【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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新しいわたし その17 ~Kiss~

 

 

 

 

 

「ウチなぁ…」

沈黙を破ったのは希だった。

 

互いが抱き締め合った時間は、ものの数十秒…。

それでも花陽にとっては、とてつもなく長い時間に感じられた。

 

「ウチなぁ…」

花陽が聴いていないと思ったのか、希が言い直す。

「聴いてますよ…」

「ウチ、花湯ちゃんが好きで好きで、たまらんのやけど」

「はい…」

「花湯ちゃんを『どうしたい』のかが、わからんのよ」

「?」

「とにかく一緒に居たい、とにかく一緒に居て欲しい…その気持ちに偽りはないんやけど…」

「…やけど?…」

「妹にしたいのか、恋人にしたいのか…もっと言うと彼氏にしたいのか彼女にしたいのか、それがブレブレやねん」

「彼氏?彼女?…ですか…」

「その時々によって『姉目線』やったり『男性目線』になったりするんよ』

「はぁ…」

「花湯ちゃんが困ってる顔を見ると、ウチが助けてあげなきゃって思うし、喜んでるとこを見れば、こんなかわいい娘が自分の彼女やったらええのになぁ…って思う。」

「照れますね…」

「花陽ちゃんには、ずっとピュアでいて欲しいと思うんやけど、その反面、日々の成長も楽しみにしてる」

「でも、海未ちゃんみたいなったら、花陽ちゃんは花湯ちゃんやなくなるしやな…あぁ、何言ってんやろ」

「嬉しいですよ。花湯はメンバーの中で、自分はお荷物だと思ってましたから」

「そんなん思ったらあかん。言うたやん、花湯ちゃんが1番の功労者やって」

「だから、今日、希ちゃんにその話をしてもらって、かなり勇気が出ましたよ。…それと…」

花陽は少し間を置いてから、言葉を続けた。

「凛ちゃん以外に、花陽のことを想ってくれてる人がいることを知って、とても幸せです」

「ウチも結果がどうであれ、自分の想いを伝えられて、めっちゃ、ホッとしてる。今はね…」

「今は?」

「そう、今、この瞬間は。これを伝えたことによって、色々このあとの方が大変やからね…」

「確かに…」

「もうひとつ、ついでにカミングアウトしてええ?」

「はい…」

「ウチなぁ、男性目線になった時は、滅茶苦茶エッチなことがしたくなるんよ」

「…エッチなこと?ワシワシ?」

「それ以上のこと…」

「のわっ!!」

「ウチ、変態なんやろか…」

「いやぁ…それは…」

凛を見ても何も感じないが、やはり希の胸の大きさを目の当たりにすれば、花湯だって時折、変な気分になる。

だから希の言葉を、無下に肯定も否定もできなかった。

「女子高あるある…ですよね」

「そういうことにしといてくれへん」

「はい」

花湯が微笑む。

「それや…その笑顔がウチを狂わせるんよ…あぁ、ホンマに可愛い!」

「えっと…今は『何目線』ですか…」

「完全に男性目線…」

「わっ…」

「…大丈夫、ギリギリのとこで耐えてるから…」

「は、花湯はどうしたら…」

「今はそのままでいて…」

「はい…」

 

花湯は、このベッドから逃げられないことを悟っている。

逃げるつもりもない。

むしろ自分を好いてくれた人に、報いてあげたい…そう思った。

しかし、何をしてあげればよいかわからない。

なので、言われたまま横になっているしかなかった。

 

「電気…消してもええ?」

「えっ?あ、はい…」

「うん、じゃあ消すね…」

希はリモコンで、部屋の灯りを落とした。

 

希の部屋は窓が2つあるが、それぞれ薄手の青いカーテンが付けられている。

そこから、うっすらと月明かりが漏れて、目が慣れれば、真っ暗闇というわけではない。

「えりちは暗いの苦手なんやねん。これくらいでも、怖いっていうのや」

「意外ですね」

「ああ見えて、可愛いとこもあるんよ」

「絵里ちゃんは充分可愛いですよ」

「性格の話」

「確かに最初は怖かったですけど…。やっぱり絵里ちゃんと比較しちゃいますか」

「ん?そんなんちゃうよ…。気ぃ悪くした?」

「いえいえ、仕方ないです。たぶん花陽も凛ちゃんと比べちゃいますから…」

「例えば?」

「胸の大きさとか?」

「むふふ…それは負けへんね」

そういうと希は、ルームウェアのボタンを外し始めた。

暗い部屋の中でも、何をしてるかはわかる。

「の、希ちゃん?」

「さっき、お風呂ん中で触れんかったやろ?ウチのおっぱい…」

「えっと、その…んっ!」

 

希は突然、自らの唇で花陽の唇を塞いだ。

 

それは、ほんの一瞬の出来事。

 

「堪忍してや、やっぱ、我慢でけへんかった…」

「…花陽の初めてのチューは、ミントの香りです…」

「さっき一緒に歯みがきしたからやん」

希はそう言うと、再び唇を重ねた。

 

2度目のキスは、さっきとは比較にならないほど長い時間だった。

 

 

 

 

 

~つづく~


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