【ラブライブ μ's物語 Vol.1】Can't stop lovin'you! ~花陽ちゃんへの愛が止まらない~   作:スターダイヤモンド

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ともだち その10 ~先輩だもん!~

 

 

 

 

「美味しかったにぁ~」

凛は両腕を突き上げて、伸びをしてから歩き出した。

「ま、まぁまぁ…ってとこね…」

とサイフの中を確認しながら、にこが後に続く。

「真姫ちゃんのトマトリゾットも、美味しそうだったにゃ」

「トマトリゾットって、余ったスープにご飯を入れただけでしょ?」

真姫が、凛とにこの後ろを歩く。

 

3人はラーメン屋を出て、それぞれの家に帰るところだった。

 

「いつも、ご飯はかよちんにあげちゃうから、凛もスープに浸して食べたのは初めてだったけど、なかなか、イケるにゃ」

「あぁ、そう…」

にこは気のない返事。

しきりに自分のサイフを眺めている。

「本当にいいの?出すわよ、自分の食べた分くらい」

真姫が、そんなにこを見て声を掛ける。

「な、なに言ってるのよ。こ、これくらい、先輩なんだから当然でしょ。生意気言わないの…」

「ゴチになるにゃ~」

「アンタは少しくらい遠慮しなさいよ」

「にゃ~!!」

「そう言ってれば誤魔化せると思ってるでしょ?」

「にゃ~!」

「やめてよ、大きな声で…」

真姫が公道でじゃれる凛とにこに自制を促す。

 

その後は、とりとめのない話をしながら、家路に就いた3人。

「それじゃ、にこ先輩、ごちそうさまでした」

凛は丁寧な言葉で一礼すると、また明日…と2人と別れ、先に帰宅した。

「なんだかんだ言って、慕われてるじゃない」

「当たり前でしょ、私を誰だと思って…」

「にこちゃん」

「またスルー…じゃわない…のね。わ、わかってるじゃないの」

軽く返されて拍子抜けの、にこ。

 

しかし、凛が居なくなったとたん、2人は無口になった。

「ちょっと、何か話なさいよ」

「別に、特に話すことなんてないもの」

「なくないでしょ!さっきのラーメン、美味しかったね…とかさ、にこちゃんって、やっぱり頼りになるね…とか、雨ニモマケズ、風ニモマケズ…そういう人間に私はなりたい…とか」

「なんで宮澤賢治が出てくるのよ、意味わかんない」

「だから、例えばよ、例えば。たまには自分から話しかけてみたらどうなのよ」

「それが出来れば苦労しな…」

そこまで言いかけて、真姫は慌てて口を押さえた。

「強がらない、強がらない」

「強がってなんかいないわよ!」

「はい、はい。じゃあ、そういうことにしてあげるわよ。本当に素直じゃないんだから」

にこは両の手を腰にあて、拗ねたポーズをしてみせた。

 

「にこちゃんはさ…絵里と希の関係について、どう思う?」

「はぁ?え、絵里と希の関係?」

まったく予期せぬ角度から質問(ボール)が飛んできて、焦るにこ。

「そ、それは…親友じゃない?やっぱり」

「じゃあ、にこちゃんと2人の関係は?」

「はぁ?」

もう一球、おかしな角度からボールが飛んできた。

「えっと…それは…なんでそんなことを訊くのよ?」

「別に…」

「正直言って、確かに2人とはそこまで親しい仲ではないわよ。ずっと気に掛けてくれてた希は別として、絵里とは接点なかったし」

「それで、いつも私たちと一緒にいるんだ」

「悪い?」

「…別に…」

2人はいつの間にか小さな公園まで来ていて、どちらからともなく、それぞれブランコに腰をおろした。

 

「アンタの気持ち、わからなくはないわよ」

「えっ?」

「その質問でだいたい悟ったわ。さすが、にこ様。伊達に部長はやってないわ」

「なによ、いきなり」

「絵里と希、穂乃果と海未とことり、凛と花陽…どの学年にも親友と呼ぶにふさわしい、コンビ、もしくはトリオがいる」

「そうね」

「それに嫉妬してるのね。そしてアンタは、にことそういう関係になりたいと思っている!!」

「な…」

「ふふふ…その驚きかたは図星のようね。仕方ないわねぇ、歳は違うけどなってあげるわよ…親友に」

なかなか鋭いじゃない…でも半分ハズレ…と真姫は心の中で呟く。

「どうして、そうなるわけ」

「相変わらず素直じゃないわね。こういうときは、まず、ありがとうございます…でしょ」

「あ、そうね…でも、どちらかというと、にこちゃんが私と親友になりたがってるんでしょ」

「なんでそうなるのよ。今日はアンタの様子が変だから心配してるのに」

「ありがとう。でも、大丈夫だから…。まだ戻って曲を仕上げなくちゃいけないし、先に帰る」

「真姫…」

「ラーメン、ごちそうさま。また、一緒に食べに行ってあげてもいいわよ」

そう言って、真姫は足早にその場を去っていった。

 

残されたにこは、すっかり暗くなった空を見上げながら、ひとり呟く。

「ママにお小遣いのアップをお願いしきゃ。先輩やるのも、楽じゃないわね…」

 

 

 

 

 

一方、真姫は…

 

はぁ…

 

ひとりになってから、やたらと溜め息を連発している。

そんな自分が嫌になって、また溜め息を吐(つ)いてしまう。

 

…みんな、お節介過ぎるのよ…

生まれもった性格だもの、急には変えられないわ…

仮に今、私が素直に気持ちを打ち明けたら…

…μ'sが壊れちゃうじゃない…できない…しちゃいけない…

とにかく今は、予選突破に集中しなきゃ…

 

そんなことを考えながら、真姫は家まで辿り着いた。

門扉の前まで来くると、防犯用の人感センサライトが点灯した。

 

そして気付く。

その明かりの中に、2体の人影があることを。

 

「誰!?」

 

真姫に時ならぬ緊張が走った。

 

 

 

 

 

~つづく~

 


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