【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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やりたいことは その20 ~宣言~

 

 

 

 

 

そして、ついに今回のライブで歌う曲が完成する。

 

 

 

それは、海未によって『SUNNY DAY SONG』と名付けられた。

 

 

 

直訳すれば『晴天の日の歌』となるのだが…

 

スクールアイドルにとって、パフォーマンスを披露するということこそ『ハレの日』であり、そこに向かって一歩づつ、前向きに、ワクワクしながら、弾むように進んでいこう!

 

それが、彼女たちが後進に託したメッセージだった。

 

 

 

μ's、A-RISE、Mutant Girlsの16人が4チームに別れ、他の参加チームに、歌とダンスの指導を行う。

 

参加人数の都合から、パフォーマンスの肝となる(ダンスにおける)『フォーメーションチェンジ』は割愛せざるをえなかった。

 

逆に言えば、その分だけ易しくはなるのだが、それを差し引いても、さすが現役のスクールアイドルたち…呑み込みは早い。

数十分のレクチャーで、もう自分たちだけで確認が行えるようになっていた。

 

 

 

 

 

残るはハード面である。

 

 

 

 

 

アキバのメインストリートを封鎖してのライブ。

これだけ大掛かりになれば、行政、警察への届け出など、面倒な作業が山ほどある。

このあたりは、大会関係者や理事長の協力を仰ぐ必要があった。

 

しかし、それ以外のことは極力自分たちでこなし、会場の装飾、展示物の設営も、参加者たちに手伝ってもらい、人海戦術で乗り切った。

 

そうやって手作り感満載の、日本初『スクールアイドルによるスクールアイドルの為のライブイベント』は、前日…予行演習を迎えた。

 

 

 

花陽の集計によると、最終的には200人を超えるという。

 

とは言え、当日の参加人数は明日になってみないとわからない。

 

この日集まったのも、6~7割だった。

事前にどのチームがどこで歌うのか、ブロック割りをしてシミュレートはしているものの、全容は明日の本番まで見えてこないというのが現状だ。

 

 

 

 

 

「それでも、これだけの規模…ちょっと圧倒されますね…」

μ'sに入り、生徒会も任され、数々の困難を乗り越えてきた海未だが、参加者の人数を目の当たりにし、少し怖じけ付いたのだろうか。

「なに言ってるの!気合いよ、気合い!」

と、にこ。

「って、にこちゃんの膝も震えてるにゃ」

「だから、これは武者震いよ」

「はいはい…」

真姫が、花陽が、希が…そのやりとりを、やれやれという表情で見ている。

 

 

 

一方、参加チームはというと…

 

「A-LISE、μ'sに負けていられないよ!」

「ようし!じゃあ、もう一回みんなで練習しよう!」

「私たちだって、がんばるよ!」  

「もちろん私だって!」

 

…と各々、反復練習を行うなど、こちらも気合充分といった様子。

 

 

 

それを感慨深げに、見ているは音ノ木坂の新旧生徒会長。

 

 

「いよいよ、最後ね…」

「うん!…なんか、本当にスゴいことやってるんだね…私たち」

「このプロジェクトに関われてたことは、きっと大きな財産になるわね」

「ここまできたら、あとは明日の本番を迎えるのみ!…って、思ったんだけど…もうひとつ、やらなきゃいけないことが残ってる」

そう言うと穂乃果は、やおらトラメガを手に取り、道路の中央へと歩き出した。

「穂乃果!?」

 

 

 

「え~…皆さん、聴いてください!改めまして…私は音ノ木坂の生徒会ちょ…じゃなかった…μ'sの高坂穂乃果です!!」

 

 

 

挨拶が始まると、一瞬にしてざわめきは消え、緊張した空気が張り詰めた。

 

 

 

「まずは皆さん、今回のプロジェクトに参加頂き、ありがとうございます。こんなにも多くの人たちが集まるとは思ってなくて…正直、戸惑ってるのですが、それ以上に、すごくすごく嬉しく思います」

 

自然と拍手が起こる。

 

「私たちはスクールアイドルとして…目指す目標は人それぞれ違うかも知れないけど…でも歌ったり、踊ったりするが大好き!…今日ここに集まってる人たちは、みんなそうだと思います」

 

「は~い!大好きで~す!」

どこにでも、お調子者はいるものだ。

しかし、この参加者からの応答に、その場がドッと沸き、あたりの雰囲気がは少し和んだ。

 

「うん、そうだよね!大好きだよね!だから私たちは、この気持ちをみんなで分かち合いたい!高め合いたい!そして、スクールアイドルというのは、こんなにも素敵な存在だということを、もっともっと世の中に知ってほしい!そう思って、このイベントを企画しました」

穂乃果はそう言うと、ひと呼吸置いた。

そして、おもむろに左腕を斜め前へと伸ばす。

 

その先にはいるのはツバサ、あんじゅ、英玲奈。

 

「私たちは、ここにいるA-RISEに憧れて、スクールアイドルを始めました。初めは雲の上の存在で…話すことさえ夢だと思っていたけど…そのA-RISEと今、こうして、このプロジェクトを一緒に進めています」

 

ツバサら3人は、軽く礼をすると、再び、拍手が沸き上がった。

 

「こんなことは1年前には、想像もしていませんでした。でも、そういう人たちに追い付け追い越せと、お互いを高め合って、競い合って…時にはぶつかり、励まし合って、そして高い壁を乗り越えていく!そういう経験ができるのがラブライブなんです!!」

 

μ'sの面々の脳裏に、この1年間の出来事がフラッシュバックする。

不思議と苦しかった場面は出てこない。

今、この瞬間に出てきたのは、キラキラした想い出ばかり。

 

だが、それも次の穂乃果のセリフで、現実に戻される。

 

「A-RISEが優勝して、私たちが優勝して…次は皆さんの番です」

 

 

 

…えっ?…

 

 

 

参加者の頭に渦巻く疑問符の記号。

瞬時に理解できる者はいなかった。

だが、その意味はすぐに判明する。

 

 

 

「私たち…私たちμ'sは…このライブを以て…活動を終了することにしました…」

 

 

 

アキバのメインストリートに、ほんの一瞬静寂が訪れ、すぐにそれは、驚きの声へと変わった。

小さく悲鳴も混じっていたろうか。

 

μ'sとA-RISEのメンバーは…ついに、ここで言ったか…という表情。

 

参加者たちのざわめきが止まらない中、穂乃果は言葉を続ける。

「突然の発表でごめんなさい…。でも、私たちはスクールアイドルが好き。学校のために歌い、みんなのために歌い、お互いが競い合い、そして、手を取り合っていく…そんな…限られた時間の中で精一杯輝こうとするスクールアイドルが大好きです!!」

 

「だったら、どうして!?」

「そうだよ!どうして!?」

 

当然のように、あちこちから穂乃果へ声が飛ぶ。

 

「えへへ…そうですよね。私たちも、そこはすごく悩みました。でも3年生の3人が卒業したら…それは私たちが作ってきたμ'sではなくなる。…わがままかも知れないけど…μ'sは、その気持ちを大切にしたい…メンバー全員で話し合って、そう決めたんです!」

 

「お姉ちゃん…」

「穂乃果さん…」

手伝いに来ていた雪穂と亜里沙が呟く。

2人は知っていたこと。

だが、改めてそう宣言されると、寂しさが込み上げてくる。

泣きそうになるを必死に堪えた。

 

μ'sがA-RISEに憧れたように、参加者もまたμ'sに憧れていただろう。

或いは、これからの目標として、或いはライバルとして、戦うことを夢見ていたかも知れない。

 

だが、その相手は、何の前触れもなく、存在を消す。

 

もうこの9人が揃って歌うことはない。

 

絶句して立ちすくむ者…しゃがみこんで嗚咽する者…反応は様々だが、μ'sの突然の解散発表に、参加者もショックを隠しきれない。

 

冷静に考えれば、自分たちだって卒業する。

その瞬間、どんなに望んでもスクールアイドルではいられないのだ。

それはわかってること。

 

しかし、μ'sは別だと思っていた。

 

A-RISEが活動を継続させていくから、尚更、そう思っていた。

 

海外ライブも成功して、まさにこれから…という時に…。

 

誰もがすぐには受け入れられなかった。

 

 

 

「…でも…ラブライブは大きく広がっていきます。みんなの…スクールアイドルの素晴らしさを…これからも続いていく輝きを…多くの人に届けたい!私たちの力を合わせれば、きっとこれからも!…ラブライブは大きく広がっていく!そう思います!」

努めて明るく穂乃果は語った。

「だから!…明日は終わりの歌は歌いません!私たちと一緒に…スクールアイドルと、スクールアイドルを応援してくれるみんなのために歌いましょう!思いを共にした!みんなと一緒に!!」

最後はバラけて立っていたμ'sのメンバーが横一列になり、参加者に向かって深く頭を下げた。

 

 

 

最初に拍手をしたのは、ツバサだった。

それに呼応して、あんじゅが…英玲奈が…みんなが手を叩く。

 

 

 

それからしばらく、万雷の拍手は鳴り止むことはなかった…。

 

 

 

 

 

~つづく~


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