【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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ともだち その4 ~食欲の秋~

 

 

 

 

 

メンバーのストレッチが終わる頃、屋上への出入口のドア、突然勢いよく開いた。

その瞬間「ぴゃあ!」という悲鳴と共にピンク色の塊が転がり、ドテッと倒れ込んだ。

「す、すみません、遅くなりました!」

恥ずかしそうに起き上がったのは、花陽。

彼女の衣替えした練習着は、夏仕様のピンクに比べると濃いめになっていた。

 

「かよちん、怪我はない?」

凛が声を掛ける。

他のメンバーも次々に心配して駆け寄った。

「ちょっと転んじゃいました…けど、大丈夫です」

花陽ちゃんのああいうとこ、本当に可愛いんやから…希は思わずニヤけてしまった。

他のメンバーも同じように笑っている。

 

そんな中、険しい顔で花陽を見ている人物がいた。

真姫である。

その真姫が「…ドジ…」と小さく呟いたのを、海未は聴き逃さなかった。

 

「花陽ちゃん、アルパカさんのお世話はもう終わりましたか?声を掛けてくれれば、ことりもお手伝いしましたよ」

「あ、ありがとうございます。でも、これは飼育委員の仕事なので」

「かよちんは真面目だにゃ~」

「花陽は、その様子だとアップは必要ないみたいね」

息を切らしている花陽を見て、絵里がそう言った。

「走って来ちゃったので…」

「次は筋トレなんだけど、それよりもストレッチが大事だから…誰か手伝ってあげて」

「大丈夫です。ひとりで出来ます」

「ウチが手伝おうか?」

と希が得意のワシワシポーズをしながら花陽に迫る。

すかさず、にこが

「それはストレッチじゃなくて、マッサージでしょ」

とツッコミを入れる。

 

花陽の脳裏に一昨日の夜の出来事が浮かび、赤面しているのが自分でもわかった。

 

希はみんなに悟られないよう、花陽にウインクをする。

いつも通りに…ね?という合図。

それを受けて

「そ、そうですよ。ワシワシはダメです」

と相槌を打った。

「冗談やって、冗談」

「なんか、冗談に聞こえないだにゃ~…」

うっ!凛ちゃん…と心の中で呟く、希と花陽。

「無駄話はそのくらいにして、練習を続けるわよ!」

絵里がのんびりムードを断ち切った。

 

 

結局、ストレッチの相手は海未が務めることとなった。

「ねぇ、花陽…」

「はい?」

「真姫となにかありましたか?」

「えっ?真姫ちゃんと?」

「はい」

「真姫ちゃんと…特に思い当たらないですぅ…」

希ちゃんとはありましたけど…と心中穏やかでない花陽。

「そうですか…」

「真姫ちゃん、何か言ってました?」

「いえ、何でもありません。気にしないでください」

「はぁ…」

 

では、真姫が花陽を意識しているように見えるのは、私の思い過ごしでしょうか…

それにしても、花陽の身体は触り心地がいいですね…希がワシワシしたくなるのもわかります…

 

海未は柔軟している花陽の背中を押しながら、うっとりと頬を擦り寄せた。

 

あぁ、このまま寝てしまいそうですわ…

 

「う、海未ちゃん…?」

「ハッ!決して花陽を抱き枕にしたら気持ち良さそうだなんて考えてませんよ」

「…海未ちゃん?」

「さぁ、続けますよ!」

「えっ?えっ?あ、はい…」

花陽は頭に疑問符が浮かんだが、海未は背中をグイグイ押して、それを無理矢理掻き消した。

 

 

花陽と海未がストレッチを…他のメンバーは筋トレを終わらせると、一旦、休憩に入った。

全員、口々に暑さを訴えている。

 

「これでさ、急に涼しくなっちゃったら、それはそれで寂しく感じるよね」

と穂乃果。

「寒くなると、人肌恋しくなるもんね」

「でも、ことりちゃん…これからの季節は、美味しい食べ物が目白押しですぅ!まずは新米から始まって…」

「そう、そう!新米と言えば、今度『利き米』コンテストをやるってどこかに書いてあったのを見たわよ」

「え~っ!!にこちゃん、それは本当ですか?」

「日時と場所は忘れちゃったけど…あとで調べてあげるわ」

「ありがとうございますぅ」

「秋の新作スイーツも続々と発表されてるよ。花陽ちゃん、今度一緒に行こうね」

「酷いよ、ことりちゃん!なんで穂乃果を誘ってくれないの?」

「え~と…も、勿論、穂乃果ちゃんも一緒に…」

「だよねぇ、だよねぇ」

「ラーメンも秋の新作ラッシュにゃ~。かよちん、今度一緒に」

「アンタたちは食べることしか興味深ないの?」

「勿論、真姫ちゃんも一緒に行くにゃ~」

「私はいいわよ。凛の行くラーメン屋さんは身体に悪そうだもの」

「それは真姫ちゃん、酷いにゃ~」

「真姫の言う通りです。少しは食欲の秋だけでなく、読書の秋とか、もっと芸術的なセンスを磨いたらいかがですか」

「海未ちゃん…まぁ、いいやん。ウチらは身体を動かした分だけ、エネルギー補給しないといけないんやから」

「かと言って食べ過ぎは良くないわよ」

絵里がポニーテールを直しながら諭す。

「絵里ちゃんだって、パフェとか好きじゃん!」

「それは私だってそれくらいのことはするけど…」

「穂乃果!絵里の言う通りです。あとで太っても知りませんよ!各々、体重管理(ウェイトコントロール)は怠らないようにしてください!」

 

最後は海未が厳しい口調で、休憩時間を締めくくった。

 

 

 

 

 

~つづく~


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