【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「ウチからのお礼。受け取ってや」
希が花陽に差し出したのは、新宿のランジェリーショップ『アンジェリーナ アンジェリーナ』の紙袋。
「これって…希ちゃんが買ったんじゃ…」
「中を開けてみて…ウチのじゃないんよ」
花陽が中を覗き込む。
「…」
「お店で、色、どっちにするか迷ってたやん。…で、これは惜しくも選ばれなかったオレンジ。ウチからのプレゼント」
「なんかピンクのも、ありますが…」
「それも可愛いやろ?そのピーチも色違いであったから。おまけやね」
「おまけ…って…。こ、こんな高価なもの…しかも、ふたつも受け取れません!」
「お金のことなら気にしないでいいんよ。割引してもらったし、ポイントも倍付けてもらったし」
「そういうことではありません。誕生日でも、クリスマスでもないのに、こんなことしてもらう理由がありません」
「言ったやん。ウチの『一番大事な人』への感謝の気持ちやって。モノで釣るつもりはないんやけどね」
「意味がわかりません」
「ふふふ…真姫ちゃんみたいなセリフやね」
「誤魔化さないでください!」
珍しく、花陽の口調には怒気が含まれている。
「ちゃんと説明して下さい!また、からかってるんですか?一番大事な人って、どういうことですか?絵里ちゃんの立場は?そもそも花陽がみんなを救ったって、なんですか!?…わけがわかりません…」
花陽は一気に捲し立てた。
「まぁ、落ち着いて」
はぁ…はぁ…はぁ…
花陽は取り乱して、呼吸が整わない。
希が水を汲んでコップを渡す。
花陽はグイッと一息に飲み干した。
「はぁ…はぁ…」
「少し、落ち着いた?」
「…はぁ…はぁ…はい…すみません…」
「いや、謝るのウチやね…。説明するから、ちゃんと聴いてくれる?」
「…はい…わかりました…」
希は花陽をベッドに座らせると、自分もその隣に座った。
「ウチが花陽ちゃんに感謝してること。これから説明しないと…やね」
花陽は無言で頷く。
「まずスクールアイドルを始めた穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん…この3人は別格の存在」
「創始者ですからね」
「なんの因果やろうか…ウチ、その3人と関わってしまったんよね…。生徒会をしてなければ知らなかっただろうし、彼女たちが練習場所に神田明神を選ばなければ、きっと何も起きていなかった」
「…花陽も3人がいなければ、陸上部に入ってたかも知れません…」
「花陽ちゃん、知ってる?偶然も重なれば、それは必然なんよ。だからその時、これは『ウチの運命を左右する、大きな出来事や』って予感が走ったんよ」
「…予感ですか…」
「そう、予感。…でも、ウチは花陽ちゃんと違って、自分からそこには飛び込めなかったし、それができなかった。誰かに頼るしかなかった。ウチは卑怯者なんや」
「そんなこと誰も思ってないですよ!だって希ちゃんがバックアップしてくれてたからこそ、今のμ'sがあるんじゃないですか!それはみんな知ってます」
「他力本願…。自分に自信がなかったから、そうせざるを得なかっただけなんよ」
希は首を横に振って否定した。
「そして現れたのが、花陽ちゃん…」
「私…ですか…」
「あのファーストライブに、もし花陽ちゃんが来てくれなければ、この9人が揃うことは絶対になかった」
「花陽が来なくても、穂乃果ちゃんたちなら、スクールアイドルを続けていたと思います」
「そうやね…ウチもそう思う。そうなんやけど、やっぱり、次のプラスワンは、花陽ちゃんしかいなかったんや」
「花陽しか…ですか?」
「花陽ちゃんのプラスワンは、凛ちゃんと真姫ちゃんを併せて入部させるという、実は3倍の効果をもたらしたんよ」
「大袈裟です」
「そして、花陽ちゃんの存在は、孤独の縁にいた矢澤にこ…にこっちを救った」
「あれは穂乃果ちゃんたちのアイデアで、にこちゃんを先輩として敬意を表すれば、きっと受け入れてくれるって」
「それだけじゃ、にこっちは心を開かなかったと思うんよ。その中に同じ趣味を持つ花陽ちゃんがいたからこそ、初めてにこっちはOKを出した」
「そこまでのチカラ、花陽には…」
「ある!断言できる!」
「にこっちの一番の理解者は花陽ちゃんなんよ。ちゃんと先輩としてリスペクトしてるのは、花陽ちゃんだけなんやから」
「他の人たちも、決してそう思ってないわけじゃないと思いますけど…」
「花陽ちゃんがいなければ、アイドル論を巡って対立…にこっちが…もしくは、他のメンバーが退部。歴史は繰り返す…になっていたとこやん」
「そう…ですかね…」
「にこっちにそんな話しても、素直に認めんと思うけど。だから、にこっちに替わって、まずウチからお礼をさせて欲しいんや。μ'sにいてくれて、ありがとう」
希は花陽の隣で、座りながらだが、深々と頭を下げた。
「希ちゃん、にこちゃんのこと、大好きなんですね」
「μ'sで嫌いなメンバーなんておらんよ」
「そうじゃなくて…多分、メンバーの中で、にこちゃんを一番理解してるのは、希ちゃんです!」
「そこは、微妙なとこやね」
「どうしてですか?」
「それならば、もっと早く、にこっちを救ってあげられた…。結局、2年間、悩んで苦しんでいたにこっちに…何もしてあげられなかったんよ。ウチがμ'sに入ったのは…せめてもの罪ほろぼし…そんな部分も…ないわけやないんや…」
「希ちゃん…」
花陽は希の手をギュッと握りしめた。
「希ちゃんはやっぱり、卑怯者なんかじゃないですよ。だから…泣かないで下さい…」
気付けば、一筋の涙が希の頬を伝っていた…。
~つづく~