【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「今日はここのお店にゃ」
凛とにこ、そして無理矢理連れてこられた真姫…の3人が、ラーメン屋にやって来た。
「初めてのお店?」
「かよちんとはよく来るにゃ。確か真姫ちゃんも1回…」
「そういえば、来たわね…」
「いらっしゃいませ~!!3名様?空いてるお席へどうぞ!」
店員の威勢の良い大きな声が店内に響き、3人はテーブル席に座った。
メニューを見ながらにこが訊く。
「凛、ここのお薦めは?」
「それは断然、牡蠣味噌ラーメン!この秋の新作にゃ~」
「一杯、千円!?た、高いじゃない…もっと、普通のはないの?」
「醤油ラーメンで750円だけど」
「そ、それでいいわ…」
「真姫ちゃんは?」
「私は…トマトラーメンでいいわ」
「この間もそれだったにゃ」
「何、トマトラーメンって?」
「トマトソースがベースになってるスープのラーメンにゃ」
「それは…スパゲッティって言わない?」
「スパゲッティって…にこちゃん…」
「なによ!?」
「せめてそれを言うならスープパスタじゃない?」
「べ、別に、そこはどうでもいいでしょ!」
「ひょっとして、にこちゃんって、パンツのこと、未だにズボンとか言ったりしてない?」
「アタシを誰だと思ってるの?μ'sのファッションリーダーにこ様よ!そんなわけないじゃない」
「ファッションリーダー…って」
といいながら、フフフと笑う真姫。
…なによ、意外に元気じゃない…心配して損したわ…と、にこは思った。
「お待たせしましたぁ、ご注文はお決まりですか?」
若い男の店員が、3人に声を掛ける。
「牡蠣味噌ラーメン!大盛りで」
「えっと、醤油ラーメン」
「トマトラーメン」
「はい、ありがとうございます…牡蠣味噌大盛り、醤油、トマラー入りましたぁ!!」
店員が厨房に向かって叫ぶと、奥から「ありあ~す!」の声。
恐らく「ありがとうございます」と言っているのであろう。
店員が下がろうとした時に
「あっ!あとライス大盛り!」
凛が慌てて追加注文をした。
「ライス大盛り…はい、ありがとうございます」
店員はオーダーを端末に打ち直して、テーブルを離れた。
「ちょっと、ライス大盛りって…誰が食べるのよ」
「誰ってかよちんに決まっ…あれ?いない…。にゃにゃ~!つい、いつものクセで頼んじゃった」
「いつものクセって、凛も花陽もどんな食生活してるのよ」
「私はだいぶ慣れたけどね…」
「ふ~ん」
「な、なによ…」
「いや、なんだかんだで真姫も仲良くやってるじゃない…ってね」
「ま、まあね…。1年組(こっち)はにこちゃんもいるしね」
「だから、アタシは3年だって」
「でも、誰に訊いても違和感ない…って絶対言うにゃ~」
「確かに」
「まぁ、アンタたちといる方が楽だけどね」
「お待たせしました。牡蠣味噌ラーメン、大盛りのお客様!」
「にぁ~!」
「醤油ラーメン」
「はい」
「じゃあ、最後トマトラーメンですね。ライス大盛りは…」
「空いてるとこに置いといてほしいにゃ」
「はい、では…って、なんだキミは『にゃ~』のお姉ちゃんか!」
「は、はい…。えっと、凛のことを覚えてくれてるんですか?」
「何回か、来てくれてるよね。もう1人の娘と一緒に」
「は、はい」
「今日は?良く食べるお姉ちゃん」
「えっと…都合が悪くて」
「そう。残念だな…」
「残念?」
「いや、こっちのことです。あ、延びちゃいますね。失礼しました…以上でご注文はお揃いで…はい、では、ごゆっくりどうぞ」
店員は伝票をテーブルに置くと、一礼して次の接客へと移っていった。
「いっただっきま~す!」
「凛のは土手鍋みたいだね」
「プリプリの牡蠣がいっぱいにゃ~」
凛は目をキラキラさせて、目の前のラーメンに挑む。
レンゲにスープを掬(すく)い、口へと運ぶ。
「あぁ、これは美味しいにゃ~!うん、絶対かよちんにもお薦めにゃ。ご飯が進むこと間違いなしにゃ!」
「あの娘はラーメン食べに来ても、ご飯が主食なわけ?」
苦笑する、にこ。
「にこちゃんも一口飲んでみる?」
「えっ?いいの?それじゃ…。うん、なかなか美味しいじゃない」
にこはスープを飲み込むと、もう一度手を伸ばした。
そして凛の牡蠣を掬うと、パクリと口に…
「にゃ~!凛の牡蠣!」
「いいじゃない、1個くらい…あら、イケるわね…」
「まったく…」
真姫が溜め息をひとつ吐(つ)いた。
「なによ?」
「やってることが、子供だなって」
「な…真姫だって、子供じゃない!」
「どうして私が?」
「だって…」
と言うと、にこはプププと口を押さえて、ひとり思い出し笑いを始めた。
その様子にピンときたのは凛。
…あれは、真姫ちゃんの『暖炉事件』を思い出してるにゃ…
前回の合宿で発覚した事実。
それは真姫が未だにサンタクロースの存在を信じており、毎年、父の言いつけ通りに別荘の暖炉を綺麗にしている…ということ。
サンタが煙突から入ってきて、煤(すす)で汚れないように。
メンバー一同、真姫のこの発言を聴いた時、時間が止まった。
そして次の瞬間、にこが『真実』を暴露しようとしたが、凛と穂乃果が「それを話すのは重罪だよ」と必死に食い止め、取り敢えず、その場は事なきを得た。
これを真姫以外のメンバーは『暖炉事件』と呼んでいるのだ。
「にこちゃんも真姫ちゃんも、早く食べないと、延びちゃうにゃ~」
凛は前回と同様、にこの悪魔のささやきから真姫を守るため、必死に話題を変えようとした。
~つづく~