【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~ 作:スターダイヤモンド
「へぇ、真姫ちゃんから、穂乃果とことりちゃんとは『どういう関係』か…って訊かれたの?」
「はい」
「それで海未ちゃんは何て答えたの?」
「幼馴染み…そう答えました」
「それだけ?」
穂乃果は着ていた割烹着を脱ぎながら、海未の前に座った。
「親友…だとも言いました」
海未はピンと背筋を伸ばし、正座をしている。
ここは、穂乃果の部屋。
今朝、母親から店番を頼まれていた穂乃果。
練習を終え、家に帰ってから2時間あまり…たった今、その任務から解放されたところだった。
海未は家の用事を済ませ、それから『穂むら』に来た。
まだ穂乃果は店番中だったので、先に彼女の部屋で待っていた。
海未は思い出した。
μ's結成当初、穂乃果が店番で、海未ひとりが部屋で待つという、今と同じようなシチュエーション。
その時、振り付け練習からの流れで『ファンの声援に手を振って応える』という『イメージトレーニング』しているところを、まだ入部前の花陽に偶然目撃されるというアクシデントがあった。
半年過ぎても、あの時の恥ずかしさは忘れていない。
その為、今日は穂乃果の部屋にある本棚の整理をして、おとなしく待つことにした。
…順番に読んで、順番にしまっていけば、こうもバラバラにならないハズなのですが…
…いくらO型だからといって、あまりにも大雑把過ぎます…
…などと考えながら本を整理をしているうちに、穂乃果が店番を終え、部屋に入ってきたのだった。
穂乃果は学校からの帰り際、真姫の様子について概要は聴いていた。
だが詳細までは話している時間はなかった為、海未が穂むらに立ち寄ったというわけだ。
穂むらの饅頭とお茶を用意をしながら、海未に訊く。
「真姫ちゃんは、何でそんなこと言ったんだろうね」
「何か悩み事があるのは間違いないと思うのですが、あの質問とどう繋がるのか、それがわからないのです」
「そりゃ、真姫ちゃんにも悩みのひとつやふたつはあるんじゃない?」
「それはそうですが」
「具体的に相談されたわけじゃないんでしょ?だったら、放って置いてあげようよ」
「穂乃果は冷たいです」
「そんなことないよぅ。穂乃果だって心配はしてるよ。だけど、本人が気にしないで…って言ってるのに、周りが騒ぐのもどうかと思うよ」
「それは正論ですが…練習に支障が出るようなら、やはり問題かと」
すると穂乃果がいきなり爆弾を放った。
「海未ちゃんに、恋しちゃったのかな?」
「な、なんですか、急に!?」
海未は飲もうと手に取った湯呑みを、落としそうになった。
「だって、どうして『穂乃果とことりちゃんと付き合ってるのか』…って訊かれたんでしょ?それって、海未ちゃんのことに興味がある証拠でしょ?それはきっと、好きになったからだよ」
「と、友達として付き合ってる理由を訊かれただけで…」
「ことりちゃんも言ってたじゃん、これからの季節、一肌が恋しくなるって」
「短絡過ぎます」
「そうかなぁ」
「だとすると、なぜ私がなのでしょう…」
「作詞・作曲の仲…でしょ?」
「それなら花陽に対する…」
といい掛けて、途中でやめた。
「花陽ちゃん?」
「い、いえ、なにも…」
…真姫が花陽を意識しているのは間違いないと思うのですが…それを話すと穂乃果相手では収拾がつかなくなりそうです…
海未は寸前で思い留(とど)まった。
…と、同時に半歩遅れて、別の思考が押し出される。
「な、なんですって!真姫が私に恋をしたと言いましたか!?」
「今、それを訊き返す?」
「ダメです、ダメです。女子同士の先輩後輩の、道ならぬ恋などあってはなりません!」
「出た!恋愛拒否症候群!」
「勝手に変な病名を付けるのはやめてください!」
「だって、海未ちゃん、もう高2だよ」
「だからなんですか!高2であろうと、コーチであろうと同性同士などとは…」
「穂乃果はアリだと思うけどな」
「ええっ!穂乃果はアリなのですか!」
「たまたま好きになった人が女の人だった…ってことでしょ。別にいいんじゃないかな…」
…なんと、良いのですか!
そういうことは、もっと早く言ってください!
何年間、私が貴方の事を想い続けているかわかりますか!
ならば、今、ここで想いの丈をぶつけますよ!
…と海未の心の中。
「海未ちゃん?それは新しい小顔ダイエット?それとも『新しい顔芸』?」
辛うじて声は出ていなかったが、心の中のセリフに合わせ、口がパクパク動いていたようだ。
「そんなのではありません」
顔芸と言われても、まったく反論する余裕もない、海未。
「穂乃果、良く聴いてください。実は今まで隠していたことがあります…」
「突然!?」
海未は大きく深呼吸をした。
脚を崩していた穂乃果も、正座に座り直す。
恐らく穂乃果の部屋史上初、最大級の緊張感。
そんな中、海未の口が動いた
「す、す、好きです…」
「えっ?」
「好きです…私は…ほ、ほ…やっぱり言えない…」
「海未ちゃん!穂乃果をこんなにドキドキさせておいて、それはないよ。何が好きなの?」
「いや、やめましょう…」
「海未ちゃん!」
「忘れましょ…」
「海未ちゃん!」
「わ、わかりました。わかりました。言います、言います…」
海未は再び深呼吸すると、その後、声を絞り出すように言った。
「私は…ほ、ほ、穂むらのお饅頭が、大好きです!」
「知ってる…」
と穂乃果。
コント的にドベッ…とコケてみせた。
「お代わりが欲しいなら欲しいって、素直に言えばいいじゃん。いくらでも食べて。うちは売るほどあるんだから」
「はぁ、す、すみません、いただきます」
「その替わり…太るよ」
穂乃果はいつも海未に言われてるフレーズを、ここぞとばかりに、お返しした。
満足そうに笑っていると穂乃果と、対照的に肩を落としてうなだれる海未。
果たして…今日の時点での海未の想いの成就はならなかった…。
~つづく~