【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
『詞先・曲先』という言葉がある。
『しせん・きょくせん』と読む。
意味は読んで字の如く、歌を作る上で『作詞が先』か『作曲が先』かである。
※『しさき・きょくさき』という場合もある。
μ'sの場合、結成当初は海未が過去に書き貯めた『詩(ポエム)』を元に、真姫が曲を付けていく詞先のスタイルが多かったが、最近はテーマに合わせて同時進行で進めていくことも少なくない。
その為、言葉をメロディー乗せる、もしくはメロディーに言葉を乗せる擦り合わせ作業は、2人にとって欠かせないことだった。
打ち合わせには30分ほどの時間を要した。
「ありがとう。これで、だいぶスムーズに歌詞が繋がるようになりました」
「でも、もう少しサビまでの流れを工夫する必要があるわ」
「それはまた明日にしませんか?」
「…そうね。あまり長く考えても新しいアイデアは出ないものね」
「では、練習に合流しましょう」
話を終えて、海未が立ち上がる。
「待って!」
「はい!?どうかしましたか?」
「あ…別に…」
自分から声を掛けておきながら、真姫は言葉を濁した。
「やっぱり、どこか具合でも悪いのではないですか?」
「そんなんじゃないわよ…ただ…」
「なんでしょう?」
「今更だけど、海未と穂乃果とことりって、どういう関係なのかと思って…」
「えっ?…何故ですか?」
「別に…深い意味はないけど」
「関係性ですか…」
海未は少し考えてから、返答した。
「幼馴染みの親友でしょうか」
「ふ~ん…」
「なんですか、自分から質問していてその反応は」
「予想通りだったものだから」
「どんな答えを期待していたのですか」
「別に…」
「おかしな人ですね」
どこか納得していない真姫に、海未は言葉を続けた。
「そうですね…強いて言えば、穂乃果は時として強引な姉であり、時として頼りない妹というところでしょうか。そして、ことりは良き理解者ですね」
「ねぇ、疲れない?」
「えっ?」
海未が聞き返した。
「四六時中一緒で疲れない?」
「疲れますよ」
「えっ?」
今度は真姫が聞き返した。
「正直、穂乃果には振り回されることが多いですし、あのだらしなさには呆れます」
真姫は不思議そうに海未を見る。
「ですが…それ以上に刺激と感動を与えてくれる…そんな存在でしょうか。そして、ことりは臆病な私を後押ししてくれる、大切な人」
「そう…」
「…ということで納得頂けたでしょうか?」
「少しはね」
「それ以上は、長くなりますので、また別の機会に」
「わかったわ。ありがとう」
…やはり真姫は、何か悩みを抱えているようですね…
海未はそう確信したが、今、それを問い質(ただ)すのは逆効果…と静観することにした。
「では、行きましょうか」
「そうね」
2人は部室に戻り、練習着に着替えると、屋上へと向かった。
μ'sの練習時間は、正式には15時45分から17時半までとなっている。
これは規律に厳しい海未が決めたことで、当然ながら委員会等正当な理由がない限り、遅刻は厳禁だ。
大まかな練習メニューは、海未と絵里が決めている。
通常はアップとストレッチ、それと筋トレに30分ほどの時間を割く。
絵里が加入してから、特にストレッチは入念に行われるようになった。
休憩を挟んだあとは、主にダンスとフォーメーション練習を行い、最後はクールダウンして終了となる。
ちなみに週1日ないし2日は、音楽室にて歌の練習を行う。
この時は真姫が先頭に立ち、歌唱指導をする。
2人が屋上に着くと、メンバーは丁度アップを終えたところだった。
「どう?次の曲はうまくいきそう?」
声を掛けたのは、練習を仕切っていた絵里。
「まだ完成ではないですけれど、だいぶ形にはなってきたかと」
「そう。2人には負担を掛けるけど…お願いね」
「かしこまりました」
海未がそう言い、真姫と共にアップを始ようとした時
「くちゅん!」
と、そばにいた希が、小さくクシャミをした。
「大丈夫?風邪?」
「ん?ウチ?誰かが噂でもしてるんやないかなぁ…」
絵里の問い掛けに、希はそう答えた。
「アタシに感染(うつ)さないでよね」
とにこ。
「そやね。気を付ける」
「にこちゃんは平気だと思うにゃ」
「ちょっと、凛、それはどう意味よ!?」
「なんとかは風邪引かないって…」
「引くわよ!実際、穂乃果だってそれで倒れたじゃない」
「酷いよ、にこちゃん。穂乃果のは熱が出ただけじゃん。風邪を引いたわけじゃ…ね、ことりちゃん!」
「そ、そうとも、言うかな…」
「ことりは穂乃果に甘過ぎです!」
「海未ちゃん!?」
突然の乱入に驚くことり。
「大体、学園祭ライブ前夜に走り込みをして、熱を出して倒れるなんて大馬○者以外の、何者でもありません!」
「ほら海未ちゃんは、まだアップの最中だよ」
「ハッ!そうでした。では、失礼」
海未はそう言い残すと、その場から去っていった。
「ことりちゃん、ありがとね」
と感謝を述べる穂乃果
「海未ちゃんは、穂乃果ちゃんのこと大好きだから、仕方がないよ」
このことりの言葉に、その場にいた絵里、希、にこ、凛と…少し離れた場所から見ていた真姫は「あなたもね」と心の中でツッコミを入れていた…。
~つづく~