【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「さ、明日も早いし、寝よっか?」
希はわざと勢いよく立ち上がり、そう言った。
「まだ、肝心なことを聞いてません」
と花陽。
「もう、その話はいいんやない?」
「ダメです!」
「どうしても、しないとダメ?」
「ダメです」
花陽はキッと希を睨んだ。
「そんな、怖い顔しないの…」
無言のまま睨む花陽。
その気迫に押されたの、ついに希は観念した。
「しゃあないなぁ…そんなんされたらかなわんわぁ…ほんなら、花陽ちゃんも覚悟しぃやぁ」
無意識なのか、照れ隠しなのか、希の関西弁が強まっている。
「ウチなぁ、改めて言うのもなんやけど、μ'sのメンバーは全員好きやねん。えりちもにこっちも、穂乃果ちゃんも海未ちゃんもことりちゃんも、真姫ちゃんも凛ちゃんも…」
「私も同じです」
「そうやなぁ、全員好き。好きやけど…花陽ちゃんだけは…」
希はそこまで言って言葉に詰まった。
さすがに次の一言は勇気がいる。
花陽は俯(うつむ)き、希の言葉を待っていた。
今までの話の流れから、だいたい予想はついている。
だけど、まさかそんな…という気持ちも半分ある。
「花陽ちゃんだけは…」
「ま、待って下さい!あの、その…まだ、心の準備が…」
「う、うん…。ほんなら、2人で深呼吸しよか?」
「そ、そうですね…」
2人で息を合わせて、3回ほど深呼吸。
「では、改めて…」
希は大きく息を吸い込むと、吐き出すように言った。
「東條希は小泉花陽のことを…」
キンコ~ン…
「なんやねん!」
緊迫した場面に突然なり響くLINEのメッセージを知らせる音。
キンコ~ン
キンコ~ン
キンコ~ン
立て続けに4度ほどなった。
「花陽のケータイ…ですかね」
「なら、凛ちゃんかね?」
「すみません、大事な場面でなんですが…」
「凛ちゃんなら、返事しといた方がいいやろな」
「…では、ちょっと失礼して…」
…さすが凛ちゃん、この場面でLINEとは、なかなか手強い…
希は盛り上がった雰囲気に水を差され、苦笑した。
花陽はバッグに入れておいたスマホを見る。
案の定、送り主は凛だった。
《今日も暑かったけど、明日はもっと暑いらしいにゃ~》
《でも、凛は負けないにゃ~!!明日も頑張ろう!》
《かよちん、大好き》
最後は最近、凛がお気に入りのネコのスタンプが送られていた。
『かよちん、大好き』…いつからだろう、凛はこの言葉を「バイバイ」や「おやすみなさい」と同じ意味で使うようになっていた。
…ついさっきまで、何も意識していなかった言葉…。
…だけど、今は…
…どういう意味なのかな…
花陽にとって、とても深く重い言葉となってしまった。
《明日はもっと暑いんだ?水分補給に気を付けよう!》
《花陽も、いつも間違えるとこを明日こそクリアしないと…だね!!》
《では、また明日…》
《おやすみ》
今、この状況下にあることは、とてもじゃないが言えない。
送ったメッセージはすぐに既読になった。
そして、ネコがいびきをかいているスタンプが送られてきた。
取り敢えずこっちは終了…そう思って、振り替えると、希はベッドに横たわっていた。
「希ちゃん!?」
「凛ちゃんの方は済んだ?」
「今、メッセージ返しましたけど…なんか、疚(やま)しい気分です」
「なんで?まだ何もしてへんけど」
「されたら困ります…って、どうして横になってるんですか?」
「眠くなっちゃった…花陽ちゃんも、一緒に寝ぇへん?」
「いや、このままだと続きが気になって、眠れないです」
「もう、秘密のままでいいんやない?」
「ダメです、そんなのズルい…あっ!?」
話を遮るように、希は上半身を起こすと、立っていた花陽の腕をグイッと引き寄せる。
不意を突かれた花陽は無抵抗にベッドに倒れこんだ。
そこに希が素早く体を入れ替える。
マウントポジションは希。
そのまま花陽を抱き締めるように、覆い被さった。
「の、希ちゃん…」
「花陽ちゃん…ちゃんと聴いてな…」
「…は、はい…」
「ウチなぁ、花陽ちゃんのことが…」
そこまで言うと希は、花陽の耳元に口を寄せ、小さく囁くいた。
「好きになってしもうたんよ…」
耳元で囁きと同時に発せられた、甘い吐息。
告白されたストレートな言葉。
言われた瞬間、頭から爪先まで電気が走った。
ビクッと身体を硬直させたあと、頭は真っ白になり、動けなくなってしまった。
一方の希は…ついに言うてしもうた…と呟いたあと、身体の力が抜け、全体重を花陽に預けた。
しかし、花陽が苦しそうにしてるのをみると、添い寝するように横たわった。
覚悟はしていた。
それでも花陽にとって、やはり簡単には受け入れない言葉だった。
回らない頭の中で、必死に言葉を絞り出す。
「…冗談…ですよね…」
「冗談でもないし、からかってもない。ウチがメンバーの中で誰よりも好きなのは、花陽ちゃんなんよ!」
「…どうして…」
「人を好きになるのに、理由なんて必要ないやん」
「…絵里ちゃんは…」
「えりちも好きや。でも違うんよ。えりちに対する好きと、花湯ちゃんに対する好きは違うんや」
「どう…違うんですか…」
「それは…ウチにも…ようわからん」
「えっ?」
「花湯ちゃんが好きな気持ちにウソはない。せやけど『どう好きか』と訊かれたら、よう言われへん。とにかく、ずっとそばに居たいし、ずっとそばに居て欲しいんよ」
「希ちゃん…」
「えりちが『一人立ち」したと気付いたとき、ウチの心にポッカリ穴があいてしもうた…『えりロス』やね。そんなウチのポッカリ埋めてくれてる存在…それが花陽ちゃんなんよ」
「何故、花陽なんでしょう」
「敢えて言うんやったら…癒しかな」
「癒し…ですか…」
「なんやろうね…ちょっとドジなところも、とにかく美味しそうにご飯を食べる姿も、ダンスに歌に頑張ってるとこも、全てが愛おしくて…ごめんなぁ、迷惑な話やね」
「迷惑なんて…そんな…」
「迷惑やあらへん?」
「素直に嬉しいです。花陽のことを好きって言ってくれて」
希は花陽の身体を引き寄せ、抱き締めた。
花陽も同じくらいの力で、希を抱き締めた。
~つづく~