【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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ともだち その9 ~ロシアンティー~

 

 

 

 

絵里は勝手知ったる我が家のように、お湯を沸かし、紅茶を入れている。

テーブルにはソーサーに乗せられたティーカップが2組と、ジャムが入った小ぶりのビン。

そして、そのテーブルの椅子に座って待っているのは、この家の主(あるじ)の希。

 

練習が終わると、絵里は一緒に希の家に来た。

特別大事な用…ではなかったが、今日は2人でお茶をすることになっていたからだ。

 

「やっぱり、これを入れるのはえりちやないとね」

「別に、これくらいは誰だって出来るわよ」

「そやけど、なかなか、普通の高校生は、バラの花のジャムでロシアンティーなんて飲まないと思うんやけど」

「たまたま親戚がジャムを送ってくれてるだけで…私だってそうじゃなければ、そんなに飲まないわよ」

「いやいや、ありがたい、ありがたい。毎回毎回、ごちそうさんやね」

絵里はビンに入ったジャム掬(すく)うと、それぞれのカップソーサーの縁(ふち)に、少量ずつ取り分けた。

 

…彼女はカップの中に先にジャムを入れるのは、邪道だという。

理由は諸説あるようだが、寒さが厳しい本場ロシアでは、それをやると折角の熱い紅茶が、温(ぬる)くなってしまう為、スタンダードな飲み方ではないらしい。

 

絵里は2人のカップに、かなり濃い目の紅茶を注いでから、椅子に座った。

「いただきます」

希はソーサーに添えられたジャムを、少しだけスプーンに乗せ、口へと運ぶと、それを舌に乗せた状態で、紅茶を飲んだ。

口内に広がる気品溢れる、バラと紅茶の薫り。

希はうっとりとしながら、呟いた。

「う~ん、幸せ~。セレブになった気分やわ。リラックス効果抜群!って感じやね」

うふふ…と笑う絵里。

それを見て希が言う。

「えりちの顔…優しくなったなぁ」

「…そうかもね。少し前までは、周りを見ている余裕なんて、まるでなかったもの」

「μ'sのみんなに感謝やね」

「本当に…。でも、今考えると希の策略に、まんまと嵌まっちゃったかな?」

「策略って…」

希は苦笑した。

しかし、すぐに真顔になって訊き返す。

「後悔してるん?」

「まさか!毎日とても充実してるわ」

そう言った絵里を、希はとても嬉しそうに見ている。

「なによ…」

「これでウチの願いごとがひとつ叶ったんやな…ってね」

「願いごと?」

「えりちが誰かのためやなく、自分のために輝けるのをずっと待ってたんよ」

「なにそれ、意味わかんない」

「真姫ちゃんのセリフやん!」

今度は希がふふふ…と笑った。

 

「真姫と言えば…」

話を切り替えたのは絵里。

「今日、少し様子が変だったけど」

「大事な時期やし、多少ナーバスになってるんやないかな」

「心配だわ」

「そやね。真姫ちゃんも誰かに似て、そう簡単に弱味を見せるタイプじゃないから、内に溜め込んじゃうんやろうね」

「希だって人のこと言えないと思うけど」

「ウチはまだ、えりちがいるやん。でも真姫ちゃんは…。花陽ちゃんや凛ちゃんには言えないやないかな」

「2年組もそうだけど、花陽と凛も長い付き合いみたいだから…一緒にいて疎外感みたいなのがあるのかしら」

「えりちはどう?」

「私?私は…未だに浮いてると思ってるけど」

「そうなんや」

紅茶おいしいやん…と言いながら、希はもう一杯カップに注ぎ足した。

 

「合宿の時は『本当に』何もなかったん?」

「合宿?この間の?…だから希が期待するようなことは何もない…って言ったじゃない」

「ないんや…」

希は、はぁ…と溜め息をひとつ吐(つ)いた。

「ウチらは海未ちゃんが暴走したりして、なかなかの合宿やったけど」

「聴いたわよ。海未ちゃんが実はあんなに山ガールだったとは知らなかったけど」

「名前は海未やのに…」

「凛は川に飛び込んだり、遭難しそうになったり、散々だったわね」

「後々、ああいうアクシデントが、いい思い出になるんよ」

「そうね…」

「えりち達は?」

「私たちは…アクシデントはなかったけど、にこと真姫が意外と仲良くしてたのが、発見だったかしら」

「にこっちは普段弄(いじ)られキャラやけど、いざという時は一番しっかりしてるんやない」

「そうかもね」

「そう言えば、穂乃果がμ'sを抜けるっていった時は、にこっちが、メチャメチャ怒ったやん。殴りかかりそうな、にこっちを止めたのは、確か真姫ちゃんやったような…。でも、結局、穂乃果ちゃんは、海未ちゃんに叩かれちゃうんやけどね」

「そうだっかしら」

「にこっちやったら、真姫ちゃんの相談相手になってくれそうやけど」

「私もそれは同意するわ。合宿の時も、真姫が曲作りで悩んでたとき『曲はいつもどんなときも、全員のためにあるのよ』ってアドバイスしてたのを訊いて、あぁ、にこにはかなわないなぁ…って思ったの」

「盗み聴き?」

「テントの中にいても聴こえたの!」

オーバーアクションで、違う、違うと否定する絵里。

恐らく希にしか見せない仕草。

 

「でもね…あの合宿で、3チームに分かれて、私は真姫の手伝いをしようとか言っておきながら、結局、何の役にも立たなくて…にこみたいに気の利いたことも言えなくて、随分落ち込んだわ」

「それを言ったらウチも…やね」

「あの時、私がもっと真姫のことを気に掛けてあげれてれば…」

「えりち、そんなん言ったらダメやろ。にこっちにはにこっちにの、えりちにはえりちの役割があるんやから」

「私の役割?」

「えりちが無理して、にこっちになる必要はないやん。今、えりちがやらなくちゃいけないことは…」

「全力でダンスレッスンをしてあげること。予選突破出来るようにね」

「それで、いいんやない。ひとりひとりが自分の得意なことを生かし、全力でぶつかっていく。それがμ'sやん。ウチらは9人もいるのに、誰ひとり欠けてもダメなんよ」

「そうね」

「真姫ちゃんのことは心配やけど、彼女ならきっと乗り越えるんやないかと信じてる」

「希…」

「そやから、今日はそうっとしておいてあげて、明日の様子を見てから判断しよう」

「わかったわ」

「それにしても…ウチのメンバーは繊細な娘が多いんやね…」

「みんな思春期ですもの」

「これじゃ、ミュ○ズやなくて、ナイ○ブやね」

 

希としては会心の駄洒落だったが、絵里は理解出来ず、ただ、キョトンとするだけだった…。

 

 

 

 

 

~つづく~

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