウチだけやない。にこっちも、えりちも、真姫ちゃんも…みんな花陽ちゃんに救われてるんよ」

「えっ?えっ?…花陽が…みんなを救った?」

「ウチにとって、花陽ちゃんは女神なんや。『一番大事』な人なんよ」

「な、な、何を突然…」

「花陽ちゃんからは色んなモノをもらったのに、ウチは何ひとつ返せていない」

「の、希ちゃん…」

「だから、まずはこれを、何も言わずに受け取って欲しいんや」

「これは!?」

 

花陽は展開の早さと、差し出されたプレゼントとで大混乱に陥った…。

 

 

 

 

 

~つづく~


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