【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「ウチはえりちのこと『戦友』やと思ってるんよ…」
「戦友…ですか?…」
花陽にとって、またも想定外の言葉が飛び出してきた。
「そう、戦友…」
「親友ではなくて…ですか?」
「初めてえりちに会ったとき、ウチと似た性格やな…いつも独りで寂しいそうで…この娘となら仲良くなれるんやないかと思ったんよ。…それで、何とか興味もってもらおうと、関西弁で話しかけたりして…」
「その話は誰かから聴いたことがあります」
「余談やけどね…ウチ、小さい頃、少しだけ大阪にいたんよ」
「それは初耳です」
「だから、本気出せば、もう少し『まともな大阪弁』を喋ることができるんよ。ただ、こっちの生活が長くなって、ほぼ封印状態やったから、だいぶ怪しくなってるかも…やけど」
「だから学校以外では…」
「そう。生粋の関西人ではないからね、中途半端やと恥ずかしいやろ?」
「花陽はむしろ標準語で話す希ちゃんの方が、違和感ありましたけどね」
「そうかも知れんね…」
「…それで絵里ちゃんとの話は?」
「そうやった。横道に逸れたね」
そう言うと希は…ごめん、ノドが乾いた…と、水を口にした。
「えりちは最初『変なヤツ』…って思ってたみたい…。でも、ウチがあんまりしつこくするから、渋々、話を聴くようなった…って。これは、あとから本人に聴いた話なんやけどね」
「そこから今に至るんですよね」
「結構、紆余曲折もあったんよ、ここまで来るには」
「でも、お互い、凄い信頼関係で結ばれてると思いますよ」
「そこなんよ!」
「えっ?」
「さっき、ウチはえりちのこと、戦友って言ったやん」
「はい」
「ウチは転勤が多くて、その度に引っ越ししてたから…花陽ちゃんや凛ちゃん、もしくは穂乃果ちゃんたち3人みたいに、昔からの友人っていないんよ。…正直、仲良くなっても、また転校になっちゃうなら、そんなのいらない!って思ってたんよ」
希の告白に、花陽は相槌が打てなかった。
「でも、この学校に来て、ひとり暮らしを始めて、もう引っ越さなくても良くなったときに、やっぱり、友達が欲しくなったんよね…そこにいたのが、絢瀬絵里やった」
「そこで、さっきの話に戻るんですね」
「えりちも帰国子女やったこともあってか、または性格的なものなのか…クラスでは孤高の存在やったから…ウチと同じ『匂い』を感じたんよ…。この娘なら解り合えるんやないかって…」
「予想的中ですね」
「そうやね。つい、この間まではそう思ってた…」
「えっ?この間までは?」
花陽は今日、何度、希の言葉を聞き返したろう。
次々と予想だにしないワードが飛び出してくる。
「今、過去形で言いました?」
希は軽く頷いた。
「知り合って2年半…ウチもえりちも色んな話をしたし、色んな相談もした。一緒に買い物もしたし、お互いの家に泊まったりもする。趣味は合わないし性格も真逆やけど、ウチにとってえりち以外の友人はいないんよ」
「それを親友って言うんじゃないんですか?」
「そう言い切れる自信がないんやね…」
「どうしてですか?」
「えりちがウチのことをどう思ってたか、それがわからないんよ」
「そんな…絵里ちゃんだって、きっとそう思ってますよ。そんなの、誰がどう見たって…」
「でも、えりちは…ウチの前で泣いたことは一度もないんよ…」
「えっ!?」
またも花陽は同じ疑問符を口にした。
「えりちは…ウチの前で泣いたことがないんよ。ウチも彼女も、色んな苦しみとか悩みとかあったんよ。その度に相談したし、相談に乗った。そうやって、お互い苦難を乗り越えてきたつもりやったんやけどなぁ…。それがえりちの芯の強さであり、ウチに対する優しさやったんかも知れないんやけど…」
「きっとそうですよ」
「それは、痛いほどわかってるんよ。わかってるんやけど…」
「わかってるんやけど?」
花陽は希の口調に合わせて訊き返しす。
希は先程の水を、もう一口飲んだ。
「えりちがμ'sに入るときに、感情を爆発させたことがあったやん…あの瞬間、ウチの役割は終わったような気がしたんよ」
「役割?」
「ウチは、結局、えりちの心を解放してあげることは出来なかった…」
「どういうことですか?」
「さっきも言ったやん。えりちは、ウチの前では泣いたことがなかった…って。本来はもっともっと前に、ウチがそうさせてあげたかったんやけど…それを成し遂げたのはμ'sのメンバーやった」
「そんなことないですよ」
「じゃあ、花陽ちゃんに訊くよ。相手に自分の弱さを見せられない、見せたくない…それは信頼されてない…って、ことなんやないやろか?心を許さない間柄…それを親友って言えるんやろか?」
「…絵里ちゃんがどう思ってるか、訊いたことはありますか?」
「ふふふ…さっきと逆やね」
「そうですね」
「…その質問に対する答えは、花陽ちゃんの時と同じやと思う」
「…そう言われると…返す言葉がないです…」
「ただ、花陽ちゃんと違うのは、ウチはもう割りきってる…ってことやね」
「割りきってる?」
「そう。そこで導きだしたのが、ウチにとって、えりちは戦友だった…ってこと」
「戦友…」
「何と戦ってたのか…って問われれば、答えに窮するけどね…。まぁ、強いて言えば、孤独とかプライドとか、素直になれない自分自身と戦ってたんやろうね。それを2人で励まし合いながら、支え合いながら、共に戦ってきた…って感じやね」
「奥が深いです…」
「でも、その戦いは終わったんよ」
「終わった?」
「えりちも、にこっちと同様にμ'sに入って、過去の呪縛から解き放たれたやろ。正直、あんなにイキイキとして踊る姿は、ウチ、想像できんかったもん」
「輝いてますよね」
「ウチ、知らない間に『友達になりたい』から『友達になってあげなきゃ』ってスタンスでえりちのこと、見てたんやと思う。偉そうにね…。でも、もう、それは必要なくなったんよ、きっと。だって、えりちは自分自身の居場所を見つけたんやから」
希の言葉には清々しさと、少しの寂しさが同居していた…。
~つづく~