【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
希の脳裏に、にこが必死にビラを配り、部員を勧誘していた姿が甦る。
変わり者扱いされて、やがてクラスで孤立を深めていく様子は、自分自身とシンクロしていた。
ことあるごとに手を差しのべようとアプローチしてみるも、にこの闇は深く、絵里のように打ち解けることは出来なかった。
その闇に光を灯したのが穂乃果たちであり『アイドルオタク』という呪縛から解き放ったのが花陽である…と、希は語った。
「だから、そのことによってウチも救われたんよ」
「希ちゃんも?」
「そう、ウチも。いつか見たいと思ってたんやから…にこっちの『営業用』じゃない『心からの笑顔』」
と、戸棚の中のフォトスタンドを指差した。
「叶えてくれたんよ…花陽ちゃんが」
「それは、花陽だけじゃありません。みんなのチカラです…」
「うん、そうやね。そうなんやけど、やっぱり花陽ちゃんのチカラは大きいんよ」
「そう…なんですかね…」
「そうなんよ。そして、にこっちがみんなとひとつになってくれたことで、ウチもようやく決心できた。だから、えりちをも巻き込んで参加した。すべてが、繋がってるんよ」
「ピンと来ないです」
「そこがいいとこやと思う。花陽ちゃんは自然と、意識せずとも周りの人をプラスに導く…幸せにするチカラを持っているんやね。…真姫ちゃんにしても、にこっちの二の舞になっていた可能性、大やからね」
「凛ちゃんと真姫ちゃんに関しては、未だにこれで良かったのか、わかりません。凛ちゃんはああいう性格だから、自分のことは二の次なところがあるし、真姫ちゃんに至ってはお医者さんになる…っていう明確な意志があったのに、花陽が巻き込んでしまったのではないかと…」
「それは取り越し苦労やん」
希は花陽の話を途中で切った。
「凛ちゃんも真姫ちゃんも、きっかけはどうであれ、最終的には自ら参加した。そして、サボることなく歌にダンスに頑張り、あんなに素敵な笑顔をしている…それが答えなんやない?」
「…そうですね…」
花陽はその言葉を聴いて、心の隅にあったモヤモヤとしていたものが、消えていった気がした。
「…と、ここまでが花陽ちゃんに感謝、感謝の理由」
「色々な偶然が重なっただけです…」
「始めに言ったやろ。偶然も度重なれば、それは必然なんやって」
「…じゃあ、その…花陽が一番大事ってことについては?」
花陽は俯(うつむ)きながら、小さな声で訊いた。
「花陽ちゃんにとって、凛ちゃんはどういう存在?」
「えっ?」
その質問は想定外であった。
不意を突かれた花陽は、暫く沈黙した。
「どういう存在…ですか?」
苦し紛れに、質問の意味を訊き直してみる。
「そう。花陽ちゃんにとって、凛ちゃんはどういう存在?…お姉さん?妹?お母さん?先生?親友?それとも…彼氏?彼女?」
「随分と意地悪な、難しいことを訊きますね…」
花陽は当惑した。
凛との付き合いは長い。
小学校からの親友だ。
だが、気弱な花陽を励まして助けてくれたのは、いつも凛だった。
花陽は…どちらかというと、常に『引っ張ってもらっている』という意識が、心の片隅にはあった。
…自分に親友と呼べる資格があるのか…
凛には訊いたことがない。
凛はいつも自分のことを気遣ってくれるから、仮に『そうでなくても』親友だ…と答えるに違いない。
そして、そんなことで悩む花陽にた対して「こっちのかよちんも好きだにゃ~」と一笑するに違いない。
希に改めて問い正されて、花陽の心は揺れていた。
「とても、とても大切な…家族のような友人…です…」
やっとのことで絞り出した答えは、その一言だった…。
「友人…親友ではないんや?」
「それは…花陽はそう思ってるんですけど…そう思ってもらえてるかは、自信ないです…」
「そうなんや…。じゃあ、恋人と思ったことは?」
「こ、恋人ですか!?…そ、そんな、女の子同士で、そんな」
「別に、そんなに恥ずかしがることではないんよ。今は『LGBT』とか性同一性障害とかいう言葉も一般的になってきてるし、仮にそうであったとしても、なんもおかしくないやん」
「それはそうですが…凛ちゃんをそういう対象で見たことは…ないです」
と、言ってみたものの、それも今一つ自信がない。
そもそも、恋愛という経験がないのだ。
『好き』という感情はあっても、それが恋人たちの『それ』に相当するのか、花陽にはわからなかった。
「逆に凛ちゃんは、花陽ちゃんのこと、どう思ってるんやろ?
「えっ…」
「花陽ちゃんは『大切な家族のような友人』って言ったけど、凛ちゃんに訊いたら何て答えるんやろ?」
「それは…」
言葉に詰まる。
「いつかハッキリさせなきゃいけない日がくるんよ。だから『どっちに転んでも』受け入れる準備はしておかなきゃ…」
「『受け入れる』…ですか?」
「花陽ちゃんが『どっちを望んでるのか』わからないんやけど、凛ちゃんが親友と言っても、姉妹(きょうだい)と言っても…恋人と言っても…」
「恋人…」
「まずは受け入れてあげる。受け入れてから、お互いの気持ちを確認すればいいんよ」
「…すごく難しい話になりましたね…」
「でも、ウチの気持ちを伝えるには避けられ話なんよ…」
希は花陽の目を見つめた…。
~つづく~